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魔法少女リリカルなのは ~黒衣の魔導剣士~

作者:月神
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sts 22 「大人達と子供達」

 どういう経緯でそうなったのかは分からないが、ヴィヴィオの中で俺は『パパ』という認識になってしまっている。それを変えてみようと試みたものの泣きそうになるほど頑なに拒むので、しばらくは毎度のように説明することにした。
 せめてものの救いは周りの人間の多くが俺とヴィヴィオの関係をちゃんと理解してくれていることだ。なのはとフェイトの子供だとか、俺とフェイトの子供だとか誤解しそうになったマリーさんもシャーリー達が説明してくれたおかげで理解してくれている。
 とりあえず……ヴィヴィオに間違った認識を植えつけた可能性のあるアイナさんとは後で話しておこう。
 そんなことを考えながら俺を含めた六課メンバーは食堂へと向かう。前線の隊長陣にギンガを加えたフォワード達、マリーさんやシャーリー。そこに途中で部隊長であるはやてやシャマルも合流したため、いつにも増して団体行動である。

「えへへ」

 周囲から様々な会話が聞こえてくる中、俺はヴィヴィオの面倒を見ている。といっても、手を繋いで一緒に歩いているだけなのだが。これといって何もしていないのに懐かれているのが不思議でならない。

「今日のヴィヴィオはずいぶんとご機嫌やな」
「パパと手を繋げてるから嬉しいんだろ」
「なるほどなぁ……何だか私だけみんなに置いてかれてる気分や」

 そういうことを言うんならその面白がっていそうな顔をやめろ。ヴィヴィオくらいの子からパパって呼ばれる年齢でもないし、なのはやフェイトとの関係に疑問を持つ人間だって出てくる可能性があるんだから面倒臭いんだぞ。
 そのようなことを考えてしまった故か、俺の視線は自然とはやてからなのは達の方へ移っていた。こちらの視線に気が付いた彼女達の表情は強張る。

「な、何かなショウくん?」
「え、えっと……疲れてるならヴィヴィオの相手変わろうか?」
「いや別にこのままでいいけど」

 個人的には、その妙に俺のことを意識してます感をやめてほしい。
 そりゃあ……パパママ扱いされれば夫婦みたいだなって考えるのは分かる。俺だって考えてしまったから考えるのをやめろとは言わない。異性と全く思われないよりは意識してもらっていたほうが良い。
 だがしかし、会話に支障が出そうなほど意識されるのも困る。
 こっちだって余計に意識しそうになってしまうし、もう学生じゃなくて社会人なのだ。仕事でミスでもすれば個人の問題では済まない場合もある。

「ショウさんも大変よね……」
「そうだね。子供の面倒って意外と大変だから」
「いやそういう意味もあるけどそうじゃなくて……あんたって本当あっちの方面には頭が回らないわよね」
「エリオくん、ティアナさんの言ってる意味分かる?」
「え……そ、その僕やキャロにはまだ早いんじゃないかな。もう少し大人になってからの話だろうし」

 フォワード達は……まあ変な質問をしてくることはあるまい。きっとティアナあたりが止めてくれる。
 それとエリオ……言っていることは正しいとは思うが、大人になったからって友人からいきなり夫婦みたいに段階を飛ばした状況には滅多にならないと思うぞ。恋人関係にあったのなら現状のようなパパママ事件が起きる可能性はあるが。

「パパ、おなか空いた」
「はいはい……俺は君のパパじゃないんだけどな」
「なにか言った?」
「何でもない」

 子供の相手は同年代より慣れていると思っていたのだが、どうにもこの子の相手は苦手だ。
 いや……苦手というより相性が悪いというべきか。何だかんだで俺が相手をしてきたのは、ある程度精神的に成熟してる子だったから。エリオやキャロ……それにヴィータとか。ヴィヴィオのように自分の感情に素直な子は経験不足だ。まあヴィヴィオのように感情をすんなりと出すのが子供らしいのだが。
 ヴィヴィオを連れた状態で食堂に辿り着いた俺だったが、不意に連絡が入ってしまったのでなのは達にヴィヴィオを預けて先に行かせる。

「……誰かと思ったら義母さんか」
『ずいぶんな言い方をしてくれるね。反抗期というやつかな』

 これが世の中で言う反抗期というものだったらどれだけ世界は平和なことか。まあ適当な言い回しは昔からだし、あまり会話を長引かせるとヴィヴィオあたりが呼びに来る可能性もあるので気にせず話を進めるとしよう。

「用件は?」
『……久しぶりに話すというのにつれないな。きちんと時間を弁えて連絡しているというのに……もしやお邪魔をしてしまったかな?』

 確かに休憩時間に連絡をよこしてきたあたり……と思いもしたが、どうしてこうも俺の義母親はこのような言い回しばかりするのだろうか。
 ……なのはから度々いじわるだとか言われるが、俺の言動の根源には絶対この人が影響を与えてるよな。義母さんの知り合いからは、最初はともかく話してると似てるって言われることがあるし。義母さんのようなダメな大人になっていってるつもりはないんだけどな。

「……用件は?」
『そう私の相手をするのは疲れる……みたいな反応をしないでくれ。私達は親子じゃないか』
「ひとりじゃまともに炊事や洗濯ができない親を持ってる身にもなってくれ」

 学生時代はよかったが、今はなのは達のように六課の隊舎で生活しているので義母さんの面倒を見ることはできない。俺よりも顔を合わせる機会が多いシュテルやユーリがたまに面倒を見てくれているらしいが、最も義母さんの面倒を見てくれているのはディアーチェになる。
 俺やなのは達は中学卒業を機に魔法世界中心の生活を始めた。が、ディアーチェは地球に残って勉学に励み、今はアリサ達と同じ大学に通っている。
 彼女の住んでいる場所は今も変わらず地球にある俺の家。つまり、その恩を返すということもあって義母さんの面倒を見てくれているというわけだ。

「ディアーチェに結構申し訳ないと思ってるんだからな」
『それは私も同じ意見を持っているし、何度か私の面倒を見る必要はないよと言ったさ。けれど彼女は頑なに聞こうとしないからね』

 俺も何度か言ったことがあるが、返ってきた答えは義母さんと同じもの。ディアーチェの性格的にタダで住まわせてもらうことには抵抗があると分かっている。故に彼女がそれで良いのなら、と俺や義母さんも考えてしまうのだろう。

『まあそれに……彼女は嫁として申し分ない能力も持っているし、君と結婚してしまえば世間的に疑問も抱かれはしなくなるだろう。リンディには孫は良いと惚気られることがあるし、私ももうイイ歳だからね。早く孫の顔が見てみたいものだよ』
「地球で考えれば俺はまだ成人もしていないし、大学に通ってるか社会人になって間もない年齢なんだけど?」
『恋愛に年齢は関係ないものだよ。故に君の年齢で子供が居てもおかしくはない』

 否定はできないが、研究ばかりして灰色の青春しか送ってこなかったであろう義母さんに言われても説得力がない。
 義母さんが誰かと結婚をして家庭を築くのは別に構わない。ダメな部分が多い人だけど幸せにはなってもらいたいし。……20年近く歳の離れた弟か妹が出来るのは違和感があったりするけど。けどそういう未来はないだろうな。完全に孫の顔を見る……息子の幸せが自分の幸せになってしまってるみたいだし。

「はぁ……これから食事だし、みんなが待ってるかもしれないから今はこのへんにしてくれないか?」
『ふむ……まあ君にも君なりの付き合いがあるだろうし、みんなと言っているが特定の人物との食事かもしれないからね。その人物が将来的に身近な人間になる可能性を考えると、ここは素直に君の提案を聞き入れた方が賢明かな』

 最初の一言以外が蛇足でしかない。とはいえ、ここで迂闊にツッコめば会話を切るタイミングを逃してしまう。それを考えるとここはスルーする他にないだろう。

「悪いけどそうしてくれ」
『分かった。けれど最後にひとつだけ……この前言っていたパーツを私の代理が持って行っているから受け取ってほしい』

 そう言って義母さんからの連絡は終わる。
 用件はないが家族が話すのに理由は要らない、と言いたげな感じで話していたと思うのだが、ちゃんと用件があるではないか。
 まあ今日とは言っていなかったし、急ぎのものでもないのだろうが。……すでにこっちに向かってるとも取れるような発言をしていたような。

「……今は気にしないでおこう」

 誰が来るのかは分からないが、義母さんの代理で来るのならば六課には問題なく入れるだろう。可能性としてはシュテルか、彼女よりも義母さんの手伝いをよくしていると聞いているユーリあたりが高い。
 もちろんレヴィという可能性もあるが……可能性の話をすれば顔見知りから初対面の人間まで考えられるだけにそのときになってから考えるのが賢明か。
 そう思った俺は止めていた足を再び動かし始め、カウンターの方へ向かう。もちろんもらうのはヴィヴィオ用の子供向けメニューでもなく、スバルやエリオのような大食い用のものでもない。至って他の隊員と変わらないパンを主食とした食事だ。

「パパーこっち」

 ヴィヴィオは俺を見つけると同時に手を振って自分の方へ来てほしいとアピールをしてきた。
 俺の姿を見る前の姿は今にも俺のことを迎えに行きたそうにソワソワしているように見えたので、義母さんとの会話をあのタイミングで切ったのはベストだったと言える。単純に目の前に置かれているオムライスを俺が来るまで食べられなかった、という可能性も否定できない。
 ヴィヴィオの居るテーブルにはなのはとフェイト……他はフォワード+ギンガに八神家で座っている。マリーさんやシャーリーは何やらふたりで話しこんでいるようだし、常識的に考えてヴィヴィオのところに座るしかないか。
 なのはとフェイトがヴィヴィオを挟むようにして座っているため、俺はヴィヴィオの向かい側くらいの位置に腰を下ろす。するとヴィヴィオの意識は俺からオムライスに移ったようで、元気に食前の挨拶をすると食べ始めた。

「ヴィヴィオ、よく噛んでね」
「うん」
「ショウくん、誰からだったの?」
「義母さんだ」

 親への愚痴をここで言うのも悪いので、仕事に必要なパーツを代理人が届けてくるかもしれないとだけ伝える。

「そっか……マリーさんがうちに来てるのは別件だし、可能性としてはシュテルが高いのかな」
「普通に考えればそうだな。まあレヴィやユーリって可能性もある」

 ユーリは自分の研究をしながらも義母さんの手伝いをしているらしいし、レヴィはあちこちに顔を出していると聞いている。
 まあ主に顔を出しているのはシュテルのところだろう。新型のカートリッジや補助システムを搭載したデバイスのテストを行うのがメインだって前に言っていたし。

「しっかしまあ、子供って泣いたり笑ったりの切り替えが早いわね」
「スバルの小さい頃もあんなだったわよね」
「え……そ、そうかな?」

 誤魔化そうとしているが、頬が赤くなっていることからして図星なのだろう。
 スバルの奴……小さい頃の話をされて照れるあたり、大人に向かって変化しているということか。大人になっても今ある真っ直ぐな部分は失ってほしくないものだ。

「リインちゃんもそうだったわね」
「えー、リインは割りと最初から大人でした」
「嘘を吐け」
「体はともかく中身は赤ん坊だったじゃねぇか」

 リインは騎士達の言葉に自分ひとりでは反論できないと判断したらしく、味方になってくれるであろうはやてに声を掛ける。が、はやてもリインの成長過程を知っているだけに素直に味方はできないようで、「どうやったかな」とぼかした返事をするだけだった。

「うー……ショウさん、ショウさんなら分かってくれますよね! リインは大人でしたよね?」
「何で俺に振る?」
「何でってショウさんはリインの家族も同然じゃないですか。昔からリインを含めてはやてちゃん達と仲良しですし、何たってわたしの生みの親のひとりなんですから。言ってしまえば、わたしのパパとも呼べる存在なんですよ!」

 確かにリインの開発に携わりはした……が、何でパパという表現まで使う必要があるのだろうか。もしかしてヴィヴィオに対して思う部分が……。
 いや、リインは甘えん坊なところはありはするが稼動を始めて間もないわけじゃない。最初は赤ん坊のようなところもあったが、今ではひとりでも仕事ができるくらいに知能は発達している。子供相手に嫉妬のような感情を抱く可能性は低いはずだ。

「はやてちゃんが助けてくれないなら頼るのは当然です!」
「ならはっきり言うが……俺はヴィータ達側だぞ。今のリインはまだしも昔のリインを対象にされると否定できないし」
「そんなぁ……リインに味方はいないんですか。ぐす……」
「まあまあリイン、そう落ち込まんと。誰だってそういう時代を経て大人になっていくんや。私に子供が出来る頃には誰もリインを子供扱いせんやろうし、ちゃんと子育て手伝ってな」

 家の主だけあって、こういうときのフォローの仕方は心得ているようだ。
 こういう落ち着いた言動を見ているとこいつも大人になったんだなって思うな。いつまでも人のことをからかって面白がる奴じゃないってことか。
 一般的に嬉しいことではあるが、考え方によっては心配にもなる。ただでさえはやては部隊長という立場であるため、俺達よりも苦労がある身。また彼女はひとりで抱え込んでしまうタイプでもある。
 子供の頃ほど一緒に居る時間が長いわけでもないし、組織の中に身を置いて10年も経っているだけに昔よりも心を隠すのが上手くなっている。精神的に成長して言動が大人になっているだけならいいが、そうでない場合……。

「分かりました。ショウさんとの子供が生まれた際は頑張ってはやてちゃんのことをサポートするです!」
「えっとリイン、やる気を出してくれるんはありがたいんやけど……今のところ私がショウくんの子供を生む予定はないで。というか、変な噂が立つと面倒なことになるかもしれへんからそういう発言は控えてな」

 部隊長としての発言なのか、それとも一個人としてからかわれたくないから言ったのか。はたまたヴィヴィオによって生じるかもしれない誤った関係をさらに悪化させない気遣いからか……何にせよ、こちらに都合が良い発言だったのは確かだ。ここは大人しくはやてに任せることにしよう。

「騒がしいからもしやと思ったが、やはり貴様達であったか」

 後方から聞こえたはやてに酷似した声に俺の意識は自然と向く。
 立っていたのは白いジャケットに黒のスカートと私服姿のディアーチェ。中学卒業を気に髪を伸ばすことにしたらしく、今ではセミロングほどの長さになっている。
 ディアーチェは知人にはやてのそっくりさんとして認識されていたが、はやてが可愛い系ならば彼女は綺麗系に成長した。瞳や髪の色もはやてとは違うので、今では間違われる可能性は低くなっているだろう。
 周囲のメンツもディアーチェの存在を認識したらしく、ある者は久しぶりの再会に喜びの声を上げ、ある者ははやてがもうひとり!? といった意味合いの声を漏らす。

「義母さんの代理ってお前だったのか」
「うむ、シュテル達に用があってな。そのついでにレーネ殿の様子も見に行ったのだ……その流れでな」
「そうか……悪いな」
「気にするな。我が自分から進んでやると言ったのだ……それにここに来れば、貴様だけでなく他の者の顔も見れると思ったのでな」

 なのは達に向けるディアーチェの目は優しくもあり実に喜んでいるように見える。シュテル達とは度々顔を合わせる機会があるが、今六課に居るメンツとは今回のようなケースでもない限り難しいだろう。
 久しぶりにディアーチェの顔が見れて嬉しい。
 そのような感情を抱く人間も多かったため、場に穏やかな空気が流れ始める。が、それもある人物が声を発したことで一気に砕け散る。

「ねぇパパ、この人だれ?」
「ん? あぁこの人はだな……」

 ヴィヴィオだけでなくフォワード達にも説明しようとしたところ、不意に肩に手を置かれた。首だけで振り返ってみると、俯いた状態のディアーチェが静かに立っている。嵐の前の静けさのようなものを感じずにはいられない。

「ショウ……今のは我の聞き間違いか? この娘が貴様のことをパパだと言ったような気がするのだが」
「いいかディアーチェ、落ち着いて聞け。断じて俺はこの子のパパではない」
「違うもん、パパはパパ。ヴィヴィオのパパだもん!」

 これ以上否定すれば泣きかねない雰囲気で必死に言うヴィヴィオ。普段の状態のディアーチェならば誤解せずに理解してくれるだろうが、今感じる雰囲気からしてスイッチ的なものが入っていそうなので俺は頭を悩ませる。

「えっとだな……」
「あのねディアーチェ、この子は」
「フェイト、貴様の娘か?」
「え、あっうん」

 フェイト……説明しようとしてくれた気持ちは嬉しいが、完全にこの流れは逆効果だ。
 今回の場合、なのはが説明したほうが絶対に良かった。なのはも自分が行くべきだった、と思っているのか顔を手で覆っているし……。

「ただ私は後見人でなのはが……」
「貴様達は何を考えておるのだ!」
「え、な、何が!?」
「何が、ではないわ! わ、我は貴様達がそのような関係になったとは聞いておらぬぞ。こここ恋人という関係くらいならば……まあ周囲に黙っておくのも分からなくもない」
「ちょっディアーチェ、何か誤解……!」
「しかし、娘がいるということは……そ、その…………あんなことやこんなこと……をするほど深い仲になったということなのだろう。結婚も視野に入れておるはず……レーネ殿にもそのような話は行ってはいないようだし、貴様達はいったい何を考えておるのだ!」

 からかわれて取り乱す過去の姿が重なって見えるが……何だか昔よりもひどくなっているような。まあ結婚や子供を産むといったことを、より現実的に考えられる年齢になっているのでおかしくはないが。ただ早く誤解を解く必要がある。
 そう考えた俺はディアーチェに声を掛け続け、どうにか落ち着かせることに成功した。ヴィヴィオのことを説明すると、彼女は早とちりで色々と発言してしまったと顔を真っ赤に染める。

「まあまあ王さま、人間誰だって失敗するもんや。あんまり気にしたらあかんよ」
「こういうときに優しい言葉を掛けるでない。余計に気にしてしまうであろうが……というか、貴様にそのような言葉を掛けられると寒気がする」
「ちょっ、それはひどいんやない。私だってもう昔の私やないんや。時と場所はちゃんと考える」
「まあ貴様も……って、その言い方は機会があればからかうと言っておるだろ! 小鴉も成長もしたのだな、と思った我の気持ちを返せ!」

 はやてとディアーチェの言い争う? 姿に俺を含めた隊長陣は懐かしさを覚えるが、フォワード達は呆気に取られてしまっている。同じ顔の人間が口だけとはいえ喧嘩しているのだから分からなくもない。ただ俺達と前から付き合いのあったエリオだけは大丈夫のようだ。

「あっ……ヴィヴィオ、ピーマンも残さず食べなきゃダメだよ」
「うぅ……にがいのきらい」
「ちゃんと食べないと大きくなれないんだからね」
「そうやなぁ……あまり好き嫌いが多いとママ達みたいに美人になれへんよ。なあ王さま」
「うむ、栄養が偏るのは良くはない。好き嫌いせずバランスの良い食事をすることが大切だ。……とはいえ、子供の味覚は我々とは違うからな。無理強いするのも良くはないのだが……って、まだ話は終わっておらぬわ!」
「ちょっ王さま、私も食事中なんやからあとにして!」

 ……日に日に六課主要メンバーから威厳というものが消えて行っているような気もする。まあ仕事をするのが息苦しい環境よりはマシだろうが。それにちゃんと仕事をする時はするメンツだ。オンオフが切り替えられていると思っておこう。
 ちなみにこれは余談になるが、どうやらキャロも嫌いというか苦手なものがあったらしく、エリオに食べてもらおうとしていたようだ。なのは達の言葉を聞いて自分で食べることを選んだようだが。そういう部分があるあたり、大人びたところがあっても子供ということか。

「ねぇパパ……ピーマン食べて」
「ショウくん、食べちゃダメだよ」
「うん、好き嫌いの多い子に育つのはダメだから」
「はいはい……お前達の子育てに意見するつもりはありませんよ。ただ……ヴィヴィオ、ちゃんと食べられたらあとでお菓子作ってやる。だから今はママの言うこと聞いとけ」


 
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