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大海原の魔女

作者:てんぷら
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八話 分かりました 、司令官。

 
前書き
まさかこの作品が2/9に日刊ランキング1位になるとは…読めなかった、この海のリ○クの目をもってしても。
応援ありがとうございます。 

 
 
 1940年4月16日 ロストック近郊の基地

 ◇◇ 少女の目覚め ◇◇



『……、……………。』
『……!』




(・・・声?…この声は…)
 機械化水上歩兵の卵,マリーケは微かに聞こえてくる声に目を覚ました。
 寝ぼけながらも窓から空を見ると,まだ薄明るいではないか。この時間にいったい誰が会話しているのだろう?


 パジャマから着替えて、同室の子を起こさないよう 静かに部屋を出る。

「・・・あれは。」
 宿舎の外の浜辺を、教官であるエレンと オラーシャ海軍のヴェロニカ軍曹が走っていた。足場が悪いというのに、結構速い。


「ふぅ・・・砂浜をダッシュするのも中々いいトレーニングになるな。」
「そう ,ですね。」
「無理に堅苦しく話さなくてもいいぞ。職務中ではないからな。…ところで、そこで見ているヴォルフ曹長は何か用か?」エレンが問いかける。
「え? いえ、見ていただけ ,ですよ。技術大尉たちは何故朝早く走っていたので?」
「私は 昔から朝は早いんだ。早起きすればその分、研究などに時間をとれるからな。
 今朝は海辺でちょっとした実験をしていたのだが、途中で軍曹が来たから一緒にトレーニングをしていたんだ。
 あと、君も楽に話していい。」

「 …わかったわ。・・・・・ ねえ。」マーリケは真剣な顔で口を開く。
「なんだ?」
「少しお願いがあるのだけど」


 ◇◆◇朝練の始まり◇◆◇


 ーー 固有魔法の練習を手伝ってほしい ーー
 私はマーリケ( 彼女と軍曹には名前で呼んでもいいと言われた )にそう頼まれた。

 そして彼女が持ってきたのは、長い長い槍のようなものだ。 それは一体?
「曹長、それは,なんだ?槍,なのか?」ヴェロニカも気になったのか、彼女に聞く。
「杖よ。コレを持っていると魔法の制御が楽になるのよ。…見てなさい。」
  マーリケは海に向かって杖を構える。
「私の固有魔法は『座標爆発』よ。狙った空間に爆発を起こすことが出来るの。
 ・・・・・こうやって 」
 彼女の魔力が高まり、そして……?… これは!
「ヤバ
 その瞬間、爆発が‘‘目の前”で起こった。





 ドドドドオォォォン ‼︎





「Shit!」シールドの展開は間に合ったが、 なんて威力だ!
「くっ…!」「きゃあっ!」 砂浜を爆風が吹き荒れる。



 やがて 風は収まり、煙も晴れる。
「・・・危なかった、シールドがなければ即死だった。」まるで酸素魚雷のような破壊力だった。
「・・・・や、やだ…ありえない……ますます制御が利かなくなってる…」
「まて、『‘‘ますます”制御が利かなくなってる』とはどういうことだ?」
「・・・・・この前まで、大きな爆発は制御出来なかったけど、小さな爆発なら狙ったところに起こせたのよ。今回もこんな大きな爆発を起こすつもりなんてなかったのに…」

「…君が固有魔法の制御が上手く出来なくなったのは、恐らく君の魔法力が成長したからだと思う。・・・だが、もともと大きな爆発の扱いが下手だったのはなぜだ?」それも、杖なんて便利な物を持っているのにも拘らず。



「………私の親は貿易商で、小さい頃はずっと扶桑や東南アジアで仕事をしてたの。だから、一昨年ネーデルラントに帰ってきたとき、町にも学校にも馴染めなくて 友達も出来なかった。
 海軍に入ってもそれは変わらず、ううん、むしろ悪くなったわ。嫌な子に馬鹿にされたり、無視されたり、そして或る時 私は怒りのあまり暴走して 自分も巻き込まれるような大爆発で 彼女達を吹き飛ばして………それ以来よ、固有魔法が苦手になったのはね。
 …そして私は、カールスラントに送られたのよ。」

 …つまりトラウマか…どうやって改善するべきか?・・・

 ・・・「訓練だ。」 「…えっ?」
「これから毎日訓練しよう。」「…無理よ。わた「諦めんなよ。諦めんなよ、お前!! どうしてそこでやめるんだ、そこで!! もう少し頑張ってみろよ! ダメダメダメ、諦めたら 周りのこと思えよ、応援してる人たちのこと思ってみろって、あともうちょっとのところなんだから。 私だってこのところ、かなりキツくたって頑張ってんだよ! ずっとやってみろ!必ず目標を達成できる! だからこそNever Give Up!!」 うるさ「いいからトレーニングだ‼︎」 だから「諦めたらそこで試合終了だ!」………」 無理矢理だが押しきった。

 ・・・息を整えて、話を再開する。
「魔法を使うのに大切なのは何か分かるか?」
「…そんなの才能に決まってるじゃない。」身も蓋もないな。
「重要なことは三つ、
 訓練と 強い意思とイメージが 魔女(ウィッチ)にとって 大切なんだ。
 扶桑の魔女には、絶え間ない訓練の果てに 大型ネウロイを一刀両断出来るようになった者もいる。
 一度は魔力を失ったというのに、仲間と共に飛びたいという想いから魔力を取り戻した少女もいる。
 箒で空を自由に飛ぶコツは、箒を身体の一部だと感じ 脚で一歩踏み出すようなイメージを持つことだという。
  努力し、自分を信じ、想像しろ! You can do it‼︎

 というわけで明日から朝練をやるぞ。」早朝しかスケジュールが空いていないからな。
「 え 、えぇっ!?」使い物になれば強力なんだ、夏までにはちゃんと使えるようになって貰う。



「他の子も参加させたらどうかな?」…司令官、いつの間に!

「司令官おはようございます。早起きですね。」
「爆発音で目が覚めただけだよ。」・・・・・「あっ」「 」「Извините(ごめんなさい)」
 三人で平謝りした。


 ・・・「それで、『他の子も』とは?」
「なに、ヴォルフ曹長以外にももっと固有魔法などの訓練をしたい子がいると思ってね。
 希望者だけでいいからやってくれないか?」
「……分かりました。これから毎朝うるさくなるかもしれませんが、やってみます。」
「…できるだけ静かにやってくれよ 。」


 ◇◇食堂にて◇◇
 

 あの後一旦部屋に戻り、軽く用を済ませてから食堂へと向かった。


 朝早いというのに食堂は結構混んでいた。皆 爆発音で目を覚ましてしまったかな?
 といってもまだ満席ではない。今のうちに、掲示板に部屋で書いてきた‘お知らせの紙’を貼っておこう。


「教官さん、何をしているのですか?」小さな少女が尋ねてくる。
「ええと、ズボナレワ姉妹の 」「インナです。姉妹で紛らわしいから名前でいいのです。」
「インナ軍曹か…明日から希望者と朝練を始めることになってな。募集のポスターを貼っていたんだ。
 ソレに書いてあるとおり、固有魔法の訓練なども行う予定だ。君もどうだ?」

「あっ、あの・・・少し考えさせてください。」そう言って彼女はミルクを飲む。

 ごくっ ごくっ ごくっ
「ぷはぁ……」
「そういえば牛乳は品切れじゃなかった?」と,杖を片付けていたのか 遅れてきたマーリケが言う。
「脱脂粉乳なのです。」
「ああリベリオンの支援物資の。アレ不味くないの?」確かに、リベリオンからは品質の悪い余剰品も送られてきているらしいな。
「長身で素敵な女性になるために、まずくても毎朝飲むのです。」
「ふーん。ま、頑張りなさい。」


 …おっとこうしちゃいられない。早く食べて訓練の準備をしないと。


 ◇◇◇昼間訓練の様子◇◇◇


 朝食後、私たちは浜辺にきていた。

「今日は皆さんにちょっと、魔法の練習をして貰おう。」
「何の魔法ですか?」とシュルツ軍曹が聞く。
「水面歩行だ。
 


 こんなふうに、ユニットは履かずにな。 」
「あの…その訓練に何の意味が?」
「任務中ユニットが故障したときも、これが使いこなせるなら 泳ぐよりは安全に退避できる。
 それに君たちは魔法力のコントロールが甘い。この訓練をクリアできないようでは、ネウロイにやられてしまう。
 …といっても、いきなり立つのは難しい。そこでだ、補助具を用意して貰ったぞ。」
「…それは,スキー板ですか?」
「そうだ。だが接水面が大きくなる分、立つのが楽になるんだ。
 さぁ、早速始めてみよう。」 『くんれんかいしー』

 ・ ・ ・ ・ ・

 海戦用ユニットで慣れていたのか、初日だが多くの少女がなんとか立てている。しかし、ほとんどの子は一度は転倒してびしょ濡れであり、防水・防寒機能がある服を着ているとはいえ かなり寒そうだ。
「立てた者はその場でしばらく練習してくれ。まだ立てていない者にはこれを渡す。」

「…それ、スキーストックじゃないですか。」 つっこみが入るが、これを使うのには理由があるんだ。
「ストックからも魔法を発動することで、バランスが取れて転倒しにくくなるんだ。 」
「…客観的に見ると恥ずかしくないですか?」「…つべこべ言わず、やりたまえ。」

 
 ーーー ゴーン ゴーン ゴーン ーーー


 時鐘が鳴り響く。いつの間にか夕方になっていたようだ。
「今日の訓練はこれまでだ。明日は 板なしに立てるように練習するぞ。」 「「「 はい! 」」」
「なんだ、そんな返事ができるなんて,まだ元気が残っているじゃないか。明日はもっと内容を濃くしようか?」 「「「 いえ、結構です。」」」

 
 ・・・やはり、もう少しハードにした方がいいかな?

 
 ◇◇◇朝練の様子◇◇◇
 

 翌朝

 思ったよりも多くの人数が集まっていた。
「今日の朝は、固有魔法の制御の訓練を行う・・・ヴォルフ曹長,いやマーリケは前に出てこい。
 皆のお手本になるんだ。」
「 え? 何なの、どういうこと!?」
「まあとにかくこちらへ来い。Come here.」

 半ば無理矢理連れてくる。
「よし、この場から海に向かって固有魔法を発動しろ。」
「・・・だから無理よ。昨日の朝みたいになるわ。」
「だから、私が補助をする。」「えっ?」
 マーリケの両肩に手を置く。
「この状態なら、君の魔力制御を直接手伝うことが可能だ。こうやって固有魔法を成功させる。…やるぞ。」


 彼女は観念したのか、杖を構え 狙いを定めた。
 私は 彼女の魔力に干渉し、乱れなどを整える。
 ・ ・ ・ 3、 2、 1、




 ───ドドォォォーン ‼︎───




 爆発は狙い通り、私たちの前方50mの海上に生じた。
「ほら、できるじゃないか。」
「・・・・そうね、だけど
「私がいなければできない、とでも言いたいのか?いや、魔力の制御が完璧なら一人でもできるはずだ。」
  …いくら魔力の操作ができたって、私一人じゃ無理よ!
「甘えるな、人生にはな 怖くても 一人でもやらないといけないことだってあるんだ!
 …確かに出来ていたことが出来なくなることはある、だけど出来ていたことならまた出来るようになれる。
 自分を信じろ!そして、そのふざけた幻想をぶち殺せ‼︎」・・・・・・たく、分かったわよ。これからは,毎日魔力操作の訓練でもするわ。
 でも、それくらいは付き合ってくれる?」

「Sure.」

 ・ ・ ・ ・ ・

「このように、固有魔法の上手な制御の仕方を、直接 体に覚えさせてやる。
 だがその前に、固有魔法を持たないウィッチに 別のことを教えよう。」
「一体,何でしょうか?」

「簡単なことさ、シールドの使い方をちょっと変えるだけだからな。」








 

 訓練は順調にいっていた。・・・・・・・・・だが


 ◆◆◆????◆◆◆

 1940年4月??日 カールスラント ??????



 無数の光線と銃砲弾が行き交っていた。

「チッ、援軍はまだか!?」艦隊を護衛する海戦ウィッチの一人が叫ぶ。
「先ほど空軍の航空ウィッチが来まし
「来まし?・・・」見ると、彼女の上半身が消滅していた。
「クソがぁ!」「隊長落ち着いてください‼︎」「こんな状況で落ち着いていられるか!!」
「戦艦グナイゼナウが大破、Z2が轟沈されました!」 また一隻、船が沈んでいく。

「 このネウロイどもめぇ───‼︎‼︎」







 危機はすぐそこまで迫っていた。 
 

 
後書き
今回は説教が多かったですかね?とあるラノベを読んだせいかな。
それはさておき、もうすぐネウロイとの戦闘が始まります。

設定
座標爆発…狙った空間(座標)に爆発を起こすことが可能。爆発の威力を高めるほど制御が難しくなる。

 
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