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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ソードアート・オンライン】編
  125 勧誘と紹介


SIDE 升田 真人

「メール? ……送信元はアンドリューか」

漸く〝父の拳〟のダメージが抜けてきて初めての休日。起き抜けに何と無くパソコンを立ち上げてみれば、部屋のパソコンにメールが届いていたに気付いた。……送信主はアンドリュー・ギルバート・ミルズ──アインクラッドを共に駆け抜けたエギルその人だった。

……ちなみに俺は〝電脳世界(あっち)〟と〝現実世界(こっち)〟を別けて考えているので、出来る限りプレイヤーネームで呼ばない様にしている。……それはそれとて、オフ会などの〝ゲーム世界ありき〟な状況ではプレイヤーネームで呼ぶし、間違えてプレイヤーネームを使いそうなったりするが…。

閑話休題(そんなことはどうでもよくて)

「なになに? [添付した〝片方の画像〟について話したい事がある。【Dicey Cafe(ダイシーカフェ)】という俺の店に来てくれ。〝もう1つのファイル〟に店の場所を貼っておく]──ね。……こっちのファイルが店の場所か?」

アンドリューからの〝2つの画像ファイル〟が添付されているメッセージを見て、取り敢えずは[MAP]と短く名付けられている画像ファイルを開き、アンドリューが経営していると云う店の位置を、パッと見で確認する。

「で、こっちが〝話したい〟画像──っ!」

アンドリューの云う──〝話したいらしい画像〟を開いた瞬間、動かしていたポインタの動きが一瞬だけ止まる。我が身の事ながら然も他人事の様に感じがしてアレだが──裏を返せばそれだの驚きだったのだろう。

そのファイルにはある画像が入っていた。……その画像を端的に説明すると、〝鳥籠の様な檻に閉じ込められている亜麻色の髪の少女の画像〟と云う画像なのだが、〝俺はその画像にいろいろな意味で〟見覚えがあった。

〝その画像自体〟と──〝画像に映っている少女〟に見覚えが有りすぎた。

……何しろ〝画像〟は数日前に稜ちゃんから見せられて、未だ覚えに新しく──〝その少女〟はアインクラッドで〝夫婦〟となるまで関係を密とした少女と、その相貌が瓜二つだったのだから。

「……行くしかないか…」

(……それにしても〝これ〟は何かの因果か…?)

ケータイに【Dicey Cafe(ダイシーカフェ)】の位置情報を打ち込みながら、数日前前──稜ちゃんと交際する事になった後の事に関して記憶を掘り返した。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……はぁ~っ、師匠に思いっきり殴られる覚悟をしようか」

「真人さん!」

(痛そうだなぁ…)

俺は〝父の拳〟を食らうことが確定している状況なので、どうにも形容し難い気持ちで、稜ちゃんの「〝一位の女性(ひと)〟にも会わないと…」──とな呟きをスルーしながらも稜ちゃんを(なだ)める事に終始した。

………。

……。

…。

「あ、そうだ。私、〝真人さんの見ていた世界〟が知りたくて【アルヴヘイム・オンライン】ってゲームを始めたんだ! で、そのゲームは凄いんだよ、なんたって──〝()べる〟んだから!」

(やが)てそのテンションを落ち着けた稜ちゃんだったが、師匠曰くの〝お転婆稜〟が復活したのか──()しくは〝軽躁状態〟に陥っているのではなかろうかとすら心配してしまうほどにテンションをV字回復させる。

「……ほう? 〝翔べる〟とな──って、もしかしてその【アルヴヘイム・オンライン】ってVRMMOか?」

「うんっ! あ、でもナーヴギアじゃなくて〝アミュスフィア〟ってハードだから大丈夫だよ。お父さんからも許可はもらってるし…」

〝翔べる〟──とな、その語り振りからして気になった疑問を(たず)ねてみれば、俺の予想は正鵠(せいこく)を射ていた様で、稜はまだ言いたい事があるみたいにもじもじしている。……すると稜ちゃんは〝こんな提案〟をしてきた。

「あのね、これは我が儘なのは知ってる。……でも──真人さんが良かったらで良いから、真人さんと一緒に翔びたいな。……あ、もちろん真人さんの中で〝VRMMOに対しての気持ち〟を整理してからでいいからね」

「いいぞ」

稜ちゃんからの頼みに即答する。もちろん、即答出来たのも理由はある。

……〝VRMMOに対しての気持ち〟とは稜ちゃんは言ったが、そもそもな話、俺は〝VRMMO〟と云うゲームジャンルを憎んでいるわけでは無いし──そして、ただ単純に〝翔べる〟と云う(うた)い文句に興味を惹かれたと云う理由もあった。

「やった! あ、そういえば最近判ったことらしいんだけど、【アルヴヘイム・オンライン】──【ALO】中に【世界樹】って場所が在って、その頂上にはこんな可愛い()が居るらしいよ」

「どれどれ──っ!!?」

稜ちゃんは側に置いてあった自分のケータイを操作すると、その画面を俺に──まるで〝この印籠が目に入らぬか〟と云わんばかりに俺へと見せてくる──のはまぁ良かったが、〝ケータイの画面に映っているその人物〟を認識した瞬間息を飲んでしまった。

……〝その人物〟は俺がアインクラッドで〝前世(これ)まで愛〟や〝今世(これ)からの愛〟を(ちぎ)った人物──ユーノとあまりにも似すぎていたからだ。

「……これは…っ、ユーノっ!?」

ここは現実世界だが、あまりのことにプレイヤーネームの方を呼んでしまう。……もちろん、そんな俺の呟きは、近くに居た──「【ALO】はこの【世界樹】に登るのがグランドクエストなんだ」と穏やかに語っていた稜ちゃんにも聞かれていたらしく…

「ユーノさん──この女性(ひと)が〝一番の女性(ひと)〟なんだね。……だったら、真人さんは尚更【ALO】をやるべきだよ。【世界樹】への水先案内人には私がなるからさ」

……そんな風に稜ちゃんが提案してきた時、俺は漸く自らの失言を悟った。

行方不明だったユーノ──もとい、乃愛の情報がいきなり涌いてきていて精神が不安定な現状では、稜ちゃんに畳み込まれ──稜ちゃんからの提案に頷いてしまうのも無理からなぬ話だった。

結局、ユーノ──乃愛について稜ちゃんに説明と、次の休日に稜ちゃんと共に【アルヴヘイム・オンライン】のソフトを買いに行く事になり、その日は解散する事になった。

……しかし、帰りは〝父の拳〟に依るダメージで頬を腫らしながら帰る羽目になったのは、致し方ない事なのだろう。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

〝俺達〟の姿──俺と稜ちゃんは【Dicey Cafe(ダイシーカフェ)】のカウンター席に在った。

……稜ちゃんが居る理由はアンドリュー──そしてアインクラッドの話に興味があったかららしい。……そもそも今日は稜ちゃんと【ALO】とアミュスフィアを買いに行く予定の日だったし、稜ちゃんに〝遅れる〟とな旨の電話をした時、うっかりアンドリューの名前を出してしまった俺の落ち度でもある。

「……おう真人、久しぶり──なのは良いがそっちの嬢ちゃんは誰だ?」

「久しぶりだな、アンドリュー。この()蒼月(そうづき) (りょう)。【ALO】での案内人(ナビゲーター)だよ。……で稜ちゃん、さっき軽く教えたと思うが、こいつはアンドリュー・ギルバート・ミルズ。【SAO】では一緒に戦った──云わば〝戦友〟だな」

「ほう、〝そうづき〟って──もしかしてお前さんの…」

「ああ。〝双月(そうつき)流〟の妹弟子だよ」

アンドリューは〝そうづき〟の名前に反応する。それに俺は補足を入れながら説明する。アインクラッドでは〝双月流〟を(はばか)らず(ふる)っていたのでアンドリューの疑問は正解だったりする。

……ちなみに稜ちゃんのフルネームは〝蒼月(そうづき) (りょう)〟と云って、年明けに15歳になったばかりの女の子である。

閑話休題。

……更にちなみに、俺は〝年齢〟について深く考えないようにしている。……俺の〝実際的な年齢〟からしたら、お伽噺に出てくる様な人外でもない限り〝ロリコン〟なんて有り難くもない汚名を頂戴してしまうからだ。

また閑話休題。

「よろしくな嬢ちゃん。俺は真人から紹介された通り、アンドリュー・ギルバート・ミルズ。気軽にアンドリューとでも呼んでくれ」

「は、はい。私は蒼月 稜です。……でしたら、私も真人さんに(なら)ってアンドリューさんと呼ばせてもらいますね」

「ああ。……そういや、真人が【ALO】の事を知っていて嬢ちゃんが真人とここに居るって事は、もしかして嬢ちゃんも【ALO】のプレイヤーで、例の──〝【世界樹】の画像〟を見せたんだろう?」

「はい。種族は〝猫妖精(ケットシー)〟です。……〝あの画像〟は【ALO】プレイヤーの間では割りと有名ですからね。……特に〝世界樹攻略〟を目指す人にとっては…」

稜ちゃんはアンドリューに苦笑しながら語る。

実を云うと、稜ちゃんには【アルヴヘイム・オンライン】については幾つが話を聞いていたりする。

よくあるMMORPGみたいに種族が分かれていて、その種族の数は稜ちゃんが所属している〝猫妖精(ケットシー)〟を含む9種族+αからなっているらしい。

稜ちゃん【ALO】を〝翔べるゲーム〟と云ったが、どうにも〝無制限に翔べる〟と云うわけでもないらしく──〝滞空制限〟なるものが有って、プレイヤー皆はその〝滞空制限〟を取っ払い──〝光妖精(アルフ)〟になる為に〝【世界樹】の攻略〟を種族間同士で(しのぎ)を削り合いながら目指しているとの事。

〝滞空制限〟を取り払えるのは〝光妖精(アルフ)〟のみで──その〝光妖精(アルフ)〟になるには【世界樹】に居ると云う、≪妖精王・オベイロン≫に謁見(えっけん)しなけれならない。

なぜ(しのぎ)を削り合わななければならないかと云うと、〝光妖精(アルフ)〟になれるのは〝最初に≪妖精王・オベイロン≫に謁見(えっけん)した種族のみ〟だかららしい。

……もちろんの事ながら、俺はまだ【ALO】をやっていないので、ここまで全部稜ちゃんからの受け売りである。

「で、〝【ALO(これ)】〟についての話だが…」

「あー、ちょっと待て。まだ来てねぇ奴がいるんだ詳しくはそれからだ」

………。

……。

…。

「へぇ…。……この()がその──【アルヴヘイム・オンライン】での案内人、ねぇ?」

変な話ではなく、アンドリューの云う〝来てないやつ〟とは乃愛の実妹である明日奈のことだった。

―エギルさん、お待たせしました──ってティーチ君?―

……なんて、アンドリューと稜ちゃんと3人で談笑している時に何でもない風に明日奈は現れて、稜ちゃんと互いに適当な感じで自己紹介を交わした後、明日奈は稜ちゃんを胡乱(うろん)な目付きで見ている。

「……取り敢えず、話を進めよう」

そんなこんなで解散して、【ALO】のソフトを〝3つ〟購入する事になった。

SIDE END 
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