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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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魔槍

 
前書き
久しぶりの投稿です。
待たせたなぁ 

 
「チィッ!」

「ヤバイよお兄ちゃん、金色の方、物理耐性が高すぎる!」

シオン達がスリュムヘイムに突入して早20分、第1層のサイクロプス型のボスを撃破したシオン達は第2層のフロアボスであるミノタウロス型の邪神モンスター2体に手こずっていた。
片方は真っ黒で物理耐性が異常に高く、かたや金色のミノタウロスは魔法耐性が尋常ではなかった。ならば各個撃破したいところではあるが、2体の連携が良くとれており片方のHPが減ってくるともう一方が憎悪値(ヘイト)を無視して前に出てくるのだ。それを相手している間に片方のミノタウロスが回復を行うといった感じのサイクルを何度も繰り返していた。

「メダリオン、もう7割以上黒くなってる」

「死に戻りしてる場合じゃないねこりゃ・・・」

エリーシャが言うようにここまで来てリスポーンしている場合でもない。キリトは覚悟を決め、叫んだ。

「みんな、こうなったらできることは一つだ!一か八か、金色をソードスキルの集中攻撃で倒し切るしかない!」

「うっしゃァ!その一言を待ってたぜキリの字!」

キリトの指示に皆も武器を構える。後方ではアスナとシオンが控える中、シュタイナーがシオンに呼びかけた。

「シオン」

「どうした?まさかとは思うが・・・」

「ああ、アレ(・・)を出す」

それを聞いたシオンはやれやれと言わんばかりに首を振った。しかし、彼自身も腹を括ったのか両手を前に突き出した。

「外したらただじゃおかねーかんな!」

「その時は何か奢ってあげるよ!」

キリトのゴーサインに合わせ皆はそれぞれのソードスキルをぶつけた。燃え盛る炎、切り裂く疾風、弾ける水飛沫、唸る雷光、そして貫く氷の(やじり)
キリトも左右から繰り出すソードスキルの連発を繰り出す中、激しいライトエフェクトが飛び交っていた。

「ゼェリャアアアアッ!!」

クライン達も硬直が解かれ2回目の集中攻撃を叩き込む。
金ミノの身体に無数の切り傷を刻んだ直後、皆の身体は2回目の硬直を迎えた。このままHPを削り切れれば良かったのだが、金ミノのHP減少は残り数パーセントのところで止まった。
万事休すかと思われたその時、キリトの左右を青い疾風と紅の閃光が駆け抜けた。青い方はレイピアを目にも留まらぬ速さで5連突きを繰り出し、紅の閃光は金ミノの胸を貫き、残りのHPをもっていった。
後ろで取り残された黒ミノは唖然とした表情をするなか、クラインはニヤリと笑い、刀を持ち上げた。

「おーし、手前ェ、そこで正座!」

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

「おいキリ公とシオンとシュー坊!オメェら何だよさっきのは!?」

鬱憤を晴らすかの如く黒ミノに大技を叩き込んだクラインはシオン達に叫んだ。
その言葉に対し、キリトは渋った顔で言った。

「・・・言わなきゃダメか?」

「ったりめぇだ!見たことねぇぞあんなの!」

他のメンバーも聞きたそうなしていたのでシオン達はやむをえず説明することにした。

「システム外スキルだよ。《スキルコネクト》」

おー、という声が聞こえるなかシオンとシュタイナーも説明した。

「俺たちが放ったのは《魔槍ゲイボルグ》の、言うなれば模造品(レプリカ)だ」

「模造品?」

シリカが首を傾げるとシュタイナーが説明を加える。

「ある条件と手順をクリアして、さらにそれを制御することによって、素材となる武器の攻撃力を爆上げできるってわけ」

「それってどんな武器でも伝説級に近いものに造れるってわけじゃない!」

リズベットの言葉にシオンとシュタイナー、キリト以外ののその場にいたものが者が驚きの表情を見せるが、シオンは首を横に振った。

「それほど良いもんじゃねーよ。出力と制御のバランスが狂えば身体が吹っ飛ぶし、素材の武器が半端なやつだと耐えきれずに武器が粉々になるし、使えば使うで高魔力の塊となってる武器は消えるし・・・」

「まぁ、要する使って成功しても失敗しても手持ちの武器がひとつおじゃんになってこと」

シオンはゲンナリとした顔をし、シュタイナーは苦笑を浮かべるが2人はすぐに表情を切り替える。

「とはいえ今更そんな事を気にしてる場合じゃない残り時間も少ない。先を急ごう」

その言葉通りメダリオンを確認すると1時間はあっても2時間は無いくらいの状態だった。ここからの戦闘は最終ボス以外はあまり時間をかけられないと思い、足早に次の階層へと走り出した。

〜・〜・〜・〜・〜・〜〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

その後の戦闘は思っていた以上にハイペースだった。ムカデを彷彿とさせるかのような10本もの足をもった第3層のフロアボスは物理耐性がさほどないものの攻撃力が半端ではなく苦戦を強いられたものの、この脳筋パーティの前ではそれは短時間で終わり約9分間で終了した。そして第4層に向かうための通路を進んでいる最中にある光景を目にする。
目の前には壁際に細長い氷柱で作られた檻の中にアスナほどの背丈の金髪、そしてその髪と同じ色の目をした女性が氷の錠で繋がれた状態で留置されていた。

「お願い。私を・・・ここから、出して・・・」

見るものを魅了するその容姿にふらりとクラインが吸い寄せられるが、その首根っこをシオンが掴み、引き戻す。

「罠だ」

「罠よ」

「罠だね」

キリトたちがそう言うと振り向くクラインは微妙な表情を浮かべる。

「お、おう・・・罠、だよな・・・」

「ユイ、どうだ?」

「NPCです。ウルズさんと同じく、言語エンジンモジュールに接続されています」

ユイはそう答えるとこう続ける。

「ですが、この人はHPゲージが有効化されています」

「罠だよ」

「罠ですね」

「罠だと思う」

「だよねー」

アスナ、シリカ、リーファ、エリーシャまでもがそう言う中、クラインは煮え切らない気持ちでいた。
そんな状況を見ていたシオンは深くため息をつき、手を自分の首に回した。

「はぁ・・・。シュー」

「はいはい」

シュタイナーは苦笑を浮かべながら剣を抜くシオンを見送ると、その剣で氷の檻を破壊した。
それを見ていた者たちは目の前で起こった事象に驚きの表情を浮かべていた。

「お、おい!」

「ちょっと!?」

「罠だったらどうするのよ?」

「どうせここでウジウジしてるんなら連れて行った方がマシだ」

シオンはあっけらかんにそう言うと剣を収め、再び奥へと進みだした。
その背中を見てリズベットは諦めたように言った。

「あいつ、たまにああいうサッパリしたところがあるのよねぇ・・・」

「でも、それがシオンさんの良いところでもありますからね」

「確かに、迷いがないって感じですもんね」

「サッパリし過ぎてるのも問題だけどね」

シリカ、リーファ、シノンがそれぞれ言いながらついて行く。それに続いて先ほどの美女を連れてキリトたちが付いて行った。
そして最後に–––––

「・・・・・」

シュタイナーはその壊れた檻を一瞥してその場を去っていった。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

第4階層に降り立つとそこには縦横共に広い空間が広がっていた。青い氷の壁や床、そして氷の燭台(しょくだい)には青紫の炎が不気味に揺れる。天井には同色のシャンデリアが並び、そして何より目を引くのが左右の壁際に連なる黄金の数々だった。

「総額、何ユルドだろ・・・」

リズベットがそう呟くのも無理もないと思いながらシオンは辺りを見回す。

「これだけデカいフィールドとなると、敵もやはり・・・」

「・・・・・小虫が飛んでおる」

シオンが言いかけたその時、奥の方から重低音の響きが聞こえた。その言葉にシオンたちは柄に手を添える。

「ぶんぶん煩わしい羽音が聞こえるぞ。どれ、悪さをする前に、ひとつ潰してくれようか」

「やっぱ、そうだよな・・・」

シオンは思わず口に出してしまうほどのズシンと床が震えるほどの震動。その震動を裏切ることはなく、奥の方からこれまで戦ってきたどの邪神よりも大きな巨人が出現した。
鉛のような青黒い肌、何ものをも跳ね返しそうな隆々とした筋肉、その猛々しい姿を見て誰もが思う、

コイツはヤバい–––––と。

「ふっ、ふっ・・・アルヴヘイムの羽虫共が、ウルズに(そそのか)されてこんなところまで潜り込んだか。どうだ、いと小さき者どもよ。あの女の居所を教えれば、この部屋の黄金を持てるだけ呉れてやるぞ、ンンー?」

圧倒的存在感を放つその巨人スリュムを前に一番最初に声を発したのはクラインだった。

「へっ、武士は喰わねど高笑いってなぁ!オレ様がそんな安っぽい誘いにホイホイ乗ってたまるかよォ!!」

抜刀するクラインに続いて皆それぞれ自分の武器を手に取る。スリュムはその姿を見回すと、ふと全員の後方に居る、金褐色の瞳をしたシオンが助けた女性に目を向けた。

「ほぉ、そこにおるのはフレイヤ殿ではないか。檻から出て来たという事は、儂の花嫁となる決心が付いたのかな、ンン?」

「は、ハナヨメだぁ!?」

「そうとも。その娘は、我が嫁としてこの城に輿入れしたのよ。だが宴の前の晩に、儂の宝物庫を嗅ぎ回ろうとしたのでな。仕置きに獄へ繋いでおいたのだ。ふっ、ふっ」

『王様ってーのはみんな、嫁に欲しい女を錠で繋いどくモンなのか?世界のロイヤルウエディングのイメージがものの見事に崩れ去るな、こりゃ・・・』

シオンはいつだったかの妖精王を思い出しなが心の中でそう呟いた。
そんなことを思っていると後ろでフレイヤが叫んだ。

「誰がお前の妻になど!かくなる上は、剣士様たちと共にお前を倒し、奪われた物を取り戻すまで!」

「ぬっ、ふっ、ふっ、威勢の良いことよ。さすがは、その美貌と武勇を九界の果てまで轟かすフレイヤ殿。しかし、気高き花ほど手折る時は興深いというもの・・・小虫どもを捻り潰したあと、念入りに愛でてくれようぞ、ぬっふふふふ・・・」

周囲の女性陣が顔をしかめるなか、前に立つクラインが拳を突き出して叫んだ。

「て、手前ェ!させっかンな真似!このクライン様が、フレイヤさんには、指、1本・・・」

クラインが続けようとしたその時、彼の左肩に何者かの手が乗せられた。その手の持ち主はクラインの拳を静めるとゆっくりと前に出た。

「シュタイナー、さん?」

シリカは呼びかけるがその呼びかけに彼は静かにこう応えた。

「僕は自分で言うのも何だけど比較的に感情は穏やかな方だと自負してるつもりだよ。でもね・・・」

シュタイナーの言葉を聞いてシオンは思わず手で顔を覆った。そう、彼は今–––––

「今回ばかりは我慢ならねぇな・・・!」

相当お怒りになって(キレて)いる。

「お、おい、シュタイナー?」

「やめておけ、ああなったらもう止められない」

キリトが呼びかけるもそれをシオンはため息まじりで止めた。

「それって、どういう・・・?」

「あいつは滅多ことじゃ怒らねぇし、基本は優しく、穏やかな性格だ。だが、あいつにはどうしても許せないこといくつかある」

「それは?」

エリーシャの問いにシオンは淡々と答える。

「過去をいつまでも引きずって(くすぶ)っている者、他人をコケにする者。そして今回のような人の扱いが悪いゲス野郎」

「彼がキレたらどうなるの?」

「さあな。程度によるが、数少ないキレで一番ヤバかった時はその場にいたモンスターの大群を一掃したのは覚えてる」

冷や汗を流しながら言ったシオンを見てこれは本当にヤバいとその場にいたもの全員が思った。
シオンはそんなシュタイナーに近づき、

「シュー、今なら思い切り使っていいぞ」

「・・・へぇ」

「王に挑むんだ、出し惜しみなんかできるかよ。タイミングはお前に任せる」

シュタイナーとシオンは不敵な笑みを浮かべた。
シオンは再び後方へ下り、キリトたちに作戦を伝える。すると真っ先にクラインが喚いた。

「ッ!正気かシオン!?」

「クライン、この作戦は馬鹿げた賭けだ。失敗すれば全滅は必至、だから強制はしない」

「本気、なんだよね・・・」

エリーシャが聞くがシオンは首を縦にふる。

「正直、俺も自信がねえよ。あの頃のような力も無ければ、数もいない。勝率なんて言っちまえば0%に等しい」

「なら・・・」

「それでも、俺は・・・勝ちたいんだ」

シオンは考えた。己が何故勝利を欲するのか–––––

名声?存在価値?充実感?

『違うな、君が何故勝利を欲するのか。もう答えは出ているはずだよ・・・』

脳裏に過るのはいつも共にいる相棒。彼の言う通り、もう答えは出ていた。

『あぁ、そうだな』

『勝ちたいなら手を伸ばせ。一瞬を逃すな、全て絞りだせ』

『当たり前だ!』

シオンは目の前に悠然と佇むスリュムを見る。自分の運命を呪いたい気分でもあるがそうは言ってられない。

「分かった。シオン、お前の作戦に賭けよう」

「しょうがないわね、付き合ってあげるわよ!」

キリトとリズベット含め、他のメンバーも腹を括り再び武器を構える。
その姿にシオンは思わず笑ってしまった。

「やっぱ俺たち筋金入りの戦闘馬鹿みたいだな!」

「へっ!違ぇねえ!」

「あんたに言われるのは少し癪だけどね」

「さて、それじゃあ・・・」

シュタイナーは拳を打ちつけ気合を入れた。

「始めようか、神との大喧嘩をッ!」

その拳には微かに電流が帯びていた–––––







Remaining until the update(更新まで残り).....93%.....  
 

 
後書き
最近カメラにハマり旅行先で写真やら動画を撮り始めた戦国です
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