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おぢばにおかえり

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第二十三話 入学テストその二

「あんなことしていたらねえ」
「巨人の戦力低下には貢献しているけれどね」
「おかげで阪神今年優勝したし」
 このことは本当に嬉しかったです。
「ロッテに惨敗したことは。まあ仕方ないか」
「・・・・・・それ言わないでおきましょう」
 このことにはすぐに突込みが入りました。
「言ったら思い出すから」
「思い出したくないわね、あれだけは」
「まさか。あんなに負けるなんて」
 テレビでは観ていない娘も多いのに何故かあの時の惨状が目に浮かびます。
「四連敗のその内容がね」
「三試合連続二桁負けだったし」
「しかも甲子園でロッテが胴上げ」
「天に舞うボビー」
 それでも皆悪夢を言い合うのでした。悪夢というものはどうしても思い出してしまうものですけれど何故か皆このことを取り憑かれたように言います。
「思い出しても腹が立つわね」
「腹が立つどころじゃないわよ、全く」
「何であんな負け方したのよ」
 もう言っても仕方ないことですけれどどうしても言ってしまいます。
「あんなふうにね。負けるなんてね」
「全くよ」
「まあそれは置いておいて」
 話が変わります。
「さて、受験生の子達はどうかしら」
「今のところは静かね」
 試験自体は順調に進んでいます。
「何事もなく穏やかに」
「善き哉善き哉」
 ところがです。ここで。
「ねえねえ」
「どうしたの?」
 試験官の娘が一人私達のところに来て言うのです。何か変な子がいるんでしょうか。
「凄い子がいるわよ」
「凄い子って?」
「そう、凄い子がね」
 いきなり私達に対してこう言うのでした。まずはいきなり訳がわかりません。
「いるのよ。とんでもないのが」
「どうとんでもないのよ」
 まずはこれがわかりません。喧嘩とかカンニングならこれどころの騒ぎじゃないでしょうし。一体全体どんなふうに凄いのやらって感じです。
「見たい?」
「是非」
 私達のうちの何人かが頷きました。
「そんなに凄いんならね」
「どんな感じなのかしら」
「じゃあ案内するわね」
 話はどうも妙な方向に進みだしました。
「その子がいるクラスに」
「ええ。それじゃあ」
「御願いするわ」
「ちっちはどうなの?」
 一人が私に話を振ってきました。
「行くの?行かないの?」
「どうなの?」
「私は別に」
 興味があるのは事実ですけれどそれでも。今はここにいたかったのでそれに乗りませんでした。
「いいわ。ここにいるから」
「そうなの」
「ええ。それじゃあ行って来て」
「じゃあ私達だけ行って来るわね」
「暫くここの留守番御願いね」
「ええ」
 皆の言葉に頷きます。こうして私だけ残ってそこでぼんやりとしていました。暫くして皆が戻って来ると。どうもその子のことであれやこれやと話しています。 
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