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蝶姫

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第一章

                  蝶姫
 西宮青葉は八条学園高等部三年生である。所属している部活は生物部だ。彼女の仇名は蝶姫という一聴すると素晴らしいものだった。
 だがその生物部の一年生橋本愛実はその青葉を見てだ、いつも思うのだった。
 青葉は小柄で一四五程だ、童顔で茶色い髪を頭の両端にそれぞれまげを作ったツインテールにしている。身体つきも幼い感じだ。
 目は大きく小学生と言っても誰も驚かない、そうした外見であるが愛実が思うのは彼女の外見のことではない。
 青葉はいつも部室で部で飼っている青虫達にキャベツ等の餌をにこにことしてあげている。その彼女を見て思うのだった。
「うちの部長さんってね」
「ああ、蝶姫さんね」
「またの名をブルーバタフライね」
 青葉の青と蝶々からとった仇名だ。
「あの人いつも部室で青虫に餌あげてるのよね」
「有名な人よね」
「あれが不思議なのよね」
 首を傾げさせてだ、愛実はクラスメイト達に言うのだった。自分のクラスで。
「どうしてあんなに青虫が好きなのか」
「だから蝶になるからでしょ」
「青虫が」
「あの青虫が奇麗なモンシロチョウとかになるじゃない」
「それは愛実も知ってるでしょ」
「それはね」
 その通りだとだ、愛実も答える。
「学校の授業で習ったしそれ以前に私も生物部だから」
「ほら、やっぱり」
「知ってるじゃない」
「けれどよ。先輩ってね」
 その青葉はというのだ。
「青虫だけじゃないから」
「ヤゴとかもよね」
「あとおたまじゃくしに亀の卵」
「虫だと他にも色々」
「育ててるのよね」
「そうなのよ」
 こうクラスメイト達に話すのだった。
「色々な生きものをね」
「青虫だけじゃなくて」
「ヤゴもおたまじゃくしも」
「それに亀の卵も」
「色々となのね」
「おたまじゃくしはね」
 愛実はそのおたまじゃくしの話もした。
「卵の時からだから」
「ああ、あの寒天みたいな」
「あの時からなのね」
「先輩育てておられるのね」
「そうなのね」
「そうなの、アマガエルとかトノサマガエルのね」
 そうした蛙達にものをというのだ。
「育てておられるのよ」
「そうなのね」
「本格的なのね、部長さんって」
「そうして色々となの」
「育てておられるのね」
「先輩は通よ」
 それこそというのだ。
「あの人は、ただね」
「それが、なのね」
「あんたにしてはなのね」
「今一つなのね」
「困るのね」
「というかうちの生物部本格志向にしても」
 それでもというのだ。
「そうした生きものばかり好きなのよ」
「そういえばあの人蛙姫とも言われてるわね」
「亀姫ともね」
「蜻蛉姫とも」
「あと蛍姫ともね」
「そう、あの人蛍の幼虫も育てておられるのよ」
 この虫もというのだ。 
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