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戦国異伝

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第二百四十一話 二度目の戦その二

「ヨハネスはです」
「うむ、あの者はあちらの生まれじゃったな」
「はい、南蛮の」
「話を聞くか」
「ではここに呼びましょう」
 こうしてだった。ヨハネスが信長のところに来て話をさせた、そうした国の。
 まずヨハネスはスペインやポルトガルについてだ、こう述べた。
「どちらの国も自国の外に多くの領地を持っております」
「そしてじゃな」
「はい、そうした領地の治め方がこの国と違うのです」
「その地の民を虐げておるか」
「まさに奴隷として扱いです」
「耶蘇教を信じることを強いているのじゃな」
「耶蘇教を信じなければ皆殺しです」
 それにされるとだ、ヨハネスははっきりと答えた。
「それも生きながら焼いたり母親の目の前で赤子の頭を石にぶつけたり首や胴を斬ることを銭を賭けて競ったり犬の餌にしたりしてです」
「な、何じゃそれは」
「それが人の所業か」
「地獄の鬼か、それは」
 誰もがだ、ヨハネスのその話に血相を変えた。信長もその眉をこれ以上ないまでに顰めさせて聞いている。
「その様なことをするのか」
「耶蘇教を信じぬだけで」
「しかも信じても奴隷か」
「何という政じゃ」
「そして死ぬまできつく働かせて使い捨てにしております」 
 外の領地にいる者達をというのだ。
「それを貴族や僧侶達が行っています」
「比叡山もそこまでせぬぞ」
「到底な」
「南蛮の者達は鬼か」
「鬼に似た姿をしておると思っておったが」
「そうしてその地から搾り取ったもので豊かになっているのです」
「そしてその搾り取った富でじゃな」 
 信長は眉を顰めさせたままヨハネスに問うた。
「他の国を攻めてか」
「呂宋にも入っています、そしてそれはです」
「他にもあるか」
「オランダにもお気をつけを」
「オランダ、確か」
 その国の名を聞いてだ、信長はすぐに言った。
「フランドルとかいった」
「はい」
「御主の故郷でもあったな」
「そうです、私は神聖ローマ帝国の生まれですが」
「その中にある国でじゃな」
「同じ耶蘇の教えですが」
 しかしというのだ。
「あちらは新教を信じているのです」
「耶蘇教の中で色々あってじゃな」
「私はバチカンの教えを信じていますが」
 しかしというのだ。
「そちらはそちらの教えでして」
「仏教の宗派の違いの様なものじゃな」
「はい、その様なものです」
「では大した違いではあるまい」
 信長は日本の考えから述べた。
「宗派の違いなぞ」
「しかしです」
「そちらでは違うのじゃな」
「左様でして」
「その宗派の違いで何かとあるか」
「戦になります」
「戦か。とはいっても」
 宗派の違いで戦争になる、だがそれでもというのだ。 
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