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ウルトラマンゼロ ~絆と零の使い魔~

作者:???
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任務-ミッション-part4/戦う理由

「くぅ…!」
その頃、ボーグ星人が爆弾を起動したことで、学院の生徒たちを換金していた地下にも当然ながら影響が起きていた。自分たちがいた、星人に乗っ取られていた屋敷の廊下は、天井が崩れ落ち、大地震でも起きたような惨状だった。サイトはそんな瓦礫の下から這い出てきた。
(そうだ…ボーグ星人は爆弾を仕掛けていたのか)
かつてのボーグ星人は、地球防衛軍の通信士の男性をサイボーグ化して操り、彼を地球防衛軍基地のいたるところに、たった一つでも基地を木っ端微塵にできる破壊力を持つ爆弾を仕掛けていたことがある。そのときのように、この屋敷にも爆弾を仕掛けていたのだ。自分たちの悪事を知るものを抹殺するため、自分たちの行いが世間に広められないようにするために。
「みんなは…?」
サイトは辺りを見渡す。出口への道は瓦礫によってふさがれ、誰の姿も…いや、見つけた!
「私はならここだ…」
「アニエスさん!」
そこで後ろからアニエスが姿を現した。しかし頭から血が少し流れ落ちている。崩れた瓦礫の尖った破片で頭に切り傷ができたのだろう。
「ミシェルは…ほかの者は無事か?」
「…今のところ分かってるのは、俺とアニエスさんだけです」
「なんてことだ…ここに来て敵の罠に落ちるとは」
アニエスは歯噛みする。
「アニエスさん、とにかく瓦礫に埋まっている生徒たちを引っ張り出しましょう」
「そうだな」
二人はすぐに、周囲の瓦礫を退かしながら、埋まっているであろう生徒たちを探し回る。すると、サイトがいくつかの瓦礫を退かしたところで、見覚えのある人物が二人倒れているのを発見した。
「ギーシュ!モンモン!」
ギーシュとモンモランシーの二人だ。二人は砂と破片にまみれながらも這い出てきた。
「うぅ…サイトかい?」
「いたた…あ、私…生きてるの…?」
よかった、二人とも名前を呼ばれてすぐに意識を取り戻してくれた。他にもレイナールやマリコルヌも瓦礫の下から姿を現した。
「うぅ…死ぬかと思ったよ」
「おぉ、マリコルヌにレイナール!無事だったのか!」
二人の友もまた無事だったことにギーシュは喜ぶ。
「ミシェルさんは…他のみんなは?」
すると、瓦礫の中から一本の腕がはみ出していたのを見つける。その手はしっかり小手を身につけていた。そして青く短い髪も見え隠れしている。
間違いない、ミシェルだ。
「ミシェル!」
「ミシェルさん!しっかりしてください!」
彼女は瓦礫に胸から下の部分が埋まってしまっており、サイトとアニエスに名前を呼ばれても反応がなかった。サイトは立ち上がって彼女の元により、何度も名前を呼びながら彼女の瓦礫の下から引っ張り出す。運よく、彼女の瓦礫は跳ね除けやすかったので、彼女を引っ張り出すのは容易だった。
「く…」
しかし、彼女は肩を負傷していた。
「モンモン、治療を頼む!」
「え、ええ!」
サイトからつけられたあだ名にいちいち突っ込まず、モンモランシーは直ちにミシェルに向けて水魔法での治療を開始する。
「ごほっ…」
その時、サイトはその際に突然咳き込みだした。一体どうしたんだ?
『まずいぜサイト。この辺り、瓦礫で埋まったせいで酸素が足りなくなってんだ。このままだと全員窒息しちまうぞ!』
頭の中からゼロからの警告が聞こえる。このままでは自分たちもいずれ危険だ。だが、そう簡単にいかなかった。」
「隊長…私たちは一体?」
体を起こしながら、何が起こったのか彼女は尋ねてきた。命に別状がなくてほっとしたが、安心するのは早い。いや、していい状況とは思えなかった。
「敵はあらかじめ爆弾を仕掛けていたのだ。おのれ…用意周到なことだ」
「それに、僕たち以外にも埋まっている人たちがいるぞ。それに、もう出口が…」
今レイナールが言ったとおり、彼らのいる場所に出口はなく、前も後ろも瓦礫に埋まってしまって、脱出が不可能だった。しかも、他にも埋まっているに違いない皆の姿が見当たらない。
「そ、そうだよ!僕たちこれからどうすればいいんだよぉ!!」
マリコルヌが泣き叫ぶ。出たくても出られないこの密閉した状態に、次から次へと降りかかる絶望に心がどれだけ折れても足りなかった。彼の絶望に煽られ、ギーシュたちも今度こそ助かると思っていたが、その分だけ絶望が心を塗りつぶそうとする。
「ギーシュ、地面に穴を開ける魔法とかないのか?お前土の魔法使いなんだろ?」
「無理言わないでくれ!僕はドットメイジだし、穴を掘る魔法なんてできないぞ!」
「だったら…掘るぞ!」
「ほ、掘る?」
もしかして、素手で掘るのか?と耳を疑うギーシュたちだが、サイトはそれを否定しなかった。
「掘って掘って掘りまくればいいんだよ!それに俺たち以外にもここに埋まっている人たちがいるだろ!一人でも多く助けてやれよ!お前ら貴族なんだろ!だったら民のために最後まで体張って見せろよ!」
「む、無茶言わないでくれよ!こんな瓦礫どれだけ掘ったって足りないじゃないか!」
レイナールが同考えても無理だと否定的だった。そう考えるのも無理はなかった。、こんな土木作業など、それ専門の職業に就くことがない限りはまず行わない。ましてまだ学生だ。
「掘るのか…だが、それまでこの辺りの酸素が足りるだろうか」
アニエスが、今自分たちがいる密閉空間を見渡しながら言う。ここは外とは完全に断絶されてしまった場所だ。さっきゼロがサイトの中で警告したとおり、いずれ酸素がなくなってしまう。
「もうだめだ…僕たちはここで死ぬんだ……あぁ、かわいいお嫁さんを作って幸せになりたかったのになぁ…どうしてこんなことに…」
マリコルヌは、最後の最後で自分の不純ながらもかなえたかった願いを口にしながら、もうそれが叶わない夢であることを痛感し絶望する。
「ここまでか…私も」
「ミシェル?」
「隊長…今度ばかりは私たちはおしまいです。ここは地上から長い距離にあります。ここから掘り進んで地上から出るなんてとても…」
「ち、ちょっとやめてよ!私はまだ死にたくないわよ!?ギーシュ、あなたもなんとかしなさいよ!」
「そ、そうは言われても…僕のドットクラスの魔法じゃどうしようもないよ…」
モンモランシーから激を入れられるギーシュだが、完全に弱気になっていた。もう自分たちはここで生き埋めになって死ぬ未来しか見えていなかった。
もう彼らに戦意が見られないことを悟り、サイトはデルフを引き抜くと、スコップ代わりに地面を掘り始めた。
「お、おいおい!俺はスコップじゃねえぞ!」
「今は勘弁してくれ。命かかってんだ。デルフだってここでずっと生き埋めになって、発掘品として掘り出されるのを待ちたいのか?」
「そ、そうだけどよ、俺ってば本来剣なんだぜ?それもハルケギニア6000年の年代物なんだぜ?ここまでぞんざいに扱われるのはよぉ…」
「悪かったから!帰ったらちゃんと刃を研ぎなおすからそれで勘弁してくれ!」
文句を垂れるデルフをなんとかなだめるサイトは、地面を掘り続けた。
「何をしてるんだ…?」
ミシェルが目を丸くしながらサイトに尋ねる。
「見りゃ分かるでしょ。掘ってるんですよ。出口ふさがっちゃったんですから」
「サイト、もう僕たちは助からないんだぞ!いずれここも天井が崩落し、今度こそ僕らも生き埋めだ!」
「うるさい!俺は最後まで諦めねぇぞ!」
ギーシュの完全な諦め台詞に、サイトはそれでも自分の意志を曲げなかった。
「ふ…諦めの悪い男だ」
アニエスは根性論のみで、諦めるという選択肢を選ぼうとしない才人を見て、ほくそ笑んだ。
「最も、私はそういう男の方が好感を持てる」
そういって彼女は剣を引き抜くと、それを使って地面を掘り始めた。
「ミス・アニエスまで…」
彼女まで掘り始めたのを見て、サイト以外の男たちは困惑するばかりだった。
『サイト、俺にならなくていいのか?俺の力を使ってここからテレポートすれば…』
ふと、サイトの頭の中にゼロの声が聞こえてきた。確かに彼の言うとおり、ここで変身してしまえばすぐに問題解決になるはずだ。しかし、サイトはさっきからそうするそぶりを全く見せてこない。
『そうやすやすとお前の力を使うわけに行かないだろ。それに、地球にいた頃…サコミズさんが言ってたんだ。「地球は我々人類自らの力で守り抜かなければならない」って。
今は確かにピンチだしお前の力も借りたいけど、こいつらが絶望したままの状態で助けたら…それに何より、俺たちの正体を簡単にバラしちまうわけにいかないだろ』
サイトはその問いに対してそう答えた。
ウルトラマンの正体が自分であることがばれない為、それもあるが…何よりギーシュたちハルケギニアの人達にはいずれ自らの力で、人類に害をなす脅威と立ち向かう姿勢を持たせなければならない。何時までもウルトラマンが守護神として留まり続けられるわけではないし、人類から努力と可能性を…そして守る価値さえも自ら捨ててしまうことに繋がりかねない。
『…お前の言いたいことはわかった。もしやばくなったら、すぐに言うんだぞ』
『了解』
再びデルフで地面を掘り起こそうとしたところで、ミシェルが後ろからサイトの肩をつかんできた。
「ちょっと待て…サイトとやら」
「な、なんですか?今時間がないのはミシェルさんだって…」
「それは私も承知の上だ。時間はとらせん。ちょっと聞きたいことがあるだけだ」
「は、はぁ…」
それを見て、アニエスはほぅ、と少し感心を寄せた。ミシェルはあまり私的なことで質問するタイプじゃなかったし、ましてや一度軟弱と決めた男とは不要な会話をする気配などなかった。とはいえ殺気と同じように鋭い視線のままだが、ミシェルはサイトに対して一つ問いただしてきた。
「お前は…なぜ戦う?なんのために戦っている」
「え、なぜって…」
「元々お前は、この国の人間ではないのだろう?他国の人間の事情のために、どうして体を張る?」
ミシェルは問いを続けていく。
「私はこの国のためにと、これまで隊長の部下として、銃士隊の副長として働いてきた。私たちが相手にしてきた者たちは盗賊や犯罪者に加担する傭兵だけじゃない。貴族もいた。奴らは敬虔なトリステイン貴族のふりをして、裏で汚職事件や奴隷・違法商品の密売…あらゆる犯罪に手を染めて、まさにガン細胞のように広がりつつある。
お前も話によるとモット伯爵やワルドのような外道共と相対したことがあると言っていたな。たとえ特別な能力を持っているからとか、主と共にあらねばならない立場とはいえ、適当に理由をつけて逃げることだってできたはずだ。
この国は、徹底的に浄化せねばならぬほど汚れつつある…なのになぜ、お前はこの国のために戦える?この状況で…どうしてそこまでお前は諦めずにいられるんだ?」
あぁ、そういうことか…サイトはミシェルが、どうして自分のような人間がこの事件に積極的に関わろうとしている理由をはっきり知っておきたかったのだと思った。
「別に大きな理由があるわけじゃないですよ。俺はこの世界で起きた事件の原因が、俺の知っている怪獣や星人たちによるものだってことを知った。何より、俺はこれまでたくさんの人たちに支えてもらってきました。借りなんて、返しきれないくらいにもらっちゃってるんですよ。それなのに、俺はまだその人たちに何も返しきれていない。彼らが俺を救ってくれたことを少しでも無意味にしたくないんだ」
そう、サイトはこれまでたくさんの人たちから光をもらっていた。
義母であるアンヌ、メビウス、ヒカリ、GUYSクルー、ハルナ、ルイズ、レオ…そしてゼロ。彼らがいてくれなかったら、今自分はこうして立っていることもできなかったのではと考えてしまえるくらいに、こんな…どこにでもいるようなちっぽけな地球人の少年のために手を差し伸べてくれた彼らには大きな感謝を抱いていた。
「そのために、死ぬのが怖くないのか?それ以前に、守ろうとした者が自分の失望を買うような奴らだとしても、お前は戦えるというのか?」
「そりゃ、知らんぷりすりゃどんなに楽かも考えましたよ。でも…俺の涙なんかじゃ何も守れやしないし、この国が嫌なことだらけだからって、次に一度でも逃げたら…俺はずっと後悔すると思います。俺を救ってくれた人たちに会わせる顔がなくなってしまうのが、一番怖いんです」
「……」
恩人たちに恥じない人間でありたいから、か。ミシェルはサイトの戦い理由がそこにあることを悟った。すると、剣を使って地面を掘り続けていたアニエスがからかうような笑みを見せてきた。
「どうしたミシェル。任務に来る前はあれだけこいつにえらそうなことを言っておきながら、ここで音を上げるのか?こいつの方が根性があるぞ。どうやら副隊長はお前よりもサイトのほうが適任かもしれんな」
「なっ!た、隊長!?」
あのアニエスがこんなことを言ってくるとは!今の一言がすごく腹正しかったことも合って、ミシェルはボロボロになった体に鞭打ち、腰を上げた。
「じ、冗談じゃない!やりますよ!私だってやってやりますよ!」
確かに、さっきまで恥ずかしげもなく言ってのけ、それを行動に映そうとしたサイトはそれなりに注目すべき点があるのはわかったが、だからといって自分の銃士隊副隊長の座の譲渡など応じれるはずもない。…最も、アニエスからすれば冗談のつもりだろうが。
「おいお前たち、男が何時まで落ち込んでるんだ!さっさと掘り起こせ!他にも埋まっている連中がいるのだろう!今の魔法学院の生徒共は同級生を見捨てるような非情の輩か!?」
ミシェルは今の隊長の言葉でムキになったこともあり、勢いに乗ってギーシュたちを奮い立たせる激を放った。
「それは…心外だな」
「わ…わかったよぉ…」
「…私も、掘るわ。泥臭いのは嫌だけど、こんなところで生き埋めになりたくないし、だらしのないギーシュのフォロー役なんて私以外に勤まりそうにないし」
同じ釜の飯を食べてきた同級生を見捨てる、それは非情、これを言われたことやサイトたちの最後まで諦めようとしない姿が、彼らにも伝わった。レイナール、マリコルヌ、そしてモンモランシーの順で立ち上がった。
「ほらギーシュ、あなたも立ってちょうだい!私のナイトなんでしょう?ここでへこたれて、それでも私のナイトなの!?」
さっき、絶望のあまり泣き出していたモンモランシーでさえ己に鞭を打って命を懸けようとしている。ここで退いてしまっては、紳士として、貴族として…
「…すまないサイト、ミス・アニエスにミス・ミシェル…このギーシュ・ド・グラモンは正気に戻った!貴族の名に恥じぬ華麗な働きを披露してやろうではないか!」
目に光を戻したギーシュはさっそく、薔薇の造花の杖をふるう。すると、サイトたちの足もとから青銅製のシャベルやつるはしが生成された。
「さぁ。これを使いたまえ!剣で掘り起こすよりも満足に掘れるはずだ!」
「なんだよ、便利なものあるじゃないか!」
サイトはギーシュの背中をバシンと叩き、シャベルをとって地面を掘り始めた。
「よし、ミシェルと私は救助活動を続けるぞ。サイトたちは出口へ向けて穴を掘るんだ。いいか、生き残りたければ根性で掘り進むんだ」
アニエスはサイトたちには指示を出し、出口確保と救援の二方向に方針を立て、彼らは直ちに作業を開始した。


地上…。
「ヴァリエール嬢に奴を近づけさせるな!撃て!」
その掛け声に従い、銃士隊の隊員たちはルイズを狙うゴドラ星人の攻撃を妨害するために、奴に向けて銃撃を仕掛ける。
「えぇい!邪魔をするな!」
ゴドラ星人も銃弾の攻撃を厄介に思ったのか、直ちに攻撃を中断し、銃士隊の隊員たちにお返しのエネルギー弾を撃ち込む。
「うわああああ!!」
その弾丸を避けきれずに、数名の隊員たちが爆風で吹き飛ぶ。
「大丈夫か!?」
「な、なんだ今のは…手から光の弾を飛ばしてきたぞ!?」
「貴様、今のは先住魔法か!?」
食らわなかった隊員たちも戦慄するしかなかった。
先住魔法、それはハルケギニアでメイジたちが使用する四大系統魔法とも、ルイズの虚無の魔法とも異なる力を表す用語として用いられている。特殊な力といえば魔法を浮かべるハルケギニアの人間である彼女たちも、今の攻撃が先住魔法の一種なのかと考えていたが、答えはそれとは大きくかけ離れていた。
「せんじゅうまほう?ほぅ、どうやら魔法とやらにはまだ解明すべきことがあるようだな」
そもそもこの星の生命体ではないゴドラ星人にそんな能力はないし、まだこの星に降り立って日が浅かった。興味深い情報を得て、ならばますますメイジたちの生態について調べておかなければならないと考えるようになった。
「その『せんじゅうまほう』とやらのことも聞かせてもらおうか!」
銃士隊の隊員たちに向かっていくゴドラ星人。
「ウィンディ・アイシクル…!」
銃士隊の隊員たちに構っている間に呪文の詠唱を完了していたタバサが、上空から無数の氷の矢をゴドラ星人に向けて飛ばす。
「ぬおお!!」
氷の矢に驚いたゴドラ星人は、体中にそれが突き刺さった。しかし、まだ倒れない。ダメージこそ通って入るようだが致命傷には至っていないようだ。
「あいつ、ペガ星人よりもできる…」
「あんたたち、ああいうのと戦ったことがあるの!?」
静かに呟いたタバサの言葉に、ルイズは目を丸くする。
「ええ、ちょっとした事情で会っちゃってね。返り討ちにしたけど」
キュルケが地上にいるゴドラ星人を見下ろしながら答えた。タバサたちは、あんな怪人と闘りあった事があると聞いて、少し劣等感を抱く。
「二方向から攻めるか…」
ゴドラ星人は地上からこちらに攻めてくる銃士隊と、空から攻めてくるルイズたちの二方向を見る。これは少し手を焼かされてしまうかもしれない。…いや、ある意味ちょうど良い機会、とも言えなくもない。自分たちがメイジを捕まえ、彼らの生態を調査している理由は、侵略のための新兵器や文明に役立つ開発のためだ。目的の達成の一端となるのならこの戦闘も無駄ではない。最も、自分たちと比べて彼らの脆弱性は目に見えているから加減をしつつ…。
「今度は私の番ね。フレイムボール!」
すると、考え事をしているゴドラ星人の隙を突きにかかるように、キュルケの火球が星人に向けて放たれた。避ける間もなく降りかかったその火球はゴドラ星人を炎の中に包み込んだ。
「エア・ストーム」
それに続け、タバサが魔法で竜巻を巻き起こした。彼女の巻き起こす風はキュルケの炎に降りかかることで、空気中の酸素を集め炎に送り込む。結果…キュルケの炎はさらに激しく燃え上がった。
「すごい…まだ子供なのにあのような芸当ができるとは」
「私たちは犯罪を犯したメイジを相手に勝ち進んできましたが、バカにはできませんね」
銃士隊の隊員たちも離れた場所で見ながら、キュルケとタバサの魔法の腕前に関心を寄せた。ルイズもタバサはともかく、キュルケの実力を改めて認めざるを得なかった。先祖代々、自分の実家であるヴァリエール家のメイジたちと渡り合ってきた才能はキュルケにも受け継がれていたのだ。いや、いちいち卑屈になっても始まらない。第一今の自分には、キュルケの火よりもすごいものを持っているじゃないか。
いざというときは、それを使えばいい。アンリエッタからはあまり使わないように警告されているが、緊急事態ならばやむを得ない。
「エルオー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ…」
キュルケたちだけに任せていられない。ルイズも自分も戦う決意を固め、詠唱を開始する。
が、その時だった。
「…俺としたことが遊び過ぎたよ。ボーグとの共同作業が残っていたのを忘れていた」
炎の中からゴドラ星人の顔が現れた。だがそれは、普通に炎の中を歩きながらその姿を再び現したのではない。
キュルケとタバサの合体魔法から逃れるために、そして何より自分の本来の仕事をさっさと果たすために、50メイルほどの巨体へと巨大化したのだ。
「さっさと貴様らを捕まえておかねばな」
「は、反則過ぎるわよ!巨大化だなんて!」
思わず文句を言うキュルケだが、所詮侵略者に言い訳が通じるはずがない。
「退避」
タバサが直ちにシルフィードに命令し、シルフィードはゴドラ星人から距離をとる。が、ゴドラ星人はタバサたちを逃すまいと、手からエネルギー弾を飛ばす。
「きゃ…!」
それを軽快に避けていくシルフィードだが、激しい揺れが生じたことで、思わずルイズは詠唱を中断してしまう。まだ詠唱が完了していなかったのに、ここで敵が切り札を出してくるとは。回避のためとはいえシルフィードが激しく揺れるせいで詠唱に集中できなくなってしまった。
(サイト…お願いだから早く来てよ…!)
ここにはいない使い魔に、助けを求めるルイズだった。


その頃のサイトたちは…。
「くぅぅ…きっつ」
瓦礫に埋まってしまった、多数の生徒たちの救助。および塞がられた出口の確保。その両方をこなすのは、彼らにはきつかった。どう考えても長時間を要する上に、作業場所が狭い。そして、いずれこの場所の酸素が切れるというタイムリミット付き。さらにはサイト・ミシェル・アニエスの三人はともかく、ギーシュたちはまだまともに体を鍛えたことがない。特にふとっちょのマリコルヌに至っては明白だ。
「うぅ…もうだめだぁ」
「うぅ…だめ…もう手が動かない…」
何度シャベルで掘っただろうか、マリコルヌに続き、ついにモンモランシーが限界を訴えた。ここで死にたくないから頑張ってきたが、肉体的疲労が影響して頑張ることもできなくなるのでは…。
「諦めるな…!とにかく根性で…掘り進むんだ…!!」
一方でアニエスはいまだ根性を支えに作業を続けていた。瓦礫をつるはしで砕きながら、下に埋まっている生徒たちを探していく。これまでに何人か見つけてきたが、それ以前にこの狭い閉鎖空間に埋まった生徒たち全員を置いておくのは難しかった。
『くっそ、このままじゃやっぱらちが明かないぞ。こうしている間に、俺たちが来る前に星人たちが集めていた魔法学院の生徒たち、きっと星人たちの手でどっかに輸送されているかもしれねぇ』
サイトの作業中、ゼロは一つの予測を立てた。それは、こうして自分たちが出口のない空間の中で悪戦苦闘している間に、ボーグ星人たちがすでに集め洗脳を完了させた魔法学院の生徒たちの安否だ。一定期間毎に、宇宙船などであらかじめ自分たちしか知らない場所へ運び去ってしまった可能性がある。そうなってはゼロでも見つけられる可能性が圧倒的に低い。ギーシュたちに自ら奮い立つことを覚えさせるのも大事なのだが、サイトとしてもこの場所でいつまでもとどまり続けることは本意ではなかった。
「地上は、まだなのか?」
レイナールはつるはしを杖代わりに体を支えながら額の脂汗を土まみれになった制服の袖でふき取る。
「くそ、せめて地上から救援が来てくれたら…!」
思わずミシェルがそうつぶやく。こんな時に希望的観測を口にすることは弱気になっていることを露呈していることになるともいえる。だが言わずにはいられなかったし、まだ諦め切れないからこそそれを口にしてしまう。
だが、願いが届いたのか、突如ギーシュが掘り進んでいた壁に、振動が走り出した。
「な、なんだ!?」
いったい何がどうしたのだろうかと、一同が作業を止めて注目すると…。
「モグ!」
ズボッ!と音を立てながら、つぶらな瞳を持つ大きなモグラが顔を出してきたのだ。
「こいつは確か、ギーシュの…!」
「お…おぉ、ヴェルダンデ!!ヴェルダンデじゃないか!!来てくれたのか!!」
自分のかわいい使い魔が現れたことに、ギーシュは嬉しさのあまりヴェルダンデを抱きしめた。
「あぁ、我が使い魔ながらなんてこと…!僕の危機に駆けつけてくれるなんて!僕は今ほど君という使い魔を持てたことを幸運に思えたことがないよ!!」
「なんだ、そいつはお前の使い魔なのか?」
突然現れたビッグサイズのモグラに、ミシェルは目を丸くする。
(そっか、俺とルイズのパターンと同じように、ヴェルダンデも主であるギーシュのピンチを察して…!)
サイトはワルドとの戦いの直前、まるでルイズに危機が訪れることを予知したかのように、彼女の視界を一時的に自分の目で見たことがある。ヴェルダンデも同じなのだ。まして、ギーシュが溺愛しているだけあり、ヴェルダンデもご主人様への忠誠心が強かったのだ。
「ヴェルダンデがいたのを忘れるなんて…灯台下暗しというか…でも、助かったわヴェルダンデ」
モンモランシーはこの時のヴェルダンデがとても頼もしく見えた。なんにせよ、ヴェルダンデが来てくれたのならもう心配はない。
「よしヴェルダンデ!早速だが地上への出口を掘り進んでくれ!大至急だ!」
主からの高らかな命令にヴェルダンデは「モグ!」と鳴いた後、迷うことなく地面を掘り進み始めた。それからたったの数十秒、ギーシュの前に戻ってきた。もう出口へのルートは確保したのだ。
「よくやったヴェルダンデ!やっぱり君は最高だ!」
「なんだよ、ギーシュのモグラがいたなら最初から…そうしてくれたらよかったのに」
「ほんとだよ…」
ギーシュがヴェルダンデを褒める一方で。あっさりと作業を終わらせたヴェルダンデを見て、少し溜息交じりになるレイナールとマリコルヌ。しかしその二人を見かね、アニエスが口を挟んできた。
「何を弱気になってるんだお前たち。必ずしもあの使い魔が助けに来るとは限らなかったはずだ」
「それは、でも…使い魔は主に絶対忠実って話だしぃ…」
「その使い魔がいつ、どのような形で事故にあったことで、主のもとに馳せ参じることができないこともあるはずだ。確かに使い魔はお前たちの力の一端かもしれん。だがそれがいつでも使うことができるとは限らん。それを考慮したうえで、常に万事に備えることは、お前たち貴族も学ぶべきことだと私は考えている」
「アニエスさんのいうとおりだぜ二人とも。俺たちにはウルトラマンっていう救世主もいる。けど、彼らがいちいち駆けつけてくるとは限らない。それに、頼れるやつがいるからってだらしなくなるような奴らが、たとえウルトラマンでも喜んで守ってくれると思うか?」
常に地球人はウルトラマンを頼ることができない。頼りすぎてもいけない。そもそも自分たちの力のみで、地球を守ることに価値がある。だからサイトは、アニエスの意見には全面的に肯定した。
「ううぅ…」
的確なことを言われてレイナールとマリコルヌは彼女の言いたいことを理解し何も言えなくなる。その意見にはサイトは心の中で全面的に同意した。
「さあモンモランシー、まずは君から外に!」
「あ、ありがとう、ギーシュ…」
やはりというべきか、ギーシュは真っ先にモンモランシーを、ヴェルダンデが掘った地上への出口ルートに入れた。
「やっぱりモンモランシーかよ。ひいきだ…」
「レディファーストといいたまえ」
文句を垂れるマリコルヌだが、ギーシュがぴしゃりと言い返す。
「言っておくが我々と女扱いするなよ。先に行くのは学生であるお前たちの方だ」
自分ももしかしたら同じように扱われると予測したアニエスが、あらかじめギーシュに警告する。彼女たちは女性だが、それ以上に国のために戦う誇り高き戦士。この場で女扱いするのは逆に侮辱というものなのだろう。
モンモランシーに続き、レイナール、マリコルヌの順で穴に入る。そして続いてギーシュが入り、彼らはヴェルダンデの掘った穴を通って、地上へ脱出した。
「次は…」
次に脱出させるのは瓦礫から引っ張り出した生徒たちだ。しかしまだ意識を保っている生徒は少なく、たとえそうだとしても歩くことが難しい者はレビデーションの魔法をかけてもらうことで脱出してもらった。
「さあサイト、今度はお前が脱出するんだ」
最後の一人を脱出させたところでアニエスがサイトに脱出を促してきた。
「俺は最後でいいですよ。それよりもお二人が先に脱出してください。俺はまだ瓦礫から出てこられない生徒たちを掘り出しておきます」
「それは私たちに任せろ。これ以上お前の手を借りるのは立場としては…」
しかし、アニエスがそこまで言いかけた時だった。

ガシャアアアアン!!

突然激しい地響きが発生し、天井が崩落し始めたのだ。
「うわああ!!」
「ミシェルさん!」
その際、奥にいたミシェルの方に天井が崩れたことで瓦礫が降りかかってきて、サイトが真っ先に彼女のもとに駆ける。
「サイト、ミシェル!」
アニエスが彼らのもとに行こうとしたとき、彼女を阻むように瓦礫が落ちてきた。アニエスはとっさにそれを後ろに下がることで避けることができたのだが、結果としてサイトたちとの間に瓦礫によって出来上がった壁ができてしまった。
「二人とも、大丈夫か!?」
「俺は大丈夫です!」
アニエスの呼びかけが聞こえ、サイトは起き上がって瓦礫の壁の向こうにいるアニエスに自分の無事を伝える。
「どうしたんだよミシェルさん!起きてくれ!ミシェルさん!ミシェルさ…ごほっ!げふ!」
ミシェルの名前を読んで彼女の意識を呼び起こそうとしたが、まずいことに彼女から呼吸をしている様子はなかった。
「どうしたサイト!?ミシェルに何があった!?」
「ミシェルさんの意識がありません!」
「なんだと…!」
今の崩落が急所に当たったのか!?さっきからサイトが呼びかけてもミシェルの意識が回復しない。
しかもの外着、彼らを追い詰めるかのようにゼロからの警告が入ってきた。
『サイト、まずいぞ…地上から怪獣の気配を感じる!』
「何!?」
こんな時に怪獣だと!?なんてことだ。もはや星人討伐や救助どころじゃなくなってきた。
「いったいどうしたんだサイトよ!まだ脱出でき…な!?」
サイトが心配になってきたのか、ギーシュがヴェルダンデの穴を通って単独で戻ってきた。しかし、視界に飛び込んできた瓦礫の山と、サイトの姿がないことに驚く。
「ギーシュ!アニエスさんと一緒に先に行け!」
「だ、だがサイト!君は…!」
「いいから行け!ヴェルダンデの掘った穴で脱出しろ!ここはもう長く持たないぞ!」
「だ、だが…!」
ここでサイトほどの男を見捨てろというのか。躊躇うギーシュだが、。アニエスは彼の肩を掴む。
「あいつの言うとおりだ。ここは一度地上に出るぞ!」
「さ、サイト!!」
彼女に無理やり引っ張られる形で、ギーシュはアニエスと共に地下の空間から脱出した。ギーシュたちのいる瓦礫の向こう側から音が聞こえなくなったのを確認し、再度サイトはミシェルの容体を確認した。
「…まだ息はある。けど、ここから脱出するには…」
もう変身して、無理やりにでも外に出るしかない。幸いさっきギーシュたちが去ったしすでに危機的状況であるので、遠慮する理由はもうない。
『もうこれ以上時間はかけられない!ゼロ!』
『よし、行くか!』
サイトはミシェルを腕の中に抱えると、意を決してウルトラゼロアイを取り出し、装着した。、
「デュワ!!」



地上のルイズたちは、ゴドラ星人を相手に防戦一方だった。
「……」
この時、木陰から密かにその戦いの光景を眺めている人影があった。影の中から見え隠れするその顔は端正なものだが、その目は鷹のように鋭く研ぎ澄ませてあった。
静かに観察していたその人影は、懐から一つの…月の光で反射した手のひらサイズの機器を取り出した。
「さあ…行っておいで」
木陰から顔を出し、月の光で見えたその瞳は…オッドアイだった。その目の主である若い男は、手に持った機器を掲げると、その機器から電子音が鳴りだした。


【バトルナイザー、モンスロード!】


「ふん!!」
ちょうどその時、ルイズたちの乗るシルフィードに向け、ゴドラ星人の手が伸びてきた。エネルギー弾を避け続けて披露がたまっていたシルフィードの動きが鈍くなり、ついにその手が届きそうになった。
「きゃ…!!」
魔法を詠唱している暇もなく、仮に撃つことができたとしても、今のルイズたちの精神力ではとても星人を倒せるだけの力などなかった。
目を覆うルイズたち。
ちょうどそのとき、アニエス・ギーシュもヴェルダンデの掘った穴を利用して地上に来た。
「ギーシュ!あれ!」
彼らを待っていたモンモランシーとレイナール・マリコルヌの二人。「ルイズ!」
「それにキュルケにタバサもいるじゃないか!」
「まずいぞ、このままじゃ彼女たちが…!」
モンモランシーが上空にて、シルフィードに乗りながら成人の攻撃を回避し、魔法で応戦するルイズたちを指差す。しかし同見ても旗色が悪すぎた。
アニエスは、危機に陥っているルイズたちを見て、銃弾を愛用の銃に装填した。
力及ばずなのは目に見えているが、それでも陛下から命を守るように命じられている。なんとか自分の方に注意を引かせて逃がさねば。

しかし、ここで誰もが予想もしなかった事態が起こった。
「ぬおおおおお!?」
突然ゴドラ星人の悲鳴が響く。何かに殴られたような音がした。ルイズたちは、何が起こったのだろうかと目を開ける。すると、驚くべきものをその目に刻み込んだ。


「キシャアアアアアアアアア!!!」


「ひ…」
突然聞こえた獰猛な鳴き声に、身をこわばらせた。
三日月型の巨大な角と鼻の上の角、後ろから延びる巨大な尾。

ルイズたちの前に現れたその巨大な影は……

かつて初代ウルトラマンを苦しめたほどの力を持つ怪獣…


『古代怪獣ゴモラ』だった。

 
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