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没ストーリー倉庫

作者:海戦型
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【スパロボネタ】御使いのいる家

 
前書き
第三次スパロボZ天獄篇をクリアした人にのみ楽しむことが許される選ばれし小説です。 

 
 
 最近、俺こと天竺(てんじく)(みつる)には悩みがある。

 というのも、俺の家に変なのが住み着いたのだ。それも、4人も。

「さあ、朝だよミツル!爽やかな朝を迎える事、それは人として喜ばしいことだ!!」
「……………」

 うるさいのが何か言ってるが無視して寝る。今日は日曜だから寝るのだ。俺は決めたのだ。

「おやおや、惰眠の誘惑が恋しいようだね?まったく、あのテンプティでさえ日曜の朝は欠かさず起きるというのに。日曜だけなのが玉に罅だがね」
「おお!プリキュアシリーズまた映画化するんだ!!楽しくなってきたなぁ♪そうだ、またミツルの財布からお金パクッて見にいっちゃお♪」
「なにぃ!?テンプティ貴様、我等の生活資金をそんなことに浪費していたのか!?アレは我等至高の4人の貴重な生活資金なのだぞ!!ええい、やはりミツルのような下等な者に財布を持たせたままなのが間違いだったのだ!このドクトリンに寄越せ!私が強い怒りを持って管理する!」
「えー!ヤダヤダ!ドクトリンに任せたら楽しい事なんにも出来なくなっちゃうじゃん!別にテンプティたちのお金じゃないんだし楽しい事に使っちゃおうよ~!」
「ああ、また無用な争いが……やはり私達御使いは神に到るには程遠い存在だったのですね。ああ、哀しい……誰も私のことなど理解してくれない……今度こそ仲良く4人でと思った私が愚かでした。その財布は私が預かります」
「えええーーっ!!サクリファイなんかに持たせたら『貴方の為を思って』とかいって変なもの勝手に買うじゃん!!前にミツルに黙って一個20万円の望遠鏡とか買おうとしてたし!!アレ本当に誰の為ものだったの!?」
「なにぃ!?サクリファイ貴様、どうして買い物をする前に我々に相談しないのだ!?」
「だって誰も私の事を分かってくれないんだもの………」
「言わないと分からないだろう!」
「財布ー!!」
「哀しい……」

 ドタバタドタバタ。ぎゃーぎゃーわーわー………。

「――ミツルの前でこれ以上身勝手な真似をするのなら、罰が必要だね」
「ヒッ!?」
「ヌオッ!?」
「ハッ!?」

 その瞬間、俺の部屋にエゲツナイほどの殺意が充満した。

「ミツルのためなら、私は喜んで君たちに罰を与えよう……!」
「ば、馬鹿な!アドヴェント、貴様は我ら御使いの味方では……!?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!ゆ、許してぇ!!」
「わ、私は私なりにミツルの事を考えて……ああっ!?ッアアアアアアアーーーーーー!!」

 直後、アドヴェントの心底嬉しそうな声と残り三名の断末魔の悲鳴が響き渡った。

 数分後。

「ハハハハハッ!!クズニート共が束になったところで一度至高神に到ったこの僕には逆らえないんだよ!!…………ふう。騒がせてすまないね、ミツル。おや、自分で起きたのかい?」
「そりゃあんだけ部屋の中で暴れれば百年の眠りからだって覚めるわアホッ!!いいからその3人連れて部屋から出てけ!着替えるから!!」

 ――この4人が来て以来、俺の生活はいつもこんな感じである。



 = =



 あれはもう数週間も前の事……
 ある日目が覚めると、リビングにあの4人がいた。この時点で意味わかんない。
 変人4人組は、自分たちの事を「御使い」と呼んでいた。これも意味わかんない。
 そして4人は人の家で勝手に話し合った末に我が家に居座ることを決定した。意味わかんない。

 以降、この4人は何故か我が家(一人暮らしのボロアパートの一室)に泊まり込んでいるのである。意味わかんない。

「さあ、今日作ったのは基本的な日本の朝食だよ!朝から栄養の取れた食事を取れることは喜ばしいね!」

 と、言うのは無駄にさわやかアドヴェント。やたら「喜び」に拘ることを除けば、この中では話が通じる奴だ。こんなにさわやか系イケメンのツラしてるくせに一度キレると今朝のようなゲスい部分が露出してしまう恐ろしい奴である。御使いーズ4人の中でもこいつは別格らしく、残り3人はアドヴェントに逆らえない。というか、ぶっちゃけ家で役に立つのがコイツしかいねぇ。

「美味しくない訳じゃないけどさぁ、テンプティはもっと生クリームたっぷりのパフェとかパンケーキ食べたかったなー。ねーねー明日はもっとお洒落なの食べたいー!」

 我儘言いまくってるのは淫乱ピンク……もとい、テンプティ。こいつは見ての通りの享楽主義者でいつも我儘や浪費ばっかりしている嫌な奴である。しかも中身が嫌な奴なのに気が合わない訳じゃないので時々一緒に遊びほうけてしまう。顔は滅茶苦茶可愛いので余計に腹が立つというか、時々こんなのにドキッとしてしまう自分が癪だ。

「貴様に同意する訳ではないが、神に選ばれし我等への供物としては確かに貧相だな……優れた我らが斯様に安っぽい食事を取らねばならんとは、やはり人間とは度し難き存在よ……」
「文句あるなら卵焼きちょうだい~!」
「やるか!!我の供物に勝手に箸をつけるとは不届き千万だ!!」

 テンプティ相手にムキになる眼帯ハゲのドクトリンはとにかく文句が多いハゲだ。いつも何かに怒っているがカルシウム足りてないんだろうか。4人の中で一番ガタイがいい割にはインテリらしく、何故かよくテンプティと言い争っている。相性が悪い割に仲がいいのは根本的に精神年齢が同レベルなんだろうか?

「哀しい……この供物が食卓に並べられるまでに人類はどれほどの生命を弄んできたのか……所詮自分たちも同じレベルの存在であることに気付けない愚かしさを、どうして理解できないのです?」
「人の家のメシかっくらいながら陰気くさいこと言わないでくれる?」
「怒られた……間違ったことは言っていないのに。誰も私の哀しみを分かってくれない……」
「その哀しさを受け止めながら生きるのが人間だよ、サクリファイ」
「はっ……そうでした!わたくしはそんな基本的なことまで忘れて……哀しい……」
(めんどくさっ!)

 この猛烈に相手をするのが面倒くさいのがサクリファイだ。美人な事は美人なんだが、相互理解を唱える割には人の話を聞かずに勝手に悲しむ独善的な御仁である。行動も独善的で、人の話を聞かずに余計な事をしそうになっては誰かに止められており、要するに残念なお姉さん――略して残姉さんだ。上二人と違って悪い人という訳ではなく話せばわかるのだが、非常にもどかしい対話を強いられる。

 総合して言おう。

「お前らいつまで俺ん家に居座る気だ!?いいかげんリビングが狭くてしょうがないんだが!!」

 独り暮らし用の安い部屋がお前らの所為で狭くてしょうがない。夜なんか雑魚寝状態だ。あと床が嫌だからってテンプティは俺のベッドに入ろうとするな、この淫乱ピンクめ。

「ははは、心配はいらないよ。僕たちとて何もせず座して待っている訳ではない」
「それは引っ越してくれると言う意味だよな!?」
「いずれ収入が安定したらこのアパートの権利を買い取って大改築を施し、5人で暮らしても問題ない広さにする予定だ!皆で暮らせるとは喜ばしいな!!」
「買い取らんでいいから出て行けぇぇぇーーーッ!!!」

 アドヴェントの胸ぐらをぐわしっと掴んでグランガランと揺さぶるが、アドヴェントはいつも通り喜ばしいフェイスをするばかりだ。
 もういい加減俺はこの連中と一緒にいる空間にうんざりしているのだ。勉強をすれば暇な奴らが集まってきて、パソコン弄ってると暇な奴らが集まってきて、漫画を読むのもテレビを見るのもこの連中がついてくる。外出してるときもあるが、平均して2人は確実に残っているものだからプライベートという物がないのだ。
 風呂も酷い物で、一人ずつ入ると時間がかかるからと毎度誰かと一緒に風呂に入らせられる。アドヴェントが来ると無駄にスキンシップが多くてホモ臭く、テンプティが来ると正直俺のアーマーマグナムが風呂どころじゃ……もとい、目のやり場に困るのに面白がって視界に入ってこようとする。ドクトリンは風呂の時も愚痴が多くてハゲで筋肉質で暑苦しい。ちなみに残姉さんのサクリファイは全面的に行動が遅いので強制的に風呂入り最後の一人である。

「大体お前ら!何で!!俺の家にいんのッ!?」
「それは僕らにも分からない……あの時僕はZ-BLUEとの戦いに敗北し、世界をヒビキ達に託して因果地平の彼方へと旅立った。ここに僕らがいるのは……ふふ、あの赤い巨人が僕を拒絶したかな?」

 おまえはなにをいっているんだ。まるで平行世界からやってきた麒麟・極の意味ワカメだ。
 しかし残り三人は何やら勝手に納得しているのか頷いている。というかドクトリンとテンプティのテンション下がり具合がヤバイ。そのまま床に沈みそうなレベルである。そこまで落ち込まれると流石に何があったのか気になってくるが、言い出せる空気じゃない。
 どうしたんだろうか。邪気眼系の人に殺されそうになったりしたんだろうか。俺の疑問をよそにアドヴェントは喋る。

「そう、自らが至高神に到るという方法を選んだ僕にとっては当然の末路なのかもしれない。そして僕は天獄にも時獄にも辿り着けないまま永遠とも思える刻を彷徨い……気が付いたらここにいた。それも、消滅したはずの他の御使いと共にね」
「この時、私とアドヴェントは運命のようなものを感じました……そう、人間の人間たる力を喪った我々は、ここを『α』としてやり直す機会を世界に与えられたのではないか……と」

 サクリファイも口を挟む。そういえば最初に来た日、アドヴェント&サクリファイVSテンプティ&ドクトリンの構図で話し合いをしていたのを思い出す。特段仲は良くないが意見は一致しているのか?

「テンプティは前と同じように過ごしたかったんだけど………どっちにしろあの時ほどの力は残ってないし、しょーがないかなって。それに、もうあんな怖い思いしたくないもん」
「我は未だに心底納得した訳ではないが………我等が完全なる存在でないことは、アドヴェントが身を持って証明してしまった。我としては不本意だが、従わざるをえまい……」
「全然分からん」

 俺の理解力が悪いのか?それともこいつらの説明の言葉が圧倒的に足りないのか?

「サクリファイ姉さん、説明よろ」
「低い知能でも理解できるよう時系列順にまとめました」

 さらっとディスられた気がするが、クリップボードを出されたので確認する。


『どっかの並行世界の地球人、オリジン・ロー(すごい力)を発見』
   ↓
『すごい力を制御できる存在になる為、霊子融合(元気玉方式で皆の魂を統合)』
   ↓
『統合された意識が喜怒哀楽の4つの姿に分裂(御使い誕生)』
   ↓
『いずれ高次元(自分たちと同じ場所)に到る存在の先達になる』
   ↓
『人間超えちゃったせいで滅茶苦茶調子に乗り出した御使い』
   ↓
『すごい力を制御するシステムの『至高神ソル』、御使いの傲慢な姿に激おこで自爆』
   ↓
『ソルの破片を集めるためにいろんな並行世界に干渉しまくる過程で仲間割れ発生』
   ↓
『そもそも実は何やら凄い大災厄の発生が迫ってて、乗り越えるにはソルの力が必要』
   ↓
『大災厄の原因は『存在しようとする力』と『消滅しようとする力』のぶつかり合い』
   ↓
『逆説的に『存在しようとする力』を減らせば災厄が遠ざかるので『命』を摘み続ける』
   ↓
『実は大災厄の正体は御使いの一連の行動そのもの。真実を知った並行世界の住民が激おこ』
   ↓
『怒った人の一人が時空振動弾という兵器を使って色んな世界が繋がった『多元宇宙』を造る』
   ↓
『多元宇宙のせいで滅茶苦茶強い人々の力が集結し、御使いに真正面から喧嘩を売る』
   ↓
『ドサマギでアドヴェントが『御使いは不完全なので御使いを越えた至高神になる!』と言い出す』
   ↓
『アドヴェント、ソルの欠片と御使いを強制的に取り込んで全並行世界を支配する『至高神Z』爆誕』
   ↓
『激おこ連合に袋叩きにされて完全敗北。全宇宙、連合の気合で救われる』
   ↓
『アドヴェント、負けを認めてあの世的な所へ旅立つ』
   ↓
『あの世的な所の先住者に入寮を拒否られ、気が付いたらみんなでミツルの家に』←今ここ

 なるほど、分からん。とりあえず俺は悪くねぇ事は分かった。

「アドヴェントと先住者が全ての元凶だということか!!」
「大体あってるねー」
「概ね相違ない」
「貴方たち、自分の責任を棚に上げて……そもそもアドヴェントを仲間外れにした事が全ての始まりでしょう?」
「ふふふふ……ぼっちは喜ばしくないね。黒歴史の再来は心を抉られるよ」

 普段からヘラヘラしているアドヴェントの顔色が蒼い。きっとアドヴェントの心の中ではコウモリみたいなツラの悪魔的存在がオーバーフリーズを発動させているのだろう。まぁこんだけ恥ずかしいことのために大量の人達に迷惑をかけておいてこのザマならそんな顔にもなるか。

「こんな僕だが……裏切る形になった他の3人と共に再びここに出現した時、思ったんだ。これは、御使いの過ちを正すために世界が用意した最後のチャンスなのだろうとね……」
「消滅した三つの意識が再構成されるのは本来起こりえない事……すなわち、奇跡。我々が喪ったもの……では、誰がその奇跡を起こしたのか?」
「テンプティ達は腐ってもまだ御使いだから、起こせることしか起こせない。まして今はオリジン・ローの操作も全盛期の1000分の1以下になっちゃってるもんね」
「つまり、消去法で奇跡を起こした存在は一人に絞られる」

 4人の目線が一カ所に集中し、俺は自分を指さした。

「………俺?」
「そう、つまり僕たちは!!」
「貴方に望まれてこの世界に辿り着いたのです……」
「言うならばぁ……ミツルこそがテンプティ達の新たな『希望(ソル)』!!」
「曲がりなりにも我らの上に立つ存在なのだ。相応しいふるまいをしてもらいたいものだな」

 …………………。

「あの、俺に望まれて来たんなら俺の希望を聞いて別居してくれませんかね?」
「いくら感謝してもしきれない恩人から離れる。それは喜ばしいことではない……」
「始まりの地から我等を押しのけようと言うのか?……憤怒を覚えるな」
「哀しい……貴方には私の胸中が届いていないのですね」
「その……何だかんだでミツルと一緒にいるの楽しいから。ダメ?」

 成程つまり君らはそう言う奴なんだな。
 ソルとかズィーなんとかに散々怒られてるくせに全然傲慢さ直ってねぇじゃねえか。あとテンプティはあざといこと言いながらあざといポーズですり寄ってくるの止めろ。

「もういい!分かった!飯くらいは一緒に喰ってやるからとっとと働いて金稼いで自分の部屋を作りやがれッ!!」
「もちろんさ!」「これも物質世界のさだめ……」「我に働けと言うのか!?」「楽しいことがイイー!」「ほう、二人ともまだ僕の喜びの鉄槌が必要なようだね――」「ぬおおおお!?や、やめろ!貴様がやると洒落にならん!!」「助けてサクリファイ!!」「アドヴェント、我等は今度こそ助け合って……」「助け合う事と甘やかす事は違うよ。その過ちは喜ばしくないね……」

 どたばたどたばた。わーわーぎゃーぎゃー………と目の前で騒ぎ立てる四人に、俺は堪忍袋の緒が切れた。

「何でもいいから……テメェら暴れるんなら外でやらんかドアホ共ぉぉぉぉーーーーーッ!!!」





 拝啓、お父様お母様。家に変なのが住みつきました。



「拝啓で始めたら敬具で〆るのが日本の手紙の習わしだよ、ミツル!」
「貴様、ミツル!手紙の最初には季節の挨拶や時候の挨拶を入れるのが礼儀であろう!ええい貸せ!我が強い怒りとともに書きしたためる!」
「ねーねー、全部絵文字で書いたら面白いと思わない?」
「私達の事をきちんと説明して下さらないのですね……哀しい……」
「うるせぇッ!!手紙くらい自力で書かせろ、っつうかプライバシーを考慮して勝手に覗くんじゃねぇぇぇーーーッ!」
  
 

 
後書き
エーデル「ハブラレルヤされただと……」

御使いが4人そろうとこんな感じで面倒くさいだろうなーという妄想を軽く纏めてみました。ちなみに作者は別にテンプティ好きという訳じゃありません。ティティが死んだときも「コイツ絶対怪しい。後で絶対復活とかしてヒビキを苦しめる要因になるな」と思ってましたので。プレイヤーあるあるだと思います。(いつか泣かせたろうと思っていたので後半のルルーシュの反撃にガッツポーズしました) 
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