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夕立

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2部分:第二章


第二章

「あっ、九八〇円」
「そうだね」
「九八〇円でフリードリンクフリーデザートって」
「いけるわよ」
 まずはこのことに喜ぶ二人であった。
「しかも高校生限定」
「僕達の為にあるみたいな話だよね」
「そうよね」 
 林檎は真理耶のその言葉に頷いた。
「じゃあこれ行く?」
「そうしよう」
 こうしてであった。二人はウェイトレスを呼んだ。するとであった。
「えっ!?」
「貴女は」
 何とだ。出て来たウェイトレスはだ。二人が知っている人であった。
 二人の部活の先輩でだ。その人が出て来たのである。先輩は憮然とした顔でそのうえでだ。二人に対してこんなことを言ってきた。今では青いふりふりの膝までの制服と白いエプロンの格好も目に入らない。
「あんた達部活は?」
「えっ、部活ですか」
「それですか」
「そうよ。新聞部の部活」
 それが二人の所属している部活である。
「そっちはどうしたのよ。写真は撮れたの?」
「っていうか先輩もどうしてここに?」
「記事は書かれたんですか?」
「そっちは」
「書いたわよ」 
 黒いロングヘアの背の高い先輩はそのはっきりとした二重の目を怒らせて答えた。
「もうね」
「そうなんですか」
「もうなんですか」
「それであんた達写真は?」
 先輩はまた二人に問うてきた。
「どうなったのよ」
「もう撮りました」
「それ出して今ここにいるんですよ」
「そうだったの。じゃあ私と同じね」
「はい、ちゃんとやることやってますから」
「それは安心して下さい」
 こう先輩に釈明するのであった。それは完全に釈明であった。
「それでなんですけれど」
「注文は」
「何にするの?」
 先輩はメニューの用紙を左手に、ペンを右手に二人に問う。
「それで」
「はい、フリードリンクとフリーデザート」
「セットで」
「それね」
 先輩はぶっきらぼうに二人に返す。
「わかったわ。じゃあそれを二つね」
「はい、それで御願いします」
「それで」
「それじゃあだけれど」
 ここで先輩はさらに言ってきた。
「学生証見せて」
「えっ、学生証ですか!?」
「それをですか」
「高校生限定よ。だから高校生かどうか確かめる為にね。見せて」
「そんなの見せるまでもないじゃないですか」
「そうですよ」
 しかし二人はこう言うのだった。
「同じ高校じゃないですか」
「わかってるじゃないですか」
「決まりは決まりだから」
 しかし先輩は言う。
「だからよ。見せてよ」
「ちぇっ、厳しいですね」
「絶対になんですね」
「そうよ、絶対によ」
 あくまでこう言う先輩であった。
「わかったわね。それじゃあね」
「わかりました」
「仕方ないですね」
 こうしてであった。二人は渋々その学生証を出そうとする。しかしであった。
 
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