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エクスマキナ

作者:ルキウス
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 月面基地襲撃

 月衛星軌道には、たくさんの宇宙漂流物(デブリ)が漂っている。大半が、破損した宇宙船や稼働年数が過ぎ停止した監視衛星の残骸である。その中に、のちに自らの命を奪うものが隠れていることにまだ気づく者はいなかった。

 『CPより、中隊各員に通達します。現時刻をもって、無線を封鎖します。1800秒後、各機は突入殻(エントリーシェル)で月面基地を強襲し攪乱して下さい。その後、突入班が実験機を奪い次第撤収します』
『ストーム1よりCP。実験機がすでに起動していた場合は、どうする?』
『撃破もしくは、無力化し鹵獲してください』
 中隊長の質問にオペレーターは、簡潔に答える。要するに、突入班が失敗した場合は貴方たちでどうにかしてくださいって、ことらしい。
(突入班。手前らの尻拭いなんて、俺は嫌だからな)
俺は、そう思いながら作戦開始の時刻を待つのだった。
『CPより中隊各員。作戦開始まで10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0。作戦(オペレーション)夜盗(バンデッド)開始してください』
 CPからの、連絡と共に12機の突入殻が一斉に月面目掛けてミサイルのごとく落下していった。

「んっ?レーダーに反応・・・また、デブリが落っこちてきたのか?」
レーダー画面に、表示された光点(ブリップ)の数が12個と多かったが、ここ月面はよく衛星軌道上からデブリが落下することが多々あった。
「あー、CPより警備部隊」
『警備部隊からCP。どうした?』
通信画面に、浅黒い肌をした基地警備部隊隊長の顔が映る。
「ええ、なんかデブリがこっちに向かって落ち来るみたいなので迎撃お願いします」
『了解した』
 男が、用件を伝えると隊長から通信が切れた。

「野郎ども。デブリが落っこちてくるから緊急発進(スクランブル)だ」
[了解!]
隊長が、その部屋にいた部下に命令を下すと部下が一斉に答え格納庫へと消えていった。

 格納庫には、ガントリーに固定された12機ものEMーEU68E”スクード”がすでに対デブリ用の装備に換装されていた。両肩のハードポイントには、8連装ミサイルホッドが装備され両手には、MGS-69C(38mmチェーンガン+グレネードランチャー)が装備されており出撃準備は完了していた。
「よし。ティラトーレ中隊、出撃()るぞ!」
[了解!]
 ガントリーから12機のスクードが腰のスラスターを全開にしてハンガーから発信した。

 警備中隊が出る少し前、ストーム中隊は突入殻の炸裂ボルトを作動させその殻を脱ぎ捨てていた。
宇宙(そら)色に酷似した機体ーMI70-1S"ナハトファルケ”ーが、その牙を抜いた。
『ストーム2からストーム1。これより、ストーム7と共に漸減射撃を行う』
2機のファルケが、背部ウェポンラックに固定されていた。NF66中隊支援砲をダウンワード方式で展開し突入殻の一部を足場にして発射した。
 大気のない宇宙では聞こえないであろうが、もしこれを大気圏内で撃ったのなら耳を(つんざ)く爆発音を轟かせたであろう。発射された120ミリ徹甲榴弾がハンガーに着弾し、大きな火の手を上げた。
『ストーム1より中隊各機へ。全兵装自由(オールウェポンズフリー)、嵐のように敵陣を荒らし尽くせ!』
『「了解」』
 中隊長の号令と共に、俺たちは月面基地へ向けて飛翔した。

 ハンガーが爆発した同時刻、人類統制機構の制服を着た4人の若者がいた。彼らの足元には、グチャグチャになった(おびただ)しい数の肉塊が血の海を作り彼らの服も飛び散った血により、1部が変色していた。
「始まりましたね。・・・そろそろ、行きますか」
先頭に立った長身青髪メガネの青年ーオルランド・バルビエリが、後方を振り返り尋ねる。
「・・・ん。了解・・・」
 彼より頭1つ半背の低い灰髪碧眼の少女ーアーデルハイト・フォンローゼンハイムが両手に、血に染まったナイフを握ったまま無表情に答える。
「アーデは、もう少しリラックスしたほうがいいっすよ。そう思うっしょ、ハヤト?」
「・・・・・・ガーウィンは、少し緊張感を持つべきだ。あんたは、リラックスし過ぎだ」
 金髪茶目の少年ーガーウィン・チェンバレンの質問に、黒髪に青いバイザーをつけた神流隼人(かみなはやと)は、血油を払った刀を納めた後に肩を竦めて答える。
「はいはい。僕たちの仕事は、人類統制機構から虎の子をいただくことですから」
 オルランドの言葉を聞いて、2人とも表情を引き締めた。彼らの進む先には、人類統制機構が新たに開発した新型EMの格納庫があり彼らは、それを奪いに来た宇宙解放戦線軍のEMパイロットであり突入班だった。
「あいよ。閃光手榴弾(スタングレネード)入れて、アーデとハヤトが突入して俺らが後方支援(バックアップ)っしょ?」
 ガーウィンが、背に背負ったライフルケースからドラグノフとステアーAUGを取り出し、ステアーをアーデに手渡す。彼女は、それを受け取って自然に安全装置(セーフティ)を解除する。
「さて、行きましょう」
オルランドが、扉のパスコードを解除し扉の隙間から閃光手榴弾を投げ込んだ。

 月面では、ナハトファルケとスクード、それと増援で出撃したレオーネが生と死のやり取りを交わしていた。実際には、一方的な死をナハトファルケが与えているだけである。
(くそっ、ここが後方だから油断した!新型SAの情報がどっかで漏れたのか?)
レオーネのパイロットで、新型EMのパイロットたちの護衛で来ていたギルバート・フォーゲルは心中で悪態をつきながら必死で機体を操り銃撃を回避していた。
『た、大尉。増えー・・・』
「!?ジャック、くそっ」
 また、僚機が墜ちた。敵の射線にいたわけでもない味方が突然落ちるのだ、モニター上ではありえない事態がおこっていた。ギルバートの部隊も元は36機いたがもう10機近くが撃墜(おと)されていた。

 ナハトファルケは、ファルケを黒く染めただけのカラーバリエーション機体ではない。機体には、特殊装甲と瞬間隠蔽装置(イグニッションハイドシステム)、通称IHS(イフス)が搭載されており先ほどの射線上にいなかったレオーネが突然落ちた絡繰りは、特殊装甲の効果でありその効果は、レーダーの反射角を屈折させて人為的な蜃気楼を発生させているためHMDのモニターに映る敵機の位置と実際の敵機の位置がずれているため射線にいなかった味方が突然墜ちるという現象が発生しているのだ。

 一方、格納庫では整備班や新型EMのパイロットを全員殺害(しまつ)したオルランドたちが新型SAのコクピットに乗り込み機体の生体(バイオメトリクス)認証の登録を終えていた。
『・・・生体認証完了。いつでも出れるよ?』
『こっちも、OKだぜ。オルランドは?』
『問題ありません。そちらは?』
「・・・これだけ、認証登録されてやがる。奥の手使って登録を無理やり書き換える」
ハヤトは、そう言うや否や生体認証システム用のコンソールのデバイス挿入口に右腕に装備していたウェアラブルコンピューターから延ばしたコードを挿入し高速でキーボードを叩き始めた。
 本来、生体認証というのは一度設定されたら二度と変更することができないがSAのシステム上そんなことをしてしまっては部隊を再編・統合した際に不都合が生じるため、二段階式の生体認証システムになっている。彼が、やろうとしているのは二段階のうちの一段目の再初期化(リフォーマット)である。PCを用いた演算においてハヤトは、軍内部でも屈指の才能をもっているためこのような芸当が可能なのである。
「・・・・・・認証解除完了。再設定、登録完了です。オルランド」

「はい、了解です。レーヴェ1よりCP」
『こちらCP。レーヴェ1へ首尾は?』
「奪取に成功しました。シュバルツェアグランツは?」
『現空域上空にて光学迷彩を展開して待機中です。』
「レーヴェ1了解。ストーム中隊にも撤退命令を」
そう言って、オルランドは通信を切った。 
 

 
後書き
 はい。短いですがここで前半終了です。遅かった理由はPSO2がPS4でできるようになったのでそっちに没頭していたのと仕事が大変で中々執筆の時間が取れなかったからでして、まぁPSO2を我慢しろって話になりそうですが機体の設定とか色々考えてたら徹夜でそのまま仕事行くなんて無茶してるんでそこは勘弁してくださいストレス発散唯一の楽しみなんで
 
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