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戦国異伝

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第二百三十九話 伊賀攻めその九

「あの人ならな」
「魔界衆の妖術の破り方もか」
「知ってるかもな」
「よし」
 ここでだ、信長は確かな声で応えた。
 そしてだ、こう飛騨者達に言った。
「ではな」
「お師匠さんを呼ぶんだな」 
 煉獄も信長に問うた。
「これから」
「そのつもりじゃ」
「わかったぜ、じゃあな」
「あの者は今何処におる」
「それがわからないんだ」
 首を傾げさせてだ、獣が応えた。
「どうにもね」
「わからぬか」
「お師匠様にはもうね」
 それこそというのだ。
「上様にお仕えした時から見ていないから」
「飛騨の里を出る時にね」
 鞠も言う。
「達者で、って言われて僕達の前から消えて」
「そうしてか」
「うん、後は何処に行ったのか」
「御主達も知らぬか」
「生きている筈でやんす」
 煙はこのことは確かだと述べた。
「お師匠様は不老不死でやんすから」
「死なぬか」
「少なくともまだ死ぬお歳ではないでやんす」
「あの方は今は百歳を越えておられますが」 
 鏡も信長に言う。
「それでもです」
「まだ死ぬ様にはか」
「はい、まだです」
 それこそというのだ。
「死ぬ方ではありません」
「生きておるのなら会いたい」
 信長の言葉は是非もないものになっていた。
「天下の為にな」
「こ、ここは狼煙をあげよう」
 あや取りは信長にも仲間達にもこう提案した。
「お師匠様を呼ぶ」
「ああ、いいね」
 大蛇はあや取りのその言葉に頷いた。
「それじゃあね」
「そ、そう。ここは狼煙」
 あや取りはまた言った。
「それを出そう」
「上様、それでいいかい?」
 煉獄があたらめて信長に問うた。
「それで」
「うむ」
 信長もこう返した。
「ではな」
「じゃあ早速あげるな」
「頼む、ことは急ぐ」
「一旦ここを下がらせてもらうぜ」
「それではな」
 信長は煉獄の言葉に応えてだ、そしてだった。
 彼等を見送った、そのうえで傍にいた毛利と服部に言った。
「吉となればよいな」
「はい、確かに」
「そうなれば」
「我等にとってです」
「まさに天啓となります」
「わしは天啓は頼まぬ」
 自らに頼む、それが信長の考えだ。
「人は自分の力で切り開くものじゃ」
「ですな、上様はです」
「そうしたお考えですな」
「だからこそですか」
「妖術についても」
「そうした考えであったが」
 それでもというのだ。 
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