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役職?召喚魔術師ですがなにか?

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おめでとう!犬が狼に(ry

「やっ!」
「ハァッ!」

鉄と鉄のぶつかり合う音が響く。
辺り一体の草原に囲まれ、向かい合う少女二人が火花を散らしていた。
片方は金髪の少女。
その小さな体格に合ったショートソードを構え、対峙する少女に斬りかかる。
もう片方の少女は、紅い甲冑を身に纏い、儚さを感じさせない凛とした雰囲気を持っている。
と言うのも、何処か王宮に携わる騎士としての風評を醸し出すような雰囲気を露にしているため、気難しい性格をして居そうだと思ってしまう。

「後10分~」

そんな刃を交える二人を、遠目に見ているのが俺である。

「はぁ、はぁ、はぁ…せやぁ!」

「甘いです」

「あうっ」

残り時間を気にしてなのか、金髪の少女、アイズ・ヴァレンシュタインが切り込み、それを逆手にとられて打ち負けてしまった。

「休憩だな。
よく持ったと言えばそれまでなんだが、良くやるよ」

そんな言葉を投げ掛けながら、草群に座り込む少女に歩み寄る。
見たところ目立つ傷もなく、ただ疲れているだけなのがわかる。
そこら辺は甲冑の少女、クイーンズ・ナイトの配慮であろう。

「クイーンズ・ナイトもお疲れ、戻っても良いよ」

「はっ。失礼いたします」

クイーンズ・ナイトは姿勢を正した後、光に包まれて消えていった。
ここは異次元空間。
ただただ地平線が広がってはいるが、元々は真っ白な空間だった。
そこへ『草原』を使うことで現状のフィールドになっているのだ。
因みにモンスターが喋ったのはビビった。

「まだ…強くなれない」

「何言ってんだ。1週間でレベル2になったんだろ?
ロキも言ってたじゃねぇか。こんなに早く昇格するのは異例だって」

「でも、あの人に勝てなかった」

「そんな簡単に負けてたら騎士の名が廃るだろ。
それでもエルフの剣士を乗り越えたんだから十分に進歩してる」

「そう、かな…」

あれから一月が経過し、修行結果が良好とのことで継続したモンスターとの戦闘訓練。
ぶっちゃけオラリオのレベルがどの程度なのか解らないため、ならしながらやって来た積もりなのだが、エルフの剣士に一太刀入れたのにクイーンズ・ナイトには勝てないと言うのは不思議だ。
同じ星4のモンスターなのにここまで違うと言うのも困惑の一つとなっている。
まぁ攻守が違うし、そう言うのも要因として含まれるんだろうと納得はしている。

「ほれ、外の時間だともうすぐ昼だ。
一旦外に出て飯にして来い」

「……じゃが丸君がいい」

「好きだな、じゃが丸君…まぁ食ってくればいい」

「一緒に、行く」

「えぇ~…」

何で俺なんか誘うのかはわからないが、目をそらさずにじっと見つめてくるのは堪える。
何か最近ではこのやり取りが多くなってきている節があるが、誰に仕込まれたのだろうか?

「……………わかった。わかったからそんな目で見るな」

「っ…」

おい、その見えないようにガッツポーズするのは止めろ。
何か負けた気分になるから。








「じゃが丸君抹茶クリーム味5個ください」
「あいよ」

お前それクドくなんないのかよ。
同じ味で油製品だぞ…絶対気持ち悪くなりそう。

「…ん?どうした?食べないのか?」

「ん、一つあげる」

「そ、そうか。
ならもらうよ…ハグッ―――」

こ、これは―――!
揚げられたジャガイモの食感の中に広がる濃厚な抹茶の味!
そのトロリとした油と抹茶が繰り広げるハーモニー……味覚の暴力だっ!

「……どう?」

小首をかしげて聞いてくるアイズだが、これは間違いない。
この店のこの商品は、この子がリクエストしたものに違いない!
言わばこの子専用のじゃが丸君…味覚音痴なのか…?

「あ、ああ…ウマイよ…?」

「良かった」

エマージェンシー!エマージェンシー!
アイズさんが徐に袋を漁ってもう一つ取り出そうとしております!
恐らく次の言葉は「もう一つあげる」だと思われます!

「もう「ああ!ヤバイ用事思い出した!」…?」

あっぶねぇぇぇえ!
危うく味覚障害の第一歩を踏み出すところだったぜ!

「これから少し探さなきゃならん物があってな、ちょっと急いでるからまた後でな!」

ダッシュ!ダッシュだ!俺は今、風になる!

「…いっちゃった。
もうちょっと、訓練したいって言いたかったのに…」

その呟きが、タケルに届くことはなかった。



「さて…時間まで何していようか」

アイズから逃走した俺は、人の賑わう大通りを歩いていた。
改めて見てみれば、前世では考えられない光景だと思うものである。
商いをする商人は兎も角として、毎日のように出店されている屋台。
辺りを見渡せば人だけではない多くの種族が往来している。
極めつけはやっぱり―――

「やっと見つけたぞ…」

―――怯えを隠した表情の犬耳男性だろう。

「何処かでお会いしましたか?」

「は?待て待て!俺が分からねぇのかよ!」

「いや、冗談だけど。御礼参りか?」

目の前の犬耳さん。ベート・ローガは返答を聞いたとたんに肩を落とす。
ホッとしたのか落胆したのか良くわからない表現だ。

「アンタに頼みがある」

「頼み、ね。俺としては頼みが長続きしててお腹一杯なんだけど」

「知ってる。アイズの事だろ」

まぁそりゃ知ってるか。
同じファミリアだし、聞かない方が不思議だろう。

「それで、頼みって?」

「俺を、弟子にしてくれ!」

どうやら、最近のマイブームは弟子育成らしい。 
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