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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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マザーズ・ロザリオ編
  第225話 太陽

 
前書き
~一言~


 今回は、早くに投稿出来ました!!
 じつわ……、この始まりは随分と前に骨組みが出来ていたんですー。ハッピーエンド派! と、言ってるのに……、とても 複雑なのですが、もう 結末が変わらない少女(・・)を再び、描きました……。
 きれいごとを言えば、『心で生き続けてる』ですかね。ALO編でも 彼女は 出てきましたし……。

 私、じーくwのエゴだとは思いますが、お付き合いして下されば、幸いです。



 SAO最終章 《マザロザ編》開幕です!





P.S 

それにしても………展開がワンパターンな気が…………… 涙



 

 

――……それは、とある物語。

 この世界の何処にでもある、ありふれた物語。

 ありふれているけれど……、とても幸せな物語。










 今日も、この場所では笑顔が絶えない。そして 毎日が楽しい。心から笑って過ごせる。



――……さぁ……、次は、どこの世界へ行こうか? どんな世界で冒険しようか?



 笑顔のまま、ニコニコとそう語りあうメンバー達。


 この場所は、VR世界での交流の場である《仮想世界交流部屋(VR CATE ROOM)》である。


 かの稀代の天才、そして狂人である茅場明彦が残した《世界の種子(ザ・シード)》から生まれた新たな大規模なコミュニティーの場である。

 それは、従来のゲーム内とは違い、ゲームをする訳じゃなく、ただ純粋に、色んな世界で出会う事が出来た人達と、仮想世界を介して、会い、交流を深めたりする場所なのだ。

 そして勿論、ダウンロードし リンクを繋げる事によって、各仮想世界(ゲーム)とも繋げる事が出来るから、一種の中間ポイントとも言えるだろう。そして、どんな世界からでも、入る事が出来る。

 
 本日、その場所に集まっているのは9名。


 知り合ったのはこことは違う別の世界……世界の種子(ザ・シード)連結体(ネクサス)
 その種から芽吹いた無数の若木、世界から知り合った9人だった。
 

 今日も笑顔で溢れ、心地よい談笑が響き渡る。



「そーだなぁー……。あの虫の世界もある意味では面白かったから、もうちょっと見てみたいって気もするなー。何よりもさ! シウネーが面白かったしねっ!……まぁ ちょ~っとあれだったけどっ」

 自分で言っておいて、途中で何かを思い出したのか、ぷくく……、と笑いを堪える仕草をする少女。そして、その隣の女性は、逆に ぶるっと震えながら、更に反射的に身体を抑えていた。
 どうやら、思い出したくない事であった様で、身体に悪寒が走った様だ。  

「きゃ、きゃあっ!! そ、それは、いわないで!!」

 《シウネー》と呼ばれた滑らかなロングの髪。目許はいつも微笑んでいる様に、穏やか。……だが、今回ばかりは息を潜めていた。シウネーは、思わず小さく悲鳴を上げていたのだから。

 《虫の世界》とは それほどまでに嫌な世界? だったのだろうか。

「ふふ、確かにね? 確かに、昆虫好きには 堪らないかもしれないけど……、私たちの中で、その昆虫(ジャンル)好きな人いたっけ?」

 少し淡い黄色の髪、シウネーと同じ位長い髪の少女が、周囲を見渡しながら、そう言っていた。

 すると……。



『ふるふるふる!!』



 その言葉を聞いて 殆ど全員が、一斉に首を横に振っていた。
 どうやら、揃ったメンバーの殆どが昆虫類はあまり好ましくない様だ。

 そう、殆ど(・・)……と言う事は、中には好きな者もいるのだ。

 その内の1人、小柄な体躯、赤く短くカットした髪の少年《ジュン》だけは、頭の後ろで手を組み、ニヤリと笑っていた。

「オレは良かったぜ? オレがなってた二足歩行のダンゴムシだってさ! ……って二足歩行のダンゴムシって一体何なんだ~! って、最初は思ったな。それに、歩くより丸まって転がったほうが断然早いんだよね~。足いっぱいあるのに、二足歩行っていうのも何だか妙な感じがしたし、ま、色々ツッコミどころがあって、面白かったなっ! たまになら、行きたいって思う」

 思い出しただけでも、腹が痛いと言わんばかりに、最後は堪え切れなくなって抱えながら笑っていた。

 もちろん、その少年《ジュン》だけではない。
 もう1人。長い緑色の髪をポニーテールで結いでいる少女《メリダ》
 彼女も同じだったらしく、笑顔でぴんっ! と手を上げた。

「わたしは、元々《虫ハンター》ですからっ! 大好きだよー」

 胸を張ってそう言う。以前いた世界では、虫かごを常備し、何ヶ月も追い続けていた経験がある。虫かごを片手に草原を駆け回ったのは本当に良い思い出だ。思えば、その世界があったからこそ、いまに繋がっているのだから。

「あっははっ! メリダは そーだったねー! 僕が見つけた《ロイトン》、すっごく大事に育ててくれたしーっ」
「えへへ」

 1人のその言葉から、また 皆が釣られて笑顔になる。虫は苦手、と言うのは間違いないのだが、それでも、色んな意味で楽しかったのは事実だから。



 笑い合っている間に、話はその世界の話題になっていった。



「それに、二足歩行のアリンコも良かったじゃん! なー?」
「ぎゃっ!! じゅ、ジュンっ い、いわないでよー!」
「へへ~ん。たまにはシウネー以外にもいじられたほうが良いだろ? まぁ、あの中では間違いなく貧乏くじはシウネーだったって思うけど……イモムシだし、口から糸をぴゅーってはいてたしっ!」
「ぶー……」

 逸らしてくれたかと思ったのに、まさかの返しに口を尖らせるシウネー。そして、赤髪の少年、ジュンは更に笑った。その仕草が可笑しくって、皆に更に笑いを誘う。

 そして、自然とあの世界での其々のアバターである、虫についての話になっていった。

「あはは……えと、まだ、マシな部類でしたけど……、それでも、虫はちょっと……」
「まー、タルはバッタだったんだし? 良かったじゃん。ぴょんぴょん飛べて気持ちよかったでしょ?」
「ん~……ボクは……」
「テッチは、カブトムシ! 王様だったじゃん。昆虫のっ!」
「ん~、でも微妙だよ? ……王様って言われても、流石に虫じゃあね……?」
「じゃ、一番満足してたのは、わたしかな?」
「メリダは、蝶蝶だったもんね~……、はぁー あの時は羨ましい、って思っちゃったよ」
「うぅ~ん…… 幸運だったよねー」
「まぁね~。ん~~でも やっぱり皆の気持ちも、判らないでもないけど」

 話題は尽きない。時を忘れてずっと楽しむ事が出来るほどに。



 少し、このメンバーを改めて紹介しよう。



 メガネをかけ、センター分けが特徴的な少し、気の弱い青年《タルケン》

 タルケンと最初にやり取りをしたのが勝気な女性、男勝りと言っても過言ではない勢いと、短めの後ろ髪を縛っているのが特徴的な女性《ノリ》

 そして、いつもマイペース、と言う事を表情で体現しているかの如く、穏やかであり、眼が細く、それでいて誰よりも巨漢である青年《テッチ》

 

 つまり、周囲の意見を総合すると……過半数は以上そこまで良い思い出があったとは思えない様子。ちょっと納得行ってないのは、元虫ハンターを名乗る《メリダ》なのだが……、正直に言えば 虫は好きだがグロテスクな部類は苦手だから、判らないでもなかった。

 まだ感想を言ってないメンバーもいる。

 そう、その内の1人がまた、流れを変えた。



「私は……あの世界、好きだったなぁ……」



 1人だけ、まさかの発言をしたのだ。
 まさに、周囲は猛者(もさ)だと思えた。女性であるのにも関わらず、虫しかいない世界を好き、とまで言ったのだから。メリダに関しては……例外な気がするから割愛を。

「ちょっとー。なーんか、わたしに失礼な事、考えてない? 皆っ」

 ちょっぴりジト目になっちゃった、メリダを諌めつつ、視線は彼女(・・)に集った。

 まだ、細かな感想を、訊いてなかったからだ。


 ここで、皆が言う世界についてを説明する。

 以前に、皆で行った世界の名は、アメリカの《インセクサイト》と言う名のVR世界だ。

 アメリカでは、虫を題材にしたアメコミや映画等もあり……、ある程度人気を博している様だが、流石にあそこまでのビジュアルの虫では、ダメだ。って事で過半数が箸を投げた。

 このメンバーには女の子が多いから、それも要因の1つだろう。

 頬を膨らませる女の子、メリダもいるのだが……、それでも虫の全部、全種類、どんな虫でもスキ! と言う訳じゃないから、一応、同意はしている。

 でも、そんな中で、涼しそうな表情のまま、そう言う女の子。

「えぇ!? ほ、本当なんですか……?」
「うん。本当ですっ 嘘はつきませんよ?」
「うわぁんっ! 何だか、嬉しいよ~~! ありがとーーっ」
「あはは、メリダさん。落ち着いて」

 シウネーの言葉にも、笑顔で頷く。
 何だか、嬉しくなって抱きついたメリダの頭をよしよし、と撫でる姿は堂に入っている。

「でもなぁ、メリダは、経験があるから……、でもあたしは初体験だったし、ちょ~~っと同意しかねるね。どーせいつもの、シウネーをからかう為だけに上げた名前(タイトル)だって思ってたから」

 顔を引きつらせたノリは、正直有り得ない、と思っていた為、太い眉がぴくりと動き、きりっとした目が更に細くなっていた。

「同じくだよ。……どーも、あの世界での事は記憶の奥底に押し込めておきたい気が……」
「はは、でっかいずーたいしてるのに、気がちっちゃいんだから、テッチは!」

 ケタケタと笑うジュンと対照的に青ざめる巨漢とも言えるテッチ。


 そんな皆を、笑顔で見ているのは、どよめきの原因を作った少女。

 髪は この中でもノリに次ぐ短めの長さ、そして、顔立ちは 整っている、幼さが残っているが、ランダムアバター生成をしているのにも関わらず、所謂《アタリ》と言えるアバター、つまりは美少女。……少しボーイッシュな感じも含まれていた。

 でも 声色は高く、ちょっと一致していない様な気もするが、それはご愛嬌だろう。


 いや、十分に魅力的だと思える。美女と美少女の狭間、だと言えるから。


 そして、空気を、仮想世界の空気をたっぷりと含んだ後、そう答えた真意を告げた。

「だって、あの世界の《お日様》……とてもぽかぽかとして、とても気持ちよかったんですよ? これって、何よりも大切な要素(ファクター)じゃないですか? ……うんうん。限りなく現実の太陽(それ)に似せたって私、確信しちゃいましたし! ……本当、とっても気持ちよかったんですっ。お日様の下で、目を瞑ってたら、私。いつの間にか、眠っちゃってましたから。あはは……、皆に、迷惑かけちゃった事も、ありましたよね……? ほんとに、気持ちよかったので……ごめんなさい……」

 両手をいっぱいに広げて力説をする彼女。

 そして、最後は 少し恥ずかしかったのか、その透き通った透肌が、淡く朱く染まり、頭をゆっくりと下げた。その後は 髪をかき分けながら、この仮想世界でも空高くで輝いている太陽の光に手を伸ばしていた……。天窓から降り注ぐ太陽光をまるで掴み取るかの様に……。


 その言葉を聞いて一瞬ぽかんとしていた面々だが、直ぐに皆の表情は崩れた。


 く、くっ、とお腹を押さえる者。
 微笑ましいと表情を緩める者。

 其々の反応だったが、同じなのは、皆が笑顔だと言う事だ。今日一番の笑顔、なのかもしれない。……笑顔の質が、更に一段階上がった、と思えるほどの笑顔だから。

 言うなら、太陽の様に暖かく、輝いている笑顔。

「いやー、だつぼーだわ。さーすがだねー? それに、自分のHNそのもの(・・・・・・・・・)だしかな? やっぱり愛してるんだ? お日様をさっ?」
「あっははー、そうだね! でも確かにボクもそう思った!! あの世界で日向ぼっこしてる所、何度も見てるしね~? 見てるだけでも気持ち良さそうだったし! まっ、かく言うボクも同感なんだけどね~」
「ふふふ、そうね。あの姿を見たら私も同感よ。ま、まぁ 姿形はとりあえず置いといて……ね?」
「まぁ、昆虫だしなー雨に比べたらやっぱ太陽浴びた方が良いんだろ? 気持ちいいしっ!」
「ワタクシもその一点には同意しますね。本当に気持ちよかったです」
「あの世界で僕は、木にしがみ付きながら、太陽の光は浴びてたっけなぁ」
「太陽……、それは盲点だったねー。うん、空を飛び回って 蝶蝶として 蜜をお腹いっぱい吸って楽しんでたけどー…… 確かにっ!」

 一斉に7人が一斉に沸いた。
 その中で、一歩離れた位置で皆を見て笑っていた長髪の彼女は、ゆっくりと笑顔で 太陽が好きと言った彼女に一歩近づく。

「ふふふ……」
「あはは……」

 互いに顔を見合わせ、残りのメンバーを見守りながら微笑んでいた。

 唯一、感想を答えていないのだが、全てをこの少女に持って行かれてしまったから、もう言うのを忘れてしまったのだろう。いや、他に目を向けられてしまった。





 《虫》の話題から 《太陽》へと。




 そして、まだまだ、笑い声が絶えなかったメンバー達から少し離れて、その彼女と話をした。

「……それで、何か、思い出したことはありますか?」

 表情を落としながらそう聞いた。その彼女はシウネー同様、いや シウネーの淡い水色の髪より、少しだけ濃い蒼色の髪を持った少女《ラン》


 心配をしているのは、太陽を愛して止まない彼女とは、この仮想世界で出会ったのではなく、現実世界で出会い、そしてこの世界ででも共に暮らしている。と言えるのだ。このメンバー達の中でも、1人を除けば、一番長い付き合いだと言えるだろう。

 その言葉を訊いた彼女は、笑顔を向けた。

「いーえ! なんにも。……でも、気にしないでくださいね? ランさん」

 ひと呼吸置くと、この世界の空を眺めながら、思いの丈を伝えた。

「だって、私は、今がとても楽しいんですよ。……2人に会えて、そして皆にも会えて。……ランさんが作ったこの《スリーピングナイツ》の皆に会えて、私も一員にしてくれて……。とても……楽しいんです。以前の私の事が判らなくても、これから先を作っていけば良い、って思えるんですから。うんっ、まだまだ、私達の未来は判りません。でも、その未来も、そしてその先も……皆といれば、きっと光り輝いている、って思えるんです。スリーピング・ナイツは、永遠ですよっ」

 その言葉を訊いた途端、目頭が熱くなる感覚がした。感情をこの世界ででは、隠す事は出来ない。だからこそ、目には、涙が溜まっていた。 それをゆっくりと拭い、少女ランは、話を続けた。

「……私の方こそ、会えて、本当に嬉しかったです。初めて出会ったあの日から、ずっと……力を、わ、私達は、本当に、沢山貰いましたから。……ふふ、だから もう 何度言っても言い切れない程ですよ? ……初めて会ったあの時の、あなたの笑顔(・・)に、私は、私たちは救われたんです。暗くなっていた。眠り続けるだけだったかもしれないのに、立ち上がる事が出来た。眠れる騎士(スリーピングナイツ)になれた。それも、全部……」
「あはははっ、それは大げさですよ? ただ、私は……初めて出会ったあの場所ででも、わたし、日向ぼっこをしていただけなんですから。……そこに、彼女が来たんです。……ふふ、今でも鮮明に思い出せます。……だって、話をしてみて、太陽に負けないくらい、輝いてる笑顔を見せてくれたんですから」

 そう言って肩を数度叩いた。



 彼女(・・)は、ある時期からの記憶が欠落している。話によればそれは事故でだったとの事だった。そして……更に追い打ちをかける様な事態にも見舞われたけれど、今のその言葉には嘘偽りはない。



――……今がとても楽しいんだから。素敵な人たちに囲まれているんだから。



 でも、心の片隅にひっかかりがあるのは事実で、その事は何も言わなかった。皆に不安を与える訳にはいかないから。

「それにですよ? ランさん。何よりも……私、《ユウキ》を見てると、どーしても、落ち込んでられませんし。ふふ、ほんとに色々と面倒見なきゃですからね?」
「ぷっ あ、あははっ……、それ同感ですよ。私もですから。んーと、不詳な妹ですが、これからもよろしくお願いします」

 ちょこん、と頭を下げた少女ラン。そして……返ってくる返事も想像通り、全く変わらないもの。

「はいはいっ! 任されました! いーえ、ユウキの事なら、寧ろ喜んでっ!」

 2人ともが大好きなのだから。

「「ぷっ! あははは!!」」

 最後には、堪えきれなくなって、思わず笑ってしまう。


 妹――……そう、《ラン》と呼ばれる少女と《ユウキ》と呼ばれる少女の2人は姉妹なのだ。


 彼女は、メンバーの内でもランとユウキが1番長く時を共にしている。
 姉妹であるから、生まれた時から一緒である双子。出会った時も一緒だったから。皆仲良しだし、順番なんてあまり関係無いのだけれど。

 

 そして、話題は ランとユウキの話になった。



「それにしても、以前のVR世界でも思いましたが……やっぱり、お2人が一番光輝いてましたよ? そのー、所謂、技術面だけじゃなくって、2人の息もぴったりで、流石は双子っ! って思っちゃいました。それも~一度や二度じゃないですよ」
「あはは……、それ程でも無いですよぉ。でも、二卵性ですから、あまり似てませんけどね? 性格とかも。もうちょっと大雑把なのを直してくれたらいいんですが……」
「あはっ! ほんと、お姉ちゃんは悩みがつきませんね。私から言えば、ランさんも、もうちょっと、柔らかくなってもいいよーな気がしますっ だってやっぱり、几帳面過ぎって思いますしね~。ユウキとランさん、足して2で割るのが丁度良いかな?」

 ニコっと、片目を瞑ってウインクをしていた。

「う~ん、それはそれはご教授を、ありがとう。……反省しますっ」

 それを言われてしまえば、と苦笑いをしながら頭を掻きながら、軽く頭を下げるラン。でも、それも一瞬だった。

「あはははっ。わたしも沢山教えてもらいたいこと、ありますからっ! これからも、宜しくっ」
「もちろんっ!」




 


 ユウキとラン。





 2人は双子なのに、歳は変わらないのに。――……片方には『さん』を付け、そして、もう片方は呼び捨て。

 ……それは なぜなのか? 疑問だが、愚問でもある事だ。2人と接していたら、自然とこうなっていたのだ。その理由は、2人を見ていたら、接したら判るって思える。




「あーっ! 2人して、ボクの悪口言ってたんだねーっ!?」




 何やら自分の名前が聞こえてきて、そしていつの間にか、離れた位置で笑ってる2人を見て頬を膨らませながら近づいてくる少女《ユウキ》

 飛ぶ様に走ってきていたから、その紺色の長い髪が靡いていた。

 優雅に着地すると、ユウキは、2人の前で、両手を腰に当てて、頬を膨らませていた。

 それを見た2人は、また 笑顔になった。

「そんな事、ないよー?」
「そーそー、ただ、私達は、ほんと、ユウキは世話が焼けるって言っただけよ?」

 絶やさない笑顔。
 だけど、ユウキにとっては、やっぱり 別だった。





「もーーっ!! 姉ちゃんっ! それに……」






 これは、彼女(・・)の物語の中でも、一際輝いていた時の記憶。いや、……輝きを、取り戻していた時(・・・・・・・・)の記憶。

 いつも、太陽の様に明るかった訳ではない。

 苦しかった時もあった。

 それは例えるとするならば、――……光から、闇の底にまで叩き落とされた。

 絶望をしかけた時だって、もちろんある。

 だけど……、そんな時 太陽を見ていたら、光を浴び続ければ……、闇に光が射す様に 心も変わる事が出来た。

 太陽と自分自身。

 何か、思い入れがあるのだろう、記憶の源泉、――深層域では きっと 何か(・・)を、覚えているのだろう。


 毎日 太陽の光を求めて……、闇から、再び立ち上がる事が出来た。

 そして、出会ったかけがえのない仲間達。一緒にいる時間が、彼女の中の闇を完全に拭ってくれた。自分自身と言う存在を肯定してくれた。


 太陽の光、温かみ。それ以外は空っぽだった心に、思い出に残してくれた物語。









――そして、これは誰もが知る由もない事だが……、とある世界(・・・・・)では、死を、避けられなかった。


 だが、決して絶望をした訳ではない。定められた運命のままに、それでいても、生まれた事に感謝し、出会いの全てに感謝をし、………死を、受け入れたのだ。




 だが、この世界(・・・・)では違う。








 そんな未来を、変えた少女の物語なのだから。

 


 




――……沢山、残してくれた彼女の……、物語の始まりにして、終わりでもある物語。
 
 





 受け継がれていく意思、そして紡ぎ、繋がっていく物語。それはまるで、芽吹き無限の世界を生み続けていく。



 まるで、《世界の種子(ザ・シード)》の様に。













 今日も……、この世界の何処かで鐘の音がなる。この高く、高く……広い晴天に鳴り響く鐘の音。




 この物語の鐘の音を次に託す為の……鐘の音。























「《サニー》もっ! 僕だって、しっかりする時はするんだからねっ!? 僕だって、姉ちゃんにだって、負けないんだからねーーっ!!」



























 それは、笑顔が絶えない仲間たちと、《太陽》の名を持つ少女。


 皆で紡いだ輪……――スリーピング・ナイツの物語。



 
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