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ほね・骨 ・Bone!!~【30万人の骸骨が、異世界に移住した結果がこの有様だよ!】

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プロローグ③「夢終わる時」

円卓を間に挟んで殺し合いを開始した軽戦士とワルキュラ。
最初に先手を打ったのは……当然、優れた遠距離攻撃を持つワルキュラだった。

地獄矢(ブラックアロー)!」

膨大なMP任せに魔法の矢を数千。それを全て前方へと高速で解き放つ。
三つ浴びれば、軽戦士が死ぬ事間違いなし。
だが、彼には大勢の味方が居た。

「やらせないよ!!正義剣(シャイニングセイバー)!」
「分身手裏剣!」
「聖なる盾!」

次々と階段を降りてやってきたプレイヤー達。彼らはワルキュラ目掛けて、遠距離攻撃を仕掛けてきた。
だが悲しい事かな。
現実の殺し合いでも先手攻撃をした方が有利。
この状況での参戦は『自殺しに来ました!』と言ってるも同然。
プレイヤーの攻撃は地獄矢の雨に飲み込まれ消滅。
真っ黒な地獄矢はそのまま突き進み、彼らは人生を終える事になった。

「ちっ!」

その中、軽戦士だけが背を低くして地獄矢の雨を回避。一直線に突き進む。
先頭切って闘う猛者なだけあって、天才剣士としか言いようがない器用な動きだ。

加速(ブースト)!」

更に軽戦士は魔法で動きを加速し、まるで疾風のように道を進む。
だが、ワルキュラはニヤリッと不敵に笑っている。

(回避されるなら、回避できない攻撃を放てば良いだけだ)

そんな大破壊は小破壊を兼ねる的な発想にぴったりの魔法がある。

「混沌渦(カオス・ワールド)!」

絶対に回避できない最強最悪の混沌属性魔法。それが軽戦士がいる空間に炸裂する。
混沌の世界が広がり、一度でも浴びれば複数の状態異常が発生して行動不能になる。
無論、威力も高いから、軽戦士なら一撃で死亡だ。
だが、彼はこの展開を先読みしていたらしく、直撃する僅かな間に

「シャドウステップ!」

一気に空間を小距離転移して、ワルキュラのすぐ目の前に出現。光る剣を素早く突き刺した。
骨で構成された胴体を貫かれても、感覚細胞がないタイプのアンデッドだから痛みはない。
軽戦士はLv千。ワルキュラはLv1万。この差を通常の武器で覆す事は不可能だ。
絶望的なステータスの壁がある。そう、普通に考えたらなら……そうなるはずだった。

「ふん、魔法使いに近接戦闘を挑めば勝てると思ったか?
レベル差が違うのだ。すぐに殺してや――」

この瞬間、ワルキュラは異変に気づいた。
自分のHPゲージが一気に削れてゼロになっている。
それは二度と動かない骸骨になる事を意味する。

「ま、まさかっ……!これは超超レア課金ガチャアイテムっ……!」

軽戦士が輝きを失った剣から手を離し、馬鹿にしたような顔で嘲笑してきた。

「そうだ!この剣はエターナル・フォース・ソードっ!
絶対の死を齎す代わりに、一度使えば消滅する魔剣だ!
俺はこの剣を得るために百万円払ったんだぞ!夏のボーナス全部注ぎ込んでな!」

「なるほど……貴様らにも切り札があったという訳か……油断した俺が馬鹿だったな……」

だが、HPゼロになったといえども、ワルキュラはエンシェント・リッチ。
全身の魔力が抜けて死に至るには、あと三分ほどかかる。軽戦士とやり取りする余裕はあった。
軽戦士は己の仕事を全てやり遂げたという達成感とともに、目の前の汚物(ワルキュラ)を吐き捨てるような目線で見下してくる。

「お前は史上最悪の犯罪者『鳳凰院』に加担したクズとして、歴史に名前が残ると思うぜ?
なんで……貴様は大人しく自殺しなかったんだ?
そうすれば大勢の人が死なずに済んだのにっ……!」

「ふん、犯罪者の汚名だと?
そんなものは……全てどうでも良い事だ……」

「うるせぇ!人生の最後くらい被害者に謝罪しろよ!
お前らが必死に反抗するせいで、俺の友達も恋人も全部死んだんだ!
さっさと自殺していれば良かったのに!」

それはあまりにも理不尽すぎる罵倒だ。
ワルキュラだって大切な娘を何人も失った。三十万人居た部下は全て居なくなった。
その上、自身が死んだとなれば……ルビー達の犠牲は全て無駄だったという事になる。

(何のために……彼女達は死んだ……?)

目の前の男が、ワルキュラには、高校で自分を虐めまくった不良達みたいに思えた。
トラウマが蘇って殺したいほど憎い。だが体が動かない。唯一動くのは口だけ。

(嫌だ。誰かを憎んだまま、この世を去るのは嫌だ)

それは自身が最後まで人生の敗北者の証だった事に他ならない。
苛められっ子のまま終わるのは嫌だ。
好きな娘を守れずに、二度も死ぬなんて真っ平だ。
せめて、死ぬならば、死ぬならば、死ぬならば、好きな女の胸に抱かれて逝きたい。

「……妹が生きていれば……あの不良達と会わなければ……あの高校に入学しなければ……こんな結末を迎えずに済んだのかっ……?
ルビー……プラチナ……アトリ師匠……ラーラ……クレア……お前達と過ごした日々は……輝いていて美しかった……」

「被害者に懺悔して死ね!このクズ!
何、女の名前を言ってるんだよ!」

軽戦士がワルキュラの身体を蹴り飛ばした。床に倒れた衝撃で、身体を構成する膨大な骨がバラバラになる。

「俺の魂を……お前たちの所へと導いてくれ……。
もう虐められるのは嫌だ……何かを手に入れても失う人生なんて……辛いだけだ……」

ワルキュラはもう周りの事を何も聞いていない。
現実逃避して、最後は妄想の世界へと逃げてしまった。

(……今度こそ……皆と一緒に生きたかった……)

眼窩から赤い光が消え、ワルキュラを構成する骨は、死んだ骨になった。
彼の意識は闇に消える。
これで勝利の栄光はプレイヤーのもの。地球へ帰れる――はずがない。

『残念でした。ワルキュラ大魔王が死ぬ前に、制限時間が一秒過ぎてしまいました』

そのアナウンスが聞こえた直後に軽戦士の頭が爆発した。
いや、彼だけじゃない。生き残っている五万人のプレイヤー全ての頭が吹き飛び、全員が無残な遺体に変貌する。
強制ゲームオーバー。大魔王側は全滅したが逆転大勝利。
客観的に見るとこれは『両者痛み分け』つまり引き分けだ。
なんとも救いようがない。最低最悪の結末を迎えてしまった。

『はははははは!
今ここに揃った!108人の大魔王!108万人の人間!一億八百万人のNPC(ホムンクルス)っ!
その全てが揃った!今ここに『世界の敵の敵』と闘う魔王を創造せり!』

鳳凰院の活気あふれる声が全世界に響いたが、聞くものは誰もいない。
ノーライフ・オンライン。生存者ゼロ名で幕を閉じた。
歴史の教科書に、VRMMORPGによる謎の大惨劇として記録される事になる。

『ようやくっ!厄介な子孫どもを殺せる良い手駒が手に入ったぞ!
世界を征服する覇者は私一人だけで良い!』

現時点では読者には意味不明すぎるセリフ。
全てを知っている第三者が、鳳凰院の行動を一行で要約すると、人類が頻繁によく行っている行為になる。

『内ゲバ』もしくは『足の引っ張り合い』
人類の歴史では、結果的に『内ゲバしすぎて好機を失う事が多いから』これを死亡フラグと呼ぶ。




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この話のコメントまとめ+作者の感想

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ワルキュラ「勘違いものがとうとう次回から始まるよ!
ハーレムハーレム・・・俺、骨だからエッチィ事ができない・・・うわぁーん!
ノクターンノベルでどうやって活躍すれば良いんだ!」


鳳凰院「なぜ、こんな奴になった……?
凶悪な死刑囚だろ・・・?お前・・・・?」
 
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