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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第七十八話






「ロッタさん、朝ですよ」

「……うぅん……」

 女官の人が私を起こしてくれたみたいね。

 ……まだ眠いなぁ。

「顔を洗えばシャキッとしますよ」

「それもそうね」

 私は服に着替えてトイレに向かう。

 べ、別に着替えシーンが無かったのは私が貧じゃないんだからねッ!!

「どうしましたかロッタさん?」

「……何でもないよ、何でもないのよ……」

 何か虚しかった……。




「あ、御早うロッタ」

「あら御早う蓮華」

 トイレに顔を洗いに行くと蓮華が顔を洗っていた。

「これから皆を起こそうと思うけど、ロッタも来る?」

「えぇいいわよ」

 私は顔を拭くと蓮華と一緒に皆を起こしに行った。




「皆、最近は早起きだね」

 皆の部屋に行くと、皆は既に起きていた。

「ま、それは蓮華のとこのが武官が多いからね」

「え? 呉の武官が?」

「そうよ。思春や明命とかが朝早くから鍛練をしたりしているから戦馬鹿の桜花やクロエ達も早起きをしているのよ」

 蓮華はそうなんだという表情をしている。本当なんだからね。

「ところで最後は誰よ?」

「……もう終わりだよ?」

「嘘をつくのは良くないわよ蓮華」

 私はそう言ってバトルスタッフを蓮華に突きつけた。

「ロ、ロッタ?」

「……まだ長門の部屋には行ってないわよね?」

「え?」

 ヤバいよ、バレてるよ……と顔してるわよ蓮華。特に目の動き方が不自然過ぎるわよ。

「私を除け者にして一人で長門を起こしに行くとは中々蓮華も抜け目無いわね」

「……………」

 私の言葉に蓮華は何も言い返せないのか無言だったわ。

「じゃ、行くわよ」

「はい……」

 蓮華は観念したように頷いたけど、蓮華も本気に長門の事を……?



『こ、この腐れチ○コがァァァーーーッ!!』

「……今の声って……」

「……詠ね。何か長門がしたのかしら?」




――長門の部屋――

「どうしたのよ詠……ってェッ!?」

「な、何をしてんのよッ!!」

 私達が長門の部屋に入ると、そこにはメイド服を着て顔を赤くした詠ちゃんと月ちゃん、そしてベッドには裸で気絶している長門と正座をして床に座っている桜花と夏蓮さんがいた。

「あ、朝起こしに来たらこの腐れチ○コと桜花達が裸で寝ていたのよッ!! 月は顔を赤くして動けないしどうしてくれんのよッ!!」

 詠、説明ありがとうね……そうだ、そうだったこの二人もいたんだわ。

 ……すっかり忘れてたわね……。

「ぐ……」

「あ、大丈夫長門?」

 そこへ長門が目を覚ました。

「あんたねぇ」

 私は溜め息を吐いた。

「言っておくけど、俺から迫ったのと違うからな。コイツらが昨日の夜中に俺の寝台に来たんだ。しかも酒を飲んでいて、理由はどっちの中が気持ちイイかだと」

 ……な、中はなんの事か聞かないわよ?

 聞いたら十八禁に移動しないといけないからね。

「だからっては、裸で寝る事はないでしょッ!!」

「え、詠ちゃん。私は大丈夫だからね。少しビックリしただけだから」

 月ちゃんが詠を抑える。

「悪かったよ詠。お詫びに何か昼飯でも御馳走するからな。それでいいだろ詠?」

「……分かったわよ」

 長門の言葉に詠は渋々と頷いた。

 ……取りあえず今は言える事はただ一つだね。

 先越されたーーーッ!!

「……ねぇ蓮華、今日は飲まない?」

「……そうねロッタ。昼からでも構わないわよ」

 今日はまだ朝なのに負けた気分だよ……。








「母上、蒲公英ッ!! このまま逃げるぞッ!!」

 三人の女性が馬に乗って懸命に逃げていた。

 三人が逃げていく後ろには、燃えている陣があった。

 その陣は今や曹の旗を掲げる軍勢によって踏み荒らされていた。

「韓遂の野郎め、裏切りやがってッ!!」

 馬謄の娘である馬超はそう捨て台詞を吐いた。

 彼女達涼州は、遂に進軍を開始した曹操軍を追い返そうと馬謄を大将に、韓遂を軍師にした約十万の大軍で曹操軍と潼関で戦っていた。

 しかし、曹操軍の武将は不足していたため、馬超率いる部隊に連戦連敗をしていた。

 そこで曹操軍の軍師である荀イクは涼州軍内で離間の策を曹操に具申。

 曹操もこれを了承して馬謄達と韓遂の仲を引き裂いた。

 これに対して涼州軍内での立場が危うくなった韓遂は単独で曹操軍に降伏を申し入れた。

 曹操は涼州軍を混乱すれば降伏を受諾すると回答して韓遂は早速陣内に火を放って涼州軍を攻撃したのだ。

 馬謄達は必死に応戦をしたが、陣内に曹操軍も侵入したため多勢に無勢であった。

 馬謄達はやむを得ず陣内を脱出したのである。

「恐らく涼州へは帰れないね」

「叔母様、これからどうするの?」

 擦り傷だらけの馬岱が馬謄に聞いた。

「……そうだねぇ……」

「早いとこ決めないと曹操軍も追ってくるからな」

 馬超は懐から竹の水筒を出して水を飲む。

「此処からだと漢中の張魯か蜀へ侵攻中の劉備くらいかな?」

 馬岱は思い出すかのように言う。

「……いや、張魯は曹操に攻められるだろう」

「なら劉備か?私はあの天の御遣いとか言うのが気にくわないんだけどな……」

 馬超は自分の槍である十文字槍『銀閃』を持って辺りを警戒する。

「……一つだけ私達を受け入れてくれる場所がある」

「え? 何処なの叔母様?」

「本当か母上?」

 馬岱と馬超は半信半疑だった。

「……袁術軍のところだよ」

「「ッ!?」」

 二人は馬謄の言葉に驚いた。

「ほ、本気なのか母上?」

「あぁ私は本気だよ。今の状況からして私達を本気で受け入れてくれるのは袁術軍だろうな。漢中だとまた曹操軍と戦うし、劉備だと……頭がねぇ。あれは翠より悪いかもね」

「脳筋の翠姉様より酷いの?」

「誰が脳筋だッ!!」

 馬岱の言葉に馬超が怒る。

「冗談だよ姉様……」

「そう言って何で視線を剃らすんだよ?」

 馬超はそう言って銀閃を馬岱に突きつける。

「き、気のせいだよ……」

「……馬鹿やってる暇は無いよ」

 馬謄は溜め息を吐いた。

「さ、早いところ建業に向かうよ」

「何で建業なんだ?」

「南陽だと曹操軍に侵略されやすいんだよ姉様。本当脳筋なんだから……」

「……そんなに私の銀閃の餌食になりたいようだな蒲公英?」

「……ほら早く行くよ」

 馬謄は再び溜め息を吐いた。

 そして三人は建業を目指したのであった。







 
 

 
後書き
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