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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第1章:平穏にさよなら
  第25話「再会」

 
前書き
一つの戦いが終わり、家族を得たが親友を亡くしてしまったかやのひめ。
そんな彼女が目を覚ました時、目の前にいたのは死んだはずの親友で....!?

...書く事がなかったので書いてみただけです。特に意味はありません。
かやのひめ視点から始まります。
 

 


       =かやのひめside=



「....どう...して、薔薇姫が....ここにいるの...?」

  驚きのあまり、はっきりと言えないながらも薔薇姫に聞く。

「えっとね...色々訳があるんだけど.....わっ!?」

  何か説明しようとする薔薇姫を遮るかのように、私は薔薇姫に抱き着く。

「良かった....!生きててくれて....本当に良かった....!」

「かやちゃん....。」

  涙ながらに、私はそう言う。...服も体も傷一つなく、まるであの戦いを経験していないようなその姿が、少し気になったけど、今はそんなの関係なかった。

「それにしても、ここって誰の家?」

「...私の恩人の家よ。覚えてないかしら?あの神社で一緒にいた少年...。」

「...あっ、あの子ね!」

  どうやら覚えていたようで説明が省けて助かる。

「―――かやのひめ!部屋に魔力反応...が.....。」

「あ、優輝。」

  ドタバタと足音を鳴らしながら、血相を変えて部屋に入ってくる優輝。
  薔薇姫を見てそれも尻すぼみになったけど。

「おはよう。君がかやちゃんを助けてくれたの?」

「あ、おはようございます。....えっ?薔薇姫さん?」

  呆気に取られる優輝。よく見れば、寝惚けたままの緋雪も後ろにいた。

「お兄ちゃ~ん?なんなの早朝から....。」

「あ、緋雪。ごめんごめん...。かやのひめの部屋から魔力反応をリヒトが感知したから、慌てて来たんだだけど...。」

「ん~....?....あれ?その人は....?」

  寝惚けていた緋雪も、薔薇姫を見て段々と目を覚まし始める。

「....とりあえず、居間に行ってから説明してくれるかしら?」

「いいよ!...で、居間ってどっち?」

「あ、こっちだよ。」

  優輝はまだ少し眠気が残っているらしい緋雪を連れながら薔薇姫を案内していった。
  ...私も行かなくちゃ。





「....さっきは聞きそびれたけど、一体、どうやって生き返ったの?」

「うん。確かに私は幽世に還るはずだったよ。」

「なら、どうして....。」

  居間で私と薔薇姫で対面しつつ、話を聞く。どうやら、優輝も緋雪も私を中心としてくれるようで、斜め後ろに控えている。

「首元。」

「首元....?....あれ?」

  ふと首元を見ると、勾玉がなかった。

「そういえば、寝る前にはずしたわね...。でも、見当たらなかったような...。」

「当然だよ。だって、私がその勾玉だから。」

「えっ...?」

  一瞬、意味が分からなかった。

「“生命融合型ユニゾンデバイス”....それが今の私みたい。」

「まさか....あのロストロギアが!?」

  ユニゾンデバイスという単語に、優輝が反応する。

「ロストロギア...って言うのはよく知らないけど、“フュージョンシード”による効果で、勾玉がユニゾンデバイスになったの。...管制人格はいなかったけどね。」

「...そこまでは既に聞いてあるけど...。」

  私も全て理解できないながらも全部聞いた。...だけど、それよりもどうして薔薇姫がそこまで知っているのかが、気になった。

「.....そのフュージョンシードに惹かれたからかは分からないけど、幽世に還るはずだった私の魂が管制人格として勾玉に入ったって訳だよ。」

「...まさか、薔薇姫さんが目を覚ましたからフュージョンシードが正しくユニゾンデバイスとして機能するようになったってこと?」

「その通り!」

  半分ほど、私には理解できなかったけど、とにかく薔薇姫は助かったって事でいいのよね?

「.....けど、どうして薔薇姫さんはそこまで詳しいんだ?」

「ユニゾンデバイスになった際に、最適化させられてね?その時にデバイスとしての知識を埋め込まれたって感じ。生命融合型とあって、知識が埋め込まれる時ちょっと気持ち悪かったけど。」

「なるほど....。」

  ...つまり、薔薇姫の魔法関連の知識が増えてるのは、デバイスになったから?

「もちろん、デバイスとしてのマスターはかやちゃんだよ!」

「わ、私?...私、魔力なんて持ってないけど...。」

  魔法に関する知識も、あの数日で少しは蓄えた。
  だから、魔力もなしにデバイスなんて持ってても意味ない気が...。

「....このフュージョンシードって、結構凄いよ。私が管制人格だからか、かやちゃんの勾玉と融合したからか、ちゃんとこっちの魔力と霊力で扱えるようになってるの。」

「.....さすがはロストロギアと言うべきか....。」

  どうやら、私でも扱えるようになってるらしい。

「...クロノにどうやって知らせようか...。」

「確かに....。」

  優輝と緋雪は納得したものの、管理局にこの事を伝えるか悩んでいるようだ。

「あ、ちなみに、今はいつもの姿だけど、こうやって....。」

  薔薇姫はそう言って一度光に包まれて...。

「小さくなったり、後、勾玉の姿にもなれるよ!」

  可愛らしい感じに小さくなった薔薇姫がそう言う。

「まぁ、いつもは勾玉か、普通の姿でいるよ。」

「そうなの...。」

  疑問のほとんどが解けて、また目頭が熱くなってくる。

「....さて、一人増えたけど、まぁ、朝の分は足りるかな。」

「あ、お兄ちゃん、手伝うよ。」

  優輝と緋雪はいきなりそそくさと台所の方へと行ってしまった。

「....気を遣ってくれたみたいだね。」

「...そうね....。」

  優輝と緋雪は積もる話があるであろう私達だけにしてくれたらしい。

「.....いい主が見つかったね。」

「そ、そんな事ないわよ...。まだ、子供だし....。」

「....あれ.....?」

  照れ臭そうに言った私を見て、何かに気付いたのか疑問の声を上げる薔薇姫。

「.....へぇ~....。」

「な、なによ....。」

  意地の悪そうな笑みを浮かべる薔薇姫に嫌な予感を感じる。

「いや、別に...?なんでもないよ。」

「う、嘘よ!明らかに私と優輝を交互に見てたでしょ!」

  ああもう!こいつの考えている事が大体わかったわ!分かってしまう程分かりやすい私にも問題はあるけど!

「大丈夫!あたし、かやちゃんの事応援してるから!」

「っ~...!このっ....!」

  瞬時に弓と矢を霊力で創りだし、放つ。

     ―――ドッ!ポン!

「ハッ!?偽物!?」

  頭に命中したものの、煙のように薔薇姫の姿が消える。

「....あら?」

  薔薇姫がいた場所を見ると、勾玉が一つ落ちていた。

〈あはは....まだまだ魔力不足だから自然と勾玉になっちゃった。〉

「...なにやってるのよ...。」

〈とりあえず霊力で戻るから.....っと。」

  光に包まれ、また薔薇姫の姿になる。

「一応、以前からある魔力と霊力でも補えるんだけど、やっぱり異世界の魔法に使われる魔力の方が効率がいいみたい。...まぁ、大気中の魔力を吸収してるから関係ないけど。」

  薔薇姫が使っていた魔力は、大気中にある魔力を使うのが主で、優輝たちの魔法の場合は体内から生成する感じで、結構違ったりするらしい。...優輝の場合は普通に大気中の魔力も使ってるから関係ないんだけどね。

「はい、二人共できたよー。」

「簡単なものしか作れなかったからそこは勘弁してね?」

  優輝と緋雪が朝食を持ってきた。...余り物でご飯と味噌汁を作ったのね。

「久しぶりの味噌汁だ~!」

「...そういえば、久しぶりね...。今までは山菜とかだったし。」

  ちゃんとした食事にありつけた日なんて、人里離れてからは数えるほどしかないわね。

「具が少ないけどね...。...っと、僕も緋雪もまだ着替えてなかったよ。」

「食べてからでいいんじゃない?」

「そうだね。」

  とにかく朝食を食べる事にした。





       =優輝side=



  四人で楽しく朝食を取り、着替えも終わった頃...。

     ―――ピンポーン

「お、士郎さんかな?」

  インターホンが鳴り、僕はそれに応じる。

「おはよう。優輝君。」

「おはようございます。」

  案の定士郎さんだったので、軽く挨拶を交わす。

「はいこれ。優輝君と緋雪ちゃんの分のお弁当だよ。」

「ありがとうございます。」

  花の模様の入った赤色と青色の風呂敷に包まれた弁当箱を渡される。

「じゃあ、僕はまだ店で用事があるから...昼頃には手が空くようにするよ。」

「忙しい所を態々すみません...。....それと、家族がもう一人増えたんですが...。」

「えっ?そうなのかい?...まぁ、詳しい事情はまた後日に聞くよ。」

  どうやら、薔薇姫さんが増えた事も許容してくれるみたいだ。
  ...器広すぎないか?この人。

「じゃあね。」

「お弁当、ありがとうございました。」

  帰っていく士郎さんを見送る。

「...さて、僕も学校に行く準備を整えなきゃ。」

  歯磨きとか、まだ終わってないしな。





「お兄ちゃん!お弁当は!?」

「はいこれ緋雪の!」

  赤い方のお弁当を渡す。

「久しぶりにテレビ見てたら時間がー!」

「僕も同じようなものだったから何も言えない...!」

  後、かやのひめ達に電子機器の説明もしてたし、時間が...!

「いってきます!かやのひめ!薔薇姫さん!くれぐれも不用意に外に出ないでね!」

「分かってるわよ!」

  僕達は急いで学校へ向かった。...復帰早々遅刻しそうになるなんて...!





「...そう思ってたけど、急げば何とかなったな。」

「身体能力上がってたの忘れてたよ。」

  緋雪はもとより、僕も昨日の戦いで体がさらに鍛えられて...というか、リミッターが外れた感じ?になって溢れる身体能力で簡単に間に合った。

「(...ステータスにあった止まらぬ歩み(パッシブ・エボリューション)が関係してるのか?)」

  パッシブの意味が英語そのままではなく、ゲームとかにあるパッシブスキルとかと同じ意味であるならば...。エボリューションは進化...つまり、常時進化し続けてるという意味になるのかもしれない。
  以前は成長限界なしだと思っていたが、これは常に成長し続けるというのが本当の効果なのか...?...まぁ、憶測にすぎないが。

「じゃ、お兄ちゃん、また休み時間にでも。」

「おう。またな。」

  二階の階段で緋雪と別れ、僕も教室へ急ぐ。

「おはよう。」

「おぉ!優輝、久しぶりだな!...と言っても、四日ぶりだが。」

  一人の男子生徒が挨拶を返してくれる。

「あはは...。まぁ、休みを挟んだら久しぶりな気になるからね。」

「それにしても、今日はギリギリだったな。どうしたんだ?」

「いや...ちょっと油断しちゃってね。」

  どういうことだ?と首を傾げる彼。そんな時、チャイムが鳴ったので僕は席に座る。

「(なんとか間に合ったか...よかった。)」

  ふと辺りを見渡せば、普通に司さんもいた。...まぁ、司さんは以前にも魔法関連で休んだ事があっただろうしな。慣れてるんだろう。
  ...というか、今回遅れかけたのは僕らのドジだし。

「(...さて、授業について行けるだろうか?)」

  前世の知識がある僕ならどうってことないかもしれないが、この学校は私立...しかも相当学力が高い。油断すればついて行けなくなるかもしれない。





「(...まぁ、そんなことなかったけどね。)」

  どんなに学力が高くても所詮は小学校。前世で大学も卒業していた僕にはどうってことなかった。むしろなんでついて行けなくなるかもしれないと考えたのかと思ったぐらいだ。
  ...英語は危なげだったけど。...いや、復習みたいな感じで思い出したけどな?

「さてと...昼休みか。」

  士郎さんから貰った弁当箱を見ながら呟く。

「...とりあえず、いつも通り緋雪の所に行くか。」

  またいつものように階段で緋雪を待つ。

「私も一緒していいかな?」

「司さん?いいよ。」

  拒む理由もないし、ここ数日でさらに親しくなった。だから別に構わない。

「お、お兄ちゃ~ん!」

「お、緋雪...って、げ。」

  走ってきた緋雪の後ろにいる人達を見て、思わずそんな声を上げてしまう。

「待ってよ緋雪ちゃん!置いてかないで~!」

「な、なんかついてきたんだけど...。」

  ついて来た人達...原作組+αのメンツに対し、緋雪がそう言った。

「あぁ、そういうことか....。」

  せっかく魔法関連で関わりあったのだから、学校でも仲良くしたいとか、そんな考えなのだろう。織崎の魅了とか関係なしにそんな性格だろうし。

「す、すみません優輝さん。今回ばかりは...。」

「あー...いいよ。この際、皆で食べれば。」

  元々緋雪と一緒に来ようとしていたらしいすずかちゃんが謝ってくる。見ればアリサちゃんも申し訳なさそうにしている。

「........。」

「(...他はいいんだが、こいつらはなぁ....。)」

  織崎と天使が観察するようにこっちを見てくる。
  二人共転生者なため、僕の事を訝しんでいるのだろう。

「(...今気にしてもしょうがない。魔法関連に首を突っ込んだ時点で、こいつらと関わる事は分かっていた事だしな。)」

  織崎だって、成り行きで関わった事には何も言わないだろう。

「...こんな大人数だったら、広く場所を取らないとダメだね。」

「あー...空いてたらいいんだが...。」

  屋上は広いとはいえ、その分生徒も結構いたりする。...大丈夫だろうか?





「...なんか、運よくちょうどいい感じに空いてたな。」

「そうだね。」

  心配も杞憂に終わり、空いていた場所で皆で弁当を広げる。

「あれ...それ....。」

「ん?なのは、どうした?」

「...えっと、お父さんとお母さんが作ってたお弁当に似てるなって...。」

  高町さんが僕らの弁当箱を見てそう言ってくる。
  ...織崎、いきなり睨むように見てくるのはやめろ。

「そりゃあ、今日の僕らのお弁当は、士郎さんに頼んだ奴だからなぁ...。」

「お父さんに?どうして?」

「あー...ちょっと色々あってな...。まぁ、なんで弁当を作ってもらったかって言うと、先日の件で家の食材がなくなってたのを忘れてた。買いに行く暇もなかったし。」

  高町さんは弁当を作った理由には納得したものの、僕らと士郎さんの関係がまだ気になるようだ。...他の皆もだが。

「....士郎さん、僕らが二人暮らししているのを知ったら、養子になるよう勧めてきてね。...せめて、頼るだけにさせてほしいって事になって、今に至る訳。」

「...まぁ、優輝さんにも事情があるのよ。深く聞くのもやめときなさい、なのは。」

  深く聞かれるのもアレだったので、アリサちゃんが止めてくれたのは素直に助かる。

「(...そろそろかやのひめの所に士郎さんが来てる頃か...。)」

  昼なので、家にいるかやのひめ達の事を思い浮かべる。
  ....大丈夫かな...?







       =かやのひめside=



「えっと...これがこうで、ここはこうやって...。」

「熱心だねー。」

  優輝たちが学校...今での寺子屋に行ってる頃、私は必死に電子機器の使い方を覚えていた。

「これからこの家に住むもの。覚えておかないと大変でしょ。」

「それもそうだね。」

  呑気に言っている薔薇姫も、同じように使い方を覚えている。

「優輝が紙に簡単な使い方を書いてくれてて助かったわ...。」

  簡単な使い方だけで、詳しい使い方は説明書を読むように書かれてたけど。

     ―――ピンポーン

「えっと....。」

  この音は士郎とか言う人間が優輝に昼食を届けに来た時にも聞こえた音だったはず。
  なら、また誰かが来たのかしら?

「...あ、書いてあったわ。えっと...“インターホン”と言う物で、誰かが家を訪ねに来た時に鳴らす...って、結局誰かが来たのね。」

  とりあえず玄関に行き、扉を開ける。

「...昼になったから様子を見に来たけど...君が優輝君の新しい家族かい?」

「....あんたが士郎って人間かしら?」

  黒髪の優しげな雰囲気の男性。....どこかで見た事があるような....。

「そうだけど...。」

「...かやのひめと言うわ。」

「改めて、高町士郎だ。....ところで、どこかで会った事ないかい?」

  士郎も私に見覚えがあるらしい。....じゃあ、実際に会った事が...。

「かやちゃーん?どうしたのー?」

「あ、薔薇姫。」

  時間をかけてしまったため、居間から薔薇姫が出てくる。

「っ....!思い出した!」

「えっ?」

「25年前、山で修行してた時に出会わなかったか!?」

  山...25年前...あっ!

「あの時の子供!?そう言えば、面影があるような...。」

  よくよく見れば子供の時の面影がしっかりと残っている。
  士郎も薔薇姫と私を一緒に見て思いだしたのだろう。

「あの時の子供がここまで成長してるなんてね...。」

「僕としては二人が全く成長していないのが気になるけど...。」

「私達は人間じゃないもの。成長は遅いわよ。」

  ...と、そろそろ中に入れないと...。

「..ほら、上がってちょうだい。」

「色々と気になる事を言った気がするが...まぁ、お邪魔するよ。」

  士郎を上がらせ、居間へと連れて行く。

「とりあえず、二人の昼食を適当に作らせてもらうよ。」

「助かるわ。...食材も持ってきてたのね。」

  袋に入れていたのは食材だったようで、それで料理を始める士郎。
  ...優輝みたいに手慣れてるわね...。

「しかし、あの子供がここまで成長してるなんてね...。」

「...今のあたしだったら、負けそうな気がするんだけど...。」

  本当、それよね。薔薇姫が言う様に、士郎は恐らく刀の扱いに相当慣れている。...結構な修羅場を潜り抜けたのだろう。あまり回復していないとはいえ、薔薇姫よりも強いなんて...。

「....本当に、二人は何者なんだ?人間じゃないとは言ったが...。」

「...そういえば、かつての時は言ってなかったわね。」

  あの時は山で偶然出会って、迷ってたから道を示しただけだものね。
  ...怪しまれはしたけど。

「草祖草野姫よ。草の神であり、今は式姫と言うのをやってるわ。...尤も、分霊だから本人とは言い難いわ。気軽にかやのひめと呼んでちょうだい。」

「あたしは薔薇姫。吸血鬼だよ。」

「日光も流水も平気だけどね。」

  つくづくこいつは本当に吸血鬼なのかと疑うわ。...かつての仲間の吸血姫(ドラキュリア)も同じような事を言ってたし。

「...神様に吸血鬼か...。そりゃあ、見た目が変わらない訳だ。」

「今は力を失ってるけどね。」

  優輝と契約したおかげでだいぶ回復したけど。
  薔薇姫もデバイスになってから力が戻ってきてるようだ。

「....っと、よし。簡単にだけど、完成したよ。」

「あら、ありがとう。」

  士郎が料理を運んでくる。...あ、この料理は見た事あるわ。

「確か、オムライス...だったかしら?」

「あれ?知らないのか?」

「私、あまり西洋の食べ物は知らないのよ。」

「あたしは大体分かるけどねー。舶来だし。」

  辛うじてオムライスはアースラで優輝に教えてもらって食べたけど...。

「まぁ、これから慣れて行くわよ。ここで暮らすのだし。」

「かやちゃん、あの子の事を気に入ったみたいだしねー。」

「べ、別にそう言う訳じゃ...!」

  ああもう!またこいつはそんな事を言う!

「へぇ...。まぁ、優輝君は優しいからね。」

「だ、だからそうじゃ....!」

「でも、彼、結構モテると思うよ?今こそあまりだけど、既に妹の緋雪ちゃんは...。」

「違うって言ってるでしょう!?」

  顔が真っ赤になるのを自覚しつつ、思いっきりそう叫ぶ。
  ...ええそうよ!優輝の事は好きよ!だからって素直になれる訳ないじゃない!

「ははは...からかいすぎたね。」

「もう....!」

  とにかく、オムライスを食べよう。調子が狂っちゃうわ。

「.....!美味しい...!」

「ん~!こんなに美味しいの、久しぶりだよ。」

  アースラにあったオムライスも普通に美味しかったけど、こっちは格が違うわね。

「うん、口に合ってよかったよ。」

  士郎もなぜか嬉しそうにする。...作った人からすると、美味しく食べてもらうのは嬉しいのかしらね?...私も作れるようになろうかしら?
  ....た、他意はないわよ?

「....ごちそうさま。」

  気が付けば、食べ終わっていた。薔薇姫もご満悦みたい。

「よし、じゃあ僕は食器を洗ったら店に戻るよ。」

「あれ?もうなの?」

「まあね。空き時間で来たとはいえ、そこまで長い時間じゃないし。」

  元々忙しい身で私達のためにここまで来たのね。

「ありがとう。助かったわ。」

「いや、あの時のお礼とでも思ってくれ。」

「....そうね。」

  そうこうしている内に食器を洗い、帰る準備が整う士郎。

「今度は僕がやっている店に来てほしいな。歓迎するからさ。」

「...この生活に慣れたらね。」

  そう言って士郎は自分が営んでいる店へと帰っていった。

「まさか、あの時の子供に再会するなんてね...。」

「人生、何が起こるか分からないものだね。」

「...私達、人間じゃないけどね。」

  さて、優輝が帰ってくるまでもう一度電子機器の使い方を覚えましょうか。







 
 

 
後書き
かやのひめと士郎さんの過去の出会いは書きません。実は知り合いだった的な設定なだけなので。
...というか、偶々遭遇しただけの事なので書く事がありません。

次回が一応第1章最終話です。...閑話がその後に続きますが。
 
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