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黒を纏う聖堂騎士団員

作者:櫻木可憐
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24.トロデーン城の火事

ククールはそわそわしていました。
なぜかというと一晩がククールを動かしたようです。
何があったのかは、彼を見ればよくわかります。
お赤飯を作ろうとしているククール。
城の厨房乗っとりをされてあわてふためく人々。

「あんたなにしてんの!!」

と、怒鳴るゼシカ。
そりゃお赤飯作りをする法皇なんていませんから。
ゼシカによって追い出された料理人に紛れ、入り込んできた男が一名。
エイトでした。
さすが、元兵士さん。侵入がうまい。
いや、いいのか?

「ククール、お赤飯なんか誰が食べるのさ。」

「そうよ、豆は嫌いよ」

「クロノスと兄貴にだよ!!今日はお赤飯がいる日なんだ!!
だから手伝ってくれ。小麦粉っているの?」

「え、何を作るつもり。
・・・・・・て、えぇぇぇ!!二人にお赤飯だって?」

扉の近くに小麦粉を置くククールを見ながら、意味に気がついたエイトはつい大声をあげました。
お赤飯はお祝いに食べるものです。
実は古くは凶事に使用されていたそうです。
なんだか先走り過ぎなククールですが、エイトもテンションが上がり先走り始めました。

「ごま塩だ!!もち米を小豆の煮汁につけて薄く染めるんだ。
小豆・・・金時豆でもいいけど・・・あと・・・」

「あんたら、なんでそんな発想になるのかしら・・・・・・」

「マルチェロがクロノスの部屋から出てこねぇから・・・・・・
それ以外に理由はないが。」

「マルチェロさんはクロノスが好きなんでしょ?
本人自覚ないんだよな~もったいない。
美人だと思うよ、クロノスは。
ゼシカは可愛いも美人も兼ね備えてるから安心して。」

男装女子は美人と決まっているみたいに言うエイト。
ククールと同一視したい気分になりますが、まあいいでしょう。
呆れかえり、冷たい目を始めたゼシカ。
ククールはマダンテが来ないだけマシか、と言い聞かせました。
食らえばいいのに、マダンテ。

「単純にマルチェロがクロノスの部屋から出なかっただけでしょ?
落ち着きなさいよ・・・・・・」

「だってマルチェロさんがお赤飯みた反応気になって仕方ないし」

「いやいや、祝いは楽しまないと始まらないしな!!
・・・・・・おい、エイト」

ククールがいきなり顔つきを変えました。
かなり真面目な顔つきです。
別にお赤飯作りを真面目にしていなかったわけではありませんよ。
それよりも真面目な顔つきでエイトに言います。

「なんかヤバいぞ。
このまがまがしい気はなんだ!!
ドルマゲスやラプソーン以来だぞ!!」

「え、何も感じないよ。ゼシカは?」

「何か大きな魔力が近づいてくるのは分かるわ」

三人は黙ったまま扉を見つめました。
戦闘体勢はとりませんでしたが、明らかに警戒していました。
エイトは唾を飲んだとき、扉が開きました。
現れたのはクロノスです。
そしてエイトはククールがいうまがまがしい気を初めて理解しました。

「クロノス・・・マルチェロはどうした。」

「と、言うよりマルチェロさんや外の兵士に何をした・・・・・・」

「クロノス・・・なの?」

真っ直ぐに見つめるクロノスを見て、三人は武器に手を触れました。
クロノスがクロノスではない何かを感じたからで、彼女を殺すより防衛本能に近いものでした。
そのせいで三人はクロノスの瞳が朱に変化しているなど気づきませんでした。

「それは歴史が物語り、受け継がれるものであり、人の本質を表している。
平和があれば争いがあり、争いがあれば平和がある。
二つは反したものでありながら、共存してきた。
人は死を望んでいる。
ラプソーンを倒した勇者たちよ、下がれ!!」

ミーティア姫からはどう見えたことでしょう。
厨房の爆破。突然の火事。厨房付近の兵士気絶。
すべてが奇怪に見えたことでしょう。
厨房が火事になることが普通でも、一般人にさえ何かを感じとらせます。
燃える厨房の中、エイトはゼシカを庇いながら頭を働かせます。
四方八方が炎の海で喉や肺があまりの痛さに機能しない中、ゼシカを抱えたまま移動を試みました。
うまく動かない足に苛立ちながら火の中に飛び込めず覚悟を決めました。

(せめて、ゼシカだけでも助けなきゃ・・・・・・
形さえあれば認識されてザオリクもかけてもらえるし。
なーんて、ね。二人で生きなきゃ意味がない!!)

最後の力を振り絞り走り出そうとしたエイトでしたが、無駄な勇気にされてしまいました。
燃える厨房の骨組みをバサバサ薙ぎ倒す二人組が現れたのです。
炎の中で平然とする長身はマルチェロでした。
はやぶさの剣・改の早さを利用して炎すら斬るマルチェロには何故か納得します。
炎すら斬るか、マルチェロは。
もう一人は斧を持つあの人でした。
その例のあの人に持ち上げられたエイトとゼシカは、そのまま気を失いました。

火事の被害者の中でも早く目を覚ましたのはククールでした。
見下すマルチェロが一発目の視界に入りました。
そのあとは燃えた厨房、気を失うエイトとゼシカでした。

「兄貴・・・無事だったのか」

「貴様には借りがある。これで返した。
フッ・・・・・・
それよりこれはエリスだな。
よく考えれば彼女が中にエリスを閉じ込める結界で、それがあの魔法陣で解けるなら、結界が弱まっていてもおかしくない。」

「兄貴はクロノスが好きなんだろ?
わりぃ、助けらんなかった。」

「貴様に期待なんぞはじめからしていない!!
期待より絶望に近いことならしでかす恥さらしが!!」

「いや、今、マイエラ時代の説教かよ!?
つか、お赤飯!!クロノスとマルチェロに作ってたやつ。
あ、マルチェロここにいたら捕まる!!
エイトもだけど」

「火事でそれどころではない。
それと・・・・・・」

ククールは聞き間違いに違いないとその台詞を忘れることにしました。
そしてかつての仲間がいることに気づきました。

「ヤンガス!?」

かつてラプソーンを倒した勇者一行は、こうして再度集まることになりました。
できれば愉快な再会でありたいものでした。
こんな形ではなく、愉快な再会を。 
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