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ロックマンゼロ~救世主達~

作者:setuna
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第25話 ユグドラシル

 
前書き
オリジナルエックスが眠るユグドラシルへ 

 
シエルの制止を振り切り、ルインとゼロはレジスタンスベースには戻らず、そのままネオ・アルカディアのオリジナルエックスが眠るユグドラシルに突き進んだ。

途中で邪魔してくる…恐らくエルピスに洗脳されたのだろうパンテオンやメカニロイドが妨害してくるが、エックスを助けるために突き進むゼロとルインは自身の力を惜しみなく使い、敵を薙ぎ払う。

床や所々に敷き詰められたトゲに注意を払いながら、ゼロとルインは先に進んでシャッターを抉じ開けると、その先に信じられない光景か広がっていた。

「え!?こいつら…」

一瞬ルインは自身の目がおかしくなったのかと思ったが、ゼロの多少驚いた表情を見る限り、どうやら視覚機能の故障ではないらしい。

目の前には、七体のレプリロイドがいた。

ヒューレッグ・ウロボックル

ポーラー・カムベアス

フェニック・マグマニオン

パンター・フラクロス

クワガスト・アンカトゥス

バーブル・へケロット

ヘラクリウス・アンカトゥス

一体だけ除けば、この戦いでゼロとルインが倒したレプリロイド達である。

「…どうやら、またボディを再生したようだな」

「また?じゃあ、こいつら…デッドコピーなの?」

虚ろな瞳にもしかしたらレプリロイドのボディのみを再生したデッドコピーではないかと思ったが、ゼロが否定した。

「いや、前にネオ・アルカディアで復活した奴らと戦った時は、復活した奴らに意識があった。倒した奴本人の意識がな。恐らくはエルピスに操られているだけだろう」

【エルピス様と…ダークエルフ様の元、新しい世界秩序が…これから…生まれる…エルピス様に…栄光あれ】

どうやら本当にエルピスに操られているようで、ルインはこのようなことを平然とするエルピスに吐き気を覚える。

ゼロがZセイバーを構え、一瞬でカムベアスにダッシュで距離を詰めると、フレイムチップを起動させ、属性を付加させたチャージセイバーでカムベアスを両断した。

「ボ、ボファーーー!?エルピズのやどう!どこ行っただ!ん?何で…オデ…こんだこどに…なってんだ?体が熱い…ボッボボボボファーーーー!!?」

破壊された瞬間に洗脳が解けたのか、カムベアスは訳が分からないという表情のまま爆散した。

カムベアスの最期にゼロは思わず舌打ちをした。

彼らからすれば気がついたら真っ二つなどという事態なため、目覚めた途端に何が何だか分からぬ間に爆死ということになるのだ。

「ルイン、先に行け!」

「ゼロ!?」

加勢しようとしたが、ゼロに制され、逆に先に進めと言われたルインは目を見開く。

「さっきのことではっきり分かった。洗脳されたこいつらはメカニロイドと殆ど変わらん。こいつらに時間を食うくらいなら、片方が残って相手にした方がいいだろう」

「でも…」

「エックスも、きっとお前を待っているはずだ」

「…っ!!」

色恋沙汰に鈍いゼロには分からないが、エックスとルインの間には、ある意味自分よりも深い繋がりがあることには気付いていた。

それにルインなら自分より早くエックスの元まで行けると考えてのことだ。

「っ、ごめん!そしてありがとうゼロ!!」

扉に向かって駆けるルインに攻撃を仕掛けようとするフラクロスとヘケロットだが、ホルスターからセイバーをもう一本抜き、エネルギーチャージをしながら突っ込む。

「はあっ!!」

無防備なヘケロットとフラクロスをダブルチャージセイバーですれ違い様に同時に両断した。

「んなっ!?嘘だろおい…何で俺、こんな事になってんだよ!!」

「ここはどこケロ!?ワタスは誰ケローッ!?ゲロゲログワーッ!!!」

フラクロスもヘケロットも何故自分が真っ二つにされたのか分からないまま爆散した。

「残り…四体…」

ルインが先に進んだのを確認し、ゼロはサンダーチップを起動し、マグマニオンにシールドブーメランを投擲した。

シールドブーメランは当たらずにすり抜けたが、姿を現した時、戻ってきたシールドブーメランがマグマニオンを横一文字に斬り裂いた。

「ハッ…私としたことが…あんな者共に…心を…操られてしまうとは…なっ…情け…ない…」

マグマニオンは自身が操られていたことに気付いた後に爆散し、ウロボックルがこちらに向かってくる。

ゼロは距離を取り、チェーンロッドでウロボックルを拘束すると、勢い良く壁に叩き付けると、ウロボックルから入手した技であるレーザーショットで動力炉を貫いた。

「は…ここは…!?エルピスが来て…ベビーエルフが来て…俺は…一体…う、うごわーーーーーー!!」

ウロボックルも撃破し、残りはアンカトゥス兄弟のみとなる。

「大いなる者が…間もなく…再び…この世に…目覚めようとしている。閉じられた歴史が…再び動き始める。エルピス様に…栄光あれ…行くぞ…弟よ」

「はいっ、兄上!!」

アンカトゥス兄弟がゼロに向かっていく。

一方で、エックスが眠るユグドラシルに向かって突き進んでいるルインは…。

「どけっ!どけえええっ!!」

ルインの行く手を阻むユグドラシルの防衛網は更に熾烈さを増し、無数のパンテオンやメカニロイドがルインの前に立ちはだかるが、数々の戦いを経て成長し、アーマーを換装することで様々な状況に対応出来るルインにとってパンテオンやメカニロイドなど既に敵ではない。

敵どころか今のルインにとってはエネルギーとパーツを得られるありがたい存在でしかなかった。

残骸から液状化したエネルゲン水晶を飲み干し、パンテオンやメカニロイドのパーツを回収し、今までの戦いで負った傷の処置に使いながら前に進む。

まるで死体から衣服を剥ぎ取るような行為だが、誰に何と言われようが、今のルインには立ち止まる事さえ許されない。

エックスを助けるまでは前に進まなければならないのだ。

「フリージングドラゴン!!」

氷龍を繰り出してパンテオンやメカニロイドを凍結させてしまう。

しばらくして、シャッターの前に辿り着いたルインはシャッターを潜り抜け、更に上にあるシャッターに向かって駆け登る。

シャッターから飛び出すと、ルインの視界に入ったのは、まるで大樹を思わせる装置だった。

これが恐らくはネオ・アルカディアの塔の最上階に存在する封印装置であるユグドラシルなのだろう。

ユグドラシルの下部、樹の根元に相当する部分にエックスがいた。

正確にエックスのボディだが…封印装置に埋め込まれ、変わり果てたエックスの姿を目の当たりにして、ルインは呆然と立ち尽くす。

だがすぐに目的を思い出し、エックスの前に駆け寄ろうとした。

「エックス!!」

エルピスがいないところを見ると、どうやら自分の方が早かったようだ。

もしエルピスが来てもゼロが来るまで時間を稼いで、ゼロと一緒に…。

「残念だったねー、ルイーン」

「え…?うあ…っ!?」

全身が金縛りにあったかのように動かなくなり、ルインはエックスの目の前で倒れてしまう。

「ぬか喜びさせてしまってすまないねえ。ゼロがいないのは残念だが、やはり、最後の仕上げは…君達の前でやらないと面白くないからねえ。エックスを完全に破壊すれば…ダークエルフは真に覚醒し…私は…究極の力を手に入れることが出来るのだーっ!!」

「や、止めて…止めてよ…お、お願い…」

怯えるような表情を浮かべるルインにエルピスは溜飲が下がる思いだ。

「フッフッフッ…それだ。お前のその顔が見たかった。前は私に対して呆れたような顔で私を見ていたが……そこで指を咥えて見ていろルイーーーン。お前の大事な大事なエックスが…目の前で破壊されるところを…な…クーーークックックーーー!!死ーーーーーーねーーーーーーエックスーーーーーー!!!ダークエルフを解放しろーーーーーーっ!!!!」

狂気に囚われたエルピスは、眠るエックスの胸にサーベルを突き刺す。

それもルインの目の前で。

「あ…ああ…」

目の前で起きたことが信じられず、目を見開きながら言葉にならない声を漏らす。

貫かれた胸から体中に亀裂が入り始め、エックスの体が爆ぜていき、腕が、足が弾け飛び、そしてとうとう完全にエックスのボディは爆散してしまった。

近くにいたルインは至近距離で起きた爆風で吹き飛ばされてしまうが…。

「い、嫌…嫌…嫌あああああああっ!!エックス!!エックスーーーーッ!!!!」

エックスのヘッドパーツの残骸が視界に入り、ルインは悲痛な叫び声を上げた。

「フ……フッフ…フーーーーッフッフッフ。やったぞーーー遂にやったぞーーー!!あの伝説の英雄…エックスを…遂に…遂にこの私が…完全に倒したのだーーーーーーっ!!!」

悲痛な表情で泣き叫ぶルインを意に介さず、エルピスはエックスの残骸を見遣りながら歓喜の叫びを上げた。

エックスが破壊されたことで、ダークエルフの封印が解かれてしまったのだろう。

もう一体の半身が現れてエルピスの半身と一つになり、完全な姿となる。

ベビーエルフはダークエルフに甘えるようにダークエルフの周囲を飛び回り、そして次の瞬間にはダークエルフとベビーエルフがエルピスの体内に侵入していく。

「ウッ……ウオオオオオオオオッーーー!!もっと、もっと力をーーーーっ!!!」

ダークエルフの力を取り込み、エルピスの体はより戦闘向きなものへと書き換えられていく。

「………」

それをルインは呆然となりながら、エックスの残骸を見つめており、やがて書き換えが終わってサーベルを構えたエルピスがルインを嘲笑う。

「………………待たせたな、ルイン。まずは、お前を血祭りに上げ…その後で、ゼロとネオ・アルカディアを…人間を…皆殺しにするとしよう。どうだ、ルイン…。人間のいない世界…レプリロイドのみの世界。さぞかし平和になると…思わないか」

ネオ・アルカディアを滅ぼし、レプリロイドだけの世界を創ると語るが、エルピスが恋したシエルもまた人間だということを、そしてそんなことをすれば、シエルが悲しむことをエルピスは忘れてるのだろう。

「フッ…フフフ…」

「…何がおかしい?エックスが死んで気がおかしくなったか?」

「いやいや、安心したんだよ。君を処分する理由が出来てさ。今までどうやって連れ戻そうかなと考えてたけど、よくよく考えたらイレギュラーを連れ戻す必要性なんかないからねぇ…久しぶりにイレギュラーハンターとしての仕事をしますか。イレギュラー化したイレギュラー・エルピスの処分。シエルとかへの言い訳はこれで充分でしょ。レジスタンスに本物のイレギュラーなんか必要ないし」

表情に笑みが浮かんでいるが、目は憎悪で濁っており、ZXセイバーを握り締める手に力が入った。

「君はイレギュラーハンターとして私が処分してあげる。イレギュラー・エルピス」

「イレギュラー?それは誰が決めるんだ?私はダークエルフの力を手に入れ、究極の力を得たのだ。今の私は神に等しい…。私の邪魔をする者は全て消し去るまで!!」

「やれるものならやってみなよ。無謀な作戦で部下を無駄死にさせた部下殺しの無能司令官様?」

満面の笑みで言ってのける。

トラウマとも言える“正義の一撃作戦”のことを辛辣に言うルインにエルピスの顔が憤怒に歪む。

「死ね!ルイン!!」

「死ぬのは君だよイレギュラー」

ルインとエルピスのZXセイバーとサーベルがぶつかり合った。

一方で、アンカトゥス兄弟と戦っていたゼロも、二人のコンビネーションに苦戦しながらも勝利を収めた。

「な、何が起こったんだーーーっ。あっ、兄上ーーー!!」

「儂らはーーー操られててーーーっ!!いたんだーーーーーっ!!ウガガガガーーーーーーッ!!!」

アンカトゥス兄弟の撃破を確認したゼロは急いでルインの元に向かう。

何故か、とても嫌な予感がした。

そして場所はユグドラシルのあった部屋に戻り、ルインとエルピスが激突していた。

「はあっ!!」

「くっ!!」

ルインのセイバーをサーベルで受け止めるエルピス。

最初は互角だったが、エルピスはどんどん追い詰められていく。

どんなに攻撃をしても痛みを感じないかのように全く怯まず、何度吹き飛ばそうが、忌々しいハルピュイアを彷彿とさせるアーマーの機動力で簡単に距離を詰められる。

エルピスの攻撃はどんどんルインに見切られていき、逆にルインは攻撃の手数を増やしていく。

いくらダークエルフの力で強化したとは言え、エルピスは元々非戦闘用の量産型レプリロイドであるので致し方ない面がある。

それに対して最初のイレギュラー戦争で大破し、脱落して英雄になり損ねたとは言え、英雄であるエックスやゼロと比べても勝るとも劣らないスペックを誇り、蘇ってから激戦を潜り抜けた戦闘用レプリロイドであるルインとは、基礎スペックも経験値も違いすぎたのだ。

やがてそれが決定的な差となっていく。

「フフフ…本気で潰そうとすれば君って弱いね。弱すぎて欠伸が出そう」

「な、何だと…!?」

「君みたいな雑魚にエックスが殺されるなんて…こんなことならノトスの森で躊躇せず処分しとくんだった。部下殺しの無能司令官なんか処分されても誰も悲しまないだろうし。悲しんだとしてもあっさり忘れ去られるだろうし?」

「……っ!!」

ゴミを見るような目で嘲笑うルインにエルピスには今のルインの姿がハルピュイアに重なって見えた。

「力以前に敵のことも知ろうとせず、ゼロやシエルの言葉を無視しなきゃ、君に従っていたレジスタンスも無駄死にせずに済んだのにねえ。君の愉快な頭と作戦のせいで」

嘲笑と共に、次々とエルピスにぶつけられる言葉がエルピスを精神的に追い詰めていく。

「黙れええええっ!!」

ルインをサーベルで強引に弾き飛ばすが、すぐに体勢を整えされてしまう。

「あはっ、図星を指されちゃった?でも撤回はしないよ?だって、事実だからね」

即座にPXアーマーに換装し、エルピスに突撃した。

「ええい!いちいちアーマーを換えおって!!」

サーベルで横薙ぎするが、サーベルがすり抜けた。

「な…っ?」

「PXアーマーの特殊ダッシュ、シャドウダッシュだよ。」

背後からした声に反応し、後ろを振り返ると、FXアーマーに換装して二丁のナックルバスターを構えたルインが接近していた。

「っ!?」

ルイン「ダブルメガトンクラッシュ!!せいやぁっ!!」

容赦なくナックルバスターによるパンチを二発同時にエルピスの背に叩き込んだ。

「ぐあああああっ!!?」

まともに喰らったエルピスは前方に勢い良く吹き飛ばされた。

「死になよ」

すぐさまHXアーマーに換装し、吹き飛ばされたエルピスを羽交い締めにすると、地面目掛けて勢い良く突撃した。

「っ!!」

最上階の近くまで来ていたゼロはルインが残してくれていたエネルゲン水晶とパーツで応急処置を施していた時に凄まじい振動がここまで届いた。

ゼロは自身の体の調子とエネルギーの残量を確認し、急いで最上階に向かう。

「そん…な…馬鹿な…」

「…………」

半壊したエルピスを冷たく見下ろした後、ルインはエックスの残骸で最も原型を保っているヘッドパーツを抱き締めて嗚咽を漏らした。

「っ…ごめん、ね…エックス…助けられなくて…約束破って…ごめんね…ハルピュイア…」

自分達を信じて、エックスのことを託してくれたハルピュイアの信頼を裏切ってしまった。

涙がエックスのヘッドパーツにいくつも落ちていく。

その時であった。

「おかしい…有り得ない…この私は…伝説の力を手に入れたはず…だ。かつて…この世界を破滅に導きかけた力を…」

「馬鹿馬鹿しい…。君みたいな馬鹿がどれだけ強大な力を得てもまともに扱えるわけないでしょ」

「な、何だと…!?」

見下すような発言に憤るエルピスだが、ルインの表情はとても冷めていた。

「私…あの時に君を助けたことを滅茶苦茶後悔してる。初めてだよこんな気持ち…誰かを助けて後悔したなんて。君なんか助けなきゃ良かった…君みたいなイレギュラーなんか!!」

憤怒の表情で見下ろすルインにエルピスは歯軋りした。

「グ…ッ…くっそーーー、ダークエルフ!!こんな物では、全然足らんぞ!!もっともっと、力を寄越せーーーー!!!」

「っ!?」

エルピスの体から異常なエネルギーが迸り、次の瞬間には凄まじい閃光が部屋に満ちた。

「ギィイイイイャアアアアアアッ!!!」

「えっ!?」

この世のものとは思えない断末魔の叫び声にルインは目を見開きながら発生源を見た。

「モット力ヲォォォォォォ!!!」

異形の姿となったエルピスを見て、レプリロイドをこのような化け物に変えることが出来るダークエルフに戦慄を覚えたルインはダークエルフを破壊しなければとダブルセイバーを構えた。

HXアーマーは空戦が可能なアーマーで行動の小回りが利くため、あの図体では小回りは利かないはずなので有効なはずだ。

取り憑いた状態の今なら取り憑いているエルピスごとダークエルフを倒せるはずだ。

エアダッシュで距離を詰めてダブルセイバーを振るうが、空振りで終わる。

「消えた!?」

「錆ビテ朽チロオオオオオッ!!!」

いつの間にか背後に移動していたエルピスはルインに向けてエネルギー弾を乱射した。

「きゃああああああ!!?」

まともにエネルギー弾の乱射を喰らったルインは地面に叩きつけられた。

「オ別レデス!!」

羽の先から光弾を放ち、何度も地面に倒れているルインに喰らわせる。

「ううっ!くっ…な、何とか反撃を…」

何とか反撃しようとするが、ワープで自由自在に動き回るエルピスを捉えることは出来ない。

「消エローッ!!」

そして巨大なエネルギー弾がルインに炸裂し、最上階の壁があまりの衝撃で吹き飛んだ。 
 

 
後書き
ルインVSエルピス

エルピスってゼロ3の中継ぎ役だからか滅茶苦茶弱い。
X小説でエルピスをモデルにしたディザイアは手強い敵として書いた(エックスにアルティメットアーマー入手とルインとくっつけるために)けど。 
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