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男は今日も迷宮へと潜る

作者:幸福市民
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第四話 

────

「はー、そうかぁ。嬢ちゃんも最近こっちに来たのな」

「はい。それでファミリアの勧誘をしていたのですが誰も集まらなくて・・・・・・」

「すいません。こんなとこが本拠地だなんて、格好つきませんよね・・・・・・」

「なぁに。壁と屋根があれば楽園よ。おっちゃんあのままじゃ野宿だったし」

対面する形で座る二人。
現在地は西と北西の大通りの間の区画の中ほど。
そこにあるイシュタルがつい最近借りたと言うあばら家だ。

「でもいいのかい?こんなおっちゃんでさ。それこそ格好つかんだろ」

「いや、それは、その・・・・・・」

「やめるなら今だぜ?」

「ち、違うんです!前からずっとあなたのことが気になっていて──」

前から?とするとまさか・・・・・・

「・・・・・・ひょっとして、俺のこと知ってる?」

しまった。という表情を作るイシュタム。
となるときっとそうなのだろう。

「あー、あれの言ってた仲間内って奴な・・・・・・」

「はい・・・・・・黙っていてごめんなさい・・・・・・」

「一応聞くが、元の世界に戻したりとかは──」

「出来ないです・・・・・・ここでは力も殆ど無いですし・・・・・・」

「まぁ、そうなるわな・・・・・・」

沈黙が場を支配する。
下界に降りた神は力を発揮できない。
件のメモにはそう書いてあった。

「ま、いいさ」

「へ?」

「組織やら警察やらとの追いかけっこにも飽き飽きしてたとこだしな」

「見世物にされてるのはちっと気に食わんが・・・・・・」

「つまり、その、これからよろしくって事さ」

「え、は、はい!」

握手を交わす二人。今ここに新しい【ファミリア】が誕生した。
その行く末は運命のみぞ知ることだろう。

────

飛び散る脳髄、迸る血飛沫。
.45ACP弾が哀れなゴブリンやコボルトを軽快に引き裂く。

「ハッハッハー!ぜっこぉうちょー!」

マサに肉薄したコボルトがまた一匹細切れにされる。
小物相手に威力は必要ないと考えドラムマガジンのトンプソンを持ってきたのも正解だ。

「ヒャッハー!!!」

神の恩恵(ステイタス)を受けてから、狩の効率は格段に上がった。
身体能力、特に動体視力と反射能力が上がり、対象を捕捉するのが容易になったのだ。
それに加え囲まれたとき用に閃光手榴弾を用意したのもあり、昨日よりも多くの魔石を集めることが出来ていた。

「いやぁ、爽快爽快。良心も痛まんし。」

「中々の天職な気がするぜ」

「っと、もうここら辺のは粗方仕留めたかねぇ・・・・・・」

現在は迷宮の第五階層。
ギルドの受付曰く、下に行けば行くほど敵が強くなったり増えたりするらしい。
故に無闇に下の階層までは潜るな、と釘を刺されていた。
が、しかし。この第五階層はむしろ敵が少ないようにも感じる。

「まぁ、滅多なことじゃ死にゃあしねぇし」

「でももうそろ引き上げてもいいかねぇ」

魔石はすでにかなり集まった。
これで少しは贅沢が出来そうな気がする。

「土産でも買ってこうかなぁ・・・・・・嬢ちゃん喜ぶだろうし」

という具合に魔石を拾い終え、タバコを吹かしながら踵を返した時だった。

「ん?」

地面が揺れている。
等間隔に、一定のリズムで、だ。
しかもその揺れはどんどん大きくなっているように感じる。
どこかで見たような気がして考察。
数秒ほどで思い出した。そう、これはモンスターパニック映画の演出に────

『ヴヴォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!』

「ほぁあああああああああああああああああっ!?」

似ていると思ったとき。
少年と牛頭の巨人が曲がり角から姿を現した。

「おいおいおいおい・・・・・・!嘘だろっ!?」

「にっ、逃げてくださぁぁぁぁぁぁぁい!」

『ヴゥモォォォォォォォォォォォォォォッ!』

すぐそこまで迫り来る白髪頭と逞しい巨体。
肩にかけていたトンプソンを、急いで前方へと向ける。
ここまで近ければ外すまい。

そう考え引き金を思い切り絞る。
それと同時に弾倉に残っていた弾丸が、物々しい炸裂音と共に飛び出した。
撃ち出された弾頭は少年に当たることなく真っ直ぐに怪物へと襲い掛かる。

だが、しかし。

角に当たった弾はあらぬ方向へ跳ね返り。
軟体組織に当たった弾は動きを止めるには力不足。
結果として怒りを助長させるのみだった。

脇を抜けていく少年。
それに続く牛の怪物は邪魔だと言わんばかりに手を振りかぶり──

「・・・・・・!ブゲッ!?」

マサを勢い良く薙ぎ払った。
物理法則に従いマサは吹っ飛び、打ち付けられ、そのまま壁の染みへと成り下がった。


──── 
 

 
後書き
2/5、加筆修正しました。 
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