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おぢばにおかえり

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第二十話 二学期その一

                          二学期
 夏休みは長いですけどあっという間に終わりました。担任の福本先生のお顔を見るのも久し振りです。何か何処か官房長官に似ていなくもないような。
「夏、どうだった」
「まあ楽しかったです」
「一応は」
 私達は教室で先生に答えます。
「うちの高校は夏休み長いからな」
「はい」
 どうも無機質な感じのする先生です。けれど阪神が大好きで巨人が勝って阪神が負けると不機嫌になられるみたいです。あまりはっきりとわかりませんが。
「今年は巨人が弱かった」
「巨人弱いのっていいことよね」
「そうよね」
 私の周りに巨人ファンは殆どいません。何か最近訳のわからない博士だの占い師の方が教会に来られて私の家の教会に来ていますけれど。巨人ファンはいないです。
「天理高校の野球部も甲子園に出た。応援は行ったな」
 応援しないと駄目なんです。やっぱり同じ高校ですから。私も甲子園に行きました。
「行きました」
「皆だな」
「はい、そうです」
「だったらいい。冬は花園だ」
 今度はラグビーです。天理高校はラグビーも有名なんです。全国大会で優勝したことも何回かあります。授業で雨だとラグビーの試合のビデオを観たりもします。
「わかるな」
「わかります」
「わかればいい。じゃあホームルームに入るぞ」
 何か長い前振りの後でホームルームです。それが終わってから解散ですけれど。それが終わってから皆集まって夏休みの話をします。
「夏休みどうだった?」
「一応は楽しかったわよ」
「一応なの」
 皆私の返事に少し目を向けます。
「ちょっと。色々あって」
「色々って!?」
「変な博士が来たのよ」
「博士って死神博士?」
「ナゾー博士じゃないの?」
 どっちにしろ実在したら困るなんて博士じゃないですけれど。特にナゾー博士って人間なんでしょうか。目が四つで下半身がなかったような。
「どっちかっていうとっていうか完全に死神博士だったわ」
 本当にそんな方が来られたんです。
「白いタキシードにマントでね」
「変態さんみたいな格好ね」
「っていうか仮装行列?」
「本当にその格好で来たのよ」
 私は説明します。
「こっちもびっくりしたわよ」
「如何にもマッドサイエンティストって外見ね」
「中見はどうかわからないけれど」
「中見もね」
 実はかなりの人でした。
「何か趣味が兵器の開発に生体実験だって言っていたわ」
「警察何してるのよ」
「あからさまに危ない人じゃない」
 危ないどころじゃないですけれど。
「そんな人が教会に来てよく何もなかったわね」
「っていうかどうしてそんな人が来たの?」
「何か自然に来たのよ」
 本当にふらりとした感じでした。夕陽をバックに車椅子で。その車椅子が自動で動いていました。
「ふらってね」
「ふらってねえ」
「神戸も物騒になったわね」
「物騒っていうか何だったのかしら」
 私もそこはわかりません。 
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