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歌集「春雪花」

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200




 白妙の

  染まりし春の

   訪れも

 君ぞ想いて

   侘びぬれば

 色も褪せにし

    夕暮れに

 眺む山の端

    濃陰の

 迫るや痛む

   心ゆえに

 藍に光りし

     星求め

 届かぬ恋に

    身を焦がし

 掠るる月を

    仰ぎ見て

 虚しく黄昏る

     夢見月かな



 気付けば…降り積もった雪も溶け、春になったのだと感じるものの、彼を想えば何とも寂しく…心の拠り所を探してしまう…。

 夕方にもなれば色褪せたような山波は濃い影を落とし、まるで迫ってくるように感じて胸が締め付けられそうになる…。

 空がうつろい夜が近付けば、そこに掛かる星へと手を伸ばし…彼への想いを吐露する…。

 しかし…言葉は霧散し、想いはこの躯を焼かんと強くなるだけ…。

 山の嶺に薄雲に隠れて見る月は、さながら御簾に隠された貴人のようで…。

 彼との距離も、きっとこのようなものなのだ…。
 歳の差だけでなく…性別さえも厭う身なれば、何故に彼に愛されようか…。

 彼がこの町を出てから一年…再び訪れた春に、ただ一人…黄昏れる…。



 
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