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蝶姫

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第四章

「そうした病気で。今もたまにね」
「ぶり返してですか」
「高い熱出して苦しむのよ」
「そうなんですね」
「だから私は蚊をやっつけてくれる生きもの好きなの」 
「蜻蛉も蛙も亀も」
「あと蛍もね」 
 この虫もというのだ。
「幼虫の時にぼうふら食べるから」
「だからですか」
「ぼうふらを餌にあげていないけれどね」 
 それでもというのだ。
「外に出した蛍が外に卵を産んで幼虫がぼうふらを食べてくれるでしょ」
「だからですか」
「育ててるの」
「蜻蛉もですね」
「蛙や亀もよ。蜻蛉も外に出して」
「蛙や亀はですか」
「神社や学校のお池に放してるの」
 この八条学園の、というのだ。
「うちの学園って保育園から大学院まであって敷地凄く広くてお池も水路も多いでしょ」
「運河もありますしね」
 広く深くはないがだ。
「確かにそうですね」
「そうしたところにね」
「亀や蛙を放って」
「蚊をぼうふらの時から減らす様にしてるの」
「蛍も蜻蛉もですね」
「そうなのよ」
「そういう理由もあったんですね」
「ええ、それとね」
 青葉は青虫達を見た、そうしつつ愛実にさらに話した。
「この子達はね」
「青虫さん達はぼうふらも蚊も」
「食べないわ」
「蝶はそうですね」
「そう、しかもキャベツを食べるね」
「害虫ですね」
「蚊とは違った意味でね」 
 そうだとだ、青葉もそのことはわかっていて言うのだった。
「害虫よ」
「そうですよね、けれど」
「この子達をどうして育てているのか」
「それはどうしてですか?」
「この子達は花の蜜を吸って花粉を運ぶは」
「はい、蜂と同じで」
「蜂は刺すから危ないからね」
 少し苦笑いになった青葉だった、蜂のことは。
「私駄目だけれど」
「育てられないですか」
「そう、だからね」
「部長もなんですね」
「それはないの。ハナアブとか他の花を吸う虫もいいかしらって思うけれど」
 それでも蜂、ここではミツバチはというのだ。
「飼わないの」
「それでも蝶jはですね」
「刺さないから」
「花と花を結んで」
「お花を増やしてくれるからね」
「育てておられんですね」
「そうなの」
 こう愛実に話すのだった。
「この子達もね」
「お花もなんですね」
「お花嫌いな人っていないでしょ」
「確かにいないですね」
「蝶も奇麗だし」
「そのこともあって」
「育ててるの」
 そうだというのだ。
「こうしてね」
「縁起と奇麗さに」
「そうしたこともあってなのよ」
「皆を育ててるんですね」
「わかってくれたかしら」
「はい」
 一言でだ、愛実は青葉に答えた。
「そういうことなんですね」
「ええ、じゃあ今日もね」
「その子達に餌をあげて」
「育てていくわ」
「色々な理由があったんですね」
「育てるにはね。よく私を蝶姫とか言うけれど」
 自分でだ、青葉はその仇名も出していった。 
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