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チウルカ

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第一章

                 チウルカ
 ポーランドという国は欧州の中では広い方だ、四千万近くの人口もいて多様性も持っている。西はドイツの影響が強いが東はスラブの趣が濃い。
 その東部の森林地帯にある村クルビエはそのスラブの影響が色濃い、ポーランド人もスラブ人なのでそれが余計に出ている。
 そのクルビエの中で二組の家で結婚式が行われようとしていた、それはミコワイ=ラニツキとカシア=ファルドフスキの二人にも関係があることだった。
 むしろミコワイの兄とカシアの姉の結婚式だからだ、まだ中学生でしかも同じ学校で同じクラスにいる二人にとってはかなり関係があることだ。それでだった。
 ミコワイは学校でだ、カシアに聞いた。
「俺の兄貴と御前の姉ちゃんが結婚するからな」
「ええ、そうよね」
 カシアはその茶色の左右で三つ編みにした長い髪を触りながらミコワイに返した。鳶色の目は大きくやや垂れていて豊かな感じの頬の顔で鼻は低めで丸い。小柄で可愛らしい感じだ。
 ミコワイはその彼女より十五センチは高いブロンドの髪はショートになっていて深い青の目だ。鼻は高めで肌の色は薔薇がさした白だ。二人は今は中学の制服、冬用のそれを着ている。そのうえで中庭の木下に一緒に座って話をしているのだ。
 その中でだ、ミコワイはカシアに言うのだ。
「それで兄さんとな」
「お姉ちゃんが結婚したら」
「俺達どういう関係になるんだ」
「兄弟?」
 首を傾げさせてだ、カシアは言った。
「そうなるの?」
「そうなるか?」
「ええと、ミコワイのお兄さんは私の義理のお兄さんになるのよね」
「それでカシアのお姉さんがな」
 ミコワイも言う。
「俺の義理のお姉さんになるから」
「私達もね」
「義理の兄弟か」
「そうなるの?ただ」
 ここでカシアはこう言った。
「私女の子だから」
「ああ、兄弟じゃないな」
「そうよ、しかも私は四月生まれで」
「俺は七月だからな」
「私がお姉さん?」
 やはりだ、カシアは首を傾げさせて言った。
「そうなるの?」
「御前が俺の姉さんか」
「義理でもね」
「じゃあ俺姉さんが二人出来るのか」
「私はお兄さんと弟が同時に出来るの」
「変な話だな」
「そうよね」
「いや、兄貴とそっちの姉さんが結婚することはいいさ」
 それ自体はとだ、ミコワイはカシアに話した。
「それはな」
「けれどよね」
「ああ、何かな」
「凄いことになってるわね」
「全くだな」
「この村じゃよくあることみたいだけれど」
 この間まで赤の他人だったクラスメイト同士がそれぞれの家の結婚で義兄弟の関係になることがである。
「それでもね」
「受け入れにくいな」
「私のことお姉ちゃんって言える?」
「じゃあそっちは俺のこと弟って思えるか?」
 お互いに怪訝な顔になって問い返し合った。
「そう出来るか?」
「まさか、ミコワイはずっと私と一緒にいるけれど」
「それでもだろ」
「お友達であってね」
「弟なんてな」
「思えないわよ」
「俺もだよ、カシアとはいつも一緒だけれどな」
 それでもとだ、ミコワイも言う。
「友達だからな」
「お姉ちゃんにはね」
「なれないな」
「そうよね」
「変なことになったな」
「この村じゃよくあることでも」
「そうだな」
 ミコワイも首を傾げさせる、そして。 
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