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龍が如く‐未来想う者たち‐

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秋山 駿
第二章 交わる想い
  第八話 花屋

既に時刻は、深夜0時を回っていた。
だが神室町は、何時(いつ)になったって眠ったりしない。
眠らない街として知られる神室町にとって、ここからが本番だ。
そんな街に、秋山はようやく帰ってくる。
タクシーを降りると、真っ先に神室町ヒルズへ向かった。


「麻田!!」


ヒルズ前で麻田と大吾が座り込んでいるのを見つけ、名前を叫びながら駆け寄る。
よく見ると麻田は、足に銃弾を受けていた。
朦朧とした意識の中、秋山を探すように手を伸ばす。


「何があった!?」
「喜瀬組が……6代目を殺そうとしてたんす……。その中に、足立組組員も……」
「彼は、俺を守ろうとして撃たれました。俺が怪我して動けないのをいい事に、喜瀬は動いているようです」


どうも腑に落ちなかった。
何故足立は、喜瀬と手を組んでいるのだろうか。
写真を見た印象でしかないが、足立は1人でもトップにのし上がれる器に見えた。
よっぽどメリットがない限り、ただの力馬鹿と組むはずがない。
喜瀬を見下すつもりは無いが、秋山はどうしてもそこが引っかかった。


「とにかく、麻田の傷を治せる所へ……」
「しかし、あまり動き回るのも良くない。喜瀬組はまだ、この辺りを徘徊していますから」


焦る秋山の背後から、怒号に近い叫びが聞こえる。
喜瀬組が来たのかと身構えるが、叫んだ犯人はそれとは正反対の男。
ボロボロの服に、伸びきった髭。
神室町ではよく見かける、ホームレスの男だった。

必死に呼びかける男に、もはや頼るしか無かった。
秋山には、何となく行く先の予想がついていたからだ。


「堂島さん、きっと花屋です。行きましょう!!」
「花屋……サイの花屋か……!!」
「何してる!!早く!!」


秋山達は転がり込むように、神室町ヒルズへと入っていった。



エレベーターに乗せられた3人は、地下深くへと潜っていた。
液晶モニターに階数表示もなく、ただ体感的に深く落ちている気がしている。
麻田は息を荒げているが、秋山が肩を貸して何とか立てている。
大吾は考え事をしていたのか、正面を向いたまま黙っていた。

数秒後、ポンと軽快な音が鳴り扉が開く。
開かれた扉の先は、秋山が思っていた以上に現実離れしていた。
そこはまるで、温泉街。
観光地と間違える程建物は並び、温泉の湯気が立ち込める。


「これは……」
「悪いな、これは源泉じゃないんだ」


そう言って正面から現れた、小太りの男。
見馴れたその姿に、思わず安堵の溜息を零した。


「花屋さん、お久しぶりです」
「再会の喜びに浸りたいが、どうもそういう雰囲気じゃないらしいな」


花屋が目をやった先には、痛みを堪える麻田の姿が。
足の出血は、未だに止まらない。
ボディガードに指示を出し、麻田は別室へと運ばれた。
花屋は葉巻に火を点け、それを咥えずに秋山に切り出す。


「お前ら、桐生を追ってるらしいな」
「えぇ、でも足取りが全く掴めなくて……」
「とりあえずモニター室に来い。お前に会いたがってる奴がいる」


会いたがってる奴?
秋山は首を傾げながらも、大吾と共に花屋の後を追った。
 
 

 
後書き
次回は3月16日更新 
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