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天空の花嫁 〜ヘンリー姫の冒険〜

作者:むぎちゃ
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流浪の剣士と一人の少年

 私の目の前には一人のおじさんが立っていた。
 後ろでまとめてある黒い髪の毛に、黒い瞳。背はお父さんよりも頭一つ高い。革でできた鎧を着ていて背中には綺麗な作りをした剣を背負っていた。

「ヘンリエッタ。この人がパパス殿だ。ご挨拶しなさい」
「……ヘンリエッタです。よろしくお願いします」

 スカートの裾を両手でつまんでお辞儀をするとおじさんも綺麗なお辞儀を返して笑顔で、

「こちらこそよろしくお願いします。ヘンリエッタ王女」

 と言った。

「…………」
「おやおや。私は嫌われてしまったようですな」

 私がそれっきり黙ってしまったのを、おじさんは嫌われたと思ったらしい。でもそれはただの思い違い。
 別に私はこのおじさんの事を嫌いになったわけじゃない。ただあまり関わって欲しくないの。

「しばらくの間この子のお守りを頼みますぞ」
「わかりました」

 おじさんはお父さんに軽く頭を下げると、私に近づいた。

「さぁ、ヘンリエッタ王女。お部屋への案内を」
「……こっちよ」

 私はパパスを引き連れて自分の部屋の前に案内して、私は部屋に入った。

「失礼しますぞ。ヘンリエッターー」
「残念だけど」

 パパスが何か言おうとしていたのを遮って私は大声で言った。

「貴方と一緒にいたくないの。だから部屋に入らないで頂戴!」

 勢いよく扉を閉めて、鍵を掛ける。
 パパスは何か言っていたけど、返事を返さないでいたら何も言わなくなった。
 恐る恐る鍵を外してちょっぴり扉を開けて外を覗き見たら、パパスは離れたところに一人で立っていた。

「まぁ、当然よね。私はこの国の王女なんだから。下手な事なんてできないわよね!」

 さて、パパスはいなくなったしこの後どうしようかな、暇だなぁ。
 私がそう考えていると、ノックする音が聞こえてきた。

「何よ、パパス」

 何か用でもあるのかしら?
 でも扉の向こうにいたのはパパスじゃなかった。

「僕は父さんじゃないよ」

 男の子の声。
 そういえば父さんが私と同じ年頃の息子がいるって言ってたわね。

「入ってもいい?」

 別に私はパパスに関わって欲しくないだけで、その男の子は別に入ってきてもいい。新しい子分にできるからね。

「入ってきていいわよ」

 返事をすると、男の子は扉を開けて入ってきた。なんか猫(らしき生き物)を連れて。
 紫色のターバンとマントに若草色の服。黒い髪と瞳。パパスと同じように背中には樫の杖を背負っているけど正直似合っていない。
 猫(らしき生き物)は赤い鬣に黄色の毛皮に黒いブチと青い瞳が特徴的。なかなか可愛らしいじゃない。

「それで、あんた誰?」
「僕はリュカ。それでこっちはボロンゴ。僕の大切な友達だよ」
「友達なの?ペットじゃなくて?」

 不思議に思って私は聞いた。
 リュカは笑顔で頷いた。

「うん。友達だよ」

 猫(らしき生き物)が友達って事はこの子友達がいないのかな。でも私はこいつと友達になろうとは思わない。子分にはしてあげようと思うけど。

「ねぇ、友達になろうよ」

 手を前に出してにっこりリュカは笑った。私と友達になれないってちっとも考えてないみたい。
 だから私、こう言ってやった。

「嫌よ」

 すごいはっきりとした声で。

「私が欲しいのは子分なの。友達じゃないわ。あんたが子分になりたいなら子分にしてあげるけれど」
「嫌だ」

 私がさっきリュカに言ったのと同じくらいはっきりした声でリュカは私に言った。

「僕は君と友達になりたいんだ。子分は嫌だけど友達にならなってあげる」

 リュカは真っ直ぐな瞳で私を見ながら、また手を差し出してきた。何よ、こいつ。ああ言ったのにまだ私と友達になろうなんて。
 でも面倒だから私は一つリュカに意地悪をする事にした。

「私の部屋の後ろの部屋に宝箱があるわ。それの中身をとってきなさい」
「中身を取ってきたら友達になってくれるの?」
「いいから早く行きなさい!」
「わ、わかったよ。行こう、ボロンゴ!」

 リュカは嬉しそうな顔をして猫(らしき生き物)を連れて後ろの部屋に入っていった。
 その隙に私は暖炉の中にあった抜け穴を通って下の階に降りた。

「あんな手にあっさり引っかかっちゃって。まだまだ子供ね」

 最初から宝箱に中身なんて入ってないし、暖炉の抜け穴なんてきっと気付かないわ。私がそう思っていると、後ろから声がした。

「ヘンリエッタ!宝箱の中身なかったよ」

 そんな、ありえないわ。だって暖炉の抜け穴は私しかわからないはずなのに。

「何であんたあの抜け穴がわかったの?」

 私がそう聞くとリュカは

「だって暖炉に穴が開いてたからなんだろなって思って中入ったら……」

 暖炉の抜け穴の扉を閉め忘れるなんて、私って馬鹿ね。

「さぁ戻ろうよ、ヘンリエッタ」

 リュカがそう言った瞬間、私は突然口を塞がれた。
 嫌だ!何!離してよ!

「早く王女を連れ出せ!」
「無事に運べば、金がたんまり手に入るぞ!」

 あっという間に私は男達に連れ出された。
 誰か助けて!お父さん、お母さん、トム、パパス、リュカ!助けて!
 私は連れ去られながら、とっても悔しいことに涙を止められなかった。
 
 

 
 
 

 
後書き
椅子の下に隠し階段は描写しずらかったので、暖炉に抜け穴があるに変更。(某小説の影響です)

さて次回は古代の遺跡編になります。 
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