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ソードアート・オンライン 瑠璃色を持つ者たち

作者:はらずし
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第十七話 ぐだぐた逃走劇

 
前書き


いやぁ、お久しぶりです! はらずしです。

前に投稿したのが十月あたりだったので四ヶ月あまり
放置していたことになりますね〜。

………ほんっとスンマセン!

中々時間がかかりましてね、シリカの話と同様に
一気に投稿する形になりました。

前置きはさておき、お待たせしました!
ではどうぞ!


 

 






ザッ、ザザッ、ザッ、ザザッザッ。

不規則に聞こえてくる足音は、一人の笑い声で掻き消されそうになっていた。

「くくっ……アッハッハッハッ!かぁ〜、面白かったなぁ!あの拍子抜けた顔!だっはっはっ!」

それはもう愉快そうに、腹を抱えてまで笑い、楽しそうなのを隠そうともしなかった。
リュウヤのその顔に、ついさっきまであった表情などどこにもない。

その明るさは暗い夜の不気味な森とは真逆。明るすぎてそこだけが昼のように思えるほどだ。

「はっはっはっ!ーーーえほっ、ゲホゲホッ!」

森全体に響き渡りそうな大声で笑うリュウヤ。
ついには笑いすぎてむせ返っているところを、隣の少女がむくれながら背中をさすった。

「そんなに笑わなくてもいいじゃない……」

顔を赤くして羞恥に頬を染めるアスナの言葉に張りは感じられなかった。
以前ならレイピアを突き立てていたところだが、今回はそんな気は起こらなかった。
それは未だ先ほどの出来事から復帰できていない証拠でもある。

しかし、そう簡単に忘れられるハズもない。
一時本当に死を感じたのだから。




「…………え?」

リュウヤの武器がポリゴンの身体を貫く音がアスナの耳に聞こえた。
音の発生源は、なんとアスナの真後ろ。大熊が後ろから襲いかかろうとしていたのだ。

それをリュウヤは投擲一つで難なく撃破。断末魔を奏でながらポリゴンのカケラと化したモンスターはその場から消え去った。

リュウヤは落ちた武器を手に取り、くるんと回転させると同時にアイテムストレージにしまった。

「ここは隠蔽(ハイディング)スキルの高いモンスターばっかだから気をつけろよ。どうせ索敵スキル持ってねえんだろ」

確かに真後ろにまで接近されていて気づかないのだからそう思われてもムリはない。それに索敵スキルを持っていないのも確かだ。

だがそんなことに気が回るほど今のアスナは冷静ではなかった。

(殺されるところだった……)

あの熊にではない。目の前に立っているリュウヤにだ。
実際はそうではなかったのだが、あの眼、彼の気迫がこもった目が如実に語っていた。

お前を殺す、と。

今までに何度か経験したことのある気配。
ほぼすべてのモンスターから感じる恐怖。
オレンジプレイヤーの罠にかかった時の感覚。

あれはまさしく『殺気』だった。

もしアレが自分に向けられていたら。
もし対象がモンスターでなく人に向けられたら。

考えるだけで背中に悪寒が走った。
前にも思ったことがある考えが脳裏に浮かぶ。
この人は、絶対に敵に回してはいけないーーー




そんなことを考えていた時の、アスナの呆けたような顔を見たリュウヤが吹き出し、今に至る。

しかし、ついには笑い転げそうなほど豪快に笑い続けるリュウヤを見続けていると、さすがに弱った心も熱を帯び始める。

「リュウヤさん、モノには限度ってありますよね……?」

「はっはっはっ……あん?なにをーーーちょ、やめ、危なっ、ここ圏外だから!死んじゃうから!だからそのレイピアこっちに向けないでぇ!?」

「どうせ躱せるんでしょう……?少しわたしのストレス発散につきあってください」

「やめてやめて!いつの話してんだ、もう躱せねえよ!ビルドってもんを考えてください!ほんと勘弁して!?」

「安心してください。もしダメージが入ってわたしがオレンジになっても、あなたの名前を出せば正当防衛と見なされますから」

「なんの安心にも繋がらないよ!?さすが俺、嫌な名前の売れ方してんなチクショオッ!」

「ですので、どうぞ安らかにお眠りください」

「お前さっきから言ってることおかしいからね!?」

リュウヤがギャアギャア喚いているのも気にせずアスナはゆったりとレイピアを構え、剣尖をリュウヤの身体に突きたてようとした瞬間。

「ーーーちょいと失礼っ!」

いっそのこと無様と言えるほど慌てふためいていたリュウヤが突如、アスナのふところに入り込んだ。

アスナが声を上げるか否かの時間にダメージが出ない力の入れ具合でアスナの足を払う。
後ろに体勢を崩したアスナを、リュウヤは両腕で固定、抱き上げた。

「な、なっーーー何してるの!?」

一秒にも満たない時間に恥ずかしい格好をさせられたアスナは赤面しながらリュウヤを問い詰める。
しかしリュウヤはそれに構っているヒマはないと言わんばかりに無言で走り出した。

「どこ行く気!?降ろして!降ろしてよ!」

王子様(キリト)じゃなくて不満だろうが、我慢してくれ!」

「そういうことじゃない〜っ!」

「耳元で叫ぶなウルセェ!口閉じてろ、舌噛んでも知らねえぞ!」

「は……はい?ーーーキャアッ!?」

なんの話だと首を傾げた直後、リュウヤが持てる能力値をフルに使って地を蹴り加速した。
アスナは急な加速に耐えるためほとんど無意識的にリュウヤにしがみつく。

ワケが分からないアスナは説明を欲しがるが、事細かにそれができる余力などリュウヤにはなかった。

必死の形相で木々を縫いわけ駆け抜けていくリュウヤは、手頃な物陰を見つけてなんのためらいもなくそこへつっこんだ。

抱きかかえた時とは違って、丁寧にアスナを降ろしたリュウヤは両手を地について息を荒げた。仮想世界のためもちろん肉体の体力に限界はないが、精神的な体力がリュウヤを追い詰めていた。

「い、いきなりなんだったのよ!ちゃんと説明ーーーむぐっ!?」

「ば、バカ野郎……!?静かにしやがれ……!」

リュウヤと違い声を荒げようとしたアスナ。
しかしその途中でリュウヤにムリヤリ口を塞がれ、ひそひそ声で怒られる。

「説明はしてやるから、少し待ってくれ……!」

後生の頼みだとでも言わんばかりの表情に、アスナの中で膨れ上がっている懐疑の感情が抑えられていく。
アスナはむすっとしながらもリュウヤの要求を受け入れた。

得た時間でリュウヤは数回ほど深呼吸を繰り返し、息が整い始めるとアスナの詰問が始まる前に説明を始めた。

「いいか、よく聞け。さっきも言ったがここのフィールドのモンスターは、夜限定だが大抵ハイディングスキルを持ってるヤツが出てくる。俺みたいに索敵スキルがないと正直キツイ。それは分かるな?」

「う、うん……」

「そんで、ここにいるモンスターの中でも一番交戦しちゃいけないモンスターがいるんだ。《インビジブルウルフ》って言うんだが、もちろん聞いたことはあるだろ?」

「確かこの層の迷宮区で一番危険視されてたモンスターよね。奇襲攻撃に遭ったら生きて帰れる保証はないって言われてた」

「そうそれそれ。対策として最低五人パーティーを組むか、索敵スキルを取っておけって言われてたヤツな」

「でもそれがどうしたの?あの狼って、奇襲攻撃さえなければあまり強くないわよね?」

実際、《インビジブルウルフ》は普通に遭遇した場合、三〜四匹の群れで襲いかかってくるのがせいぜい厄介なだけで、相手の動きをよく読めばソロでも倒せる比較的弱いモンスターだ。

だが、ここでは勝手が違うことをリュウヤは知っている。

「ところがどっこい、ここじゃその情報は逆に仇となると言える」

「……?どういうこと?」

「この森にはな、《インビジブルウルフ》たちがわんさかいるんだよ。ヤツらのナワバリとも言っていい。
さて、こっからが本題だ。例えばアスナ、仲間が襲われてたらお前ならどうする?」

本題といいながら関係のない質問をするリュウヤに内心で首を傾げつつ、アスナは素直に答えた。

「もちろん助けに行くわよ。放っておけないもの」

その答えに、我が意を得たりとリュウヤは口角をつりあげた。

「ここじゃ、その考えがあいつら《インビジブルウルフ》にもインプットされてんだよ」

「………つまりどういうこと?」

「だから、たとえ一匹でも敵に襲われてたら、全員が援軍に駆けつけるんだよ。その意味、お前がわからないわけがあるまい?」

聞かされた彼らの、特殊にして普遍の習性。迷宮区には無かったこのフィールド特有のそれは攻略組のトップに位置づけされるアスナでさえ身体が微かにぶるりと震えた。若干顔も青ざめているように見受けられるほどだ。

衝撃と共に答えにたどり着いたアスナは、恐る恐るといったようにリュウヤに正解を求めた。

「まさか、このフィールドにいる全《インビジブルウルフ》が襲ってくるってこと……?」

「そゆこと。しかも何十匹っていう規模でな。だからハンパな知識でここに入ったヤツはーーーま、言わなくてもわかんだろ」

リュウヤはそっと目を伏せる。
彼らに遭遇した場合、生存できる可能性は他のフィールドよりも、群を抜いて低いということだ。

「じゃあさっきわたしを抱えて逃げたのは……」

「もちろん《インビジブルウルフ》から逃げるためだ。次からは自分で走ってくれよ?重いんだから」

一言余計に付け足したリュウヤに、アスナが顔を真っ赤にして怒鳴り立てた。

「だ、誰が重いのよ!」

「お前だ、お前。俺のステータス敏捷よりだからお前抱えて走るのキツイんだよ」

「そ、そうだとしてもデリカシーってものを考えてよ!」

「はぁ?よく考えろアホ。筋力ないやつに金属装備してる人間ひとりが軽いと思えるかっ」

「それでも女の子に対してその言いようはないでしょう!?」

「そういう扱いはキリトに言ってこい!俺に言うんじゃねえ!」

互いにヒートアップしすぎて、ヴゥ〜、と二人して犬のようにいがみ合っていたが、リュウヤが疲れと呆れが混じったため息をはくと同時にそれは終わった。

「いかんいかん……こんなことしてる場合じゃねえんだよなぁ……。おいお嬢ちゃん。お前さんついてくんのか?」

聞いてはいるものの、彼にアスナを連れて行く気がさらさらないのは態度と口調で丸わかりだ。
そんなぶっきらぼうに、「ジャマだから帰れ」と言わんばかりの表情を見せられると、反発したくなる。

「行きます。当然です。なんのためにここにいると思ってるんですか」

「知らねえよ……」とぼやいた後、リュウヤは思案顔で数秒押し黙ってしまう。
なにを考えているのか知らないが、なんにせよアスナは彼について行こうと決意している。なにせ彼の行動は一々不明な点が多すぎるのだ。その謎を解きたいと思っている。それにーーー

「…………くそっ、ヤベェな。嬢ちゃん、とりあえずこっから移動するぞ」

気づけば、思案顔だったリュウヤの表情が焦りの色へと変化していた。舌打ちも混じっているものだから、彼の焦りがありありと出ていた。

「提案」ではなく「命令」。それにたいしてアスナが怒ることはない。彼が提案をしている余裕がないのは分かっているからだ。
ついでに言えば、このフィールドにおいてアスナは無知が過ぎる。自分が前に立つより彼が前に立った方がよほど建設的だ。

従ってアスナが立ち上がると、リュウヤはニヤリと笑い、

「今度は走れるかい?」

「は、走れるわよ!」

リュウヤの状況にそぐわないジョークに、アスナは声を荒げた。
くくっ、と小さく笑ったリュウヤはしかし、すぐに表情を引き締めた。

「ま、冗談はさておきーーースリーカウントでスタートだ。俺の後ろについてこい。向かってくる敵は基本ムシだ。OK?」

「了解」

「じゃあ行くぞ。3、2ーーーんあっ、やっべ逃げろっ!?」

「はっ?」

なぜかカウントが終わる前にリュウヤは動いていた。呆けた声をだすアスナを置き去りにして。

気になって、カウントしていたリュウヤが見ていた先を振り返って見てみると、

「…………うそ」

「ば、バカ野郎!?止まってんじゃねえ走れぇ!!」

先を行くリュウヤから大声で叱咤され、固まりかけた思考と身体を回復させる。そして本能の如き判断力でパラメータ全開のダッシュを開始した。

先に逃亡を開始していたリュウヤに追いつくや否や、アスナはリュウヤに悲鳴に近い声で叱責した。

「あ、あなたね、ああいうことは早く言いなさい!!」

「し、仕方ねえだろ!?」

「仕方ないで殺されてたまりますかっ!」

「そこらへんは後で聞いてやるから、今は走れ!」

「〜〜〜もうっっ!」

言いたいことは山ほどあるのに、状況がそれを許さない。
なぜなら彼らは、大勢のオオカミに追われているからだ。

ちら、とアスナが後ろを振り返れば、まるでMPKに遭ったときのような数のモンスターが、すぐにでも追いつきそうな速度で追いかけてくる。

そのモンスターの正体は当然《インビジブルウルフ》だ。なぜ隠れていたのが見つかったのか、検討はついている。自分の非を認めたくはないが、おそらく二人が言い争っていた声に反応したのだろう。

徐々に距離を縮めてくる追っ手を見ながらアスナは歯を食いしばった。

(こうなったらっ……)

交戦しようと腰につったレイピアの柄に手をやった。だが、それを制するようにリュウヤが怒号を放った。

「何回言わせたら気がすむんだお前は!?さっき説明したろ!?戦ろうとするな!とにかく走れっ!」

「で、でもーーー」

「いいか、この少し先に安地がある。そこまでふんばれ!」

リュウヤは走るスピードを一切緩ませず、アスナに目的地を伝えた。逃げること以外の選択肢は取らせないためだ。

リュウヤの言葉に、当てのある逃走であることを知って安堵したのか、それとも逃げざるをえないと開き直ったのか。
どちらにせよリュウヤの思惑通り、アスナはひたすら走ることだけに集中することになった。









 
 

 
後書き


さて、ここから全部投稿していきますんで
一気にお楽しみください。

あと、わたしが前書きやあとがき書いてて
遅くなるかも知れませんが、そこはなにとぞ………ww
 
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