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歌集「春雪花」

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 冬暮れの

  朝に透る

   蒼き空も

 君なく侘し

    有明の月



 冬の終り…久々に晴れ間の広がる青い空…。

 淋しい雪を降らせる雲はどこかへと消え去り、目映いばかりの青…。

 だが、心は晴れることなく項垂れたまま…。

 君は私の隣にはいないのだ…それを思えば、久しい青空も虚しく感じてしまう。

 そんな青空を眺めていると、白妙を纏った山際に、今にも消えそうな月が出ていた。

 彼の中の私も…きっとあんな月影のように淡く…いつの日か消え去るのかも知れない…。



 君訪れし

  夢とも見しや

    わかぬまに

 白雪とけし

   間もならなくに



 不意に店へと訪れた彼…遊びに帰ってくるとは聞いてはいたが…。

 突然の訪問に、私は平静を装うしかなく…これは夢ではないかと思った…。

 しかし、彼は私と共に在るためにそこにいる訳ではないのだ…然して時を経ずして、彼は帰ってしまった…。

 それこそ、雪が地面に落ちて消える…そんな間もないほどに…。

 結局私は…何を示すことも出来なかった…。


 喜ぶことも…淋しがることも。

 愛しいと…彼に伝えることも…。



 
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