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三角定規×2

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2部分:第二章


第二章

「それはね」
「仕方がないって?」
「大体ね、貴匡が言っていれば」
 完全に逆キレであった。
「こんなことにはならなかったじゃない」
「何で僕が言わなくちゃいけないんだよ」
「昨日妹さんと一緒だったってね」
「妹のことは関係ないじゃないか」
「いいえ、あるわよ」
「ないって」
 この喧嘩は遂にお互いが同時に背を向け合うことで終わった。その二人に対してそれぞれ友人達が来てそれで慰めにかかるのだった。
「まあな。落ち着けって」
「頭を冷やせ、な」
 貴匡に対しては男友達二人が来た。そして千里にも。
「そんなに怒ることでもないし」
「それで後で千里ちゃんとな」
「いいよ」
 しかし貴匡は怒った顔と声で二人に言い返すのだった。
「もうさ、いいよ」
「いいって」
「どういうことなんだよ」
「もう千里ちゃんのことはいいよ」
 こう言うのである。
「もうね」
「まさか御前」
「ひょっとして」
「何でここまで言われないといけないんだよ」
 こう言って怒っていた。
「妹と一緒にいただけでさ」
「おい、こりゃ」
「まずいぞ」
 その二人橋本卓也と奈良谷六郎は貴匡の態度に真剣に危ないものを感じていた。
 卓也は背の高いがっしりとした角刈りの男で六郎は小柄である。二人は完全に水と油というよりは二人並ぶとまさに正反対であった。
 二人は貴匡の小学校からの親友である。高校では同じクラスで楽しくやっている。まさに最高のトリオであるのだ。一人のこの態度に残る二人が困惑していた。
 そしてそれは。千里の方も同じであった。
「ちょっとあんた」
「何やってるのよ」
 彼女にも女の子二人がやって来て言う。
「あんなこと言って」
「あんたが悪いわよ」
「私が悪いっていうの?」
 千里は二人に言われて顔を顰めさせた。
「何でそう言うのよ」
「何でってね」
「どう見たってそうじゃない」
 二人は今の千里の言葉に目を怒らせてきた。一人は背が高くすらりとしていてもう一人は小柄で胸が大きい。背の高い娘は髪を後ろで束ねていてやや垂れ目であり小柄な娘は赤毛を伸ばしている大きなどんぐりに似た目の女の子であった。そんな二人が言うのだった。
「あれじゃあ貴匡君だって怒るわよ」
「そうよ」
「怒るって」
「誤解じゃない」
「ねえ」
 二人はまた千里に対して言った。背の高い娘の名前は大江理美といい小柄な娘は力石沙耶という。二人は千里の小学校からの親友である。
「あんなのしたら」
「絶対に」
「絶対にって」
 二人に言われてかなり困惑した顔になる千里だった。
「私が悪いって」
「絶対に悪いよ」
「そうそう」
 二人はまた千里に対してこう告げた。
「あんたの誤解であそこまで言って」
「早く謝りなさいよ」
「謝るっていっても」
 そう言われても今はとてもそんなことをしようと思えない千里だった。彼女もかなり意固地になってそのうえで言うのだった。
 
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