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ドラゴンクエストⅤ~紡がれし三つの刻~正式メンバー版

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一の刻・少年期編
  第十四話「訪れた春」

氷の館からの帰り道、ザイルは心配させた祖父に謝り安心させる為にも先に洞窟に帰ると言い出した。
もちろんその後、ポワンに謝る為に妖精の村に行く事は約束していた。

「リュカ、お前にも迷惑かけたし…その、悲しい想いをさせちまって…悪かったよ」
「もういいんだ。そのかわりお爺ちゃんやポワン様にもちゃんと謝るんだよ」
「ああ、それは約束するよ。じゃあまた何時か会えるといいな」
「きっとまた会えるさ。だってもう僕らは友達なんだから」
「ああ、じゃあ“またな”」
「うん、“またね”」

妖精の村と洞窟との別れ道で二人は握手を交わし、其々反対方向に歩いて行く。
そしてリュカ達は妖精の村へと帰り付き、今はポワンの前に立っている。

「リュカ殿、貴方達の闘いは私の心の目を通して見ていました。……貴方には辛い役目を押し付けてしまった様ですね、ごめんなさい…」
「うう…、ぐすっ」

ポワンは涙を零すリュカを優しく抱きしめ、リュカもポワンの胸の中で静かに泣き続けた。
そんな姿を心配そうに見ているベラ達だが暫くすると、目を真っ赤に腫らしながらもリュカは顔を上げてニコッと笑顔を見せた。

「さあ、ポワン様。早く春風のフルートで春を呼ぼうよ」
「ええ、そうですね。では皆、“春風の儀式”を行いましょう」

「「「「はい、ポワン様」」」」

ポワンが春風のフルートを吹き、妖精達はその音に合わせて踊る。
ベラも皆と共に踊っており、先ほどまで降っていた雪はそのまま桜の花びらに変わり、木々の蕾は一斉に芽吹いて花を咲かせる。
此処に、長い冬は終わりを告げ、命が芽吹く春が訪れた。

「春来た、暖かい」
「春来た、雪やんだ」
「春来た、花咲いた」
「春来た、マー達嬉しい」

「「「「やぁーーーーー♪」」」」

「では続けて、リュカ殿」
「何、ポワン様?」
「雪の女王が残したクリスタルは持っていますか?」
「うん、ここにあるよ」

リュカは仕舞っておいたクリスタルを取り出すとポワンに渡し、ポワンはそれを手にして何やら呪文らしき物を唱えるとクリスタルは光りを放ちながら空中に浮かび上がる。

ポワンが透き通る様な声で歌い出すと妖精達もそれに習って歌い出す。
するとクリスタルは光の粒になって広がり、そして再び一つの塊になるとその中から一人の赤ん坊が産声を上げながら現れ、ゆっくりとポワンの腕の中に降りて来る。


「おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ」

「ポワン様、その赤ん坊はもしかして」
「ええ、雪の女王の生まれ変わりですよ。この子は私達が責任を持って、新たなる雪の女王として育て上げて見せます」
「そうかー、良かったね」

リュカは再び零れて来た涙を袖で拭うと、眠りについた赤ん坊の顔を覗き込みながら笑う。

「では、名残は尽きませんが別れの時が来たようです」

ポワンがそう言うとリュカは寂しそうにベラを見つめ、彼女も同じ様に見つめ返して来る。
本来、人間界と妖精界は交流を持たないのが当り前で事態が収拾された今、リュカ達も人間界へと戻らなければならなかった。
そしてそれは短い間とは言え、仲間として共に過ごしたベラ達との別離をも意味していた。

「寂しいね、ベラ」
「リュカ、私も寂しいわ」

二人は別れを惜しむように抱きしめ合う。
そんな二人を見つめながらポワンは告げる。

「リュカ殿、もし貴方が大人になり私達の力が必要になった時には私達は全力で貴方の力になる事をお約束しましょう」
「じゃあリュカ、暫くお別れね」
「うん。…ベラ、絶対また会おうね」

リュカは小指を立てて手を差し伸べるとベラも笑顔でその小指に自分の小指を絡めた。

「「「「リュカ…」」」」

その呼びかけに振り向いて見るとヒー達が寂しそうに俯いていた。

「リュカ、行っちゃう?」
「リュカ、帰る?」
「リュカ、お別れ?」
「リュカ、バイバイ?」

「ヒー、寂しい」
「ファイ、寂しい」
「プリー、寂しい」
「マー、寂しい」

「「「「やぁ~~~~~」」」」

リュカはうなだれている彼等に近づくと笑顔で話しかける。

「お別れなんかじゃないさ!」
「「「「や?」」」」

「今、ベラとも約束したんだ、また必ず会おうって。だからヒー達ともまた会おう、絶対に!」
「そうだよ、きっとまた会えるさ。だってボク達は仲間で友達なんだから!」
「ガウゥーーーン!」
「ピイピイ♪」

「「「「ホント?」」」」

リュカはニコッと笑うと拳を突き出して叫ぶ。

「男同士の約束だよ!」

それを見てヒー達も笑顔になってリュカの拳を握っていく。

「ヒー、約束する」
「ファイ、約束する」
「プリー、約束する」
「マー、約束する」

「「「「また、リュカと会う」」」」

「「「「「やーーーーー!」」」」」

そして光が辺りを包んだかと思うとリュカは自分の家の地下室に立っていて、その手には淡い香りを放つ「桜の一枝」が握られていた。

「約束したよ、きっとまた会おうね。ベラ、そしてヒー達も」

リュカはそう呟いて階段を昇って行った。

「サンチョー、おなか減ったーー!」
「はいはい、ではそろそろお昼にしましょう。旦那さまを呼んで来てもらえますか」
「うん、分かったーー!」


こうして長き冬は終わりを告げ、サンタローズの村にも柔らかな日差しが射す春が訪れていた。


=冒険の書に記録します=


《次回予告》

リュカに何があったのだろう、少し目を離した隙に何やら一段と成長している。
力だけでは無い、心まで成長している。
スラリンよ、教えてくれ。リュカに何があった?

次回・第十五話「スラリンとの語らい、そして運命の城へ」

リュカ、我が息子よ。


 
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