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ロックマンゼロ~救世主達~

作者:setuna
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第1話 賢将との邂逅

 
前書き
オープニングステージ 

 
ケイン博士の地下研究所跡から出たゼロとルインはしばらく砂漠を放浪していたが、とうとうゼロの武器が限界を迎え始めたために、岩陰に隠れてルインが応急処置をしていた。

イレギュラーハンターになる際にケイン博士からミッションの時に万が一故障した時のために教えられた技術がこんなところで役に立った。

「これでよし…これで少しはマシになると思うんだけど…」

応急処置を終えたZセイバーとバスターショットをゼロに返すと、ゼロはそれらを受け取る。

「すまん…」

破壊したパンテオンやメカニロイドからエネルギーを奪い、それで何とか二人は飢えを凌いできたが、それも限界だった。

「それにしても、こんな小型の銃がバスターなんて随分技術は進歩したんだね」

昔の携行武器は実弾系のバズーカやアサルトライフル、光学系兵器にしても出力を維持出来るビームサーベル位のものだったのに、今ではこのサイズのバスターがあるのだから随分な技術の進歩と言えよう。

尤もこのバスターもこの時代では旧式の武器なのだが。

「…それ自体は旧式だ。なら、お前のそれは何なんだ。」

予備のセイバーの柄をバスターのマガジン代わりにすることでようやく強力なチャージショットを撃てるようになったというのに、ルインの武器はマガジンも何も無しに、セイバーとバスターの高出力を保っている。

「私の武器は特別性だから」

遠近両方に対応でき、携行武器の中でも破格の性能を誇るが、それはルイン自身にも分からない。

気付いたら常に自分と共にあった武器だから。

「そうか…」

ルインも自身に劣らず謎に満ちている。

エネルギーの補給を終えて立ち上がったその時、複数の足音がまた聞こえてきた。

「あらら、また来たんだ。」

「…しつこい奴らだ」

ルインはZXバスターを構え、ゼロもまた応急処置を終えたばかりのバスターを構えるのと同時にセミチャージショットを放った。

ある程度の貫通力があるため、パンテオン程度のボディの耐久力では耐えられない。

しかし、倒しても何度も現れるのはこれまでの逃亡生活で嫌と言う程に分かっている。

「ルイン、逃げるぞ…相手にしていてはエネルギーの無駄になる」

「うん。ゼロの武器も限界だしね」

騙し騙しで使ってきたためにいつ使用不能になるか分からないので、不本意ながらも逃走する。

跳躍し、立ち塞がるメカニロイドとパンテオンを斬り伏せ、時には撃ち抜いて次々と突き進んでいくゼロとルイン。

ルインの二百年間もの長いブランクも実戦の連続で完全に埋まっていた。

しかし、今度はメガ・スコルピアよりも巨大なメカニロイドが二人の前に立ち塞がる。

「ゼロ、こいつは何なの?」

「ゴーレムだ。しかし形状が違う。改良型か?」

話している間にゴーレムがこちらにレーザーを放ってくる。

ゼロは以前戦ったゴーレムはセイバーに弱かったためにセイバーによる直接攻撃を仕掛けたが、確かにゴーレムの装甲は削れたものの、倒せてはいない。

「ゼロ!!」

後方からルインがショットを連射し、ゴーレムに喰らわせてダメージを与えていく。

一年前にゼロが戦ったゴーレムはセイバーなどの武器に極端に弱かったが、どうやら弱点を克服したようだ。

しかしバスターでも改良前のゴーレムと比べてダメージを負っているところを見ると、バスターに対しての防御力は著しく低下しているようだ。

ならばわざわざ近付いてやることもなく、二人はゴーレムの攻撃を回避しながらタイミングを見てチャージショットとセミチャージショットを当てていき、数発当てるとゴーレムは崩壊して爆散した。

「先に進むぞ」

「うん、ゼロ。無茶しちゃ駄目だよ」

二人は再び荒野を駆ける。

鳥型メカニロイドやパンテオンの攻撃をかわしながら突き進んでいるとまたゴーレムが出て来たが、先程のゴーレムの同型のために、攻撃をかわし、ショットを連射した。

通常ショットとは言え、二人分の攻撃には流石のゴーレムも耐えきれずにボディは崩壊し、後に先程のゴーレムと同じように爆散した。

「はあ…はあ…ここまで来れば…大丈夫かな?」

「…いや、まだだ」

背後から地響きと共に現れたメガ・スコルピアは強固な装甲が厄介な相手であり、ゼロも苦しめられた敵だ。

「ゼロ、私がセイバーで戦うからゼロはバスターで援護を頼めるかな」

ボロボロのゼロに無理をさせるわけにはいかないために、ルインはセイバーを構えてメガ・スコルピアに突撃した。

ゼロはショットを連射し、メガ・スコルピアの動きを鈍らせていくとルインは頭部の刃に注意しながらメガ・スコルピアの頭部に三連撃を叩き込む。

「よし、このまま行けば倒せる!!」

徐々に亀裂が入っていくメガ・スコルピアの頭部からは火花がでており、動きも鈍くなって来ているためにルインは勝利を確信した。

「そこだ!!」

ゼロがセミチャージショットをメガ・スコルピアの前脚に向けて放ち、バランスを崩したメガ・スコルピアにルインが予めチャージしていたセイバーを叩き込んだ。

まともにチャージセイバーを受けて頭部が吹き飛んだメガ・スコルピアは徐々に小規模な爆発を起こして最後には爆散した。

「何とか片付いたね…」

「ああ…だが、流石に…限界だな…」

度重なる戦闘によってとうとう限界が来たのか、ゼロは意識を失って倒れてしまった。

「ゼロ!?」

倒れたゼロに駆け寄って体を揺すりながら声をかけるが、ゼロは身動き一つしない。

「まずい…早くゼロを修理しないと…一旦、ケイン博士の研究所跡に…でも、あそこはもう…」

時間が経つごとに砂嵐が酷くなっていき、せめてどこか岩陰はないだろうかと辺りを見回した時、風が砂嵐を吹き飛ばした。

「誰…?」

隼を思わせるレプリロイドがルインとゼロの前に舞い降りる。

一瞬敵かと思ったが、隼型レプリロイドの背に乗ったレプリロイドの顔を見て、ルインは思わず驚愕して凝視してしまう。

「エックス…?いや、違う…?」

姿はHXアーマーを纏っている時のルインに似ているが、ルインのアーマーよりも明るい緑色のアーマーを纏った青年。

しかし青年の顔立ちがあまりにもエックスに似すぎていた。

「ハルピュイア様、ゼロを発見しました。」

「ああ…だが、貴様は何者だ?」

部下であるアステファルコンから降りると、ゼロに酷似したアーマーの少女を油断なく見据えるハルピュイア。

しかしハルピュイアは同時に少女に対して不思議な懐かしさを感じており、それはまるで主君であったオリジナルエックスに仕えていた時のような不思議な繋がりを感じた。

「私は…ルイン。今更こう名乗っても意味ないかもしれないけど、イレギュラーハンター、第17精鋭部隊に所属していたレプリロイドだよ」

「イレギュラーハンター?第17精鋭部隊だと?」

確か第17精鋭部隊は主君であるエックスがイレギュラーハンター時代に所属し、隊長を務めていた部隊だったはずだ。

「そうだよ、一応ゼロとエックスの後輩だったけど…二百年も昔じゃあ、あまり意味ないよね。エックスはいないし、ゼロは記憶喪失だしさ」

疲れたように言うルイン。

目を覚ましたらいきなり二百年も経っていて世界は荒廃しており、エックスは行方不明でゼロは記憶喪失、一体どうなってるのか分からないままなのだ。

「…………」

一方のハルピュイアは冷静にルインを見つめていた。

彼女のエネルギー反応を見る限り、まともにやり合えばよくて互角だろう。

このまま生かしておけば、いずれゼロと並んで自分達の大きな障害となることは間違いない。

「(ネオ・アルカディアの…人間を守るために倒さねばならないと言うのに…何故だ?何故俺はこの女と戦いたくないと思うのだ?)」

彼女に剣を向ければ、まるでエックスを裏切るかのような気がしてならず、それに彼女の顔立ちが何故か同僚のレヴィアタンと似ているのも戦いを戸惑う原因であろうか?

ハルピュイアは少しの間を置いて、ゼロを抱え上げた。

「ちょ、何を……」

「乗れ、アステファルコン。問題ないな?」

「ハッ」

「え?」

アステファルコンと呼ばれたレプリロイドの背にゼロを放り投げたハルピュイア。

怪我人なんだから優しく扱って欲しいと思いながらも、ルインもハルピュイアの好意に甘えることにし、アステファルコンの背に乗ろうとした時、ハルピュイアが手を差し伸べてきた。

あまりにも自然過ぎた動作に目を見開きながらその手を掴んでアステファルコンの背に乗り込んだ。

「レジスタンスベースの近くまで送る。近くまで来れば半死人がいても大丈夫だろう」

「あ、ありがとう。君……顔もエックスに似てるけど性格もエックスみたいに優しいんだね。でもどうして助けてくれたの?」

目の前のハルピュイアは一見気難しそうに見えるが、助けてくれた辺り優しいのかもしれない。

どことなくエックスに似ていることもあってルインはハルピュイアへの警戒を解いていたが、何故助けてくれたのか分からず、ハルピュイアに理由を尋ねた。

「分からん」

それは助けた自分にも分からないのだ。

不本意ではあるが、自分とアステファルコンの二人掛かりで挑めば、半死人のゼロを庇わなければならないルインごとゼロを倒せたはずだ。

なのにそれが出来なかったことにハルピュイアも自分の感情に疑問を抱いていたが、ルインはアステファルコンの背から、今の世界の風景を見据えた。

「二百年前とは随分変わっちゃった……何でここまで世界が荒廃しちゃったんだろう……草木も水も何もない…」

「二百年前……エックス様がイレギュラー大戦で戦っていた時に発生したスペースコロニー・ユーラシア事件でコロニーが地球に落下したためだ。エックス様から聞いた話では当時は今より酷い状態だったと聞いている。並みのレプリロイドでは満足な行動すら出来んほどのな…」

「エックス様…?どうして君はエックスを様付けしてるの?」

「ゼロから聞いていないのか?エックス様は荒廃した地上にネオ・アルカディアと言う理想郷を築き上げたネオ・アルカディアの統治者であり、俺の主君だ」

「エックスが統治者……?」

信じられないと言いたげに目を見開くルインだが、ある疑問が浮かぶ。

「ネオ・アルカディアにいたエックスはコピーだったって聞いているんだけど…本物の、オリジナルのエックスは…どこにいるの?」

「そこまで話してやる義理はない。そもそも、お前はゼロの仲間であり、俺達の敵だ。」

「ああ…そうだね…………エックス………会いたいよ……」

ハルピュイアにも聞こえないくらい小さく呟いたルイン。

気を抜けば寂しさで涙が出て来そうだった。

しばらくして、レジスタンスベースと呼ばれる基地付近に降ろして貰ったルインはゼロを抱えながらハルピュイアに向き直る。

「えっと……ハルピュイアだったよね?助けてくれてありがとう」

「………」

助けてくれたハルピュイアにルインは礼を言うが、ハルピュイアは何も言わずに無言のままだ。

「助けてくれた恩は忘れないよ。また会えるといいね…出来れば敵同士じゃなくて」

それだけ言うと、ルインはゼロをレジスタンスベースに運ぶために足を動かした。

「おい」

「え?」

「俺のことは決して口外するな。ネオ・アルカディア四天王の俺に助けられたことを知られればレジスタンスに居辛くなるだろうからな」

「うん、ありがとうハルピュイア」

アドバイスをくれたハルピュイアに頭を軽く下げて今度こそレジスタンスベースに向かうルインであった。









~バレンタイン~

記念すべき(一応の)第1話がバレンタイン当日なので、ロックマンゼロの女性陣でバレンタイン。

ネタバレ出ます。

平穏な一時を満喫しながら二人の少女…ルインとシエルはほのぼのとお茶をしていた。

「ねえ、シエル。」

「何?」

「今日が何の日か知ってる?」

「勿論!バレンタインよね?ゼロは…きっとバレンタイン自体知らないわよね?」

「知らない可能性大だね。昔のイレギュラーハンター時代も大量に貰ってたけど、大抵は私とエックスのお茶菓子になってエネルギーになってたよ。」

「………」

ルインの言葉に一瞬途方に暮れそうになったが、シエルは用意していたチョコレートを見遣り、気合いを入れた。

「私…頑張るわ。例えゼロがバレンタインを知らなくても私はバレンタインを知っているから」

「うん、頑張れシエル…」

燃え上がる恋する乙女であるシエルに友人としてエールを送る。

「ところで、ルインはエックスに渡すの?」

「う、うん…後は四天王のみんなにね」

エックスと四天王達の顔を思い浮かべるルインであった。

「今日はバレンタインですねゼロさん」

二人が女子トークで盛り上がっている最中、レジスタンスの一人がゼロに話し掛ける。

「?」

「今までは人間の行事だからと無関心でしたけど、食べ物が食べられるようになってからは楽しみで仕方がないんです。きっとゼロさんはシエルさんから本命を…」

「おい、バレンタインとは何だ?」

疑問符を浮かべながらゼロが尋ねると、レジスタンス兵は一瞬信じられないと言いたげに目を見開いたが、ゼロが食べ物を食べられることを知ったのはつい最近だ。

それにゼロは色恋沙汰に鈍そうだからバレンタインを知らないのは無理もないだろう。

「バレンタインと言うのは、簡単に言うとチョコレートを貰える日なんですよ。好きな人にやったり、世話になってる人にとか…」

「世話になっている奴に…か。感謝する」

「え?」

何故か礼を言われたレジスタンス兵は疑問符を浮かべた。

更に某所にてハルピュイアは目の前の物体を凝視していた。

それを差し出しているのはネオ・アルカディア四天王の紅一点、レヴィアタンである。

ルインにそっくりな顔立ちであるにも関わらず、ハルピュイアが知る限り、ルインならば絶対にしない笑顔を浮かべていた。

「何だこれは?」

「あら?キザ坊やったら今日がバレンタインだって忘れちゃったの?それともバレンタインの存在をメモリーから消去しちゃった?」

「何故そうなる…まさか…これはチョコレートか?お前が俺に渡すなど一体何を企んでいる?」

「別に何も企んでないわよ~。この前ルインに呼ばれて、バレンタインにチョコを渡すってことになったのよ。これが私ので、そっちがルインからあんたに渡すように言われた奴。ちゃんと食べなさいよ。特にルインのはね。残したりしたら愛妻家のエックス様に確実にお仕置きされるわよ」

「わ、分かった…」

ルインが作った物を残したりした日にはエックスが恐ろしく怖い笑顔を浮かべることが分かっているため、ハルピュイアは早速受け取ったチョコレートを食べることにした。

「やあ、ハルピュイア。」

「エックス様…」

突如現れたエックスのサイバーエルフに目を見開くハルピュイアだが、エックスに跪こうとしたところをエックスに苦笑されて止められた。

「それ…レヴィアタンからかい?」

エックスも貰った覚えのあるハルピュイアの机に置かれている二つの箱の片方を指差す。

「は、はい…あいつは一体何を企んでいるのか…」

「警戒し過ぎだよ。因みに僕のトリュフチョコは生クリームが入っていてとても美味しかったよ。因みにファントムのは抹茶のクリームが入ってたけれど…料理の腕もルイン譲りなんだね。」

サイバー空間でファントムと共に食べたエックスは顔だけでなく料理の腕もルイン似のレヴィアタンに満足そうな表情だ。

「…では…俺も…」

レヴィアタンの箱からトリュフチョコを一つ摘まむと口に運んだが、次の瞬間にハルピュイアの顔色が悪くなる。

「ハルピュイア…大丈夫かい?」

「カカオの苦味しかしません…」

あまりの苦さに表情を歪めながらコメントするハルピュイア。

このチョコレートは砂糖をたっぷり入れたミルクと交互に食べることでようやく食べられる苦さだ。

「よう、ハルピュイア。お前もレヴィアタンとルインからチョコ貰ったのか。俺がレヴィアタンから貰ったのは苺クリームの入ったトリュフだったぜ。あいつがチョコくれんの初めて…てか、料理するところ見たことねえから本当に食えんのかと思ったけど普通に美味かったぜ」

「…俺だけか…ホワイトデーには苦いチョコをたっぷり入れたマシュマロをくれてやる…。」

「ファーブニル、ケーキは食べたかい?」

「ああ、美味かったぜエックス様」

ハルピュイアはレヴィアタンの箱を押し退けてルインの箱を開くと、中にはとても美味しそうなガトーショコラがあった。

見た目も良く、きっとルインのことだからレヴィアタンのようなこともないだろうとハルピュイアはケーキを一口分に切り分け、口に運んだ。

「……美味い…」

自分好みの甘さのケーキに思わずハルピュイアの口元が綻んだ。

「それにしても、ルインと同じ顔なのにどうしてああも違うんだ…」

「あのなぁ、ハルピュイア。考えてみろよ…ルインなら違和感ない笑い顔でもレヴィアタンが同じように笑ってみろよ、どう思う?」

「………気味が悪いな」

「だろ?」

「君達…」

ファーブニルに聞かれてルインと同じように無邪気に笑うレヴィアタンを想像してげんなりするハルピュイアと、散々な言われように苦笑するエックスであった。

「シエル。チョコだ」

「え?」

一方でルインと別れてゼロにチョコレートを渡そうとしたのだが、何故かゼロの方からチョコレートを差し出されてしまった。

「今日はバレンタインだろう?バレンタインは世話になった奴にチョコを渡す行事だと聞いた」

「ゼロ…それ少し間違えてるわ。女性が男性に贈るのよ…?」

「そうなのか?」

「ええ…、でもありがとう…私のチョコ…貰ってくれるかしら?」

「…有り難く戴こう」

互いに交換する形でチョコレートを貰うのだった。

そしてサイバー空間にて、エックスとルインは色々と話し合っていた。

「ありがとう、エックス。レヴィアタンはハルピュイア達に渡してくれた?」

「うん。みんな、美味しかったって。ファントムも“とても美味です”と言っていたよ」

「本当?良かった…」

安堵したように笑うルインにエックスは今まで気になっていたことを尋ねようとした。

何故ならエックスだけが、ルインからチョコレートを貰っていないのだ。

まさか自分の分だけ忘れられていた?

いやいやルインに限ってそんな…。

「エックス、そこで待っててくれる?」

尋ねる前に向こうから調達してきたのであろう、椅子に座らされたエックス。

テーブルが置かれ、テーブルに丸い蓋に隠された何かが置かれた。

この甘い匂いは…。

「エックスのは特別♪じゃ~ん♪」

ルインが蓋を外すと、甘い匂いと共にそれは姿を現した。

「うわあ…」

それを見たエックスは思わず目を見開いた。

ふわふわのスポンジがチョコレートクリームでコーティングされ、乗っかった苺とベリー系が彩り良く飾られていた。

「これをルインが作ったのかい?」

「うん、でも久しぶりだから不格好かも」

言われてみれば、果物の飾り付けのバランスが変かもしれないが、言われなければ誰も気付かないくらい完成度が高い。

「いや……凄いよ。多分売り物と言っても通用するよ」

寧ろ売り物にだってこれくらいの失敗はあるだろう。

「ありがとう。さあ、エックス。食べて!」

「ありがとう。そうだ、僕だけでは食べきれないからルインも一緒に食べよう」

「うん。どうぞお召し上がり下さいエックス♪」

「頂きます」

一口ケーキを食べると、チョコレートクリームは自分のために甘さを抑えているのだろう、それほど甘くはない。

それに、一緒に添えている果物の酸味が甘さをしつこくない物にしており、やはりルインはお菓子などに関しては天才的だ。

二百年ぶりに口にしたケーキにエックスの顔が綻んだ。

「あ、そうだ。例の“アレ”、彼に渡してくれた?」

「例の“アレ”かい?勿論だよ」

互いに意味深な笑みを浮かべるエックスとルイン。

時間は今から少し前に遡る。

エルピスはサイバー空間にて、ゼロとシエルのチョコレートの交換を見ていた。

「(手作りチョコレート…お、己ええぇぇええ…)」

レプリロイドだった頃には無かったが、サイバーエルフになった時に食物摂取が出来るようになったエルピス。

「やあ」

悔しがるエルピスの前に現れたのはエックスであった。

「エックス…様…」

申し訳無さそうにエックスを見つめるエルピスに、エックスは慈愛に満ちた目でエルピスに一つの箱を差し出した。

「これ、シエルから」

「シエルさんから!?」

「開けてみたらどうかな?」

エルピスは包装紙を取り、箱を開くと、“義理”とでかでかと書かれたチョコレートが入っていた。

「……………うああああああああああっ!!!」

見事に打ちひしがれたエルピスは膝をついて悲痛な叫び声を上げ、そんなエルピスに満面の笑みを浮かべながら背中に隠したエックスの手にはチョコペンが握られていたのであった。

因みにもう一つはルインが所有しており、エックスとルインの共同作業は見事に成功したのだった。 
 

 
後書き
エルピス可哀想 
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