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チビで悪いか!

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2部分:第二章


第二章

「絶対に嫌っ」
「嫌ってねえ」
「そもそもあいつって」
「あいつが!?」
 不意に皆の言葉の調子が変わったことに気付いたのであった。
「あいつがどうしたのよ」
「まあ注意して見ればいいわよ」
「そういうこと」
「!?話がよくわからないのだけれど」
 今度は顔を顰めさせたのであった。
「何が何だか。注意してって」
「案外小柄なのも悪くないし」
「そうよね。それはそれでいいから」
 またそちらに話をやるのであった。咲菜については余計にわからないことであった。
「じっくりとね。見ているといいわ」
「じっくりとって。誰をよ」
「あんた・・・・・・」
 皆今の咲菜には呆れた顔になる。そうしてまた言うのであった。
「鈍かったの、ひょっとして」
「私が!?」
「ああ、もういいわ。それなら」
「彼も大変ね」
「彼がって誰よ」
 またしても鈍さを発揮する咲菜であった。その辺りは全く自覚がない。
「何が何だかわからないわよ」
「だから。じっくりと見なさい」
「それでわからなかったらどうしようもないけれど」
「わからないけれどわかったわ」
 また憮然とした顔で答えるのだった。
「何を見るかもわからないけれどね」
「駄目だ、こりゃ」
「彼も大変ね」
「また彼なの」
 何処までも話がわかっていない鈍い咲菜であった。しかし何はともあれその時からじっくりと周りを見てみることにした。それでも何もわからないが。
「何が何なのよ」
 そう思っていた。
「大体彼だのって。誰のことなんだか」
「ああ、お早う」
「むっ」
 ここで後ろから嫌な声を聞いた。声変わりして暫く経った男の子の声であった。
「今日も奇麗な頭の天辺だね」
 そう言われながらその頭の天辺をぽんぽんと叩かれる。それを受けてからむっとした顔で上を見上げるとそこには一八〇を越えている背の高い少年がいた。背は高いがその顔が童顔なのが面白い対比を見せている。しかし彼の顔を見て咲菜はその顔をさらに不機嫌なものにさせるのであった。
「それがどうかしたのよ」
「いや、だから奇麗だって言ってるんだけれど」
「あんたに言われても嬉しくないわよ」
 むっとした顔で相手のその童顔を見上げて言い返す。
「全く。いい!?三浦君」
 彼がその三浦菊次郎なのだ。
「今度そんなことしたらただじゃおかないわよ」
「何かくれるの?」
「拳骨くれてあげるわ」
 声を厳しいものにさせて告げる。
「わかったわね」
「あっ、プレゼントくれるんだ」
 だが菊次郎は堪えない。平気な顔である。
「嬉しいよ。じゃあ」
「・・・・・・本当にぶん殴るわよ」
 堪えない菊次郎に対してまた言い返すのだった。それでも彼は平気であるが。
「全く。本当にいつもいつも」
「だって奇麗な頭の天辺なんだし」
「他はどうなのよ」
 あまりにも頭の天辺のことを言われるのでそこを問うた。
「他?」
「そうよ。どうなのよ」
「まあそれはね」
 ところがここで菊次郎は言葉を濁すのだった。
「何とも言うかね。まああれだよ」
「あれって!?」
 今の彼の言葉に首を傾げる。だがそれでわかる筈もなかった。
「何なのよ、一体」
「まあまあ」
「まあまあじゃなくてね」
 問い返すが菊次郎はこれに関しては全く答えなかった。
「何でもないよ。じゃあ僕はこれで」
「何処に行くのよ」
「何処って。学校だよ」
 何を今更、といった感じの言葉であった。
「登校中じゃない」
「あっ、そうだったわ」
 言われてそのことを思い出す咲菜だった。怒っているあまりそのことを頭の中から消してしまっていたのだ。目と口を大きく見開いて言う。
 急いで学校に向かう。見ればその横には菊次郎がいる。その彼を横目で見ながら校門に向かう。横目でみ見る彼はどういうわけか笑っているように見えた。
 そんな彼を見て何か妙な感じがしたがそれは言葉には出さなかった。その関係も相変わらずであった。
 
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