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ゲーム

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第二章

「それでそうした悪い奴もいいかなって思って」
「人斬り侍になったんだな」
「もう誰彼なしに斬るね」
「農民や商人でもか」
「職人でもね」
「貴族も斬るんだな」
「昨日斬ったよ」
 ゲームの中でというのだ。
「一人旅をしていたのを見て後ろからね」
「しかも後ろからか」
「うん、ばっさりとね」
「確かに悪い奴だな」
「いや、それがね」
「面白いんだな」
「そうなんだ、妙にね」
 人斬り侍に徹することがというのだ。
「正面から斬ったりもしてモンスターや猛獣も斬りまくってるけれど」
「経験値も金も手に入るしな」
「刀がどんどん強くなっていくしね」
「血を吸ってな」
 斬ったその相手のだ。
「どんどんそうしていくよ」
「そうか、俺もそのゲームやってるけれどな」
「君はトレジャーハンターやってるんだよね」
「ああ、ダンジョンや塔にチャレンジしてな」
 そしてとだ、久則は雄太郎ににやりと笑って答えた。
「お宝ゲットしてるぜ」
「楽しそうだね」
「実際に楽しいぜ、けれどだよな」
「うん、若し僕と会ったらね」
「ばっさりか」
「そうしていいかな」
「その時は逃げるさ」
 久則は笑ったまま雄太郎に言葉を返した。
「復活させたら色々かかるからな」
「手に入れたお金とかね」
「最悪課金もあるしな」
「そうそう」
「だから逃げるさ」
「それで背中から斬られるんだね」 
 祐太郎がプレイしているその人斬り侍にだ。
「宜しくね」
「相手が友達でも関係なしさ」
「そうしてるよ、名乗ってもそうするから」
「ゲームではとことん悪い奴だな」
「それが面白いんだよ」 
 笑いながら言う雄太郎だった、そしてこの日もだった。
 彼はゲームをはじめると誰彼なしに、相手がプレイヤーでもモンスターでも生きものでもだ。斬られる状況ならば。
 斬った、そうしているうちにだった。
 キャラクターは強くなっていき最初は只の刀だった武器もだ。
 次第に切れ味を増してだ、まさに妖刀となり。
 斬れば斬る程威力を増してだ、NPCの村娘を会っていきなり斬り捨ててからだ。彼はゲームの画面を観ながら笑って言った。
「いやあ、また切れ味が増したよ」
 その妖刀の強さがというのだ。
「じゃあまた斬ろうか。次は誰を斬ろうかな」
 こう言ってだ、次の相手の場所に向かった。夜でも昼でも斬られるならだ。
 相手を斬った、ダンジョンを攻略したり盗賊を征伐したりモンスター退治をしたり戦争に参加したりはしなかった。勿論領主になったりすることもなくだ。
 彼は斬って斬って斬りまくった、そのうち斬った数は千を越えた。それで部活の時に久則に誇らしげに言った。
「千人斬り達成だよ」
「ガチでだな」
「NPCもモンスターも含めてね」
「そこまでいくと凄いな」
「うん、ゲームでもね」
「はじめてすぐなのにな」
「誰でもいいから斬ってるからね」
 それでというのだ。 
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