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Blue Rose

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第四話 変化の兆しその七

 中央には見事な脚が隠されている木製の机がありだ、その席に白衣を着た八割方白髪になった髪の毛を右で七三分けにして眼鏡をかけた穏やかな顔立ちの紳士がいた。
 その彼とだ、黒髪をオールバックにさせた白衣の男レントゲン科の主任先生がいた。彼は院長の傍に立っていた。
 二人は優子が部屋に入るとだ、すぐにこう言って来た。
「これからお話することですが」
「蓮見先生にです」
 深刻な口調での言葉だった。
「大事なお話なので」
「他言しないで頂けますか」
「?」
 優子は二人の言葉にだ、妙なものを感じた。
 しかしだ、その感情を隠して二人に尋ね返した。
「どういうことでしょうか」
「かなり深刻なお話です」
「先生ご自身のことではないですが」
 それでもというのだ。
「先生に深く関わるお話です」
「そうしたものです」
「と、いいますと」
 そう聞いてだ、優子はまた言った。
「私の家族のことですか」
「はい」
 院長は穏やかだが深刻な顔で優子に答えた、自分の前に来た彼女に対して。
「そうです」
「弟のことで何か」
「弟さんは八条学園高等部に通っておられますね」
「そうですが」
「先日高等部で健康診断が行われて」
「まさか」
 ここまで聞いてだ、すぐにだった。
 優子は察してだ、こう言った。
「あのレントゲン写真は」
「お気付きですか」
「身体が男性から女性になろうとしている」
「その写真がです」
「優花、いえ弟のものだったのですか」
 優子は驚愕の顔で言った。
「そうだったのですか」
「その通りです」
 院長は沈痛な顔で優子に答えた。
「弟さんはです」
「身体が変わってですか」
「女性になろうとしています」 
 まさにというのだ。
「そうなっています」
「そんなことが」
「信じられないですね」
「事例としてあることはわかっていましたが」
「それがですね」
「弟がそうなるとは、しかし」
 それでもとだ、優子はその整った知的で男性的なものも見える顔を蒼白にさせて院長に言葉を選びながら返した、
「それはです」
「信じられませんか」
「とても、ですが」
「思い当たるふしはですね」
「ありました」
 優花の状況を思い出しながらの言葉だ。
「確かに」
「やはりそうですか」
「声が高くなっていてです」
 そしてと言った優子だった。
「身体つきもです」
「女性的なものにですね」
「なってきていました」
「やはりそうでしたか」
「では弟は」
「今は男性でもです」
 それでもというのだ。 
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