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イエロージャーナリズム

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第五章

「政府関係者だの色々出して」
「実名出してなくてもな」
「そうした書き方するからな」
「馬鹿な奴は信じてか」
「騒ぐってことさ」
「権威も使ってるんだな」
「政府とかマスコミであること自体のな」
 オーフェルはその権威についても話した。
「それで騙して買わせてるってことさ」
「そして信じた馬鹿が騒いでその声が大きくて」
「周りに拡まっていくことか」
「そういうことだな、だからな」
「最近ハリウッドの映画もな」
 ヘストンも映画を観る、その映画のことも話した。
「日本を悪役にした映画出て来てるな」
「フー=マンチュー博士か」
「あれ中国人だろ」
「見分けつかないもの知らずが多くてな」
 中国人と日本人のだ。
「それでな」
「あの博士も日本人って思ってか」
「日本人は悪い奴だって思うんだよ」
「ハリウッドも悪いか」
「最近はな」
「これは本当にまずいな」 
 ヘストンはその黄色い新聞を読みつつオーフェルに言った。
「このままだとな」
「最悪の状況になるか?」
「そうかもな」
「やれやれだな」
「こんな新聞読むのも馬鹿でな」
「信じる奴はもっと馬鹿だな」
「それで世の中そうした馬鹿が多い」
 ヘストンは苦い顔のまま言っていく。
「騒いで余計に馬鹿を増やしていく」
「人間何度も聞いてると信じるだろ」
「ああ、嘘かどうかわからなくなってきてな」
「嘘や間違いも何度も言うとな」
「信じる奴も出て来るな」
「信じる馬鹿がな」
 オーフェルも苦い顔で言うのだった。
「出てな」
「その馬鹿がどんどん増えるんだよ」
「本当に最悪だな」
「こうした新聞も馬鹿共もな」 
 二人で言うのだった、そして二人が危惧した通りだった。
 排日移民法が成立した、ここでヘストンは今度は自分からオーフェルの喫茶店に行ってそこでカウンターの席から店でコーヒーを淹れている彼に言った。
「恐れていた通りだな」
「そうなったな」
「ああ、本当にな」
「これはまずいな」
「最悪だな」
「こんな法律よく出来たな」
「日本人だけじゃなくて日系人攻撃している馬鹿も出て来た」
 そうした輩もというのだ。
「もう歯止めが効かなくなってきていてるな」
「もっと酷くなるな」
「果たしてどうなるか」
「わからなくなってきたな」
 二人は喫茶店で難しい顔をしていた、そして。
 西海岸での日本、日系人への偏見と迫害は強くなっていき遂に戦争になった時にだった。日系人は徹底的に迫害されて全員収容所に送られた。
 その状況に喝采を浴びる者達を見てだ、もう髪の毛がすっかり薄くなっていたヘストンは白髪になったオーフェルが店に来た時に忌々しげに言った。
「合衆国の勝利は望むけれどな」
「俺もだよ」
「今賑やかな連中後々何て言われるかな」
「ある意味見ものだな」
「黄色ィ新聞もな」
「結構なこと言われるだろうな」
 こう言うのだった、その忌々しげな顔で。二人は日系人達を収容所に叩き込み大喜びしている者達を見つつ言った。
 そしてだ、戦争が終わってかなり経ってだった。その彼等が人種差別主義者と囲まれて良識ある人々に過去の発言や行動を容赦なく糾弾されているのを冷たい目で見て言った。
「ハッピーエンドだな」
「これ以上ないまでのな」 
 二人はすっかり年老いていたがその人生の黄昏の中で言った。彼等が『幸運なことに』歴史に名を残ししたことを見ながら。


イエロージャーナリズム   完


                        2015・10・14 
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