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ドラゴンクエストⅤ~紡がれし三つの刻~正式メンバー版

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一の刻・少年期編
  第四話「二人目の友達、スラリン」

スライムが喋った事に驚くリュカだが、その瞳がピエールの様に青く澄んでいる事に気付くと構えていた銅の剣を下ろし鞘の中へと戻した。
スライムはその行動に驚きながらも少しづつリュカへと近づいて行く。

「僕の事、悪いスライムじゃないって信じてくれるの?」
「うん、君の目はピエールみたいにキレイだからね。悪いモンスターならもっと嫌な色をしてるよ」
「ピィ、ピィ」

リュカがスライムの問いに答えると、ピエールもまた「その通り」と言わんばかりに頷いている。

「へぇ~~、君の名前はピエールって言うのか」
「ピイ、ピィピィ。ピィ~~?」
「うん、とてもいい名前だね。僕?僕の名前はね…」
「君はピエールと話せるの?」
「そりゃ、僕もピエールも同じスライムだもん」
「あ、そう言えばそうだったね。あはは」
「ピィ~~…」

照れくさそうに頭を掻きながら笑うリュカをピエールは呆れた様に見つめ、スライムはそんな二人を不思議そうに眺めながら語りかける。

「君は人間なのに何で魔物のピエールと仲良くしてるの?ピエールって名前も君が付けてくれたってピエールが言ってるし」
「何でって、友達と仲良くするのは当たり前だろ?」
「友達……」

自分と同じスライムのピエールを当たり前の様に友だちと言うリュカをスライムは少し眩しそうに見つめる。

「ピィ、ピィピィ」
「そうだね、忘れていた。僕の名前はスラリン、よろしくねピエール。そして…」

スラリンは自己紹介をすると少し不安そうにリュカに目を向ける、すると。

「僕?僕の名前はリュカ。仲良くしようね、スラリン」
「ピィッ、ピィ~~」
「あ……う、うんっ!」

暗い洞窟の中で一人ぼっちだったスラリン、人見知りで寂しがり屋だった彼に初めて友達と言う光が射した瞬間だった。


~スラリンが仲間になった~


洞窟の中ではスラリンが先頭になって道を案内している。
流石に洞窟の中を住処にしていただけはあって魔物の少ない所を選んで進んでいる。

「ところでリュカ」
「ん、何だいスラリン?」
「リュカはどうやってピエールと友達になったの?」
「サンタローズに帰る途中でピエールは他のスライム達に苛められてたんだ。だから僕はピエールを助けてそれで友達になったんだ。ね、ピエール」
「ピイ、ピイ」
「でもなんでピエールは苛められてたんだろ?
「それはピエールが"染まっていなかった"からだよ」
「…染まっていなかった?」
「うん。襲って来る魔物を倒した後、宝石が残るだろ?」
「……うん…」

リュカはそう答えながら袋の中から宝石を取り出す。

「それは僕達の体の中にある魔力が魔王の悪い波動で魂ごと結晶になったものなんだ。魔王の波動に"染まりきってしまえば"もう元のふつうの魔物には戻れないんだ。ピエールはまだ魔王の波動に"染められて"なかったから他のスライム達から襲われたんだと思う」
「そうなんだ。悪いスライムにならなくて良かったね、ピエール」
「ピィーーー♪」

そんな風に話をしながら進んでいると、地下に続く階段がありリュカ達は地下に降りると何処からかうめき声が聞こえて来たのですぐに駆け寄って行く。
其処に居たのは一人の男で上の階から落ちて来たであろう岩に足を挟まれていた。

「うう~~、だ、誰か~~。誰か助け…」
「ピィピィ」
「うわぁーーーーっ!! ま、魔物…もうダメだぁ~~~~っ!!」
「落ち着いて、おじさん」
「わあぁ~~……、へ?」

近づいて来たピエールに慌てふためく薬師だが、続いて聞こえて来たリュカの声に幾分落ち着いた様だ。

「こ、子供?何で子供がこんな所に?」
「もしかしておじさんはは薬師の人?」
「あ、ああ、そうだが」
「よかった、探してたんだ。ビアンカのお母さんが薬が来るのを待っているんだ、早く帰ろうよ」
「そ、そうか。ならこの岩をどかしてくれないか、身動きが取れないんだ」
「分かった、ピエールとスラリンも手伝って」
「ピイッ」
「分かったよ、リュカ」

リュカとピエール達は岩を力一杯に押して行くと、岩はゆっくりと動き出し薬師のビーはようやく解放された。


―◇◆◇―

「そうか、君はパパスさんの息子のリュカくんか。しかしその魔物達は一体……」
「ピエールとスラリンは僕の友達なんだ。悪い魔物じゃないよ」
「ピイーーー♪」
「友達……、嬉しいな」

岩の下から解放された薬師のビーはリュカのホイミで傷を癒してもらい、皆で話をしながら洞窟から出る為に歩いている。
歩いて行く先には光が射して来てようやく洞窟から抜け出した。

「さて、早速ダンカンさんの薬を作らなくてはな。リュカくん、ありがとうな」
「どういたしまして。早く薬を作ってあげてね」
「ああ、任せておきなさい」

ビーは笑いながら親指を立て、仕事場へと走って行った。

「さて、僕達も帰ろう。スラリンの事も父さんとサンチョに紹介しなきゃいけないしね」
「本当にいいのかな?」
「いいに決まってるだろ。僕達はもう友達なんだから」
「ピイーー」
「うん、ありがとうリュカ」

そして、リュカ達も家へと帰って行く。



翌日。

ビーが慌てず急いで正確に頑張った為、薬は明け方には完成し、マミヤとビアンカはさっそく薬を持ってアルカパへと帰る事になった。

「女二人だけでは何かと危険だからな、私が護衛して行くとしよう。リュカよ、お前も来るか?」
「うん、もちろん僕も行くよ」
「ピイッ」
「僕はまだ外の人間が怖いから留守番してるよ」

ピエールはもちろん自分もついて行くと張り切り、スラリンはまだ外が怖いと留守番しようとする。
そんな二人にパパスは。

「ピエールには悪いがお前も留守番だ」
「ピィーー?」
「どうして、父さん?」
「アルカパはこの村より幾分大きな町だからな。そんな所にピエールを連れて行くと騒ぎになりかねん」
「ピエールは悪い魔物じゃないよ!」
「それはよく分かっている。だが、人は魔物というだけで怖がるのだ。それにダンカンの家は宿屋だからな、悪い噂が立つと客が泊らなくなるやもしれん」
「ごめんなさいね、リュカ」
「ううん、仕方ないよ。ピエール、スラリン、そういう事だから留守番しておいてね」
「ピィ~~」
「うん」


―◇◆◇―

「坊っちゃま、パパス様、お気をつけて行って来て下さい」
「ピィ~~」
「気をつけてね、リュカ」

サンチョにピエール、スラリンの見送りを受けてパパスとリュカ、そしてマミヤにビアンカはアルカパへと歩いて行く。

「ところでリュカ?」
「何?ビアンカ」
「その頭のタンコブどうしたの?」
「……お尻ペンペンとゲンコツ、どっちがいいかって父さんに言われたから……。さすがにもうこの年でお尻ペンペンはかんべんだよ」



=冒険の書に記録します=


《次回予告》

やって来たアルカパ、ビアンカの家の宿屋も凄く大きい。
でもそんな村の中で……
あいつら、なんて酷い事をするんだ。
離してほしければオバケ退治?
いいよ、やってやるさ!

次回・第五話「オバケ退治にレヌール城へ」

オバケなんか怖くない!ゲンコツよりは怖くない。

 
 

 
後書き
(`・ω・)洞窟に入った筈のパパスがビーに気付かなかったのは、彼しか知らない近道を通った為です。 
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