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没ストーリー倉庫

作者:海戦型
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はて迷外伝 最強の剣と最強の盾5th

 
前書き
アズ「次から本編と言ったな……あれは嘘だ」
ロキ「10話前後くらいになるかもしれんのやて。最近出番少のーて暇やわー。アズにゃん漫才の練習しよー?」
アズ「おっけーグーグル!」
ロキ「ぐーぐるってなんや?」
アズ「お腹がグーグルのペコペコって意味だよ」
ロキ「なんやアズにゃん腹減ってたん?ならメシ食いにいこうや!」
アズ「いいぜ!ただし代金はロキたん全持ちで!」
ロキ「なんでやっ!?ここは男の甲斐性で全額ボーンと出しーや!」
アズ「じゃあ間を取って食い逃げだな!」
ロキ「乗ったぁ!」
リヴェリア「乗るなぁッ!!というか百歩譲ったんなら割り勘でいいだろうッ!?」
フィン「時々思うんだ。もしもアズライールがロキに拾われてたら、うちのファミリアはタレント育成所になってたんじゃないかって……」 

 
 
 後悔は後になってからやってくる。
 その時は勢いでやってしまった行為でも後になれば赤面必至、津波のように押し寄せる悔恨の濁流は穴を掘って埋まっても逃れることが出来ないほどに強力無比で致命的だった。

『オマエさぁ……オイラから見てもさっきのはないと思うぜ?だってさっきのあれ、ほぼ自分で触ってんじゃん?』
「………うう」
『黒いのに同情しちゃうなー。あんな公衆の面前で「ブレイモノー!」って言いながらビンタだもんなー。傷ついただろうなー。善意だったのになー?』
「…………うううっ」
『なぁ、前の街でも似たようなことあったよな?握手に応じたあとに手が触れあってるのに気付いて「へ、変態やろぉーーーーっ!!」ってさ。盛大に空気悪くしたよな。反省したんじゃなかったっけ?え?怒ったヤローからダッシュで逃げてもう二度とやんないって誓ったのは嘘な訳?』
「……………うううううっ!!」

 『彼』の言っていることはいちいち正しいのだ。正しいのだが、正論だからこそアミィは猛烈に恥ずかしい。そして逃げ場がないのを知っているからこそこのぬいぐるみ畜生はニタニタ笑いながら容赦なく糾弾してくる。そーいう性根の腐ったところがどうしようもなく大嫌いなのだが、それでも『彼』と自分は永遠に離れられない運命の下にある。

「キミみたいなウスラバカとずっと一緒にいないといけないと思うと、アミィはつくづく『ラプラスの一族』に生まれたことが恨めしくなるのです……グスン」
『ぐずるなよロリガキ。オイラだって本当はもっとボンキュッボンのステキレイディが良かったんだぞ。でもお前はもうダメだな。ストレスのせいで成長できてない。栄養とって養生してんのか?でないと将来はまな板のバイトしかやることなくなるぜ?』
「だぁぁぁぁれの所為でストレス溜まる上に養生できてないと思ってんですかねぇこの子憎たらしいぬいぐるみは……!キミの中から綿抜いてミイラにしたげてもいいんだよ……!?」
『わー、ジンケンシンガイだジンケンシンガイ!オイラを奴隷にしてあんなことやこんなことに利用する気だろう!このスケベロリガキめ!ロリな上にスケベなんてもうどうしようもないエルフだな!!』
「………燃やしたろか、この有機物は」

 懐のマッチ箱に手をかける。もう我慢ならない。自分の生命線だからと今まで下手に出ていたのが間違いだったのだ。どうせ簡単には死なないのだし耳くらいは燃やしてくれよう。

『ヒィっ、そ、そいつは悪魔の薪!?や、やめろバカ!そんなことして後悔するのはオマエだぞっ!?』
「ウフフ、いい顔してますね……その恐怖に引き攣った表情を拝めるだけでもアミィは胸がすく思いです♪」
『ギャーーーース!!』

 じたばたもがいて逃げようとしているが、所詮こいつの身体は三頭身程度のぬいぐるみ。捕まえてしまえば脆いものよ。

『ほ、ホレ!!ファミリアを紹介してくれるっていうネーチャンが書類持って来たぞ!!オイラは手伝ってやんないんだからちゃんとやれよな、ファミリア選び!!』
「アミィちゃ~ん!早速求人を出してるファミリアの情報を集め……あら、また人形と遊んでるの?」
(チッ)

 上手いこと逃げられたことに内心舌打ちしつつ、不思議そうに首を傾げるギルド職員の女性に向かい合う。そう、今はこのぬいぐるみにかまけている場合ではない。今、アミィは一族に産まれて秘儀を受け継ぐうえでの最後の試練を迎えようとしてるのだ。

(神の下で修業を積み、レベル3となって故郷へ帰る……それが『ラプラスの一族』として1人前になるための最後の試練なんだ……!)

 一族の宿命(さだめ)、一族の悲願。例え異端と罵られようが、必ず成し遂げなければならない。
 『彼』を握る手に少しだけ力が籠った。
 「うぎゅっ」と小さな声が聞こえるのも耳に入らなかった。



 = =



 リベルは、自分の同僚の一人――アーサーを見た。

 飛び抜けた美貌を持っている訳ではないが、純朴で可愛らしい外見に明るい栗色の髪がよく映えた少女だ。出で立ちはどこか凛々しくて堂々としており、真剣な表情をした時は別人のような風格がある。内面的にはコミカルな面をよく見せるが、常に自信に満ち溢れた声は不思議と人の耳によく響く。

 その少女が今、体躯に似合わぬ長剣を掲げて魔物の隙間を潜り抜けてゆく。

「ぜやぁッ!!」

 女性的な柔らかさと無駄のない筋肉が奇跡的に織り込まれた細腕が長剣を素早く振るい、すれ違った魔物の胸部が極めて正確に切り裂かれる。魔石の位置を正確に見切った上で、魔石を砕かず一撃必殺を可能にする精緻極まる技巧を惜しげもなく発揮して、アーサーはあっというまに10体近い魔物を屠ってみせた。
 瞬間、正面から3Mを越える巨体が唸り声をあげて彼女に迫る。

『ブギャアアアアアアアアアッ!!』

 オークだ。冒険者が最初に出会う大型魔物であり、その巨体で棍棒などを振り回すために対応を誤って殺される冒険者も少なからず存在する。だが、彼女はそのオークを目の前に微塵も躊躇を見せずに飛び込む。

 目の前に迫るちっぽけな獲物を、オークは本能の赴くままに襲う。
 オークの腕が空を切り、握られた無骨な棍棒が真正面から彼女の元に叩きつけられる。ドガァァッ!!と派手な音とともに風圧が周辺を吹きすさぶが、既にそこにアーサーはいない。

「そんな粗雑な攻撃が私に届くものか」
『ブギッ!?』

 棍棒が叩きつけられる直前、彼女はつま先で弾くように地面を蹴って急加速し、棍棒を掻い潜ったのだ。さらに彼女はすれ違いざまにオークの左足を間接から綺麗に切り裂いた。神経まで鈍いのか、オークがその傷に気付いた時には既に体のバランスが致命的に崩れていた。
 もたつくオークに対して剣を真正面に構え直したアーサーは深く踏み込み、次の瞬間、白刃が煌めいた。

「お前程度の敵に、逐一構っていられないのだぁッ!!」
『ブギィィィィィィッ!?!?』

 ザシュッ!!と音を立て、彼女の美しい太刀筋は見事にオークの胴体を横一線に切り抜いた。
 彼女の背中にはためく安物のマントも、これほど見事な動きをすれば絵画のような美しさを内包するように思えた。

 ――強い、とリベルは直感する。

 彼女の剣は、ただ単純に強い。手ごわいと言い換えてもいい。とにかく彼女の剣技は一つ一つが無駄なく洗練されており、ステイタスを最大限に活かすような体裁きで速度と膂力を見事に両立させている。そのたたずまいは模範的というよりは理想的であり、ダンジョンに入りたての冒険者特有のムラや乱れが全く感じられない。
 まるでレベル3,4か、もしくはそれ以上に堂々たる立ち回りだ。

「………………」

 次に、リベルはもう一人の同僚であるユーリを見た。

 黒髪褐色で精悍な顔つきをしたその青年は、普段は口を横一文字に閉じて落ち着いた印象を受ける。身体は筋肉質だが、それでも絞り込んでいるためか筋肉は細く引き締まっていた。比較的多動なアーサーのお目付け役といった風に彼女の一歩後ろに付き従う姿は、オーラこそ違うがどことなくあの女神フレイヤに付き添う『猛者』オッタルを連想させる気がした。

 彼の戦闘スタイルは、説明するのも馬鹿馬鹿しいほどに単純だった。

「ぬぅああああああああッ!!」

 ドゴォォォンッ!!と全速力の馬車が壁に正面衝突するような振動が響き、オークよりさらに巨大なシルバーバックの足が宙に浮く。ユーリがその凄まじい馬鹿力を使って敵を『盾で殴りつけた』のだ。にも拘らず、シルバーバックはまるで巨人に突き飛ばされたように無様に壁に衝突した。
 どうやら彼にとってあの屈強なドワーフが抱えるような巨大な盾は殴打用の特殊武器らしい。それなりにオラリオで過ごしてきたリベルだが、あれほど明確に盾を正拳突きのように操る冒険者は見たことがない。しかも、その動きは武器を肉体の延長線上に捉えた武術の型のように動きが滑らかだ。あれはステイタスだけで再現できるものではない。

『ガァ……アッ……!?』
「……どうした白猿。でかいのは鳴き声と図体だけか?なら早々に――斃れてもらうッ!!」

 盾の次に彼が構えたのは、アマゾネスが好みそうな片刃の大剣。体を丸ごと回転させるように体を捻ったユーリは、そのまま大剣を袈裟切りに振り抜く。

「一撃……必倒ぉおおおおおッ!!」

 空を切り裂く大剣はその威力と重量を満載して振り下ろされ、シルバーバックを肩から両断した。

『グギャアアアアアアアアアアアアアッ!?』

 有り余る威力の刃がそのまま致命傷となり、シルバーバックは魔石を残して崩れ落ちた。魔物というのは不思議だ。致命傷を受けると灰になる癖に、ドロップアイテムや返り血などは灰にはならない。なんでも魔石のある方が灰になる場合が多いらしい。
 ユーリは大剣に付着した血を払って踵を返し、更に前へ進もうとするアーサーに遅れぬよう重装備を抱えて走り始めた。あの装備をドワーフの大男かアマゾネスの大女がやっているのなら納得できるが、彼のそれほど大きいとは言えない体のどこからあの重量武器を振り回す力と体力が出てくるのか。リベルの筋力では盾を引きずるのにも一苦労だろう。

 以上の二人を見て、リベルは心の底からこう思った。

「………お前らどう見ても俺の助けいらねぇじゃねーか!!アドバイザー探してたってのはありゃ嘘かよぉっ!?」

 身体は小さくともダンジョン歴は10年近くあるリベルは、現在ものの見事に荷物持ち(サポーター)扱いにされていた。

「いや、ダンジョン特有のトラップや危険の知識が必要で……」
「落とし穴もヒョイヒョイ避けてんじゃねーか!新人殺しのアントに到ってはフェロモンで仲間が来るのを待ってから狩ってたろ!?余裕のよっちゃんかお前ら!?」
「だってぇ……来たことないのは本当だもん。万が一マヌケな死に方したら嫌でしょ?」
「そりゃそうだが!俺はお前さんが『ファミリアに欲しい』って声をかけてくれたから【トール・ファミリア】くんだりまで来たんだぞ!?やらせんのがサポーターなんて話がちげぇじゃねえか!!」

 自分を評価してくれると、期待しているというからリベルは話に乗ったのだ。自分の実力を正当に評価してくれる場所へと移り住みたくてずっと待っていた瞬間なのだ。それが、何故と死した冒険者たちの付添いをしなければいけないのか。
 リベルは当初自分は新人冒険者たちの指導をするんだろうとばかり思っていた。レベルは未だに1だが、それでも経験は新人のそれではるか及ばないほどの差があるという自負があったからだ。その資質を見抜いて名指しで誘ってくれた少女に本気で感謝していたのだ。なのに、蓋を開けたらこの有様である。

「どーなってんだ俺の待遇!これじゃ契約詐欺だろ!」
「うーん、確かに。元々私ってリベルに遊撃手の素質があると思って声かけたんだし……遊撃手に荷物持たせてちゃ伸びる物も伸びないよね。どうしよっか……やっぱりサポーター雇った方がいいのかなぁ」
「エイナにでも相談してみよう。そうと決まれば早めに切り上げるぞ。帰りの荷物は俺が持とう」
「おう、持て!というかそもそも俺に持たせんな!」

 既にそれなりの量になった荷物をユーリがひょいっと抱える。とても軽そうに持ち上げている上にあの重装備も抱える恐るべき体力だ。前のファミリアが筋肉至上主義だったせいか、なんとなく苦手意識を抱かずにはいられない。

「では、地上へ直行!」
「帰りは俺も狩らせてもらうぜ?」

 だらだらとしている暇はない。彼らの思惑とは別に、リベルとて早く強くならねばいけない理由があるのだ。【ナタク・ファミリア】――人生最低で最悪の隣人たちが動き出す前に。


 ――小人には小人にお似合いの仕事があるだろ?

 ――女に可愛がられる以外は何の取り柄もない無能種族だもんな。

 ――足が速いからなんだよ。敵を倒せねーんじゃ意味ないだろ。

 ――ほら、いくら足が早かろうが捕まってしまえば脆いものよ。

 ――だが、俺達はお前を見捨てたりしない。

 ――ずっと守り続けてやるよ。

 ――だって。


『お前みたいな役立たずの冒険者をわざわざファミリアにするような慈悲深~いヤツなんて、我等が主神様と儂らぐらいしかおらんからのぁ?ガハハハハハハハッ!!』

『ナタク様のお気に入りでおこぼれ入団してるからって、これ以上生意気な口聞くんなら足くらいは折れちまうかもなぁ?おーい、聞いてんのかぁリベルくーん?』

『惨めだねぇ、辛いねぇ、小人族に生まれたばっかりにこんな目に遭っちゃって………ま、やめてやんないけどね!!アッハハハハハハハ!!』

『おい、こいつ生意気にも睨んでやがるぞ?まだ自分の立場が分かってねぇみたいだな』

『顔はやめろよ。ナタク様がにお小言を貰うからな』


 にたにた、にたにた。醜悪な笑みと耳を塞ぎたくなる嘲笑に囲われて、いつも最後に「あいつ」が出てくる。


『逃げようとか考えない方がいいよ?逃げ出した後の行先を全部綺麗に潰して連れ帰るだけだからね。ず~っと友達でいようよ、小人クン?』


 耳にこびり付く青年の不快な声を振り払うように、リベルはナイフを抜いて二人の前へ足早に出た。

(上等だクソ野郎共……お前らが俺の行方を掴むより前に、お前らを潰せるだけ強くなってやるよ)

 大丈夫だ、風向きはこちらにある。あの時、確かに『リベルの運命』はアーサー達を選んだ。このファミリアこそが自分を縛る邪魔な運命に風穴を開ける。ならばリベルは来たるべきその時に備え、牙を研ぐだけだ。
  
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