| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

龍が如く‐未来想う者たち‐

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

秋山 駿
第三章 手駒と策略
  第二話 反逆

「堂島さん……」
「6代目、遅いじゃないか」
「お前ら、俺をあぶり出すために澤村遥を攫い、秋山さんを傷付けたんだな……」


背筋に悪寒が走る。
いつもと違う、殺気混じりの気。
それが大吾のものだと理解するのに、時間はいらなかった。
まるで獣のような鋭い目に、思わずゴクリと生唾を呑む。


「……6代目、私は平和的解決がしたいのです」
「何が言いたい?」


足立は足元に置いてあったスーツケースを手に取ると、そのまま大吾の前に投げ捨てる。


「1億入っています。これで、6代目の座から降りて貰えませんか?」
「何だと……?」
「勿論希望であればさらに金額は上乗せ出来ます。こちらは幾らでも準備できますから」


それを聞いた瞬間、さらに大吾の顔が怒りで歪む。


「この座は、そんな生半可な気持ちで座るものじゃねぇ……」
「じゃあ、降りる気はねぇんだな?」
「当たり前だっ!!」


大吾が叫ぶなり、遥は驚きのあまり肩を震わせた。
それを横目で見る足立は、また不敵な笑みに戻る。


「6代目、貴方は優しすぎる。極道に向いてない」


足立が口の端を異常に吊り上げ、見た目に反してとても不気味に見える。
だが次に見せた行為は、さらに異常だった。

遥は耳元でカチャリと鳴った音に、思わず目を見開いて驚く。
銃口が当てられているのが、視界の端に見えた。


「どうでしょう?この娘の命と、東城会トップの座を交換しませんか?」


足立の指は、引き金に添えられている。
最早、猶予は無かった。
秋山がチラリと大吾を見ると、怒りとどうしたらいいか葛藤する顔が見える。
ダラリと血が、秋山の足からまだ流れていた。
止血も出来ず、呼吸も荒くなっていくのが嫌になる程わかる。

諦めるしかないのか……。
大吾の脳裏に、その言葉がよぎる。
だが事態は、思わぬ方向に急変した。



その怒りの顔が、喜瀬にも現れている事が誰にも予想出来なかったからだ。


「足立ぃぃぃっ!!」


次の瞬間には、足立の身体が宙に浮いていた。
大吾も秋山も、投げ出された本人である足立も思わず目を丸くする。
たった1つの拳で、大の大人が空中へと投げ出されたのだ。

ドサッと地に着地した瞬間、鬼の形相で睨む喜瀬の顔が眼に入る。
荒々しい息づかいに、伸ばされたままの右拳には僅かながら血が滴っていた。
口元に触れ、それが足立自身の血だと理解すると、思わずビクリと身体を震わせる。

大きく息を吐くと、喜瀬は遥に近付き縄を解いた。
呆然とする遥の頭に手を置き、小さく笑って軽く撫でる。


「嬢ちゃん、悪かったなぁ。さぁ、アイツの所へ帰り」


それは、遥を除く全員が驚愕する事態だった。
喜瀬は遥が秋山の元に戻ったのを見届け、そしてまた形相が変わる。
その怒りは、足立に向けられていた。


「言ったよな?俺は、女子供は傷付けねぇ主義なんだよ。ましてや(チャカ)向けるなんて、最低な野郎だな」
「お、おい喜瀬……7代目にあと一歩でなれたんだぞ?それをみすみす逃すなんて……」


足立を見下ろす喜瀬はわざとらしく大きな舌打ちをし、遥がさっきまで座っていた椅子を蹴り上げた。
大きな音をあげ、壁に激突した椅子は、無惨にボロボロになり地に落ちる。


「秋山」
「な、何ですか……」
「嬢ちゃん巻き込んで悪かった。足立と結託してこんな事してしまったが、もう嬢ちゃんには手を出さない。約束する」


今までの横暴な喜瀬から一転、性格が180度入れ替わってしまったと思う程、その言葉に違和感がある。
だが秋山に向けた微笑みが、嘘を吐いた人の顔に見えなかった。


「行け。俺が足立に説教してる間に、ヒルズから出ろ」


今はその言葉を、信じたかった。
大吾が頷くと、秋山を支えながら遥と共にエレベーターへと向かう。
背後から数発の発砲音が鳴り響くが、振り返らずに歩き進めた。
最後に聞こえた喜瀬の叫びが、最期ではない事を祈って。
 
 

 
後書き
次回は4/5更新 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧