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素顔の正義

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5部分:第五章


第五章

「やっぱり仕掛けてくるな」
「テロを起こすな」
「じゃあやっぱり」
「捕まえるか」
「踏み込んで」
「突入です」
 北條は部下達にメールで告げた。
「アジトに。その際は」
「その際は?」
「どうされますか?」
「銃を構えて入って下さい」
 そうしてくれとだ。部下達にまたメール、近くの面々には小声で告げた。
「敵はおそらく武装しています」
「ですね。あの国から銃や爆発物を仕入れていますし」
「それならですね」
「向こうも反撃してくるからですね」
「何度も言いますが素直に逮捕されないのなら」
 その場合についてもだ。北條はメールで告げる。
「容赦は駄目です」
「撃つ」
「本当にいいんですね?」
「人権派やそうした面々への配慮は不要です」
 酷いことにそうした人権派は元々の思想が彼等が今囲んでいるテロリスト達と同じなのだ。だから余計に騒ぎ立てるのである。
 北條も部下達もそのことはわかっている。しかしだ。
 北條はその社会的に力を持っている彼等を無視していいと言うのだ。
「彼等が何を言ってもです」
「いいんですか?」
「向こうにはマスコミや弁護士が揃ってますが」
「政治家にもいますけれど」
 政治家にもだ。彼等はいる。それが問題なのだ。
「圧力とかは」
「それは」
「今も来るには来ています」
 実際にそうだとだ。北條はあっさりと述べた。
「あの奸猶徒からです」
「えっ、元総理の」
「あの政治家からですか」
「つっぱねました」
 この奸は何かあれば怒鳴り散らし責任を転嫁する人物として知られている。人間的にはそうした最低な人間であるがさらになのだ。
「あの政治家は元々運動家ですしね」
「学生運動でリーダーだったそうですし」
「その時に確か」
「同志をいつも盾にしていたとか」
「自分は四列目にいてすぐ逃げていて」
「あの国とも関わりが深いですし」
 それももう周知の事実なのだった。
「あの政治家が圧力をかけるとなると」
「まずいですね」
「あの政治家が圧力を仕掛けてるとなると」
「職権濫用とか一切気にしない人物ですし」
 こういう手の人物の常である。
「平気で法律も破りますし」
「人を騙しても何をしても自分さえよければいい人物ですし」
「ですから圧力をかけられているとなると」
「危険では?」
 北條は部下にも人望があるタイプではないがそれでもだ。今部下達は圧力が来ていると聞いてだ。いささか不安になっていたのだ。
 果たしてテロリスト達が逮捕されても無事に済むか、それがだった。
 彼等は危惧を覚えていた。それで言うのだった。
 だが、だった。北條はだ。
 それに一切構わずだ。行くと言うのだった。
「では行きましょう」
「ならいいですが」
「部長がそう仰るのなら」
「テロリストを放置してはいけません」
 法治主義国家の基本だ。
 
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