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中の人

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1部分:第一章


第一章

                           中の人
 とにかくだ。印象的な役だった。
「クールだよな」
「それで知的でな」
「もう参謀か?」
「いつも落ち着いていて的確な判断を下す」
「凄い役だよな」
 ある学園ドラマの役の一つでだ。眼鏡をかけていつも冷静な知的な役があった。その役を見てだ。視聴者達はこう言うのだった。
「ああした役って難しいぜ」
「感情を出さないのはかえってな」
「知力って内面から出るものだしな」
「演じていてもそれをちゃんと出してるしな」
 ネットや巷でだ。こう話されていく。
「じゃあ演じている人もか」
「かなり知的で冷静な人なんだな」
「そうだろ。だからああいう役できるんだよ」
「まだ高校生なのに凄いな」
「本当にな」
 こう話すのだった。彼等もだ。
 そしてその演じている女優、まだ高校生の彼女についてだ。自然に注目が至った。
「羽生実里っていうのか」
「大人びた美人だよな」
「高校生とは思えないよな」
「ああ、大学生みたいだよな」
 その写真、ドラマや所属事務所の写真まで観られる。
「ええと、趣味は読書に料理」
「それにドラマ鑑賞」
「勉強家なんだな」
 プロフィールの趣味の欄からこう判断された。
「じゃあやっぱり実際にか」
「凄い知的な娘か」
「一回トークとか聞いてみたいよな」
「どんな知的な娘なんだろうな」
 誰もがそう思っていた。そうしてだ。
 その彼女、羽生実里の容姿がさらによく観られる。観ればだ。
 高校生離れした落ち着いた佇まい、全てがバランスよく整った顔立ち、唇は薄いポン苦だ。奇麗な眉に流麗な二重の目、奇麗な黒髪を丁寧に伸ばしている。スタイルもよくすらりとした身体であり脚が特に奇麗だ。短いスカートがよく似合う。
 全体的に確かに知的だ。それを観てファン達は思うのだった。
「一回本当にな」
「会いたいよな」
「この薄い緩やかなカーブの眉が余計にいいよな」
「知的美人って感じでな」
「しかもスタイル本当にいいしな」
「高校生に見えないって」
「どんだけ奇麗なんだよ」
 褒め言葉が続く。
「高校はあの高校か」
「そうそう、芸能科のあるな」
「絶対に大学行けるよな。頭いいんだし」
「名門大学も出てだよな」
「才媛女優か」
「俺余計に好きになりそうだよ」
「俺もだよ」
 彼等は確信していた。実里が役柄と同じく知的な女優だとだ。そう確信していたのだ。
 そしてだった。遂にだ。彼等の夢が適った。
「トークショー決まったぜ」
「ああ、あのドラマの俳優陣でだろ」
「メインヒロインと同じだけ目立ってたしやっぱり出て来るんだな」
「さあ、いよいよどんな人かな」
「観られるな」
「教授みたいな美人だろうな」
 またこんな話が出る。
「仇名がここで決まるぜ。教授だよ」
「いや、先生でいいだろ」
 とにかく知的だと思われていた。
「タイトスカートも似合うしな」
「それかキャリアウーマン」
「どっちにしろ絶対に凄い頭いいって」
「そうだよな」
 彼等はまだ夢を見ていた。しかしだ。
 その彼等は気付かなかった。彼女が出ているドラマではスタッフも共演者達も彼女がどういった人間か書いていることに。誰も気付かなかった。
 何はともあれそのトークショーがはじまった。俳優陣の三番目でだ。彼女が出るとだ。
 
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