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通り雨

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4部分:第四章


第四章

 それで俊彦はだ。濡れてそのうえで肩で息をしながら理恵に言ったのだ。
「普通はね」
「普通じゃないわよね」
「おホモさんの発展なんて普通ある?」
「あったら怖いわよ」
 はっきりと言い切る理恵だった。
「しかも美少年とか美青年じゃなくて」
「あんなスキンヘッドの三段腹のおじさん達のはね」
「しかもかなりハードだったし」
 悪いことには悪いことが重なっていた。
「あれはちょっと」
「ないわよね」
「そうよ、ないわよ」
「ううん、思い出すと」
 俊彦は実際にその光景を思い出してだ。こう言うのであった。
「吐き気が」
「私も。雨宿りであんなもの見るなんて」
「想定の範囲外だったね」
「想像できないわ」
 それはだ。とてもだというのだった。
「うう、何か私も」
「気分悪くなってきた?」
「だから。気分転換に」
 理恵は言うのだった。
「お茶でも飲みましょう」
「そうだね。丁度喫茶店の前だし」
 俊彦も理恵のその言葉に応える。
「じゃあ中に入ろうか」
「ええ。それにしても」
「それにしても?」
「あんなことがあったのに」
 そのだ。同性愛者の愛し合う姿を見たことに他ならない。
「見て、その元凶の雨」
「あっ、止んでるね」
「そうよ。もう止んでるわ」
 見ればそうなっていた。雨は完全に止みしかもだ。
 空は晴れ渡りだ。綺麗なものだった。それを見て言う二人だった。
「何よ、雨だったらあんなもの見なくて済んだのに」
「あそこで雨宿りしなくてね」
「そうなっていたのに。それなのに雨なんか降って」
「そうだね。何だったのかな」
「嫌な雨だったわ」
 理恵は青空を見上げながら言った。
「最悪よ。最悪の気分よ」
「全く。これも」
「これも?」
「悪戯かな」
 こんなことを言う彼だった。
「雨のね」
「悪質な悪戯ね」
「そうだね。じゃあ中に入ろうか」
「そうしよう。気分転換にね」
 こうして二人は喫茶店の中に入り気分転換に美味しい紅茶を飲むのだった。店の外はもう晴れ渡り雨に濡れたアスファルトが乾きだし雲は空から消えようとしていた。通り雨は何もなかったかの様に終わっていた。


通り雨   完


                 2011・5・23
 
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