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その手で引き金を引け!!

作者:櫻木可憐
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第六章 私と貴方が戦う理由
  第五話 夢の世界

近寄らないで・・・
日に日に増していく想いが嫌で嫌でたまらない!!
どんなにアプローチしようが、どんなに嫉妬させようが、君はあの人が好きなんでしょ?
ぼくを見て!!あの人を忘れて!!
この感情が仕組まれたものだとしても、ぼくには事実だから。
耳を塞いでみた。何も変わらないけど。
それでも、塞いでみた・・・

ぼくは何のために戦うの・・・
なぜボーダーに入ったの?
耳がいいのを両親が嫌がったから?
学校にいるのが嫌になったから?
違う・・・
ぼくが戦うのは守りたいから。
仲間や友達ってものを・・・

具体的にいうと風間さんとか歌川とか・・・
守りたいから。守りたいものが出来たから。

景色が変わった。
大きな桜の木に美しい月が見える。
夜桜だ。
そこには可憐が一人で桜を眺めていた。

「あら、菊地原くん?意外や意外。
あなたが夢の世界に何の用かしら」

夢の世界?
漫画で見たことある。夢もひとつの世界だって。

「夢は繋がっているから。
招くことも招かれることもあるのよ。」

知らないよ、そんなの。
まじないの類いだって今まで信じてなかったんだから。

「で、何か聞きたいことがあるの?
顔が悩んでますよ、菊地原くん」

「・・・元の世界に帰りたい?」

「さあ~ね。帰りたいような帰りたくないような。
私にはここは物語の中だから」

「そうじゃなくて・・・」

「わかってるよ。
私、なんでこの世界に飛ばされたか、今ならわかるわ」

あのさ、話、そらさないでよ。
何がわかってるって?
とりあえず聞いてあげる。

「トリップ先で死ぬケースって多いの。
不審者扱いされて殺されるパターンや、その世界に慣れなくて自分に殺されるパターン。
この世界には迅がいて未来をみているから、不審者扱いは逃れる。
それから緊急脱出機能もあるから、トリオン兵から殺される確率は少ない。
それに男が多いから彼の魂の共有者を作るには最適ね。
全て終わらせてからは、この世界に居ようが居まいがどうでもいいかな。」

結論はどうでもいいのか。
相変わらず適当。扱いづらいよ、可憐は。

「私、いきる人のために戦いたいから。
誰かが私をこの世界にいてほしいと願うなら、その人の幸せを願って戦いたい。
それじゃあダメ?
きくっちーも戦う理由があるでしょ?
風間さん?風間×菊地原!?」

「・・・なんでそうなるの?
違うよ。ただ、守りたいから」

「・・・珍しくデレたな。
でも菊地原くん、守りたい気持ちが相手の足枷に、自分の足枷にもなるのよ。」

聞こうとした。その理由が知りたかった。
守りたいことが何の足枷になるのかを。

しかし、異常事態により聞けなかった。
可憐の後ろの空間が歪み始めたのだ。

何か来る。構えてみる。夢で戦えるのかな。

出てきたのは腕。
もがいているように見える。
こちらに来ようとしているらしい。
鼻と口が見えた。見る限り美形だな~

可憐は気づいているが振り返らない。なぜだろう。

その口が小さく動いた。
小さな声でもぼくにわかる。

「可憐を守れ・・・」

ぼくらは夢の世界から追い出された。 
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