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魔法少女リリカルなのはINNOCENT ブレイブバトル

作者:blueocean
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DUEL4 バトルロワイアル戦

「………本当に直ぐかよ」

アミタに聞いてはいたが、本当にこんなに早く降りれるとは思ってもみなかった。

「何をそんなにブルーになっているんですか?」
「零治君、反対側から登ってきたから………」
「なるほど。お疲れ様ですレイ」

シュテルがそう言って小さく頭を下げる。

「正直昨日はそれだけじゃなかったけどな」

そう言って前を歩くレヴィを見る。俺の気など知らず相変わらずテンションが高い。

「そう言えば今日は研究所がやけに騒がしかったけど何かあったのか?」
「何かあったかと言うより基本毎日あんな感じよ?」
「私達の研究所でもブレイブデュエルを一般開放してますしね」
「それで………」

部屋を皆で出た際、研究所の入り口の方は大勢の人の声が聞こえていた。
子供達の賑わいが最もだがその人数が半端ない。遠くであるはずなのにここまで声が響いてきたのだ。

「研究とかしてたら集中出来なさそうだな」
「大丈夫です。部屋それぞれに防音対策が施してありますから」
「ヘぇ………」

そんな話をしていると駅に近づいてきたのか、ビルや人が次第に多くなっていく。

「さて、先ずは何でも揃うショッピングモールを案内しましょうか」








案内されたのは駅から徒歩10分ほどにある大型ショッピングモールだ。

「ここだと雑貨から衣類やスポーツ店何でも揃ってますのでとても買い物しやすいと思います」
「だが食材は高めだな。ただ珍しい食材も多く取り揃えている」

アミタの説明にすかさずディアが捕捉を付け足した。
だが、俺は基本料理などしないので関係ない。

「更にここは大きな本屋もあります」
「ゲーセンもあるよ!!」

シュテルとレヴィがそれぞれ説明してくれる。互いに好きな店でもあるのだろう。

「あとはこのショッピングモールはちょうど天央高校の近くにあるから帰り道寄りやすいわね」
「へぇ………」

それならばここはとても使い勝手の良い場所なのかもしれない。

「「………」」

そんな話をしている中、ユーリと焔は一緒にある店に釘付けになっていたい。

「うっ………」

それは過去に苦々しい思い出がある。

「あら?新しいファンシーショップが出来てたのね」
「本当ですね」

どうやらキリエやアミタも初めて見る店らしい。

「あの2人があの場から離れそうにないな………」
「ユーリはぬいぐるみとか好きだからね!」
「では折角ですし入ってみましょうか」

シュテルの一言で、皆店の中に入るようだった。

「ちょっと待ってくれ………」
「あれ?零治君どうしました?」
「俺は此処で待ってるよ」
「ん?どうしてだ?」
「どうしてって………」

外から見える店の中には少なからず男性の姿が見える。彼女の付き添いや、妹の相手など進んで入っている者はいなさそうだが、ディアが不思議がっているのは同じ境遇の者が居るのに何を断る理由があると言うことだろう。

「俺、こういった店はちょっと苦手なんだよ………」

過去に義妹に連れられてファンシーショップに何度か訪れた事がある。この店はまだマシだが、以前訪れた店は空間全てをピンクにしており、何か香水のような甘ったるい匂いや、女性客の視線など、気が滅入る事が多かった。何とか根性で耐え切ったものの、それ以来ファンシーショップを見かけると気分が悪くなるようになってしなった。酷い時には吐き気を感じる程だ。

「何?恥ずかしいの?不安だったら手を繋ぐ?」

キリエが面白そうに手を出してくる。こんな時に悪乗りは勘弁してほしい。

「いや、だから別に俺が居なくたって問題は無いだろ?」
「あるよ!誰が買ってくれるの?」
「俺はサイフか!!」

これは不味い。このままじゃアイス以外も色々と買わされてしまう。

「焔、焔!!あれ可愛いですよね!!」
「本当ね………」
「何々!?」
「どれでしょう?」

焔とユーリの声に付き従う様に、俺は皆が視線を離した一瞬の隙を使って駆け出した。
何処に行くのか、何処に向かっているのか分からないまま、取り敢えず逃げる。

「あっ、レイ!!」
「逃げた」

後ろからユーリの気の抜けた声が聞こえたが気にせずひたすら走る。足の速さには自信がある。追いかけてきても追いつかれることは無いはずだ。

「速っ!?」
「人混みもすいすい進むわね………一体何がそうさせているのかしら?」

アミタとキリエの声を最後に、皆の声は完全に聞こえなくなった。それでも逃げ続けた。

「絶対に入らん!!」











「………あれ?ここは?」

疲れ立ち止まるとそこは広いフードコートだった。昼は既に過ぎているので食事をしている人はまばらだが食後にお喋りや、デザートを食べている人でまだ賑わいがある。

「ん?」

そんな中少し外れのベンチに1人寂しそうに座っている赤毛の女の子がいた。歳はユーリと同じくらいか?周りをチラチラと見ながら一生懸命誰かを探している。

「家族と逸れたのかな?」

薄っすらと浮かべる涙を見てそう思う。今日は春休みとあってか人も多く、逸れやすい。

「同じ境遇として見過ごせないか………」

俺はすぐ目の前のアイスクリーム店に向かった………











「うっ、うっ………お姉ちゃん………」

それはあっという間だった。
春休み。いつも忙しい父に連れられて、家族全員で買い物に来た今日この日。

ノーヴェは1人、絶賛迷子中だった。

『ノーヴェ、今日は人も多いし手を繋がないと迷子になるわよ』

と母親に言われたノーヴェは素直に双子の姉のウェンディとしっかりと手を繋いだ。本当はもう1つ姉のスバルと手を繋ぎたがったが、ウェンディを拒む事は出来なかった。

しかしそれが間違いだった。

『あっ、あれは新しく発売された話題のおもちゃッス!!』
『きゃ!?』

そう言って不意に駆け出すウェンディ。

『ちょっとこらウェンディ!迷子になるでしょ!!』

ウェンディを追いかけるように皆慌てて付いていく。

『痛たた………』

軽く転んでしまい、服を払って立ち上がる。

『………あれ?みんなは?』

そして気が付いた時にはノーヴェは迷子になっていた………








「みんなぁ………」

泣き出しそうになるところを堪える。皆と一緒にいた時とは違い、いきなり別の世界に来てしまったような感覚を感じていた。

周りを見渡すがやはり家族の姿は見えない。
段々と膨れ上がる不安に押し潰されそうになるノーヴェ。

「ううっ………」

もう限界だった。小学生にもなって迷子で泣く様な恥ずかしい思いはしたくなかったが耐え切れそうにない。

「ほい」

そんな時だった。いきなり知らない人に声をかけられ、目の前にシャーベットのカップアイスを差し出し、隣に座ってきた。

「あ、ありがとうございます」
「構わないよ」

そう言って男も自分のアイスを食べ始めた。

『知らない人に声を掛けられても、貰わない、付いていかない』

と母親に教わっていたノーヴェだが、急に渡されたのと、心細かったのもあり、素直に受け取ってしまった。

「家族と逸れちゃったのか?」
「はい」

アイスそっちのけで家族を探しながら返事をするノーヴェ。アイスよりもやはり家族の事で頭が一杯だった。

「取り敢えず落ち着いてアイスを食べな。心配しなくても君の事を絶対に探してくれている」
「は、はい………」

不安そうにしながらもノーヴェは言われた通りアイスを食べる事に集中する。
暫く一心不乱に食べ続けた為、あっという間に食べ終えてしまった。

「もっと落ち着いて欲しかったんだけどな………まあ良いや。君の家族の特徴を教えてくれないか?」
「えっ?」
「俺も一緒に探してあげるよ」
「あっ、はい。えっと、えっと………」
「慌てなくて良いよ。ゆっくり教えて」










「予想外だったなぁ………」
「はい?」

隣で手を繋いだ少女が不思議そうに首をかしげる。味方が出来た影響か、少し表情に余裕が出て来た。アイスも功を奏したようだ。

俺が呟いた予想外とは少女ノーヴェの家族の事だ。
まさかノーヴェを含め姉妹が5人、両親含め、全員で7人と言う事だ。

(大家族なのに目を離すかなぁ………しかも一番末っ子を………)

逆に多いから手に負えなかったのかもしれないが、それは体験した事がないから何とも言えない。

「ここ………」

そんな事を思ってるとどうやら目的地に着いたようだ。

「ここのおもちゃ屋か」

俺達は簡単に自己紹介をし、ノーヴェが家族の皆が向かっていた筈のおもちゃ屋に来ていた。ノーヴェは慌てて、人の多いフードコートに行ってしまったみたいだが、皆でおもちゃ屋に向かっていたとしか手掛かりが無いなら必ず何度かこのおもちゃ屋に来ていないか確認に来るはずだ。

それをノーヴェに説明するとノーヴェも素直に従った。

「はい、ウェンディがおもちゃ屋に駆け出してみんなと逸れたから…………」

ノーヴェの表情も先ほどよりかは柔らかくなった。とはいえ、まだまだ不安で一杯だろう。

………しかし、確かに子供にとっておもちゃ屋は楽園みたいなものだろうが、だからと言って妹の事を忘れ、駆け出してしまうのは姉としてどうなのだろうか。

「合流出来たらたっぷり叱ってやれ」
「はい………」

そう小さく返事をし、キョロキョロと辺りを見渡す。流石に家族の名前しか知らない俺には探せない。

「ううう………」

唸りながら一生懸命背伸びをして探すノーヴェ。まだ小学校低学年のノーヴェには見えづらい様だ。

「………そうだ、ノーヴェ!!」
「えっ?うわっ………!?」

俺はノーヴェの返事を聞かず、持ち上げて肩車をしてあげた。

「零治……さん?」
「これなら見やすいだろ?」
「えっ?うわぁ………」

そう言葉を漏らしながらノーヴェは呆ける。

「高いの苦手か?」
「い、いいえ………ただちょっと懐かしいのと、その………」
「ん?」
「何だか………恥ずかしい………」

確かにちょっと歩いている通行人がこっちを見ている。流石に肩車は目立ちすぎるか。

「だけどこれだけ目立てばノーヴェの事気が付くかもな。ノーヴェも頑張って探せ。じゃないとずっとこうやって探さなくちゃいけないぞ」
「えっ!?えっと、えっと………」

そう言うと慌ててノーヴェは家族の事を探し始めた。本当に嫌だったら無理強いするつもりなど無いのだが、俺の言葉を信じて必死に探している姿は弄りがいがあって可愛らしい。

(さて、俺の探し人も気が付いてくれればいいが………気が付かないなら気が付かないで奢らないで済むか)

なんて無責任な事と思いながら、俺も簡単に聞いた特徴をもとに探すのだった………









探す事10分ほど経った後の事だ。

「マスタ~!!」
「ん?」

ふよふよと浮いてきたのは焔だ。

「お前、人が大勢いるのに何をふらふらと飛んできてんだよ………」
「別に関係無いわよ。それに博士の話だと、研究所だけじゃ無くチヴィットは他にも居るし、この街じゃ珍しくは無いらしいわ」

そうは言うが、焔は普通のチヴィットとは少し違う。サイズはそうだが、ぬいぐるみの様なチヴィットと違い、人形の様な焔はやはり目立つ。

「うわぁ………可愛い!!」
「ママ、私もあれ欲しい!!」

と言った具合にやはり注目されていた。

「それよりも何迷子になってるのよ。それに何、頭に乗せてる子は?………もしかして攫ったの?」
「アホか。この子家族とはぐれちゃって、一緒に探してやってるんだ」
「ふ~ん」

そう言って焔は肩車しているノーヴェをジロジロと見る。

「………」
「おい焔、そんなジロジロと………」
「可愛い………」
「え?」
「私、中島ノーヴェ」
「私は焔よ。あなた、大変ね………こんなに人が居る中で家族とはぐれちゃって………私も探すの手伝ってあげるわ」
「!!ありがとう」

何だかよく分からないが、直ぐに仲良くなれたようだ。

「それよりも焔、みんなは?」
「みんなまだあのお店で買い物中。私はマスターの居る位置が分かるから迎えに来たのよ」
「ん?何で分かるんだ?」
「私の本体はカード。ホルダーのラグナルにあるの。だから今の私はチヴィットにデータを送信して動かしているって感じ。だからラグナルを持っていればマスターがどこにいても分かるのよ」
「へえ………」
「………あれ?」

そんな話をしていると何やらおもちゃ屋が騒がしくなってきた。

「何だ?」

『皆さん、これからブレイブデュエル特別イベントを開催します!!ルールは簡単!!4人のバトルロイヤル戦で3回勝ち抜いた方にレアカードとこの店限定カードホルダーをプレゼント致します!!参加は1人300円。なお1人、一回のチャレンジになりますのでご了承下さい!!』

「へえ、イベントか………」

アナウンスと共に大勢の人がこのおもちゃ屋に集まり始めた。

「ちょ!?」
「きゃっ!?」
「やっ!?」

入口の近くにいた俺達はその流れに飲まれるように巻き込まれる。
気が付けば列の最前列の方に俺達は居た。

「おい、2人とも大丈夫か?」

取り敢えずノーヴェを下ろして確認する。

「はい………」
「私も大丈夫、ありがとうノーヴェ」
「うん」

どうやらノーヴェが焔を捕まえていてくれた様だ。またもはぐれる所だった。

『おっ、最初の挑戦者だね!!』

そう話掛けてきたのは、ここのおもちゃ屋の店員だ。蝶ネクタイにタキシードとおもちゃ屋としては少しミスマッチな恰好をしているが、ノリノリでマイクを持ってこちらに向けてきた。

「えっ、いや俺は………」
『いいよいいよ、大きなお兄さんでも大歓迎さ!!ブレイブデュエルは年齢関係無く楽しめるからね!!』

とそんな説明をされ、一気に恥ずかしくなった。事情を知らない人から見れば子供達を押しのけ、最初に並んだ高校生と言う事になる。

『さて、それじゃあ挑戦は………2人かな?』
「いや、俺はともかくノーヴェは…………」
「私、ホルダー持ってない」
『だったら丁度良い!!お兄さんが勝って、このホルダーをプレゼントしたらどうだい?』

そう言って店員は先ほどアナウンスで言っていた景品のホルダーを見せる。
ホルダーは店限定と言っていたが、店のロゴが入っている訳でもなく、赤と青の2種類のスケルトンカラーのホルダーは高校生の俺から見てもセンスが良い物だと思えた。

「いや、でも俺達は………」

人を探していると言おうとしたが、ノーヴェがホルダーに釘付けになっている事に気が付いた。

「………ノーヴェ、もしかして欲しい?」
「えっ!?いや、あの………」

俺に問われたノーヴェはあわあわと慌てた後、顔を赤くして俯き、

「………欲しいです」

と聞こえる様に言った。

『じゃあ決まりだね!!それじゃあ1人目はお兄さんに決定!!お名前は?』
「えっ?有栖零治」
『珍しい苗字だね!!じゃあ有栖零治君頑張って!!!!』

大きな声でフルネームを言われ、更に君付けで呼ばれ、恥ずかしさで叫びたくなった。
前の学校で知られたら周辺の不良達の笑われ者になったであろう。

(………二度とこの店には来ない)

そう心に決めた………








さて、戦闘はと言うと、司会者の言う小さい子供達が相手………と言うわけではなく、相手は俺よりも年上の男達ばかりであった。

「何だよこいつ等………」

小太りだったり、ひょろひょろだったりと見た目はとても強そうには見えない。動きもディア達と比べたら天と地の差だ。だが、それを補うように変わったスキルだったり、面倒なスキルばかりだった。

「チェーンバインド!!」

近くにいた男が俺に向かって鎖を伸ばし、捕まえようとしてくる。

「何の!!」

俺は近くのビルを蹴り、空を駆け、鎖を難なく交わす。

「おりゃあ!!」

そして相手のスキルが終わると同時に俺は相手に向かって一気に距離を詰めた。

「す、スモークプロテクション!!」

相手は慌てて盾を出現させた。

「そんなもの!!」
『マスター、駄目!!』

焔の制止を無視して盾もろとも斬り裂こうとしたが盾を斬ると同時に身体全体を包み込む様に煙が発生した。

「なっ!?」
『馬鹿!!あれくらいの盾だったら潜り込んで避けて攻撃出来たでしょ!!』
「んな事言われてもなぁ……ただの盾だと思ったんだよ………」

視界は見えず、このままでは先ほどの鎖に捕まる。

そう考えて身構えていたが、一向に相手の攻撃が来ない。

「あれ?」

やがて煙が晴れると何処かに逃げたのか誰も居なくなっていた。

「何で攻撃してこないんだ?」
『魔力が少なくなっていたのね、ラッキーだったわ』
「なるほどね………」

そう納得しつつ辺りを見渡す。
周りはこの街がモデルになった建物が建ち並び、敵の姿は確認できない。

「くそっ、戦闘音もしないし隠れてんのか?」
『魔力温存ね。皆漁夫の利を狙って確実なチャンスを狙ってるのよ』
「くそっ………」

正直イライラしていた。本来ならディア達が戦っていた様な燃えるバトルとなる筈が、まるでスナイパーの様に潜み攻撃してこない。してきたと思えば誘導弾による牽制。

「焔、何か良い手無いか?」
『良い手ね………今の貴方じゃ葬刃しかスキルは無いし、相手がいなければ魔力の無駄に………そうだ』
「何か思いついたから?」
『ええ。その代わりリスクは大きいわよ?』









「何だあいつは?」

ミラージュシフト。索敵タイプのレーダーに引っかからないレア度の高いスキルを使い、様子を見つつ戦おうと思ったら他2人も似た様な戦法だった。その為、あのロングコートの有栖零治と言う男以外ほぼ位置が分からなくなってしまった。

サーチャーを使い位置を確認している内に有栖零治に見つかったが、あの戦い方は並みの実力者じゃ無い。そう感じて直ぐに逃げた。魔力の消耗が少し心配だが、何もせずにいれば時期に回復する。

「知らないぞ、あんな奴………」

例えるならT&Hエレメンツのアリサちゃんの様な運動性。ランキング戦で戦った事があったが手も足も出なかった。

「相性も悪いし、相手のスキルも見れず仕舞い。………誰か戦闘になって情報が得られれば………ん?」

そう思いつつ物陰に隠れ、有栖零治を観察していると動きがあった。

「刀をしまった?抜刀術?」

攻撃モーションの様だが相手は誰もいない。何をしているのか分からなかった。

「どうする気だ………」

そして男はその行動の意味を知る………










『ステージ説明覚えている?』
「ああ。ここ海鳴市の駅前周辺をモデルにしてるって」
『そこじゃないわ。広さよ』
「広さ?」
『聞いて無かったわね………リアルで建物が多いから分かり辛いけどこのステージはこの前の空のステージの半分ほどの広さしか無いわ』
「マジで!?」
『それで幸運な事に相手は牽制で誘導弾をバンバン射ってくれたおかげで魔力も限界位まで溜め込めてる』
「まさか………!!」
『最大出力でこの街ごと一閃するわ。仮に外れても相手をおびき出す事が出来る。きっと不意のアクシデントには弱い筈よ!』
「街って破壊出来るのか?」
『できる筈よ。博士に調整されている時に情報で街を破壊し尽くしたランキング上位の娘もいるわ』
「………マジで?」
『本当よ。……私も驚いたわ。一部のネット住民からは『白い悪魔』と呼ばれているらしいわね』
「白い悪魔………」

何とも恐ろしい限りである。出来れば戦いたく無い相手だな。

『どうする?魔力を大幅に使うからどちらにしても不利になるわ』
「………答えは決まってる!!やるぞ焔!!」
『了解、マスター!!』

街中を移動してなるべく広範囲に攻撃出来る位置に移動する。
そして鞘を腰に差し、抜刀出来る構えを取った。

「つっ………」

魔力が減っていくのを感じる。それと共に身体も徐々に重くなっいく。

「なるほど………」

以前はそれほど魔力を使わなかったからか、あまり疲労した感覚が無かったが、今回は違う。限界まで使って建物ごと相手を狙うのだ。

「さて………上手くいってくれよ………!!葬刃!!!」

そしてその魔力が開放される。
全力で振り祓った斬撃は横に広がっていき、刃が斬り裂く。

「えっ………?」

神速とも言える斬撃は街を斬り裂き、真っ二つになりながら相手の情けない声が聞こえた。

「なっ………!?」
『2人目!!』

しかしそれ以上は確認出来ない。

「なっ、何て奴だ………!!」

崩壊していく建物の中から3人目が表に現れた。
小太りの男でどうやらビルの上の方から様子を見ていた様だ。

『マスター!!』
「くっ、やっぱり逃したか………」

魔力を急激に消費した事で身体が思う様に動かない。

「く、くそっ………こんな奴知らないぞ………!!こ、こうなったら………!!」

相手の男が自棄になったのかこちらに杖を構え、向かってくる。

『零治!!』

全員倒せるとは思ってなかったが直ぐに向かってくるとは思っていなかった。

「ちっ………!!」

辛うじて身体を動かし、刀を構える。狙うはすれ違いざまでカウンターの様に与える一撃。

「ブレイブカッター!!」

相手はスキルを使ったようで、杖の尖端に魔力の刃が出来、攻撃範囲が大きくなった。

『マスター、一撃でも喰らったら今のマスターじゃその後の攻撃に耐えきれないわ!!』
「やるしかないだろ!!」

動きが鈍い状態ながら相手の動きを逃さない様にしっかりと見る。くるのは突きか、斬り下ろしか、横薙ぎか、それとも斜めに斬りかかって来るか………

「喰らえ!!」
「南無三!!」

もう破れかぶれに近かった。繰り出した突きは、相手の刃を掠めながら相手の右肩を突き刺し、相手の勢いを完全に受け止める。

「ぐうっ………!!」

それに負けない様に必死に踏ん張った。

「何でこんな………」

そう言いかけ、相手は蹲る。

「悪いな、賭けは俺の勝ちだ」

そして最後に一閃し、相手は完全に気絶した。

『ゲーム終了!!勝者有栖零治君!!!』

もはや突っ込む事よりも何とか勝てた事に深く安堵したのだった………












さて、激戦を終えても戦闘は続く。
2戦目は年齢層が高かった先ほどと比べ今度はノーヴェと同じ位の年齢だろう。だからこそ………

『勝者、有栖零治君!!』

歓声が聞こえる中、俺はとても居たたまれない気持ちになっていた。

「流石に大人気ないよな………」

先ほどの戦いを見ていたのか3人とも俺に集中攻撃してきたが、ビビっていたのか逃げ腰の子供達。
流石に初心者でもそんな攻撃にやられる事は無く、思いのほか楽に勝ち残る事が出来た。

「さて、最後だな………」

『これで最後になりました!!初めての3連勝となるか有栖零治君。しか~し!!最後にとんでもない強敵がエントリーしてきました!!』

そんな実況と共にリライズしてくる。

「ふっふっふ………」

聞き覚えのある声と共に腕組みして現れる人物。

「レイ、勝負だ!!」
『ランキング上位ランカー、レヴィ・ラッセルさんだー!!』

最後の最後にトンデモない相手が現れたのだった………
 
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