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提督がワンピースの世界に着任しました

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第08話 海軍側の話し合い

 マリンフォードにある海軍本部の一室で、二人の男が机を挟み向い合って話し合いをしていた。一方のメガネを掛けた男はしかめっ面で椅子に深く座り、一方の男は立派なひげを蓄えながら、笑みを浮かべ身体の前に腕を組んで立っている。

「先日の件に関しては、部下から簡単な報告を受けている。しかし、この時期にとんでもない戦闘力を持った正体不明の奴らが現れた、とは頭の痛い問題だな」

 深い溜息を付きながら質の良いワークデスクの椅子にズッシリと腰を落として、左手に持っている資料を読み込む男。その資料に書かれた内容に頭痛を感じて、思わず右手を額にやる。そして唸るように絞り出した言葉には、濃い疲労が伺えた。

 そんな男の疲れた様子を眺めながら、机の前に立つ男が言う。

「そこに書かれているのは、その正体不明の連中に助けられて何とか生還した者達の報告だ。生還者から聞き出せる限りの事は聞き出した。が、あまり信じられるような内容ではないがな」

 筋骨隆々の逞しい身体をした男。目の前に座り資料を読んでいる男とは逆に、背筋の真っ直ぐした良い姿勢で丸太のように太い腕を前で組み、机の前に立っている。

「センゴク、そいつらの正体に心当たりはないか?」

 手に持って読み込んだ資料に、忌々しそうに目を向けながら男が答える。
「……いや、無いな。この報告に記されている、船の形状、乗船者の特徴、そして奴らが名乗ったという”大日本帝国海軍”という名称について、心当たりは一切ない」
 センゴクと呼ばれた男は自身の記憶を探ってみたが、資料に書かれている情報と自身の持つ記憶と合致するモノを持ち合わせていなかった。

「乗員は男一名に女五名の計六名で少数精鋭。各々が高い戦闘力を持っているらしい。強い女といえば、アマゾンリリーの女系戦闘民族を思い浮かべるが、報告によると男がリーダーをして女を従えて居た。となると、どうやら違うらしい」
 いくら考えても、報告された存在の正体には辿り着けず。

「ガープ、お前の方はどうだ?」
 あまり期待しないような口調で、センゴクは目の前の筋肉男のガープに問いかける。しかし、素早く一言だけ答える。
「俺も知らん」
 ガープが考える様子もなく答えた事に関して、もう少し頭を働かせんか!とセンゴクは額に血管を浮き出させるが、深呼吸して自身を落ち着かせる。
(今は、こいつを説教している場合ではない)

「奴らの船は鉄で出来ていて、かなりの大きさらしい。そして帆を張っていないのに、信じられないぐらいのスピードで進むとか」
 センゴクの様子を一切無視して、ガープが話を進める。

「ココに書かれている、通常一週間掛かる海路を半日で辿り着いてしまったなんて信じられんな」
 資料の一部を指し示して、二人は考えを述べる。そこに書かれている部下からの報告では、正体不明の連中が所持している船が信じられないくらいに速いらしい。それは、甲板で拘束されていた海兵たち全員が目撃していて、船の上で自然によって発生した風とは違う、船が進むことで発生した向かい風を感じるぐらいにスピードが出ていたらしい。

(海軍本部が持ち合わせていない技術を使った船の存在。どこかの国が秘密裏に作った可能性もあるが、海軍内では報告は上がってきていないし、サイファーポールからも情報は降りて来ていない。そんな未知の存在の情報を1つも外に漏らさずに作り上げる事は可能だろうか。そもそも、そんなに秘密にしていた物を今更になって何故我々に知らせたのかが不可解だ)
 センゴクは、報告内容から情報を整理して色々と考察するが納得出来る答えに辿り着けずに苛立ちが募る。

「ガープ、この情報は信じられるのか?」
「俺は生還者と少しだけ話してみたが、彼らが嘘をついているようには見えんかった」
「そうか」
(ガープの奴は大馬鹿者だが、人を見る目に関しては信頼が出来る。つまり、この報告に関しては正確なのだろう)

「この海域に向かったのは海軍の貨物船は最新型だった。という事は、この船が運んでいた荷物は天竜人に贈る荷物だったんだろう? 天竜人への贈り物を紛失とは、どう対処したんだ?」
「本来の荷物に賠償金を上乗せしてやったら、納得してもらったよ」
 献上される予定だった荷物の5倍の価値分はある金を支払って、天竜人には納得してもらっていた。
「なるほどのう」
 あごひげを撫でながら、納得するガープ。


 そして、話はもう一つの問題へと移る。


「ところで奴の情報を聞きたいんだが、教えてくれん?」
「それならココにある」
 センゴクはガープの言う”奴”にすぐに思い至り、机の引き出しから一枚の紙を出してきてガープへと渡す。
 紙を受け取ったガープは、じっくりと読み始めて情報を頭の中に刻んでいく。

「一応、軍事裁判に関わる情報だから外には漏らすなよ」
「わかっとる」
 センゴクの注意を、いい加減な態度で受け流しながら資料を読み続けるガープ。センゴクの渡した資料には、ゴール・D・ロジャーの名前が記されていた。

「奴の処刑は一週間後、か」
「あぁ。コレで多少は海も静かになってくれればいいが、どうやら仕事は増えるばかりらしい」
 大海賊として名を馳せていたゴール・D・ロジャーが突然自首してきた事で、海軍本部は大騒ぎとなり多くの人間が様々な処理に追われていた。
 その処理がやっと一段落した頃になって、今度は正体不明の連中が現れた。そして、一週間後にゴール・D・ロジャーの処刑が行われる。

 どうやら、海が静になるような気配は一切無かった。


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「奴の処刑まであと一週間か……。何も起きなければいいが」
 ガープが部屋から出て行った後、センゴクのつぶやくように漏れた言葉は願望だった。

 一週間後、センゴクの心配は杞憂に終わりゴール・D・ロジャーの処刑は無事実行された。
 しかし、海賊王ゴール・D・ロジャーの処刑という出来事は、海軍たちにとっては巡り合わせの悪い時代、海賊たちにとっては新たな希望の時代の始まりとなった。

 大海賊時代の幕開けである。 
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