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ガールズ&パンツァー SSまとめ 西住みほと角谷杏(暴力シーンあり)

作者:でんのう
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その3

「今まで本当にご迷惑をおかけしました」
 西住みほが深々と頭を下げ、神妙な顔をする。
「えっ、ご迷惑……って?」
「わたしが戦車道をしたことで、会長に色々な……その、口では言えないような事をしてしまいました」
 ふっと目線を逸らし、頬を赤く染める。
 その瞳が、窓の外、遠くの夕暮れの空を見ていた。
「いや、迷惑じゃないから、大丈夫だよ西住ちゃーん。むしろ苦労掛けて、無茶させたのは私……」
「いいえ!」
 強まった彼女の語気に、私はにやけた表情を止める。
「わたしの狂気が会長の心と身体を傷つけ……特に心に、二度と癒えない傷を作ってしまったのは事実です。……ごめんなさい」
 違う、違うんだ。謝らないで。これは傷じゃない。傷じゃないんだ。みほ。
「角谷先輩、全国大会優勝という目的を果たしたこれからは……生徒会長と生徒、同じ戦車道を履修する仲間として、卒業までいっしょに頑張りましょう」
「みほ……」
 嫌だ、今更、なんで……私を置いていくの?
「い……」
「これからもよろしくお願いします。生徒会長」
 にっこりと、何一つ曇りのない笑顔を見せて、夕陽を浴びたみほがまた大きなお辞儀をした。
「それでは、失礼しま……」
「やだぁっ!!!」
 玄関に向かうみほの背中に強くしがみ付く。
「やだ、やだ! 行かないでみほ、行っちゃやだ!! 捨てないで! お願い、おねがいっ!!」
「……会長?」
「やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、みほと一緒がいい! またメチャクチャにしてよ! 乱暴にしてもいいから、殴っても蹴ってもいいから! おねあい、いっぢゃ、やあああああっ!」
 みほの背中に顔を擦り付け、とめどなく流れ落ちる涙で濡らしていく。
「別にお別れするわけじゃないです」
 みほが、短いため息をつく。……違う、違うんだ。
「私の指の爪から髪の毛の一本まで全部みほのものなの! みほに嬲られ犯されるために生きてるの!! お願い、みほ、捨てちゃ、やらあぁっ!」
「……ごめんなさい、みんなわたしのせいなんですね……狂気の」
「あ……」
 しがみついた私の腕を、みほが片方ずつ、ゆっくりと……逆らえない力で、引きはがしていく。
「会長は、大洗女子みんなのものです。わたしが独占してはいけないんです。落ち着いて、よく考えて下さい」
「みほ……」
 また笑顔……戦車の狂気から抜け出した、可愛らしい女の子の顔。
「明日も練習ですから、もう忘れてゆっくり休みましょう。さようなら、会長」
 床にへたり込んだ私に軽く一礼をして、みほは部屋を出て行った。
 がちゃ、ばたん。かつ、かつ、かつ……。
 ドアが閉まる。みほの足音が遠ざかる。
 全てが……終わった。
 
 私は泣き続けた。
 手元にある物すべてを壁に投げつけ、暴れ、大声で叫び続け、転がり回り、床を叩き、みほの名を呼び続けた。
 砕けるガラス、電池の飛んだリモコン、穴の開いた壁、逆くの字に曲がった携帯。
「みほ、みほ、みほ、みほ、みほ、みほ、みほ、みほ、みほみほみほみほみほみほみほぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
 いい子のみほなんか要らない。
 私を睨み、口元を歪ませ凍った視線で心を犯す、瞳と言葉と唇と舌と歯と指と……で痛めつけ、よがり狂わせるあのみほが欲しい。
 全身をみほに侵され、染められ……溶けて混ざり合いたい。一つになりたい。
 日が暮れ、夜空に満天の星が瞬く頃、泣き叫び暴れるのに疲れた私は、這いずり、よろめきながらベランダに向かう。
「『あの』みほのいない世界なんて、やだ」
 もう戻れない、戻りたくない。
 窓を開け、夜風を浴びた私は……いちど部屋の中に戻り、壁に投げつけた携帯を手に取る。
 ヒンジを境目に2つに折れ画面も割れていたが、どうにかメールの操作はできる。
 『ごめんね』
 震える手で、最期の4文字をみほ宛に送る。
 みほに血だまりと肉塊を、ざっくり割れた頭と白い脳漿を、糞便の臭いの漂う内臓を、濁った瞳をさらけ出したい。
 私の死体を見て、泣き叫ぶみほ……いや、光を失った瞳で見下すみほ、唇を歪ませ、歯を剥き出しにするみほ……。
 どんなみほでもいい、私にしか見せないみほを見て……想像しながら、死にたい。
 ベランダのコンクリートに寝転がり、夜空を見上げる。
……ここから飛び降りて、仰向けに落ちて、何秒間あの空を見てられるのかなぁ……
……それとも、飛び降りた瞬間に気絶して、永遠に闇の中か……みほの歪んだ笑顔を、刻み付けよう……
 止まらない嗚咽をこらえもせず、目を閉じ、時間をかけてみほの冷たい声とあの顔、そして痛みを脳裏に焼き付ける。
 行こう。
 震えがくつく膝に力をこめ、ベランダに手を掛けたその時。
 寮に向かって走る、少女の足音が聞こえた。
 制服姿の、短髪の少女が寮の1階の玄関に入ると同時に……インターホンが鳴った。

「会長っ!」
 あは、みほが慌ててる。焦ってる。
 息を切らして、汗いっぱいかいて……ここまで走って来てくれたんだ。
「にしずみ、ちゃん」
「……! どうしたんですかこの部屋? 何があったんですか!?」
「私、死ぬんだ」
 操り人形みたいにゆらりと立ち上がり、ベランダに向かう。
「西住ちゃーん。私が地面に叩き付けられて血を流して頭を割って死んでくとこ見てて欲しいなー」
 涎を垂らし、えへら、えへら、と笑いながら、足を1歩ずつ進める。
 3m、2m、1m……ベランダを超え、私の中の狂った西住ちゃんと一緒に地獄に旅立つまで、あとちょっと。
「ありがとね、にしず……」
 またベランダに手を掛けようとする……後ろから物凄い力で腕を引っ張られ、床に押し倒された。
 ぱんっ! ぱんっ!
 容赦ない平手が、私の両頬を襲う。
「ばかっ!」
 みほの目が吊り上がり口がきっと結ばれ、手先が震えていた。
 涙がつうっと、綺麗な頬を伝う。
「あ、あはっ」
 来た。みほが来た。
 みほの顔を見て、歓びに全身を震わせた私の下半身の力が抜け、熱くなり……フローリングに水たまりをつくった。

 私は服を脱がされ、タオルで顔と下全身を拭き清められ、暴れた時にできた手指の傷の治療を受けてベッドに寝かされていた。
 みほが暗い顔で私の横顔をじっと見つめている。
「なんで、あんな事をしたんですか」
 ああ、この声。みほの低い声、怒りと困惑に満ちたこの声、だいすき。
「……」
「会長、聞こえてますか?」
 いろんな感情が混じったみほの声が、私の耳に飛び込み、脳と身体を揺さぶる。
「……」
 ぶるぶるっ。私は全身に押し寄せる歓喜にこらえきれず、全身を震わせる。
「あの……」
「西住、ちゃん」
「はい」
「ごめん、私もう、普通の西住ちゃんじゃ生きてけないんだ」
「普通の……?」
「戦車乗りの血……狂った西住ちゃんに、身も心もボコボコにされないと、ダメになっちゃった」
「……」
 そっと手を差し出す。さっき私の頬を叩いた手が優しく握り返してくれる。
「ねぇ、みほ……」
「駄目です、もう会長を傷つけたくないんです」
「やだ。お願い」
「……」
 みほの困惑した瞳が、しばらくの間宙をさまよう。
「……」
「お願い」
「……じゃあ、会長が私を……」
 言うなり、みほが制服のリボンを解き、脱ぎ捨て、裸になる。
 みほの体臭……ここまで全力で走ってきた汗の甘酸っぱい匂いが、私の鼻腔を思い切り刺激した。
 ベッドの脇に腰かけ、しなだれてくる。
「犯して下さい」
 眉を曲げ、瞳を潤ませた切ないみほの顔。
 私の中で何かがはじけ飛ぶ。
 身を起こしみほの肩に両手をかけ、身体をベッドに引き倒した。

 そこから先の事は……よく覚えてない。
 みほの唇を貪り、胸を貪り、舐め、吸い、飲み、嗅ぎ、互いの名を何度も呼び合った。
 泣きながらみほを責める私の涙を、舐め取ってくれたような気もした。
 気が付けば、互いの流した液体でひたひたになったシーツの上で抱き合い、みほの胸の中ですすり泣いていた。
「ごめんね、ありがとう、ごめん、ありがと、みほぉ……」
「私も、会長の想いに気付けませんでした、ごめんなさい」
「みほ、あのね、おねがいがあるの」
 顔を上げ……今は穏やかな微笑みを浮かべるみほの目を、じっと見つめる。
「わたしとつながってるとき、かいちょうってよばないで、なまえで、よびすてでよんで」
「え……」
「おねがい、みほ」
 ツインテールを解いた乱れ髪を撫でながら、みほが少し唇を歪ませる。
「いいんですか?、杏」
「あ、あああああ……」
 あんず、あんず、あんず、あんず、あんず、あんず……みほが、名前……あんずで呼んでくれた。
「あは、みほ、み、ほぉ……!!」
 全身が熱くなり、腰が浮き、下半身の感覚が無くなる……また、熱いものが溢れだしてきた。
「杏! ……ベッド、汚れちゃう」
「いーよ、ごめんね。きたなくて」
「杏の出す物、汚いなんて思ってませんから。……そうだ、シャワー浴びます?」
「ん……。こし、ちから、はいんない」
 みほがそっと立ち上がり、ベッドに横たわった私の身体を抱きかかえてくれる。
「えへ、おひめさまだっこ」
 首筋に手を回すと、みほが身をかがめて唇を近づけてくれる。
「んっ……」
 私たちは舌を絡ませ唾液をすすりあい、色々な汁を床にこぼしながら、浴室に向かった。 
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