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想い人

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4部分:第四章


第四章

「こうして部屋で二人で飲むか?」
「そうしたいけれど」
「わかったぜ。それじゃあな」
「それでいいわよね」
「ああ、じゃあその時はな」
 一輝は自分から話してきた。何をするかを。
「俺がつまみ作るな」
「あんたお料理できたの」
 料理は静が担当しているのだ。だが二人共夕食は大抵居酒屋で済ませているのである。
 しかし一輝はだ。今こう言ったのである。静はそれを聞いて問い返したのだ。
「初耳だけれど」
「学生時代自炊してたからな。一人暮らしだったしな」
「それでなのね」
「ああ。スパゲティでも作るか。ソースもな」
「それじゃあその次の日は」
「御前が作るか」
「私だって女なんだし」
 少し苦笑いになってだ。静は言った。
「できるから、お料理」
「じゃあ明後日は頼むな」
「ええ。じゃあ飲む前にね」
 今度は静からだった。
「御風呂入る?」
「風呂か」
「そう。お酒飲んでから入ると危ないから」
 それでだというのだ。
「今入ろう」
「二人でか」
「そう、二人でね」
 微笑んでだ。静は一輝に話す。
「二人で一緒に入ろう」
「おいおい、熱いな」
 一輝は静のその提案に笑って返した。
「またどういう吹き回しなんだよ」
「駄目?付き合ってるのに」
「いや、それはいいけれどな」
 一緒に風呂に入る、そのこと自体はいいというのだ。
「けれど。御前がそんなこと言うなんてな」
「一緒に飲むならその前にって思って」
「それでか」
「そう。じゃあ一緒に入るわね」
「ああ、そうするか」
 こうしてだった。二人は飲む前にまずは一緒に風呂に入った。そしてそこでじっくりと二人の時間を過ごしてから一輝がスパゲティを作りそれを肴に心ゆくまで飲んだ。
 酒を二人で全部飲んでからだ。静はまた一輝に言ってきた。
「じゃあ今度はね」
「今度は?」
「寝よう」
 飲んだせいで真っ赤になっている顔でだ。一輝に言ったのである。当然ながら彼も今は顔が真っ赤だ。二人共かなり酔っている。
 その顔でだ。静はまた言った。
「二人でね」
「そうだな。二人で風呂に入って二人で飲んで食って」
「後はね」
「二人で一緒に寝てな」
「そうしよう」
 真っ赤な顔のまま一輝に話す。
「それでいいわよね」
「ああ、じゃあそうするか」
「最後もね」
 こうしてだ。寝る時も二人同じ布団で寝た。今までは二人一緒の部屋に寝るだけで布団は別々だったのだ。だがこの日はそうしたのだ。
 そうした日を過ごしていってだ。それからもそうした日を多くしていった。その結果だ。
 暫く振りに一緒に飲んだ同僚達にだ。静はこの日はカルピスチューハイの大ジョッキを片手にだ。満面の笑顔でこう言ったのである。
「いや、やっぱり彼氏と飲むのっていいわよね」
「って今日も飲んでそれ言うのね」
「飲み屋で一緒になるのは暫く振りだけれど」
「それでその話ね」
「彼氏話を肴にするってことね」
「そうよ。飲む時はもう水いらず」
 カルピスチューハイ、その真っ白な酒を楽しく飲みながらの言葉だった。
「楽しくやってるわよ」
「いいことね。それは」
「最高よ」
 こう答えもする静だった。そしてその彼女にだ。同僚達はあのことを問うた。
 
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