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ロックマンゼロ~救世主達~

作者:setuna
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第40話 夕闇の砂漠

 
前書き
中盤ミッション 

 
三つのエリアにこれから向かわなければならないが、いつものように別れて行動するか悩んでいた時にルインが進言した。

「二人で出撃しないゼロ?」

「何故だ?」

効率を重視するなら別々に行動した方がいいのはルインも理解しているはずなのだが…。

「ネオ・アルカディアが本気でレジスタンスベースを潰そうとしているなら、此方に向かってきている軍勢はかなりの規模のはずだよ。一人だけじゃ危険過ぎるよ。」

「そうね…私も今回は二人で行動した方がいいと思う。」

ルインの言葉に同意するのはシエルだ。

確かにルインの言う通り、こちらに総攻撃を仕掛けてくる以上、敵の規模は今までとは比較にならないだろう。

「分かった…ルイン…行けるか?」

「私はいつでも出撃出来るよ。」

二人が最初に選んだエリアは夕闇の砂漠であった。

「南の砂漠を進むネオ・アルカディア軍を確認…比較的早めの迎撃が必要かと思われます」

「迎撃をお願いしたいのですが…」

ジョーヌの説明に続いて、ルージュがゼロとルインの返答を仰ぐ。

「了解した」

「了解、任せてよ」

二人の声に迷いなどは微塵もなかった。

「ミッション発令…各員、転送準備にかかれ」

ジョーヌの指示で、司令室に警報が鳴り響き、転送準備が始まる。

「転送準備完了…」

「「転送!!」」

二人の声が司令室に響いたのと同時にゼロとルインの二人が夕闇の砂漠へと転送された。

「ゼロ…ルイン…」

想い人と友人の無事を祈って、シエルは二人の帰りを静かに待つのであった。

そして夕闇の砂漠に転送された二人は、互いに軽く視線を交わすと同時にZセイバーとZXバスターを抜き放ち、ダッシュで突き進んだ。

ゼロとルインに気付いたネオ・アルカディア軍も迎撃するが、ゼロはすれ違い様にセイバーで斬り捨て、ルインはチャージショットで一網打尽にする。

地中を移動するメカニロイドはルインが気付き、ZXセイバーの一撃で破壊した。

「む?」

途中で流砂のあるところに出る。

流砂の途中に足場がいくつかあるが、少々頼りない。

「ゼロ、私が向こうまで運ぼうか?」

流砂を見て、即座にHXアーマーに換装したルインが尋ねるが、ゼロは首を横に振る。

「必要ない。ボディチップ・“ライト”起動」

体を軽くするボディチップであるライトを起動する。

このチップを起動している間は、流砂などの不安定な足場でも平地のように進めるのだ。

「セルヴォが造ったの?」

「ああ、不安定な足場でも問題なく進めるようにとな」

アーマーを換装することであらゆる局面に対応出来るルインとは違い、ゼロにはそのような能力を持っていないため、チップによる能力付加でそれを補っている。

「いずれセルヴォが開発するチップ次第では空を飛べるようになるんじゃないの?」

「さあな…」

ルインとゼロは流砂を簡単に突破し、再びパンテオンやメカニロイドをセイバーで薙ぎ払う。

途中で浮遊する爆弾などがあったが、ゼロがバスターショットを引き抜き、ショットで爆弾を破壊してくれた。

そのまま突き進むと流砂のある場所にまた出たので、そこに足を踏み入れた途端に虫を思わせるメカニロイドが地中から現れた。

「エネミーアナライジング!!」

即座にHXアーマーの解析能力ですぐさまメカニロイドの弱点を割り出す。

強敵との戦いで何度も使用しているためか、解析速度が早くなっている。

「…よし、ゼロ。こいつの弱点は口だよ!口を集中攻撃!!」

「分かった……っ!下がれ!!」

「うわっ!?」

上空からある果物を彷彿とさせる爆弾が降ってきたので、咄嗟にそれをかわすルイン。

「大丈夫か?」

「うん。でもこれは厄介だね。あのパイナップル爆弾のせいでメカニロイドに攻撃が集中出来ない。」

「ルイン、爆弾の方はお前に任せた。メカニロイドは俺に任せておけ」

「うん、気をつけてね!!」

HXアーマーのバーニアを噴かして、上方向にエアダッシュをすると、ダブルセイバーで上空の爆弾を破壊していく。

流石に至近距離では爆発の影響を受けるので、一定の距離を保ちながらソニックブームや電撃弾で破壊している。

「はあっ!!」

そしてゼロはルインが爆弾をどうにかしているうちにメカニロイドにチャージセイバーを叩き込み、チャージセイバーで怯んだところをチャージショットを放つ。

時折、岩石弾を放ってくるが、チャージショットで岩石弾を破壊しながらメカニロイドに当ててダメージを蓄積させていく。

それらの繰り返しでメカニロイドを破壊し、同時にルインも爆弾の破壊を終えたようで、ゼロの近くまで降りる。

「大丈夫ゼロ?」

「問題ない。行くぞ」

足を止めている暇はなく、一刻も早くこのエリアのボスを叩かねばならない。

二人は立ちはだかるパンテオンやメカニロイド、爆弾に注意を払いながら進んでいき、途中で輸送機からパンテオンが何体か降りてきたがルインが輸送機を叩き斬り、ゼロがチャージショットで瞬く間にパンテオンを破壊した。

向こうの輸送機も同じように叩き斬り、降りていたパンテオンはゼロが投擲したシールドブーメランで倒された。

そして砂漠にいる殆どのネオ・アルカディア軍を倒したかと思った瞬間、空中に棺のような物が浮かび、棺が開かれると中からアヌビステップ・ネクロマンセス5世が現れた。

ルインは即座にHXアーマーのエネミーアナライジングで分析した。

「(アヌビステップ・ネクロマンセス5世。元々は闘将ファーブニルが指揮する焦土作戦で、医療衛生支援と後始末を行うミュートスレプリロイド。砂粒サイズナノボットを操って、破壊されたレプリロイドを蘇生させたり、残骸を自由に操ったりすることが出来る。自らもナノボットによる自己修復が可能。属性は雷属性か…)」

分析結果をゼロに送ると、ゼロもルインに目配せするとアイスのボディチップを起動させるのと同時にルインもLXアーマーに換装し、ハルバードを構えた。

「我…バイル様の手により、冥府より舞い戻りたり…古き者よ…次はお主が地の底を這う番だ…。土へと還るがよい…!!」

アヌビステップが杖をルインとゼロに向けて飛ばす。

ルインはハルバードで弾き返そうとしたが、予想していたよりも重く、弾き返せなかった。

「ルイン、杖に構うな。本体を狙え!!」

チャージセイバーを叩き込むと弱点属性をまともに喰らったアヌビステップは一時的に凍結したが、すぐさま氷を砕いて出て来た。

「コフィンプレス!!」

アヌビステップが砂に潜るのと同時に棺が出現し、二つの棺がかなりのスピードでゼロとルインに迫る。

「ゼロ!!」

即座にHXアーマーに換装し、ゼロの腕を掴むと上空にエアダッシュして棺をかわす。

ホバーで落下速度を遅くして棺をやり過ごしてアヌビステップが地中から出て来た瞬間を狙い、ゼロがチャージショットを喰らわせた。

「出て来て、フリージングドラゴン!!」

着地と同時にLXアーマーに再換装してハルバードをチャージして氷龍を繰り出すと、アヌビステップにぶつける。

「ぬうぅ…蘇れ、パンテオン!!」

砂からゾンビのような姿のパンテオンが出現した。

ゼロはリコイルロッドの形態にすると、ロッドのチャージ攻撃でパンテオンを粉砕した。

「オーバードライブ!!」

オーバードライブでLXアーマーの攻撃力を底上げし、アヌビステップの胴体に深い裂傷を刻むと、ゼロもルインに続くようにチャージセイバーを叩き込んだ。

確かにアヌビステップの性能は最初にゼロと戦った時よりも大幅に向上しているが、ゼロは一度戦って倒した相手に負けるほど馬鹿ではない。

アヌビステップが地形を変化させたが、ルインがHXアーマーに換装し、ゼロの腕を掴んで上空に舞う。

「とどめお願い!!」

「任せておけ」

ルインはアヌビステップに向けて勢い良く放り投げると、ゼロはチャージを終えたセイバーを構えながら突撃した。

「なっ!?」

「はあっ!!」

「ぐああっ!?」

勢いを加算したチャージセイバーを叩き込むことで、まともに喰らったアヌビステップを両断した。

「ぐっ…古き魂を引き摺る者よ…バイル様の創る新しき世界にお主の居場所はない…。もがき苦しむお主の姿…。地の底より見ておるぞ…フ…フフフフッ……!!」

不気味な笑みを浮かべながらアヌビステップは爆散した。

「ふう…お疲れ様ゼロ」

「ああ…、ミッション終了。転送してくれ」

『了解、転送!!』

ジョーヌの声と共に転送の光に包まれたゼロとルインはレジスタンスベースに転送された。

「転送終了まで…2…1…転送!!」

ゼロとルインが司令室のトランスサーバーに出現した。

「お疲れ様でした」

ゼロとルインがトランスサーバーから出ると、シエルが駆け寄ってくる。

「ありがとう…二人共…リーダーを失って、このエリアのネオ・アルカディアは退却したみたい…。本当にありがとう…」

安堵の笑みを浮かべながら、シエルはゼロとルインに感謝の言葉を伝えると、残るエリアを見つめるのであった。

そしてレジスタンスベースのメンテナンスルームにて、眠っていたハルピュイアは目を覚ますと同時に辺りを見回した。

「っ……」

起き上がった瞬間に体に痛みが走るが、耐えられない程ではない。

普段自分が損傷か定期メンテナンスの際に訪れるメンテナンスルームとは全く違う見慣れない場所。

あの時いたゼロとルインと共に転送されたので、恐らくはレジスタンスベースなのだろう。

「(何ということだ…この俺が…レジスタンスに助けられるなど…)」

「おお、ハルピュイア。どうやら目覚めたようだね。どうかな?気分は?」

メンテナンスルームに技術者と思わしきレプリロイドと少女型レプリロイドが入ってきた。

「…最悪だな。貴様らに助けられたかと思うと吐き気がする」

ハルピュイアの口から発せられた辛辣な言葉にアルエットの目が潤んだ。

それを見たハルピュイアは少しバツが悪そうに目を逸らした。

「幹部を降ろされ…ネオ・アルカディアを追われ、俺も堕ちたものだ…」

自分のしてきたことは何だったのか…僅かな時間で崩壊し、正義を見失っていくネオ・アルカディアを見ていることしか出来ず、コピーエックスを止めるどころかオメガを倒すことも出来なかった自分への怒りが胸中で渦巻いている。

「そんなことはないよ。君は自分の考えを貫いただけだ…。私達と同じようにね。何も間違ってはいないさ」

「自分の考え…か…」

「ハルピュイア?」

次にメンテナンスルームに入ってきたのはミッションを終えてハルピュイアの様子を見に来たルインであった。

「ルインお姉ちゃん?」

「ルイン…」

「ちょっと心配して、様子を見にきたの。体を起こせるくらいには回復したんだね。良かった…あの時、酷い怪我をしてたからさ」

思ったよりも大丈夫そうなハルピュイアの姿に安堵の笑みを浮かべるルインに対してハルピュイアは複雑そうな表情だ。

「何故…俺を助けたんですか…あなたは?」

何故、敵である自分を助けたのか分からないハルピュイアはルインに尋ねた。

「うーん、前に助けてもらって、ネオ・アルカディアの居住区でも見逃してもらったし…エルピスからエックスを守れなかったし……さ。そのお礼とお詫び…かな?これだけじゃ、君に全然返せないだろうけど」

「…………」

ルインの言葉に、ハルピュイアは前のエルピスの反乱を思い出す。

ダークエルフとベビーエルフ達に操られ、狂気に陥ったエルピスによって、オリジナルエックスのボディは破壊されたのだ。

無論、ハルピュイアは侵入してきたエルピスを迎え撃ったが、ベビーエルフとダークエルフの半身の力を得たエルピスの前に倒れ、結局オリジナルエックスを守る事が出来なかった。

その後、エルピスを倒したルインから渡されたオリジナルエックスのパーツを見た時の己への無力感は絶対に忘れない。

「目の前でエックスが破壊されちゃった…。私のせいで…私の…力が足りなかったから…ごめんね……」

「いや、あなたは何も悪くない。俺が不甲斐ないせいで…せめてあの時、あの男を処分していればエックス様は…」

うなだれるハルピュイアの頬にルインは優しく手で触れる。

まるで傷ついた子供を親があやすように。

ルインとハルピュイアの同じ翡翠色の瞳が交わる。

「ハルピュイアがエックスのために一生懸命頑張ってたことは、私も何となくだけど分かるよ。それはきっとエックスも分かってると思う。君を助けた一番の理由は、君に死んで欲しくなかったの。君には私とエックスのDNAデータが刻まれてるから…。そのせいか、他のレプリロイドに抱く感情とは全く違うんだよね…。この気持ちが何なのかはハッキリとは分からないけれど…。」

「ルイン…」

ルインは自身のDNAデータの半分を持つハルピュイアや他の四天王達に対して、エックスとは別の感情を抱いている。

それは恐らくは、四天王達が自身のDNAデータを分けた子供だからか…。

「ハルピュイア、君はまだ死んじゃ駄目。沢山の人達が君のことを必要としている。だから生きないと駄目だよ…私達とは一緒に行けなくても、君は君の道を進みながら、バイルとオメガから戦えない沢山の人達を守るの」

「守る…俺に…そのようなことが…出来るでしょうか…?」

長年仕えていたコピーエックスから拒絶され、四天王の座から降ろされただけでなく、ネオ・アルカディアの正義が崩壊していく様を見せつけられ、人間を守れず、オメガには一矢報いることすら出来ずに敗北した。

立て続けに色んなことが起こり、自分を支えてくれていたものを全て失ったことで自信を失ってしまったハルピュイアの呟きをルインは不思議そうに見つめた。

「え?」

「俺は……あの男からエックス様をお守り出来ず…もう一人のエックス様…コピーエックス様をお止めすることすら出来ませんでした。そればかりか大勢の人間までバイルから守れなかった…」

「それは君のせいじゃないよ。悪いのはコピーエックスとバイルなんだから」

ミサイルを撃ち込んだのはバイルでそれを許可したのはコピーエックスなのだから、何もハルピュイアが悪いわけではないと、ルインが慰めるように言うが、ハルピュイアは静かに首を振る。

「いいえ、こうなってしまったのは全て俺の責任です。」

「ハルピュイア…」

「俺がもっとしっかりしていれば、エックス様は破壊されず、ダークエルフが解放されることなどなく、バイルの手にダークエルフが渡ることはなかった…。いえ、コピーエックス様の異変にもっと早く気付いていればこのようなことには……。そして俺は今まで、無実のレプリロイド達を…これほど罪深い事がありましょうか…。今まで守ってきた人間達すら守れなかったそんな俺に、そのような事が出来るのでしょうか。」

以前、ネオ・アルカディアでハルピュイアが言っていたように、ハルピュイアはレジスタンスを倒すことが正義だとは思っていない。

だからこそ、人間を守るためとは言え、無実のレプリロイドを斬ってきたことの罪悪感をいつも抱えていたのだろう。

心の支えを失い、精神的に弱っていたところに母親と呼べるルインを前にしてハルピュイアが押し殺してきた物が溢れ出してきたのだろう。

「大丈夫、君なら出来るよ」

断言するように言うルインにハルピュイアは目を見開いた。

そしてルインはハルピュイアを優しく抱き締めると、ハルピュイアの背中を擦り、頭を撫でる。

少しでもハルピュイアの…息子の苦しみが和らぐように。

「君は…エックスの子供なんだよ?どんなことがあっても最後まで諦めなかったエックスの子供…君は一人じゃないよ。レヴィアタンやファーブニルだっている。私も…エックスも…いつも君のことを想ってる…だから一人で背負い込まないで…」

「ルイン…」

「君は強い子だよ…」

体を離してハルピュイアの頬を優しく撫でながら、真摯な瞳で訴える。

「大丈夫、ハルピュイアはエックスと同じようにどんな困難にも抗える強さを持っているんだから。だからハルピュイア、君は…君自身を信じてあげて。」

「自分を…信じる…」

「あ、でも、お願いだから今は無茶はしないでね。体が壊れるまで無茶したら流石のエックスも怒っちゃうよ?だってエックスは君の主であるのと同時にお父さんなんだから。」

そう言って、両手の人差し指をこめかみ辺りの横につけ、上に向けて角を模して目付きもキッと、鋭くしながら言うとハルピュイアは苦笑した。

ルインの顔は同僚であり、姉弟でもあるレヴィアタンにそっくりだ。

いや、ルインは自分を含めた四天王の母なので、正確にはレヴィアタンがルインに似ているが正しいか…。

あのレヴィアタンならば絶対にしないであろう無邪気な表情にハルピュイアの沈んでいた心が少し浮上した。

「……そう、ですね…気をつけます。」

「せめて…傷が完全に治るまで寝ていて…レジスタンスに君を攻撃する人はいないからさ……」

「ハルピュイア。オメガの攻撃を受けた君のことを誰よりも心配していたのは彼女だ。反対するレジスタンスのみんなに頭を下げてまで君の修理を頼んだんだ。君を助けたい一心で…せめて傷が治るまで安静にして欲しい…。私達を信じてくれないかな?」

「…………世話に…なる…」

少しの間を置いて、ハルピュイアはメンテナンスベッドに横になった。 
 

 
後書き
ロックマンゼロのゼロも拡張性高いですよね。
ゼロのコピーボディはエックスベースなのかなと…思っていた時期がありました。 
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