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RSリベリオン・セイヴァ―

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RSリベリオン・セイヴァ―外伝SHADOW 三話「その名は飛影」

 
前書き
少し展開が遅いです。次から本格的に書かないと……汗 

 
エリア14のガラクタ置場にて

「玄弖の奴、今頃上手くやってるだろうか?」
大剛は、先ほどから心配げな顔をし続けている。彼は、玄弖が自分と同じおっちょこちょいな性質ゆえに何か事件に巻き込まれていないか不安でいた。
「仕方ないさ? 後は、なるようになれってだけだ」
と、隣で弾が言う。
「そういや、弾って……もとは外の世界の人間なんだろ?」
「ああ……嫌なところだったぜ?」
「あ、気に障ること言ったか?」
つい口下手だからと、大剛は詫びるが弾は全く気にしていない。
「別に? もう、こんなところで住んじまえばどうでもよくなったぜ? それに、お前と玄弖がKYな癖は今に始まったことじゃないだろ?」
「はは……まぁ、確かに?」
苦笑いする大剛だが、そんな彼が適当な手探りをしていると、何やら指先に固いケースのような物体が当たった。
「ん?」
「どうした、大剛?」
「こいつは……当たりか?」
「マジ!?」
二人は犬かきのように両手でせっせと邪魔なガラクタを退かし始めた。
「これは……?」
退かし終えた先には、二つのケースが発見される。玄弖の件で二人は思いだす。
「これ……例のケースとそっくりだよな?」
「絶対、何か入っているパターンだよな?」
「「……」」
二人は黙ったまま、その二つのケースは掘り出した。
「でも……」
大剛は唾を飲み込む。
「見るだけなら……」
と、弾もそのケースへそれぞれ手を付けた。そして、恐る恐るそのケースを開けてしまった……

必死で彼を揺さぶる箒は、すぐに彼を担いで医務室へ向かった。
「玄弖……いったい、どうしたというのだ?」
ベッドへ寝かされた玄弖を心配げに見つめる箒は、しばらく彼の看病を続けていた。
――あの武器、まるで一夏や狼達のISと同じ……
そう、まるで体に装甲が取り付けられているわけでもなく、丸腰の体に剣や斧、槍と言った近接武器を持たせた、そんな印象のISである。
「入ってもいいか?」
医務室へ、玄弖の噂を聞き付けてある来客が訪れた。
「ヴォルフさん……?」
箒は、医務室へ入ってくる来客ことヴォルフを見た。彼女は、ヴォルフに対して彼を立派な武人として慕っているため、狼達と話す時とは違う態度を出すようになった。
「篠ノ之、彼が例の青年か?」
「はい、もしや……玄弖もヴォルフさん達の仲間なんですか?」
「まぁ……その点については俺にも詳しくは知らないな? とりあえず、彼に詳細は事情を聞きに来ようと思って、そちらに足を運んだのさ?」
――ヴォルフさん達の仲間じゃないとすると……この青年は何者なんだ?
箒は、今一度布団に寝込む玄弖を見た。
「女子生徒達の話によれば、この玄弖と言う青年が一方的に暴行を振るってきたと言っているが?」
「ちがう! 断じて違います!! あの女子共が私に絡んできたから、玄弖が……」
自分のために玄弖が怒ってくれた。しかし、返り討ちにあった女子生徒達の状態を見ると証言しづらい。
「……なに、大抵予想はついているさ?」
しかし、ヴォルフは箒に微笑んだ。
「嘘をついているか否かは相手の目を見れば大抵わかる。それに、女子生徒らの態度を見る限りいかにも嘘をついているような様子だったしな?」
「信じて、くれますか?」
「君が真実を訴えていることは、その目を見れば十分に伝わってくる。なに、それ相応の証拠もある。最近になって、山田先生が各ISの機体に小型のビデオレコーダーを搭載したらしい。彼女は、君がいじめを受けていることに薄々気付いていたそうだ……」
「山田先生が……?」
ああ見えてドンくさそうな人っぽいけど、それでも結構生徒達のことを案じてくれているようだ。
「……で、話は戻ってしまうが、彼の名は``クロテ``というのか?」
ヴォルフは、ベッドで眠る玄弖を見下ろす。
「エリア14出身の人です……」
「エリア14? ほう……そんな別世界から、何故こんな場所へ?」
「律儀に、私のお守りを届けに来てくれたのです」
「ハハッ、確かにそれは律儀だな?」
ヴォルフは、箒へ振り向く。
「しばらく、彼をこちらに預けてもらえないか? 私の知人がこの青年から話を聞きたがっているのだよ?」
「わ、わかりました……」
「では、失礼する!」
「へっ?」
気が付くと、ヴォルフはベッドに寝ている玄弖を連れ去って姿を消していたのだ。

「ん……?」
呻きながら、玄弖は目を覚ました。
「なんだ……」
しかし、左右の手首がくっついて中々離れてくれないのに気付いた。その違和感に目を覚ますと、彼はいち早く己の身に起こった状況を見る。
「!?」
それは、椅子に座らされている自分と、自分の手首に手錠をかけられているという拘束された姿であった。
「ど、どうして!?」
抵抗するにも、やはり手錠はびくともしない。いや、それどころか足首にも手錠をかけられて完全に身動きが取れない状態であった。
「いったい、ここはどこなんだ!?」
玄弖は、怯えながら辺りを見回した。しかし、一見薄暗い個室としかわからず、今から何をされるかについての恐怖感が湧き上がってきた。
『やぁ? 君が、八文字玄弖くんかい?』
スピーカーから聞こえる男の声が、玄弖の耳元に響いた。
「誰だ!?」
『手荒な真似をしてすまない……しかし、私にも君の持っているその「RS」のことを聞く義務があるんだよ? 別に拷問などするつもりはない。僕の質問に幾つか答えてくれればそれでいい』
「……」
何やら胡散臭そうに思えるも、今は大人しくその声に従った方が身のためだと玄弖は悟った。
『……じゃあ、まず一問目だが』
質問が始まった。
『その、RSをどこで手に入れた?』
「RS……」
玄弖は、あの飛影を見つけた晩、夢に出てきた謎の声が発する用語を思いだした。
『そうだ。そもそも、そのRSは欠如品のため捨てられた代物だった。勿論、データや全機能もシャットダウンさせているため、二度とRS自ら起動することは不可能のはずだ』
「……」
『で……そんなRSをどこで、見つけたの?』
「……ガラクタ置場」
恐る恐る玄弖は答える。
『そうか……やはりそれは飛影だな? さて、では二問目だ。その飛影をどうやって起動させたんだ?』
「それは……わからない?」
『ん?』
「だって! 最初はケースに入っていたんだ。なのに、開けてそれを手に取った途端、勝手に光りだして俺の体の中に……!」
『……』
必死な口調で説明する玄弖に、スピーカーの声はやや冷静になる。
――やべっ、何か気に障ることでも言ったかな……?
口下手が仇となったか? 玄弖は額に大量の冷や汗を垂らした。
しかし、声が次に発した言葉は意外な内容だった。
『そうか……やはり、奇跡的にまだAI機能が生きていたというわけか? それが、最後の助け船として君に融合した。成程、大抵の成り行きはわかった』
というと、彼を拘束していた手足の手錠は独りでに外れて床に落ちた。
「え?」
『大方の事情はわかった。だが……このまますぐに返すわけにはいかない。君をしばらくの間こちらへ引き取らせてもらう』
「え、ちょっと! 待ってくれよ!?」
『申し訳ないが、突然君に融合してしまった飛影について少々研究させてもらいたい。君のためでもあるんだ』
「そ、そんな……」
『なに、手荒なことは一切しないことを約束しよう? だから、我々に従って……』
そのとき、付近で爆発が聞こえた。
「な、何だ!?」
激しい揺れに、玄弖は椅子ら転げ落ちた。
『何事だ?』
『侵入者です! それも、相手はRSで……』
『反乱者か……?』
『識別は不明です!』
『わかった、今そちらに援軍を送る。それまで……』
しかし、そのスピーカーも爆発によってノイズに変わった。
「くそ……! いったい何がどうなってるんだ!?」
立ち上がった玄弖は、周囲を散策してどうにか脱出しようとするが、扉は頑丈でビクともしない。
「ちくしょう! 何もわからず拉致られるなんてたまるか!!」
――そうだ! 飛影……!!
しかし、飛影を呼ぼうにも出し方もわからないし、念じても両手からクナイは出てこない。
「くそっ! 何か手はないか……?」
そのとき、隣の壁から巨大な爆発が起こり、爆風に飛ばされて衣類が破片まみれになった。
「こ、今度は何だ……!?」
起き上がると、目の前の壁に巨大な穴があけられていた。そして、その向こうから二人のシルエットが浮かぶ。
「いた! 弾、玄弖がいたぜ!?」
「よかった! 無事のようだな……」
「お、お前ら……どうしてここに? っていうか! その持ってるモンは!?」
玄弖は、二人の手に持つそれぞれの武器を見た。大剛は巨大なハンマーを、そして弾は斧を担いでいた。
「説明は後だ! 早くこっから脱出するぞ?」
弾に手を引かれて玄弖は二人と共に見知らぬ通路を走った。
「いったいアイツらは何モンなんだ!?」
走る中で、玄弖は問う。
「知らねぇけど……とにかく走れぇ~!!」
大剛を先頭にして走り、彼は両手にハンマーを持って壁を壊しながら一直線に突き進む。
こうして、三人は内部で壁を壊しながら大暴れしつつ必死で外へ出ようと走り続ける。
「くそ! いい加減外に出れ……」
そのとき、何枚目かの壁を壊したと同時に彼らはようやく陽の光を浴びることができた。
「いよっしゃあぁ~! 外に出れたぞ!?」
歓喜になる大剛だが、何故か足の踏み場の感覚が無いことに他の二人は気付いた。
「……あれ? 俺たち宙に浮いてね!?」
と、弾。
「ちがう……俺達、空中に居るんだよ!?」
俺がその現状を答えた。
そう、外に出られても地上ではなく上空であったのだ!
「「「ぎゃあぁ~!!」」」
悲鳴を上げながら、俺たちは地上へ真っ逆さまに落ちて行った……

「あ~らら……」
スピーカーの声こと、魁人は頭をかき回しながら目の前の状況を目にした。
――アイツら、普通に通路を走っていかないのか? 壁を壊して直進とかマジかよ?
「……どうりで、追手から逃げきれたと思ったよ?」
溜息をつく魁人は、今後書かされる始末書の枚数を予想しただけで顔を青くしてしまった。
「よっ! 随分暴れられたようだな?」
魁人の後ろから一人の男が駆け寄る。ワカメのようなヒラヒラの前髪を揺らした青年である。
「蒼真、来るのが遅いよ~……?」
と、泣きつくような口調で蒼真へ振り向く魁人。そんな彼に笑いながら蒼真というワカメ髪の男は詫びた。
「いやぁ~! 悪い悪い? ついさっきまでモスクワまで行ってきたから遅くなった」
「まぁ……いいよ? けど、どうすっかな? ……狼君に、頼んでみる?」
「待て待て? 狼は今、弥生の実家で夏休みの間同居生活送ってんだろ? 二人の恋路を邪魔すんじゃねぇよ?」
と、ニヤニヤする蒼真。
「じゃあ、神無ちゃんは?」
「俺の家で現在同居中さ!」
――神無ちゃん、あのクソ汚い家で同居してんのか? 可哀そう……
今でも鼻先に洗濯バサミを挟んで必死になって蒼真の自宅を大掃除している姿が魁人の目に浮かんだ。
「……じゃあ、どうする? ヴォルフの話によると、エリア14の連中だろ?」
「ああ……その、エリア14のことだよね……?」
腕を組んで魁人は唸った。しかし、そんな態度はそう長くは続かなかった。
「……じゃあ、彼に頼んでみるか?」
「彼って?」
「エリア14の総括者だよ?」
「そいつと知り合いなのか?」
「何って……僕の兄弟(クローン)だよ?」
「へぇ……え!?」
「彼なら、どうにかして玄弖君達をIS学園へ連れ出せることができるかも?」
「お前……クローンって、お前……!」
これまでいつも陽気な態度しかとっていなかった彼が珍しく口をパクパクさせている。

数日後、エリア14にて

いろいろとあって玄弖は、箒に別れを告げることができずにそのままエリア20へ帰った。今頃、心配しているだろうと思いながら、今日も二人の相棒たちと共にガラクタ置場へ来ていた。
「……」
しかし、箒のことが忘れずに玄弖は一日中座り込んでボンヤリと空を宥めている。
「おーい! 玄弖? 飯にするぞ~?」
大剛が日向でボンヤリしている玄弖に声をかける。玄弖がああなったのは今から始まったわけではないのは二人もわかっている。
「外のエリアへ行って以来、雰囲気が変わっちまったようだけど? 何かあったのか?」
弾がボロボロの自転車を担いでガラクタ山の坂を下りてきた。
「さぁね? つうか、俺たちが何度も話しかけたって振り向くことすらしねぇし?」
「もしかして、何か変なモンでも食っちまったんじゃねぇのか?」
「外にはシャブみたいな薬物はこことは違ってそんなに流行ってないけどな?」
「でも……エリア24よりも強い薬物とか出回ってんじゃないのか? ここで売られてんのは大方海外の安物ばかりだ。もしかすると、玄弖のやつ……闇商売の奴らに騙されて飲んじまったんじゃ……?」
「……」
大剛が深刻なことを言うと、弾は黙って立ちあがった。
「弾?」
「……連れてっか? 医者の爺さんちに?」
「えぇ~? あの闇医者っぽい胡散臭そうな爺のところに?」
「金はいつも通り玄弖の財布から引っ張りだしゃいい。連れてくぞ?」
「へいへい……」

「これは~……」
酒を飲みながら酔っ払って診察を始める医者爺さん。しかし、ここのところの私生活は崩壊して、一面散らかり放題の悪臭が漂う部屋になっていた。当然、大剛と弾は鼻先に洗濯バサミで挟んで
爺さんからやや遠ざかって、爺さんの目の前に座る玄弖のボーっとした容態を見守っている。
「爺さん? 何かわかったかい?」
あまり期待していない顔で問う弾に爺さんは顔を上げた。
「うむ……これは~……」
「玄弖は大丈夫かい?」
大剛がやや心配になって問う。
「こりゃ……『恋の病』じゃな?」
「「はあぁ~?」」
二人は首を傾げた。
「外のエリアで好きな娘でも出来たのか? それか、外でシャブにはまったか? それとも違い次元に目覚めたか? それとも……まぁ、いろいろあったか?」
「ちょっと! 適当なこと言わないで下さいよ?」
大剛が酔っ払い相手にムキになった。
「まぁ……いつも空ばかり宥めてボーっとしてるのは、おそらく誰かのことがとても印象強く根付いていることじゃろう? そうでなくては、周囲に集中などできるはずもない。おそらく偶然の出会いが、この若人(わこうど)にとって『恋』というものを与えてしまったようじゃな?」
と、爺さんは説明し終えると再び酒を飲み始めた。
「おお……珍しくまともなことを喋ったぞ? この爺さん」
「酒を飲んでると、逆に真面目な性格になんのかな?」
二人は、そんな爺さんの態度を見て驚く。
「とりあえず、治療法は簡単じゃ? もう一度その子に会って白黒ハッキリさせればそれでよい?」
「けど……もし、フラれちまったらどうすんのさ?」
と、大剛が問う。
「そん時はそん時、酷く落ち込むか立ち直るかはこの若者次第じゃよ?」
「もし、立ち直れなくなったらどうなるんだ?」
弾はその時のディスクを聞く。
「まぁ……徐々に回復させるよりほかあるまいて?」
「……外の世界ねぇ?」
大剛はため息をついた。仕方なく、二人は未だにボーっとしている玄弖を連れて診療所を後にした。もちろん、玄弖の財布から診察料を抜いて。
「ったく、恋の病なんてする奴はするんだな?」
弾は、自分たちに担がれる玄弖を見て呆れてしまった。
「仕方ないよ? したもんはしたもんで……」
「けど、どうするよ? こんなことじゃあ、いつまでたっても玄弖はこのまんまだぜ? こりゃあ、かなり重症だ」
弾は、玄弖の表情を見た。
「また、外の世界へ行かしてみるか?」
「つい最近行ったばかりだからな? また次行くと、本当に疑いをかけられちまうぞ? もし行くんなら……次こそコイツが外へ行くって時は、このエリア14ともおさらばってことになるな?」
「そうか……」
エリア14は、どちらかというと危険で危なっかしい場所ではあるが女尊男卑が全く及ばないことを感じれば、外と比べたらいくらかマシであった。しかし、目立ったことをすれば命の保証もない。
「……なぁ? 弾」
ふと、大剛は訪ねる。
「あ?」
「俺たちも……コイツと一緒に外の世界で暮らしてみるって、どう?」
「何考えてんだよ? 第一、外の世界へ行っても満足に食っていけるほど甘くはないんだぞ? それにくらべて、ここなら、適当にやっていれば満足に食ってはいける」
「でも……俺たちだって、いつまでもこんな怖い場所で生活したくはねぇだろ?」
「まぁ、そうだけど……」
弾は黙った。彼には過去のトラブルが原因で外の世界を拒んでいる。
その後、二人が玄弖を彼の自宅まで担いでいくと、
「お! いたいた……」
なにやら、銃を持った兵隊のような男が玄弖の自宅へ彼を待っていた。
男は、このエリア14の統括者の巡回兵士である。いくら、このエリア13をヤクザや野盗達が支配していても、それは表向きの話、本当は彼らを裏から操っているのが統括者である。そんな統括者の使者ともなればいくらヤクザや野盗でもゴマすり態度をとってペコペコするのが落ちだ。
「八文字玄弖と、その友人らだな?」
「あ、ああ……そうだけど?」
「お前にマスターから伝言だ」
と、兵士は弾に封筒を手渡すと、すぐに行ってしまった。
「何だ……?」
弾が玄弖に代わってその封筒を開封した。すると、そこには一枚のIDカードと手紙が入っていた。
『八文字玄弖と、五反田弾、克真大剛、この三名はこれより外部のエリア20へ移住せよ。住居に関してはこちらが手配した。できるかぎり、早急に行動されたし』
「え!?」
内容を読み、そして弾は震えた手でIDカードを見た。カードはエリア14を出て行くための証明書である。
「本物か? これ……!?」
大剛も目を丸くしている。
「けど……どうして、俺たちが? こんなゴロツキの俺たちにこんな凄いモンを統括者がくれたんだ?」
大剛は首を傾げる。
「おそらく……これじゃないか?」
弾は例の巨大な斧を召喚させた。後から玄弖に離して納得してもらったが、自分たちにとってはやはり信じられない出来事であった。
「きっと、この武器が何らかに関与してるって感じだと思う」
「ふぅん……つうか、これって早く出て行けってことだよな?」
大剛が苦笑いした。
「……」
しかし、弾にはやはり抵抗がある。だが、ここでいつまでも居ると、やはり統括者の気にさわりかねないのかもしれない。居場所が無くなったというなら大人しく引き下がるよりないのかもしれない……
「……仕方がない。大剛、身支度ととのえっぞ?」
「よしきた! ほら? 玄弖も起きろよ? 念願の彼女に会えるかもしれないぞ?」
「……?」
玄弖はそんな大剛の声にピクリと反応した。そして、
「箒……!?」
突然口にした言葉に二人が反応する。
「何だ? 箒って……掃除道具でも買い忘れたのか?」
大剛が呟いていると、こうしては居られないと玄弖は早急に自宅へ飛び込んで荷造りを始める。
「よし! ほら? お前らも早くいくぞ!?」
先ほどまでの態度が嘘のように、玄弖はいつもの状態に戻り、そして風呂敷に荷物を包むと、それを背負って家から出てきた。
「「……」」
二人は、そんな玄弖を呆然と宥めるしかなかったのである。
――まってろよ? 箒! もう一度、会いに行くぜ!?
「この「飛影」の名にかけて!」
と、玄弖は両手に飛影を召喚させた。
リベリオンズが開発した新型の強襲用試作RS、その名は飛影。それはあの「零」を参考に開発され、後に欠如品とされたものであったが、今の飛影は何よりも輝いて見えていた。
……しかし、そんな風呂敷を背負う泥棒のような姿をした玄弖が握る飛影は、ややカッコ悪く見えたのかもしれない。
 
 

 
後書き
予告

再びIS学園へGO!
……っと、思ったら道中のメガロポリスで謎のIS集団が突然襲い掛かってくる! 狙いはこのRSという武器が関係しているらしい。
果たして、俺たちは無事にエリア20へ辿り着くことができるのだろうか?

次回
「初戦」
 
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