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IS 〈インフィニット・ストラトス〉 飛び立つ光

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神の世界へ

例えどれだけの月日が経とうと、私は自分の罪を許す事は出来ない。

大切な家族を守れなかった自分を、力がなかった自分を。

誰が言った。あれはしょうがない、貴方のせいではないと。

地獄の長である閻魔も言った。それは貴方の罪ではないと。


―――いや罪だ。誰が何というがあれは罪というほか無い。あれから毎日、私は欠かさず祈りを捧げていた。守りたいと思っていたものも守れない神の祈りなど大したものにはならないだろうが少しでも何かをしたかった。彼らに償いをしたかった。

我が心否魂へと打ち込まれた楔は永遠に消える事はないだろう。どれだけ美味い酒を飲み干そうが美味なる食事をとろうが、愛する女をこの手で抱いたとしても。今もあの神がのうのうと生きていると考えるだけで怒りのマグマがグツグツと沸き立つ。

「覇狼さん、準備出来ましたよ」
「では行きましょうか……神の戦争へ」

今弟子と共に天へと昇っていく、目指すは神々の居城。あの最高神と準最高神の審判ならば安心して戦えるだろう、ああ……気分が高揚しているのを感じる、復讐が出来ると解った人間はこのような気持ちなのだろうな。


―――その世界は煌やかで美しい。建物も道も、全てが美しいと言える。其処に暮らす者達もとても明るい顔つきであった、子供は駆け回り大人達は楽しそうに過ごしている。此処は神界。神々とその従者達の住まう世界の中心にして頂点の世界。そんな世界に二人の神が姿を現した。

「此処が……神の世界……」
「………何時振りですかね、此処に来るのは」

一人は人間の身であったが時の流れを支配する龍の力を取り込み、時間の神となった男。霧雨 閃輝。そしてもう一人、全ての龍の祖して頂点。地球という星そのものの神ともいえる男。龍刃 覇狼、最強の神の一人。


物珍しげに神の世界を見渡す閃輝を引き連れて歩みを続ける覇狼、彼らが向かうのはこの世界の中心に聳え立つ巨大な神殿。神々の頂点に立つ女神とその夫である神の城。

「なんていうか……凄い所ですね」
「一応神の世界ですからね。神そのものに神の従者達のみが入る事が許された世界、元々は人間界と変わらない物でしたが何時しかこのような煌びやかな物になってしまったのですよ」

呆れたような声をあげながら歩みを止めない覇狼は周囲からの視線を鬱陶しそうに振り払いながら弟子である閃輝と共に歩み続ける。何故視線を向けられるかと言えばそこに居るのが龍神と神の力を持った龍の力を得て神となった人間だからだ。

龍はそもそも人間に次いで神に最も近い幻想種、存在しているだけで神に近い力を生産しそれを使用する。気性の荒い龍は必要であれば格が違う神であろうが躊躇無く牙を向く。その龍達が唯一敬愛し絶対的に命令を従う存在こそが龍の祖である龍神だけ。そしてそんな龍神に認められ神の龍の力を得て神となった人間も十分すぎるほどに視線を引く理由となっていた。

「覇狼さん……」
「ええ気づいていますよ、私から離れないように」

周囲から向けられている視線は興味だけではない、悪意に満ちた視線なども含まれている。特に覇狼は神の中でも大きすぎる力を有しているからか良く思われていない。神が持つ力を明らかに超えている、それなのに上から力の制限などを一切受けていないのが主な理由だろう。そして今、一人の中級神が覇狼の頭部へと向けて力を使用しようとした時

「っ!!?ぐああああああ!!!!!!????」

突然その神は苦しみ悶え始め地面へと身体を転がした。閃輝は驚いたようにそちらへと視線を向けるとそこには二の腕から先が捥げ地面へと転がっている様子であった。腕は段々と光の粒子へとなって消えている、覇狼は少々肩をすくめ目の前にいる男へ口を開いた。

「お久しぶりです。ですが出会い頭にそれは刺激が強すぎますよ?」
「それは勘弁して欲しい、こちら側の神が無礼を働いたのだ。それを制裁する必要があった」

覇狼の目の前にいた男は地面で苦しみに悶えている神の元へと向かい冷たく侮蔑の視線を投げかけた。

「貴様今何をしようとしていた……?」
「じゅ、準、最高、神様ぁ……何故、何故こんなぁ……!?」
「俺の質問に答えぬか、中級神も堕ちたものだな。貴様の言葉に答えるとすれば貴様よりも遥か上の神に手を出そうとしたからだ、貴様には地獄で償いを受けて貰う。ハデスの元で罰を受けるが良い」

腕を振るうと一瞬で消え去った神。その神は地獄へと送られ償いの仕事を熟させられるだろう。神を断罪した神、外見はただの人間にしか見えない姿だ。黒いシャツの上に赤いジャケットを羽織っている男、だがその男から溢れ出しているオーラは他の神を圧倒するものである。

「誠に申し訳無い事をしました。準最高神として謝罪致します、龍神 龍刃 覇狼殿」
「気にしておりません。私と閃輝君に実害はありませんでした、それより顔を上げてくださいキョウスケ君。それと敬語は無しで良いと言ったと思いましたが?」
「……そうでした、すまなかった覇狼」
「うむ。それでこそキョウスケ君です」


「あ~覇狼さん!!お久しぶりですぅ~!」
「こちらこそお久しぶりですエクナさん、1000年ぶりぐらいでしょうか?」

神殿の頂上部に位置する、ある執務室。そこへと通された覇狼と閃輝はそこで誰も見惚れるほどの透き通るかのような美しい蒼い瞳に綺麗に輝く金髪持った女神と対面した。女神は嬉しそうな声を上げて覇狼と会えた事に喜び思わず握手する。覇狼も彼女に会えた事に喜びつつその手を取る。

「あっこちらが覇狼さんのお弟子さんの新人の神ですね?」
「ええ。私の愛弟子の一人の霧雨 閃輝君です」
「初めましてですね、一応最高神をやってるエクナです宜しく」
「はっ初めましてぇ?!きききき、霧雨 閃輝ぃですぅ!?」

ガチガチと緊張しつつ伸ばした手でエクナの手を取り握手をする閃輝。目の前で全ての神の頂点に立つ存在とその夫である準最高神と対面している事で緊張がMAXになってしまい機械人形のようなぎこちない動きしかできずにいた。そんな閃輝に優しく笑いかけて挨拶をするエクナ。

「時の神かぁ~、丁度クロノスさんが人手を回して欲しいって言ってたから有難いなぁ~覇狼さんが認めてるんだから実力だって立つだろうし!」
「おやおやこれは随分と高評価ですね閃輝君?」
「え、えっと俺はその……そういう仕事は遠慮したいです……子供と妻達のそばにずっといたいので……」

閃輝の回答にまぁ!と嬉しそうな声をあげつつキョウスケへと顔を向けるエクナ。

「聞きましたキョウスケ様ぁ!?この子ったら神の仕事より奥さんや子供の方が大切ですって!!そんな風に思われる奥さん達が羨ましいなぁ~」
「そこでなぜ俺に振る。俺とて十分お前を愛しているつもりだが」
「いやぁんもう覇狼さんの前で惚気ないで下さいよぉ~♪」

くねくねと身体を揺らしながら顔を赤らめている最高神の姿を見た閃輝は何故か緊張しているのが馬鹿らしくなってきたのか全身から力を抜いて白けていた。

「覇狼さん……これが本当に最高神何ですか……?」
「ええ。これが最高神です、普段は夫のキョウスケ君に夜這いを仕掛けまくってる色神ですけど」
「……まあうん、閃輝とやら別に緊張する事など無いぞ。ぶっちゃけ普段のエクナに神の威厳を求める方が無理だ」
「御二人とも酷くないですか?!閃輝君私は偉いんですからどうぞ尊敬してください!」
「………まあ尊敬出来る所はありますね……その図太い精神と色欲だけは」
「新人の子にも見下された!?」

残念美人な神との挨拶も済んだ所で覇狼は本題へと話を進めた。

「例の神、参加しますよね」
「ええ確認していますよ、矢張り復讐ですか?」
「そんな事じゃないですよ。言うなれば……けじめを付けに来たんですよ私は」
「了解しました。では龍刃 覇狼と霧雨 閃輝の参加を正式に認めます」

時は来た。神々は後悔するだろう、嘗て最も恐れた最強の龍が磨きこんできた牙と爪を、自分達へと向けるのだから。 
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