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龍が如く‐未来想う者たち‐

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秋山 駿
第二章 交わる想い
  第九話 居場所

サイの花屋。
彼は、そう呼ばれる存在だった。
地下に潜り、あらゆる手段を使って情報を集める。
情報の横流しをしたため仕事をクビになり、横流しに使っていた花束を偽名として名乗るようになった。
警察にも極道にも属さない花屋の下が、今のところ1番安全である。


温泉街になった賽の河原を抜け、奥へ通された秋山と大吾。
そこには大量のモニターと、見馴れた姿が。


「社長!!」
「は、花ちゃん!?」


8時間ぶりにそのふっくらした花ちゃんの姿を見た秋山は、思わず力が抜ける。
なんだかんだ言っても、花ちゃんの側が1番安心するからだ。


「喜瀬の組員が、秋山の店まで乗り込んできたようでな。彼女が危険だと思い、ここで匿うことにした」
「すみません、助かりました」
「怪我した奴も、今は眠ったようだ。安心しな」


葉巻を咥え、小さく花屋は笑う。
モニターには、さっきまで秋山達がいた場所が映っていた。
秋山を見つけ、助けに向かわせてくれたのだろう。
世話になりっぱなしで、花屋には頭が上がらない。


「どうやら、事態は大事らしいな」
「花屋……いえ、花屋さん。全部、俺の責任です」
「いや、堂島大吾……お前じゃない。俺には、勝手に7代目争いおっ始めた幹部が悪いようにしか見えねぇ」


もう既に花屋は、かなりの所まで情報を手に入れてる様だった。
だからこそ、花屋に聞きたい。


「この争いを終わらせるには、桐生さんが必要だと俺は思います」
「……残念だが、桐生の情報はまだ無い」


ダメだった。
あの花屋でさえ、桐生の情報は掴んでいない。
だが代わりにと、ある情報を口にする。


「東城会直系の、宮藤は知っているか?」


宮藤……すっかり忘れていたが、まだ姿すら見せていない。
だが宮藤は、幹部の中ではかなりの実力者と聞いた。
そんな奴が、この一件で動かない訳がない。


「奴には気をつけろ。桐生に関わってる」
「桐生さんに、関わってる?」
「東城会7代目の座の鍵は桐生だと言って、最早内部抗争が起きるほどだ。特に喜瀬、足立、宮藤が危ねぇ」
「俺の知らない間に、そんな事が……」


大吾は下唇を噛み、悔しそうな顔を見せる。
東城会トップの座につきながらも、内部をまとめきれていない事に苛立ちを覚えたのだろう。


「社長、さっき伊達さんがウチに来たんです」
「伊達さんが?」
「秋山にこれを渡してくれって、紙を渡されて……。花屋さんが助けてくれる、少し前でした」


秋山の近くに寄り添っていた花ちゃんが、紙を手渡しながらそう言った。
どうやら伊達からのメッセージのようだ。


「遥は神室町ヒルズの何処かにいる……か」
「澤村遥、彼女がどうかしました?」


鋭い目を向けた大吾が問いかける。
秋山は低く呻きながら、肩を落とした。


「喜瀬組に攫われたんです。それで伊達さんが捜してくれてたんですが……」
「神室町ヒルズの何処かにいると、そう書いてあったんですね」


大吾の言葉に、秋山は頷いた。
手を伸ばせば届いた距離なのに、何もできなかった。
そう思う度、苛立ちがさらに募る。
花屋は葉巻を咥えると、またモニターの方に向き直った。


「遥はヒルズの15階、今は何も店舗が入っていないテナントにいるようだ」


映し出されたモニターに、椅子に座った喜瀬と縛られた遥の姿があった。
何かを話しているようだったが、よく聞こえない。


「堂島さん、ここにいてください」
「えっ、でも……秋山さんお一人で行くつもりですか?」
「堂島さんが行くと、話がさらにややこしくなります。麻田も動けないなら、俺が行くしかないです」


もう、あんな思いはしたくない。
谷村と共に叩きのめされた悔しさ。
大切なものを失う恐ろしさ。
そして……


「何だか俺、桐生さんに感化されすぎたかな……」


自虐的に笑うと、そのまま1人で出口に向かう。
扉を閉じる前に、心配そうに秋山を見る花ちゃんの顔を見た。
振り回してばかりで悪いな……。
心配させてばかりで、本当に大切な人を困らせる。

秋山は花ちゃんに向け、親指を立ててニコリと笑った。
完全に扉が閉まると、大吾と花屋はお互いの顔を見る。


「何だったのでしょう、今の」
「まぁ、秋山なりの言葉だったんじゃないか」


花屋が花ちゃんを見ると、強い眼差しで扉を見つめる花ちゃんの姿がそこにあった。 
 

 
後書き
次回は3/21更新
次回話は本編から少し離れた番外編ストーリーになります 
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